2021/01/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 特に意味もなく入った、平凡な喫茶店。
そこで一人、お茶を飲んでいる男。
机には、一冊の本。いわゆる、魔術書と言われるものだ。
男には魔術は使えないが、それでも定期的にこういう魔術関連の物には触れる事にしていた。

「まあ、魔術師が使う物には及びもつかない、初歩も初歩だけど……」

ぺらり、とページを捲り、時間をつぶす男。
内容はある程度把握しているので、あくまでもその確認が目的。
魔術の発動原理や、特徴などを覚えれば、類似の魔術を相手にするときに役に立つ。

「これも鍛錬と言っても、やっぱり俺は普通に身体を動かした方が楽だなあ……」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > 平民地区と貧民地区の境にあるそこそこ繁盛している商店街の一角。
閉店間際の時刻、軒下に立って店内を覗く。

「邪魔すンぜ──…」

店主はすぐ出迎える。
ポッケのコインを1枚、カウンターへと置いて盛り籠のオレンジを一つ手に取る。
己が店内にいる間は硬貨は仕舞われることがないかもしれない。

一見、揉め事とは縁が遠そうな青果商。
ただ治安に対する不安の声があったとか、なかったとかいう話。
近隣の噂話を聞き出す態で会話を進める。

小ぶりの柑橘は外皮も薄そうだ。
口を開き、健康な咢<あぎと>で強く嚙みつけば果汁が襟元へ飛んだ。

ビョルン > 案外と皮は苦みがあり、滴る果汁は多い。
内心大層意外に思いながら、店主が困惑する表情を見せる前にハンカチを取り出して頬と口元を拭った。

「──其れで、」

所謂涼しい顔をしながら話を続ける。
果実には噛みついたらば最後、種の一つも残してはいけない。
喧嘩と同じというのが──我ながら陳腐で下らない。

果汁が手首にまで伝いそうになりハンカチとオレンジを持ち替える。
控えめに言って、ぐっしょりだ。

ビョルン > 持ち替えた手を拭うハンカチは畳み替えれど乾いた面がなくなりそうだ。
早いことこのオレンジ1個を胃の腑に落としてしまわないことには。
暫し、言葉少なめにオレンジを咀嚼する。
果実まるごと1個は急いで食べるにはそこそこ質量があった。

「済まない、また後日改めて」

上の空ながらに、差し当たって逼迫した現状でないのを知れば挨拶して青果商を出る。
柑橘の香りを強く漂わせて帰路。湿った手にこの時期の夜風が厳しい。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――仕事終わり、帰路の途中に通りかかった商店街。まだ灯りを落としていない店舗をなんとはなしに横目にしながら行き過ぎる途中。

「あ……」

 青果店がまだ開いていた。通りに仄かに漂う果物の香りを嗅ぐと急に食べたくなってくるというものでそちらに足を進めると、

「お……、あ、あれー……?」

 どこかで見覚えのある青年が店から出てくるところで、あ、なんか知った人――と思い記憶の中を検索している途中で、彼はこちらに気づかずにそのまま立ち去っていき。

「んー……行っちゃった……」

 ダッシュで追いかけて声をかけても……びっくりするかな。しかもこれと云って重要な要件もない。逡巡している内に遠ざかって。あー…と所在無げな一音を零してしばし立ち尽くし。

ティアフェル > 「ま……しゃあないか」

 ぽつんと一人。そう肩を竦めて呟くと気を取り直してその青果店に入ろうとしたが――、

「えぇー……もう店じまいなのー……?」

 目の前で看板が降りてしまい。店主は苦笑いしながら、またよろしく、と告げた。もう少し早く店に入っていればギリギリセーフだったというのに今日は全く、ツイていない。
 っはー、と不景気そうに溜息を吐き出し。さて、どうするかなー……と買うつもりだった果物も、声を掛けようかと思っていた相手も何もなくなってしまい、ただ元の状態に戻ってしまっただけだと云うのに何だか急に手持無沙汰な気分に陥り。
 
「えいっ……」

 足元に転がっていた小石をちょっとした憂さ晴らしがてら爪先で蹴っ飛ばした、が――

 コンッ

「げっ……」

 思いの外勢いがついて、高く蹴り上げられたそれがたまたま前方を通りかかっていた人物の後頭部にヒットした。
 ツイてないコンボ達成。
 いやむしろ不運連鎖に他人を巻き込んだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にビョルンさんが現れました。
ビョルン > ──店主の言葉に思索を巡らしていた帰り道、ふと気にかかることがあり引き返した次第。
けれど、やはり今しがた商店の戸は閉じられたらしい。

