2020/10/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 武具屋」にシルニアさんが現れました。
■シルニア > 「...おぉ〜」
ずらりと並ぶ、刃、刃。どれもが違う形で、しかしそのどれもが同じように鋭く光を反射する。
その光を直視すれば、まるで刃を突き立てられているような、そんな感覚に、私は息を飲む。
別に、武器で人や魔物を仕留めたい、なんて願望はないけれど。それでも、武器の造形には美しさを感じる。
別の売り場に並ぶ盾や鎧だってそう。同様に美しい。
武器を知るからこそ、より強固な防具が生まれ、そしてそれを知るからこそ、その弱点を突くより鋭い武器が生まれて、ここまで鍛錬されてきたのだろう──
『ちっちゃな嬢ちゃんよ、ここは観光地なんかじゃねーんだ、冷やかしならよそに行ってくれ』
そんな思考は、私の耳に聞こえた髭面の店主の舌打ちに阻まれて。
...確かに、いかにも魔術師といった格好をしている上に、初めて武器を見るように興味津々で目を輝かせている私は、店主からみたら冷やかしにしか見えないだろう。
店主に突っ込まれた私は苦笑いしながら、小さく会釈を返し。
「あ、えぇと、ごめんなさいです。冷やかしなんかじゃなくて...
私はおつかいで来たのです。ヘイル様から、グレイブのメンテナンス用のオイルとフォチャードの鉤が壊れたそうなので、替えのものを取ってきて欲しいとのことでして。」
店の入口で留まっていた私は、カウンターへと近付き、預かっていたメモと、代金を彼に渡す。
「それから、『とても良い武器をありがとう』との伝言も。
今、彼は怪我につき療養中だそうですが、しっかりメンテナンスはしているみたいですよ。
私は武器に詳しくないですが、私もとっても綺麗で、良い武器だと思うです。」
なんて、私の素人なりの感想を混じえて伝言を伝えれば、店主は赤らめた頬を掻いていた。
髭面の彼に似合わないその動作になんとなく愛嬌を感じつつ、差し出された品を受け取り。
「これで用事は終わりですが、あの、もう少し見ていても良いですか?
丁度、護身用に短剣でも持った方がいいのかな?なんて考えていたのです。」
店主は そういうことなら と頷いたのを見れば、もう少し店に留まることに。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 武具屋」にヴィクトールさんが現れました。
■ヴィクトール > 久しく長い休みをもらったのはちょうどいいタイミングだった。
メインに使っている大剣に手入れは必要ないのだが、サブに持っているショートソードはそうは行かない。
普段からろくな手入れもしていないのもあり、大分刃がなまっているのに気づくのも遅かった。
先日の閉店前に預けておいたので、そろそろ頃合いだろうかと思えば、店の扉をくぐる。
黒い戦装束に黒髪と、黒だらけの中に目立つ金色が髭面の主を捉えるとそちらへと向かっていく。
「よぉ、預けたやつ仕上がってるか?」
店主に問いかけた後、ふと近くに居た小さな影に気づく。
幼子といった雰囲気を感じる背丈に、ローブにウィザードハットと魔女っぽさ満載の格好。
戦士御用達と行った装備品が並ぶ店内とそぐわぬ姿に、訝しげに眉をひそめながらそちらをみやる。
それから改めて周囲を見渡すも、特に連れらしい姿も見えなければ、更に不思議そうな顔をするのだが。
「嬢ちゃん、迷子か?」
クツクツと冗談めかして問いかけながら、視線を合わせるようにしゃがみ込む。
面構えは悪人そのものなので、意地悪く笑うと悪党そのものといった表情になってしまう。
■シルニア > 魔女帽子に包まれた猫耳がぴくん、と動き、私以外の誰かの足音をとらえる。
音の方向に向き直ると、真っ黒で大きな男性。
真っ直ぐにカウンターへ向かう様子を見るに、彼もまた、私への依頼主のように愛用の武器のためにここに来たらしい。
