2021/01/09 のログ
■ラファル > 「――――…………。」
結果、根負けしたのは幼女の方である。理由は簡単で、幼女は堪え性がない、今は良く頑張った方といって良い。
野生児のような生活をしている野生のドラゴン娘、お仕事の事でなければ、我慢なんて一秒たりともしたくない、その性格が、その恰好にも表れているのだ。
この真冬で、半裸の姿、それが、ラファルの性格をよく表している。
結局おねいさんは、首を縦に振ってくれないので、幼女は仕方なく渋々と言った様子で依頼書を戻しに行く。ちら、ちら、と振り返るものの、ダメです、とばかりに首を横に振られる。
しゅーんとして、それでもあきらめるしかないと判れば諦めて、視線を動かす。
また今度、別の時に依頼を受けることにする、師匠とかの一筆あれば、簡単な依頼の照会ぐらいはしてくれるはずだ。
飽きたし、此処にいても仕方がないから、移動することにする。
どこかで、暇つぶしに飛んでこようかな、とそう考えてから幼女は、またね、と職務を遂行したおねいさんに手を振る。
意地悪されているわけではないので、嫌う理由などはないからだ。
そして、ギルドの扉を開き、ひょいひょい、と軽く屋根に上り。
竜の姿に戻り空を飛ぶことにする、今宵は空気が澄んでいるからきっと気持ちが良いだろう。
そのまま夜の闇の中に融けて消えていく―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からラファルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 「……で。何でこーんな事になってるんですかね……」
机や椅子が退かされ、即席のバトルフィールドになった酒場の中心で、男がぼやく。
周囲には、野次馬の声援とか罵声とか賭け屋の売り文句とか、そんな声が聞こえてくる。
事の発端は、酒場で盛り上がった一部の客が、剣闘士は実戦で役に立つのか立たないのかとか、そんな話をしていた事だった。
それが、じゃあ実際試してみようという事になり、いつの間にかこんな事になってしまっていた。
「……それにしても、誰が出てくるんだろうか」
と首を捻る。発端となった連中曰く、『いい感じの相手見つけてきてやるから、待ってろ!』らしいが――。
対戦相手は男なのか女なのか、それさえもよくわからない感じだ。
「……まあ、此処まで来た以上、やりはするけどさ」
何か、ギルド員達も止めるよりは好きにやらせとけという感じだし。
一銭にもならない戦いはしたくないんだよなあとは思うが、しかしこれで箔をつけるのも、
「悪くない、か」
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > 王都の繁華街に位置する一軒の酒場。
2階に宿屋も兼ねる店は主に冒険者達で盛況を見せている。
此の場で飲んだくれて酔い潰れても、其の侭、上階の部屋に放り込めば、
店は宿賃も稼げ、主に寝る為だけの部屋の宿賃は相応にリーズナブルで、
冒険者にして見ても、然程に懐は痛まない、と互いにWin-Winな形態であった。
その状況を見込んで夜鷹の娼婦達も、冒険者に酌をして春を鬻ぐ為に集まり、
女達を目当てに冒険者もまた集まるために店も得をするという経済の縮図が為される店は、
相応の繁盛店であり、店内の客席はほぼ荒くれ者と女達で埋め尽くされている。
そんな賑わいの中、一際、明るく振る舞っているのは頬傷の中年冒険者で、
他の卓の客達に調子良く話し掛けながら景気の良い笑い声を撒き散らしていた。
「いやぁ、ホントにラッキーだったぜ。
ゴブリンの巣穴に潜り込んでみたら、連中、コカトリスを飼ってやがって、その卵が売れてガッポガッポよ。
あ、お姉ちゃん、エール追加ね。ついでに此処の全員にも一杯奢ってやって」
ガハハ、と喧しい笑い声を響かせて、盛大な法螺の如き話を吹聴する男。
そんな男が煙たがられないのは、その羽振りの好さのお陰で、彼の奢りによる乾杯も、既に複数回に渡っていた。
■トーラス > 男の注文した酒が各テーブルに運ばれれば、店内に響き渡る乾杯の合図。
荒くれ冒険者たちの宴はまだまだ幕を下ろすには程遠く―――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアミスタさんが現れました。
■アミスタ > 少女は安酒を飲んでいた。
ほとんど酔いも回らない、少し酒の味がする水のようなものだ。酒としての効能は殆ど無く、酒場の客として認められる為の最低限の礼儀──その程度の代物でしかない。店側の利鞘も少なかろう。
酒場の奥、店主の立つカウンター脇をすり抜けていくと、個室が幾つかある。
部屋の利用料金は、こちらは部屋の質と比較すると幾らか高額だ。……〝女〟の代金も含む為に。
酒を飲んでいる娘の中から気に入った相手を選んで部屋に連れ込む、此処はそういう仕組みの店だった。
「っ、ふー……美味しくない」
中身がようやく半分まで減ったグラスをテーブルにおいて、少女は呻くように言った。
ほとんど客のいない店内に、独り言はやけに大きく響いた。
■アミスタ > 静かな夜だ。何かの催し物もなく、通りを歩く者もまばら。
むしろそういう日だからこそ本業の娼婦も少なく、宿側もこの少女のような〝兼業〟の娘を置くのだろう。
見た目にも派手な娘ではない。街で、平凡な商店の手伝いなどしていそうな格好の──違いがあるとすれば、眼だろうか。
どこか暗い、憂いのような、影のようなものが、紫色の瞳にさしていた。
テーブルに片肘をつき、グラスを鷲掴みにして口元へ運ぶ仕草は、年齢の割りには場に馴染んでいるようにも見える。だが草臥れた風情ではなく、まだ幾分かの幼さも顔立ちに残っていた。
「……マスター……ここ、人来ないね……」
店主はカウンターの中、視線もくれずに〝わかってる〟とだけ応じた。それを聞いた少女は鼻でわらって、グラスの中身を空にした。
空になったグラスをカウンターに運ぶ。新しく、水のような安酒が注がれる。席には戻らず立ったままでグラスに口付けた。酒の、液体の冷たさが痩躯に響いて、少女は小さく身震いした。
■アミスタ > そのうちに、夜も更けた。
店主は、これ以上の来客はあるまいと見たか、カウンターの内側に並べたグラスの片づけを始めた。
少女もまた、手元のグラスを空にして店主へと突っ返す。そして、そのまま宿の奥、個室へと向かっていく。
客が入らずとも、宿代を値引く程度の仏心──或いは商品を繋ぎ止めておく打算心──は、安酒場の店主にもあるのだ。
「……明日も、部屋、借りていい?」
店主の返事を待たず、少女は軋む床を踏みしめて個室へと向かった。
豪勢な部屋とは呼べないが、壁も屋根も寝台もある。ただ眠るだけなら上等の環境だった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアミスタさんが去りました。