遠目にそれを見れば己もまた思い直して踵を返そうとするが、視線を転じた先。
今まさにハプニングが発生しようとしていたようだ。

己も足元の小石を拾い、投擲する。
わずかに角度を逸らせば、大丈夫だろう。

「なんだ、今度は、外した」

済まないねェ、って頭に小石を喰らった男に向かってひらっと手を上げ。
そうしながら横目に相手の姿を認めて、僅かに口角を上げる。

ティアフェル > 「や、ごめっ……わ、ざとじゃなくって、その……――めっちゃ怒ってるー……」

 どうしよう、何気なく蹴り上げた小石がよりによって男の禿げ頭、真ん中にヒットしてしまったものだから、これはなかなか云い訳が聞かない。
 いや、絶対わざとだろ!と詰め寄ってこようとするが……。

「えっ……?」

 不意に横槍から飛んだもう一つの小石が放られて、それはハズれたのか。
 しかし、これは故意にとしか思えない投石でした。

「え? あ、え??」

 そちらへ驚いたように見張った目を向けると先程青果店から出て、もうとうにどこかへ行ってしまったかと思っていた人物の顔。

 男女二人に石を投げられるという、気の毒なおじさんはちょっと涙目だった。

ビョルン > 既に十分トラブってた。
女の起こしたトラブルならとりあえず一遍は被っておいてみようとの投石は、両者の目を引く結果に終わり。

「うーん、」

どうしたものかと首を捻りながら2人に近付く。
男は、堅気なのだろうし己を知っていても『顔』を使うのは筋違いか。

「おこなの?」

なるべく緩い言葉で男へと問いかけてみる。
そうして相手へと近づいた己は、明らかにミカンの匂いがするだろう。
なんなら服からも匂うはず。

ティアフェル >  何だか年若い男女が石を投げてくるという、物凄く理不尽な状況。ただの人間でミレー族でもなければ今は悪事も働いていないのに、ナゼ、ホワイ。意味が分からない顔をしていた男性。そりゃそうだ。
 イジメに遭ってる気分だろう。

 そしてミカン臭の青年がふざけた口調で近づいてくる、これは……なんか怖い。

「あ、あの、あの……ひ、ヒール、ヒールするから。ほら、チチンプイプイ……じゃない、違った。
 ――ヒール…!」

 ここは現況たるわたしがなんとかせねば、と焦って進み出て、石がぶつかって赤くなった後頭部にスタッフを翳し、短詠唱で痛みも赤みも癒して消し去り。

「ほんとーにごめんなさい! これ、ヒール券…! なんか怪我とかしたら一回タダで治すんで。ここはどーぞひとつ穏便に…!」

 ぺこぺこ平謝りの加害者。若者にイジメられた気持ちに陥ったおじさんはひとまず何らかの迫害ではなかったのか…と留飲は下がったようで。

ビョルン > そもそも、偶然の神の名采配が小石をクリンヒットさせたのだっけ。
ごった返した雑踏でもなきゃ狙わないと当たらないだろうに。
強運だ。悪運も運の内ならば。

ククッと喉元から含み笑いがこみ上げる。
程近くで治療魔法をかける様子を見ながら。

「おー? 良かったな。
 ついでに魔法で表情もハンサムにしてもらったらどう?」

傷口には塩のチョイ足しを。
そうして念のため、痛みの癒えたらしい男の生業を聞いておく。
後日、機会があればそちらとも縁をつけようという感覚。

そんな遣り取りが一通り終われば。

「ご機嫌ようだ、──ティアフェル。
 いっぺんギャンブルの道にでも進んでみたら如何?」

石ころ持っていた手を拭くハンカチはより一層冬の柑橘臭いのだが、気にしてはいない様子で問いかける。

ティアフェル >  悪運持ちだとは御周知のような存在だが……今回のこれは悪運という意味のそれはとは違ってただの不運。
 今日はそういう日なんだろう。明日はいいことあるといいなと内心で詮無く願い。
 ことを収めようと回復魔法を施すと横から茶々が入って。

「ちょおぉー! よっけいなこと仰らないでー?!
 できないからねー?!」

 傷口に軽快にソルトを塗り込んでいく青年に、むき、と振り向いて制した。
 もう変な若者にはこれ以上関りたくないのか。おじさんはそそくさと去っていた。一瞬オヤジ狩りかと思っていたので安堵していたそうな。

 ごめんなさいねー。と去っていく背中に手を振って。さて…と向き直ると。

「ご機嫌よ……えーと……ビョルン……だっけ…?
 なんでよっ! 博徒の才能をどう見たのよわたしに…!」

 唐突にギャンブラーを勧められて、オレンジの香りにふんふん、と鼻をひくつかせ。やっぱりさっきの青果店にいたのは彼で間違いないようだと判り。

「ま…、とにかくその節はどーも……」

ビョルン > 彼女の周りで軽やかにステップを踏むハード・ラックが見える。
──などという、スピリチュアルな能力はなかった。

「表情、だ──表情。
 笑って帰してあげなよ」

顔の造作は良くも悪くもどうにもならん、得てしてそんなものだ。
そんな話の種にされるのも哀れな男が帰路に就いたならば。

「そうだよ、ビョルン・ビストカイン。
 ………そうかい? なかなかない強運だと思うけど──飛び込みで、大勝ちするか襤褸負けするか見てみたい。
 種銭は貸し付けよう」