「あの人の武器、おっきいです。あれは、えーっと、くれいもあ、っていうのかな?でも少し細身な気もするです...」
なんて、彼の武器へと興味を持ち、武器売り場の剣から彼の武器に近い形状の物を探してみたり。
売り物の武器を見て、彼の武器を見て。違う売り物の武器をみて、彼の武器を見て比べて──
そんな見比べをしていると、次に彼の武器を見ようとした時に、ぴたり、と彼と目が合ってしまった。
漆黒の衣装と髪に浮かぶような金色の目から刺すような眼光をうけて、少しだけ身が竦む。
「え、えぇっと、じろじろ見ちゃってごめんなさ──...?ま、迷子じゃあないですよっ!?ほら、おつかいなのです!」
彼の背丈が高いこともあり、恐怖心を感じた私は真っ先に謝り。しかし彼から掛けられた言葉は笑いを含んだ冗談めいたもの。
きょとん、と数秒固まったのちに、彼へ依頼の袋を見せつけながら説明してみせる。
「でも、目的は終わったので、ちょっと私が使えそうな武器はないかな、なんて探しているところなのです。」
言葉を続ける。第一印象は怖かったし、今も顔の怖い彼だけれど、視線を私に合わせてくれたし、きっとお話してくれるかも、なんて。
■ヴィクトール > クレイモアにしては刀身が細めなのは、自身にとって扱いやすい形に自然と変化した結果なのだが、店の中の同種と比べても近いものはないだろう。
何より、剣にしては禍々しい魔の気配を鞘に押し込めており、魔に敏ければこぼれ落ちる負の気配に気づくかも知れない。
店長と一言二言交わしてから、研ぎ直した武器を持ってきてもらう合間、少女と視線を合わせていけば、子猫のように小さな体が跳ねて見える。
謝罪の言葉にクツクツと笑いながら、無骨な大きな手をゆっくりと伸ばしていけば、帽子の上から頭を撫でようとした。
それこそ、見た目相応な幼子を可愛がるような手付きで。
「気にすんなって。この面構えじゃ怖がられないほうが稀ってもんだ。そうかぁ、んじゃあ、おつかいできるいい娘は褒めてやらねぇとな」
クツクツと笑いながら頷いていくと、続く言葉に武器かと呟きながら彼女を見やる。
小さいし見た目通りの魔法使いといった様相からすれば、近接武器とは相性が悪そうに見える。
しかし、思案顔で自身の顎を軽く擦るとそうだなとつぶやいてから指差したのは、彼女が手にしていた杖だ。
「その杖、壊れやすいとかじゃないならそいつで殴っちまったほうがいいぜ? 嬢ちゃんとは違うが、似たような事をするやつをよく見てんだ」
一応考えがあっての提案だが、目新しいもの欲しさだったらば少々肩透かしな答えかもしれない。
だが、似たように魔法を使い、似たように小柄で、似たように杖で格闘も熟す存在をよく知っていた。
そちらは格闘というよりは槍術に近いのだが、元は同じもの、応用は聞くだろうと思えばの答えだ。
「それとは別にいざって時の武器がほしいなら、ダガーの一つでも持ってりゃ良さそうだけどな」
大昔に読み聞かされた物語を思い起こせば、白ひげの魔術師もロングソードを携えていたが、この子には難しかろう。
無難ながらも、真面目に答えていくのも素直に問いかけてくる少女が子供っぽく愛らしいからか。
薄っすらと笑いながら、どうだろうかと彼女の反応を確かめていく。
■シルニア > 私に覆いかぶさらんばかりに迫る大きな手に、思わず目を瞑ってしまい。警戒心が現れ帽子の下の猫耳がピン、と立ち、帽子の逆三角形がピン、と膨らんだ。
男のその手が私の頭に乗せられ、撫でられれば、猫耳と帽子はふにゃりと折れて。
心地よさそうに目を細めながら、男の顔を見上げる。
...やはりちょっと怖い。また耳が少しだけ立った。
「んむう、でも生まれつきのお顔でありますから、それに特定の感情を抱かれるのは快くないと思うのです。ごめんなさいです。
それと、あまり子供扱いされると恥ずかしいのです、よぅ...こう見えても14、ですが体が小さいのです...」
続く彼の言葉で、私の警戒と恐怖は完全にとけて。...いや、やっぱり少し怖いかも。
頭を撫でられるのは心地よいけれど、次第に恥ずかしくなってきて。申し訳なさそうに口にしながら、小さな両手を伸ばし、男の手を掴む。固くて大きい。
「杖、ですか。振れないことは無いですし、今までもそのように使ったことはあるですが、身体強化魔法でも使っていないと素早く振れないのです。
どちらかというと、護身用の、咄嗟に使える武器を探してるのです。
こーゆー武器はなんて言うんでしたっけ。」
なんて言いながら、水色の魔法陣を手元に展開。陣が光れば、そこには氷で出来た短剣があらわれて。
「あ、そーですっ!だがー、です。ダガーの中でもどういうものが良い、とかあるのでしょうか?」
小走りに短剣売り場に駆ける。そもそもダガーがどれだか分からないけれど、男へ振り返り、首を傾げて見せて。
■ヴィクトール > 帽子の上から感じる僅かな反応は覚えがあるもので、意外そうに眉が跳ねる。
しかし、撫でれば子供っぽく表情を緩めるわ、此方を見て耳が警戒を示すわと見た目通りの幼い子猫のような仕草に思わずクツクツと押し殺した笑い声がこぼれてしまう。
「戦仕事には丁度いいんだけどな、嬢ちゃんみたいに可愛い子には怖がられるわけだ」
彼女と同じぐらいか、それとも少し上か下か。
だいたいそのぐらいの年頃の少女と出会った時の事が、脳内に蘇る。
泥棒と間違われたり、悪党と言われたり、散々なものだと思えば口角を上げつつ、少し怖がる子猫の姿にも愛らしさを覚えるもの。
怖くないと諭すように撫で続けようとするが、恥じらいと共に年齢を告げつつ小さな手が迫る。
捕まえた手は少女と異なり、固くなった皮が張り巡らされ、浮き出た血管のラインに混じって傷跡が薄っすらと膨れて名残を伝える。
指一つですら太く、節がはっきりとした掌は、まさしく戦人の掌というにはふさわしかろう。
そんな手ともなれば、幼子の抵抗に抑え込まれるようなものではないが、悪戯に耳元を擽るように指を滑らせてから、代わりに頬に触れていき、緩やかにさすっていった。
「14か、でもいいと思うぜ? ちっこくて幼い感じってのは女の子らしくて可愛いもんだ」
庇護欲を掻き立てる可愛らしさに、目を細めていった。
先程にも見せた淡い油断がまた愛らしくもあり、意地悪したくなるところでもある。
にぃっと口角を上げながら意地悪さも交えつつ答えると、頬を緩く擦った掌を静かに引っ込めていく。
あんまり幼子扱いしすぎて機嫌を損ねるのもよくなかろうと。
「振るっつぅか、俺が見たのは突くが多かったが……デカイし頭の部分重そうだな」
自分からすれば軽々と行けそうだが、先端の大きい部分を見れば振り回すにはコツがいりそうだと納得する。
小さく頷いた後、お目当ての武器の名前に行き当たったらしい。
氷のダガーがモデルに見せられた後、小走りに向かう様子にやっぱお子様だと思いながら楽しげに苦笑いをこぼす。
振り返った彼女へと歩み寄れば、並んだダガーを見渡しつついくつか手にとって確かめると、最後に選んだのは、片刃の一振りだ。
少々肉厚の刀身は短めで心許なく見えるかも知れないが、峰の方を掴むようにして彼女に柄の部分を差し出す。
「作業兼用っぽい奴だが、両刃じゃない分使いやすい。刀身も太めで折れにくいってのもあるが、重心が手前寄りでコントロールもいい」
他のダガーと比べて見れば分かることだが、自身が選んだ品は重心が柄に近い。
それだけ降った時に遠心力で刃が流されづらく、操作性に長けた扱いやすいものだ。
片刃なのも、いざという時に剣を受け止めるなら峰に掌を添えて刃と鍔の合間で受け止めるのが一番力を抑えやすいのだ。
こうやって受けもできると、峰に手を添える構えも合わせて教えていく。
■シルニア > 「むぅ、かわいい、のでしょうか...