匂いに鼻が鳴るのを見れば一瞬、困ったような表情になる。

「ああ、そうだった。
 あのときの兄さんもその後元気かい──ええと、クレス」

相手の知人のことを思い出し、良かろうはずのない出来事には触れずに名前を出した。

ティアフェル > 「君を笑顔にする魔法、ヒール! なんてあるかい!
 ダイレクトに擽った方が早いわ」

 気持ちを操る魔法なんて使えない。飽くまで有効範囲は外傷だ。
 ボケられている気がしたので脊髄反射的にツッコミを入れ。べし、と裏手を中空にカマした。

「……掛け金、呉れるならやるわ……。わたしは籤引きもほぼほぼやらない現実主義よ。
 お金が絡まない乗るか反るかなら――まあ乗るけどね」

 借金までして博打にうつつを抜かすような遊び人ではない。飽くまで堅実そうに人差し指をぴっと立てて首を振り。

「えー…ああ、クレスさん? 時々会うけど……そうね、概ね元気みたいよ。――まあ、そこはダイラス辺りに行けば噂はたくさん転がってると思う」

 人前にでる商売の人だから、王都にも多少噂は響いて来ているだろう。
 そしてオレンジの匂いを嗅いでいると食べたくなってきて。

「開いてるお店、ないかなー……」

 物欲し気に呟きだした。

ビョルン > 「でもなぁ、叔父貴が言うにはあるらしいんだよ──…」

ほなあるんちゃうか、と都のここではないどこかで九官鳥が鳴く。
タイミング抜群な手刀の仕草には愉快そうに頷いた。

「……少し興味がある。1000か2000でよければ出そう。
 増えりゃ山分けさ──って、でも掛けられるゲームはあるかい?」

知らない所から運任せ、というのも相手らしくて良いのだろうけれど。
立てられた指には納得したげな表情を浮かべる。

「──ダイラスか、そこもカジノは多いけれどちょっと遠いか。
 けれど、また会えたら宜しくお伝え願うよ」

そうして空腹からか、零すような声には。

「一声かけりゃこの辺りの店開けられるけど。
 ──そういうんじゃァなけりゃ、うちに来るかい。
 前に会った路地の、傍の花街で商売やってて──雇い人の分も込みで、夕食は多めに作ってあるはず」

自宅へ帰るつもりで何の気なしに誘ってみて。

「それが不安なら道中、深夜までやってるカフェーと、バーと、キャバレーなら紹介できる」

指折り数えて他の選択肢も提示し。

ティアフェル > 「あろうがなかろうが、少なくともヒールはそういう呪文じゃない」

 感情を操作する魔法なら別にあるだろうが。そんな呪文を覚えて笑かすよりはなんかネタ作った方が手っ取り早い。
 だからなんなのよ、と云いたげに腕組みして見やり。

「え? 負けても返済しないよ? お金余ってんの? そんなドブに棄てるのと似たような真似しておとーちゃんに叱られない?」

 ビギナーズラックというものもあるらしいが、それにしても博徒は自分ではなく彼の方らしいと理解する。妙な心配をしては、ギャンブルなんかハイブラゼールに行けばいくらでもあるでしょと小首を傾げて。

「王都の方にもちょこちょこいるわよ。
 はいはい、どっかで会ったら伝えておくわ」

 気軽に簡易メッセンジャーを引き受けて首肯し。そして、ぼやくような声を拾って申し出てくれた内容には少し意外そうにぱたりと瞬きをしたが。

「んー…? いいの? 突然お邪魔しちゃって大丈夫?? 手土産もなく悪いわねえ――でもタダ飯にはありつきたい所存。
 果物とかある? フルーツ食べたい。フルーツーぅ」

 ご馳走してもらえるならぜひとも乗っかっていこう。乗るか反るかではやはり乗ってしまう方だから。
 こくこくと首を縦にしながらもちょっと贅沢な問いも加え。
 今は果物も手元にないので、代わりに漂うオレンジの香りを堪能しておく。無駄にくんくん鼻を鳴らして。

「お家ごはんがいーわ。誰かに作ってもらうごはんっておいしいから」

 突撃隣の晩御飯決定。代替え案にはふる、と首を振って、さあさあ早速行きましょう、と促した腹ペコ番長。