少なくとも子供扱いされて困ることの方が多い気がするです...」
なんて、私の悩みをポジティブに言う彼に頬を膨らませる。お世辞でも可愛いなんて言われれば、頬を朱に染めて、しばらく男には目線を合わせられなくなり。
と、まあ、私の話はおいといて。男がひと振りのダガーを手に取れば、私はそれを興味深そうに見つめる。
だけれど、直ぐにそれを売り場に戻してしまった。私にはあわないと判断したのかな。どういう所を見ているのだろう。
最後に彼が手に取ったダガーを差し出され、それを恐る恐る握ってみると。
「小さいけど、意外と重いのですね。
」
何度も握り直してみる。
男の説明通り、重心のお陰で掌に吸い付くようで持ちやすい。振るう時、突く時に繊細な動きが出来そう、なんて実際の動きをイメージして。
刀身が太い分、重量があるのかも知れないが、しっかり握れているので大丈夫そう。
「でも、両刃のほうが扱いやすいんじゃないですか?」
なんて疑問は、続く男の説明で解決。峰に手を添える構えを男に手に取られて作れば
「ほへぇ〜...すっごいです。このダガー、気に入ったのでこれにするです!
同じ武器、なのに切れ味、重さ、刀身の長さ、それだけじゃなくて、重心、刃向き...色んな違いがあるのです...!
じゃあ、兄さんが持っているその剣もそういうこだわりがあるのですっ?」
少々間抜けな感嘆の声をあげて。
続けてわく好奇心を隠そうともせず、目を輝かせながら質問を重ねる。
■ヴィクトール > 「ちっこい特権だ、子供っぽくて可愛いってのも可愛いのに含まれっからよ?」
思わず撫でたくなる、可愛がりたくなる愛らしさとはそういうものでもある。
恥じらいの紅がかかる頬と、視線が重ならぬ初心な仕草にクツクツと相変わらずの悪い微笑みを零す。
彼女の可愛らしさを楽しんだ後、ご希望の刃を求めて短剣を握っていく。
両刃のがっしりしたもの、長めのもの、刃にノコギリ状の部分をこしらえたものなど、いくつか手に取るが、最後に選んだのはシンプルな一振り。
彼女に握らせてみれば、思った通りのハンドリングもあり、グリップも少し細めだったのもあり、小さな手に吸い付いてくれたようだ。
「両刃は慣れないと手ぇ切っちまうし、受けにコツが居る。嬢ちゃんみたいにちっこい娘はこういうタイプの方がいい」
問の答えも受けの構えと共に、両刃より片刃を推す理由として伝えていく。
お気に召した様子に良かったと微笑みながら、小さく頷いていたが、話題が背中の相棒に向かうと少しだけ表情が変わる。
薄っすらとした笑みの中に、ほんの少し真面目さが交じる、引き締まりのある顔といえばよいだろうか。
そうだなと呟きつつ相棒を引き抜けば、漆黒の闇を切り出した様な刀身が顕になる。
こぼれ落ちる闇の気配と共に、黒光りする剣脊には彼女の顔が映り込む。
「こいつは俺の一部みてぇなもんさ、俺の魔力と血を吸って……ただの剣が魔剣に変わった曰く付きだな。おかげで好きな形状に変わったりするぜ?」
真っ黒い魔力のモヤが剣を包めば、それが消えるまでの一瞬の合間にクレイモアは槍へと変わる。
同じ様にモヤに包めば、今度は戦斧にも変化する様は手品のようにもみえるだろうか。
そんな変化を見せて、再びクレイモアの姿に戻すと、感想を求めるようにぽんぽんと軽く頭を撫でていく。
■シルニア > 「はいっ、コレ、気に入ったので買うことにするです。
わ、剣、見せてくれるんですね...!」
私が疑問を呈した、男の剣を見せてくれると分かれば引き抜かれる剣を注視して。
真っ黒な剣は、ここに飾ってあるどの剣とも違う光を放ち。それは剣が私の事を見詰めているような錯覚を覚えてしまうもの。
いや、錯覚なのだろうか。本当に見られている気がする。彼が剣を抜いたことで、薄々気付いていた剣の魔力が流れ出た為、だろうか。
私の好奇心は、少しの恐怖に変わりつつもあり。しかし、魔力を帯びた魔剣にむけた別の興味も沸き上がる。
「お兄さんの魔力...と、血?
形状まで変わるのですか...生きているみたい、ですね。これほどの速度で硬い剣が形を変える、まさに魔剣なのです.. 」
生きているみたい、と口をついて出た言葉。それがしっくり来るのかもしれない。睨まれたような感覚も然り。
息を飲み、彼に感想を伝えれば、また頭に硬い手の感触。魔剣の魔力にあてられ少し緊張していた私は、彼の手に緊張を解されて、はふ、とため息を着く。
■シルニア > 【中断致します。】
ご案内:「王都マグメール 平民地区 武具屋」からシルニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 武具屋」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシルニアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴィクトールさんが現れました。
■ヴィクトール > 魔の宿る剣は引き抜かれて目をさますように、彼女を捉える。
漆黒の闇色の気配がこぼれていき、それは魔素となって空気に溶けていく。
寝物語にでてくるような勇者や救世主が手にするような、綺麗な気配の剣ではなく、それこそ魔族の王が握るような禍々しさすらある。
「あぁ、父方に魔族の血があるみたいでな。俺はクォーターなんだとさ。だろう? 生きてるってのは間違っちゃいないかもな、こいつには意思があるからな」
ここで魔物としての姿を顕にしたら、流石に店主にも彼女にも驚かれそうなので変えはしないが。
それに、小さな少女に魔族の女を言葉通りに食い殺したという過去も、伝えるには気が引ける。
再度背中の鞘に収めていくと、剣の気配に当てられた彼女の頭を優しく撫でていくと、するりと掌を肩の辺りへと滑らせた。
そのまま先程の様にしゃがんでいくと、緊張から溶けていく彼女と視線を重ねていく。
「こいつが気になるなら、好きなだけみせてやりてぇけど、こんなところで立ち話もな? その剣のお代も俺が持つから、ちょいとデートに付き合ってくれよ」
剣の本性も、人ならざる姿を見せるにしてもここは場所が悪い。
それにひと目があるこんなところで立ち話をするよりも、ゆっくり落ち着けるところで駄弁りたいところだ。
内心としては、お子様扱いを嫌がる少女を違う意味で可愛がりたいというのもあるが、それは流れ次第か。
言葉が意味する事ぐらい分かるだろうと思いつつ、お誘いを掛けながらどうだろうかと問いかけるように、ニンマリと笑ってみせた。
■シルニア > 「魔族、ですか...。」
まじまじと男の顔を覗き込むけれど、ちょっと怖い以外は普通の人間に見える。
そもそも、魔族というのを見たことは無いのだけれど。
魔族はこの国では敵とされている。興味はあるが、それについて詳しく聞くのはやめておくことに。
「あいや、お代はいいのです、自分で払──で、でーとっ!?」
自身の装備は自分の力で確保しておきたい。武器選びを手伝って貰ったのだから尚更のこと。両手をヒラヒラと振って否定を示す。
続く、予想だにしない言葉に私はみるみる顔を赤くして。
「た、たしかにお兄さんのこともっと知りたいですがっ、でもデートってもっとお互いの事をよく知ってからするものですしまだ出会ったばかりですしそれにお兄さんの名前も知らないですっ!」
なんて早口に告げる姿は誰がどう見ても初心であろう。実際そうなのだけれど。
「それに、私、まだ子供ですし...」
つい先刻の『子供扱いしないで』とは真逆の言葉を言い訳に。
──デート、ってことは その先 も有り得るってことですよね!?
男の思惑を知ってか知らずか、想像、いや妄想まで繰り広げてしまい、合わせられた視線を逸らしてしまいながら、更に頬を朱に染めてしまう。
■ヴィクトール > 「あぁ、腹違いの兄貴に会うまで知らなくてよ。知ったところで何も変わらんかったけどな」
顔立ちこそ悪人のような少し彫りの深い顔立ちといったところ以外、人間と大差ない。
魔族らしい特徴という特徴も表立って出ていないのもあり、外見だけでは判断もつかないだろう。
奢りの言葉はお断りされてしまい、残念と軽く肩をすくめたのだが、続く言葉にはあっという間に赤面している。
捲し立てるような言葉の羅列に、少々ぽかんとしたが、沸き立つようにクツクツと笑いながらも、嗜虐心が余計煽られるというもの。
子供だから、そう告げる彼女に対して、躊躇いもコンプレックスも気にせずに遠慮なく両手を伸ばす。
細身の体を無遠慮に抱き寄せていき、自身の胸板へと体を重ねさせる。
片手は背中をしっかりと抱きとめながら、もう片手は後頭部の方へと回していき、白く広がる長髪へ絡めるようにしてうなじの辺りを撫で上げた。
「ヴィクトールだ、これで名前は教えたな? それにそんなに初心な反応されちまったら、余計可愛がりたくなるってのが男心だ。俺も答えたんだから、男心擽るちっこくて可愛いお嬢ちゃんの名前を教えてくれ」
意地悪くにっと口角を上げながら微笑むと、髪撫でていた掌で首筋を擽るように撫でて頬へ回していく。
緩く擦る掌は彼女のように心地よい感触はなく、ザラつきすら覚えそうな無骨なもの。
その手が緩く静かに頬をなでながら顎のラインへと滑り、人差し指を引っ掛けるようにして上向きに傾けさせようとする。
■シルニア > 「へ?え?え?わ、わわわっ!?」
私の事を抱き寄せる男──ヴィクトールのその一連の動作には抵抗しない。
抵抗しないというより、唖然としていて動けなかったのだけれど。
うなじを撫でる硬い手に、そして抱き寄せられて密着することでより際立つ体格差に、心拍も上がってしまう。
そしてより近付いたヴィクトールの顔は、相変わらず真っ直ぐこちらを向いており。肉食動物のようなその視線をゼロ距離で浴びせられると、まるで──
「──食べられちゃうです...」
なんて幼稚な感想が口をついてでてしまい。
性的に食べられるかも、という観点ではあながち間違いでないかもしれないが。
「ヴィクトール、さん...シルニア、です...!」
ちら、とヴィクトールへと視線を返すが、直ぐに耐えられなくなり目を逸らして。
恥ずかしいし、怖いし、顔が熱いし、目が回りそう。
そんな感情の嵐から逃れたい思いでヴィクトールの背中に腕を回すが、彼には別の意図にとらえられてしまうかも分からない。
■ヴィクトール > 抱き寄せると、控えめな胸元から鼓動の加速が伝わり、慌てふためく様子も間近に映る。
金色の瞳の奥に隠しておきたかった欲望の色は、どうやら隠しきれなかったらしく、食べられそうという幼い言葉がより欲を煽ってくる。
クツクツと笑いながら食べられそうという言葉を受け止めるが、答えはかえさない。
気づいているんだから、敢えて言うまでもなかろうと思いながら、名前を確かめる。
視線をそらした瞬間、ぐっと指にかけた力を少しだけ強めて此方にはっきりと傾けたところで唇を奪ってしまう。
奇しくも背中に掌が回った瞬間に重ねてしまったので、抱きしめ合いながらのキスとなっていく。
乾いた唇に重なる小さな感触を楽しみながら、ただ数秒重ねるだけの口吻でも、幼い彼女にはどれだけの衝撃を与えることやら。
「……シルニアか、わりぃな、そこまで初心い反応されちまうと我慢きかねぇな。行こうぜ、ちゃんと女として可愛がるからよ」
今更お預けなど出来ようもなく、唇が離れれば最早問答無用といった本音を耳元へ囁いた。
ひょいっと体を抱きかかえて立ち上がると、筋骨隆々の腕が矮躯を軽々と抱えあげ、横抱きにしたまま店主の方へと向かう。
研ぎ直しの終わった剣と入れ替わりに、彼女のダガー分のお値段を加えたお駄賃を支払うと、上機嫌に店から連れ出してしまう。
彼女が支払うと行っていたが、財布を出させる時間も惜しいぐらいに欲を唆られていた。
近くの宿屋までそのまま連れ去ってしまうと、一番上等な部屋を借り、器用にドアを開いて部屋の中へ。
小綺麗に整った室内の奥、ベッドの上へぽすっと小さな体を下ろせば、その隣へと腰を下ろしていった。
■シルニア > 「...っ!?!?」
突如、重ねられた唇に目を見開く。驚きのあまり、背中に回している手に力が入り、私から唇を押し付けるような事となってしまうが、気付いていなくて。
重ねられた彼の唇は乾いていてしかし僅かに柔らかい。
見かけによらず優しい彼のようだな、なんて考えてしまったのは、現実逃避か。
数秒、唇を重ねただけ、だけれど、長く長く感じたキス。私から離れていく彼の顔を、ただ呆然と見詰めていて。
「う、うぅ...お手柔らかに、するです...」
もうどうにでもなれ、と、私の事を抱きかかえる彼の胸に顔をぐりぐりと押し付け埋めて。
それからは宿へと運ばれる間も、ずっと顔を押し付け、周りの景色も、彼の顔も何も見ない。頭の中を空っぽにして、ダガーの料金を自分で払う、なんて言ったこともすっかり忘れてしまう。
「きゃっ!...はぇ?ここは...お宿?ってことは...
はわわ、デートのまえに、もうシちゃうんですっ!?」
ふかふかのベッドにぽふ、と下ろされれば、その衝撃で魔女帽子が脱げ落ち、帽子に隠れていた猫耳が顕になる。
漸く私は宿に連れ込まれたのだと理解して。
男女が2人が同じ部屋で、ベッドの上で──する事なんて、ひとつしかない。
ごくり、と喉のなる音が静かな部屋に響いた。
■ヴィクトール > 彼女からも押し付けるようになっていく唇に、こちらも答えるようにぐっと重ね直していく。
数秒の口吻の後に見える呆け顔をまじまじと眺めると、お手柔らかにという言葉にクツクツと笑いながら、努力するとだけ答えた。
あっという間に宿屋まで連れ込んだわけだが、どうやらここまで瞳を閉ざしきっていたらしい。
気づいたら……といった様子に、ある意味自分が手出しして良かったとも思う。
女が食い物にされる国で、こうも無防備なのは自殺行為に等しい。
小さく喉を鳴らす彼女の頭に見える耳、やはりかと馴染みある姿に納得しながら、頭をなでながら耳をくしゃりと弄ぶ。
「剣見せるっていったろ? でもまぁ、そんだけ無防備に可愛いもんだと、手も早くなるもんだ」
本当に嫌なら泣き叫ぶなり、突き飛ばすなり出来るはずだ。
喉を鳴らしながらもおとなしく座る姿から、心の内側にある淡い願望が見え隠れするようにも思える。
故に、脇に手を差し込んでひょいっと抱えあげると、膝の上に座らせていく。
肩越しに覗き込むようにして顔を近づけると、片手が彼女の顔を横へと傾かせる。
そのまま無遠慮に唇を重ねるが、先程までとは違う、交わりの口吻が始まった。
啄むように幾度も重ね合わせ、ちゅぐっと吸い付く音を響かせながら唇の隙間を狙う。
わずかにでも開けば、小さな舌を絡め取ろうと舌を捩じ込もうとする深い重なり合い。
その合間、反対の手も無遠慮に小さな胸元へと重なる。
ローブ越しに未発達な房へと触っていけば、淡い柔らかさを揉みほぐす様に指を沈め、中指が先端を探っていく。
見つければ、後はコリコリとそれを時計回りに、反対へと捏ね回してがっつくように彼女を貪りだす。
目の前にいるのは、子供ではなく、幼い牝であると示すように。