2020/07/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシチューさんが現れました。
シチュー > 平民地区の裏路地を早駆けの靴音が響く。
たたたたたっ、素早いが余裕のない足音の中には息遣いの荒さも聞こえてくる。

「ねえー!なんで僕のこと捕まえようとするの!?
人違い!絶対なにかの人違いー!
僕何も悪いことしてないからー!市場でお買い物してただけー!
ほんとだって、信じてー!信じて―!」

足音の主が振り返りながら声を張り上げる。
追っ手はふたり。どちらもれっきとしたこの街の衛兵だ。
ご主人さまのお夕飯の買い物をしていたら半ば因縁に近い形でよくわからない罪を咎められ、捕まりそうになったところを逃走中だ。

王国の現在、魔導機械の開発にミレー族の魔力に利用価値が見いだされ、それが一部の衛兵たちによって密かに収集されている事情も知らず。
ミレー族のメイド奴隷は路地から路地へ、隠れ場所や助け手を求めて駆け抜けている。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にチマキアさんが現れました。
チマキア > 自然地帯を暫く歩き回り、ついでに貰った仕事の帰り道、男がふらふらと歩いている。
男は前を見る事無く、歩いている自分の足元を見ながら投げて寄越された硬貨を手に
その表面を静かに何度も擦りながら、当ても無く路地から路地を歩いていた。

「………」

男はその挙動から察するに目的など全く無いまま、道があるからと決してしっかりとは
していない足取りで、時折地面を蹴り、周りで聞こえる喧騒など全く気にしない。
ただ、平民地区ではそういう声も珍しいと思い、一瞬だけ顔を上げたが
それでもすぐに自分に関係する事ではないと感じると、また下を向きながら
時折立ち止まったりしてふらふらしていた。

シチュー > 足には自信があった。
直線でのかけっこなら難なく逃げおおせたはず。
けれど追っ手の土地勘と焦りから来るブーツの滑りで差は思ったより広がってくれない。それに、人数で言えばこちらはひとり。
そして向こうは今のところ2人であっても、王都の衛兵は総勢で何人居るのかを考えたら、そのうち追っ手が二倍乗算で増えていく可能性もあった。

不利を悟りながら必死に周囲を見回す。
と、路地裏に佇む人影を見つけて藁にもすがる思い。
煙管の先の煙のような気だるさとつかみどころのない空気を背負う相手は、少なくとも衛兵の仲間ではなさそうで。

「……ねえっ!ねえねえお兄さん!
僕のことかくまってほしいの!何も悪いことしてないのに追われてるの!助けて!
衛兵さんが来ても知らないって言って、お願い!」

彼の衣服の裾を両手できゅぅと握ろうとしながら、眉尻下げた切羽詰まる表情でそう求め。
相手の背中と路地裏の壁の隙間に潜り込もうと。

まもなく近づいてくる、衛兵らしき人物たちの足音。

チマキア > 「……………………」

硬貨を手に棒立ちしていると、声が聞こえる。しかも自分に言っているのではないかという声が
羽織っているマントを掴まれる感覚を感じると、慌てている少女とは対照的にゆっ……くりと顔を上げる。
…上げても誰もいないので再び下を向くと少女がいた。

「………ん?」

説明をしたというのに、今少女の存在を認識したという態度であった。
少女が背中に回ろうとした。自分の背中を壁の間である。男は遮る事も無く素直に背中を明け渡し
潜り込んだのであれば、また暫く固まっていた後ゆっくりと後ろに下がると壁と自分の背中で
少女を挟み込んだ。もぎゅっと軽く潰されるぐらいの圧力で挟み込む男。
男は別に何をと分かっている訳ではない。

「……」

ただ何も考えずに押しつぶしている

シチュー > 「ふぎゅ……ぅ……!」

言葉使いが拙かっただろうか。
彼の背中に隠れてから少し不安になって再び説明しようかと開いた口が広い背中に押しつぶされて苦しそうに呻く。

間もなく、曲がり角からかけつけた衛兵2名は急に消えたミレー族の姿を探して視線を彷徨わせ。
相手を指差してから顔を見合わせ。ついで、不躾で高圧的な態度でにじり寄ってくる。
『おい、ここにミレー族が来ていただろ。どこに行ったか教えてくれ」
と硬貨を手にする彼へ語尾を上げ。

チマキア > 少女の時とは違い、男は衛兵に対して目線も合わせない。ただ頼りなく見えるように硬貨を弄っている

「……」

男は暫く黙っている。何を言うにもワンテンポ返事が遅い男は、目線を合わせず下も向いたまま
硬貨をただ弄っていた。にじり寄ってくる相手にも全く態度を変える事は無く
思い出すような素振りで硬貨を指でこすっている。
そしてココにきてようやく状況を解したのか、暫く黙った後

「……いない、こっちの路地では見なかった」

そう一言だけ偉く小さい声で呟いた

シチュー > 衛兵たちは彼の無機質な態度に訝しげにするが、その返事に肩をすくめると息を吐いた。
『そうかい。どうも』
片方がそれだけを告げると何事かを相談するように言葉を交わしつつ。元来た道を歩いていく。
そんな気配も完全に去る頃におそるおそる、彼の背中から顔を出して。

「ふー……!助かったー……。
……ありがとね、お兄さん!
お兄さんのおかげで捕まらなくて済んだよー!」

おでこを額で拭いながら、ようやく寛いだように長い黒しっぽを地面に垂らし。ケモミミをふるふる震わせる。
笑顔でお礼を告げると、一度彼の膝に抱きついて感謝の意を現して。

チマキア > 去っていく相手とも全く目を合わせる事も無く、暫く下を向いていると
膝に一瞬抱き着かれる感覚を感じる。男は数回瞬きをして少女の顔を見ていたが
その後、一人で勝手に納得するように顔を上げ

「………そうか、匿っていた」
何と暫く棒立ちをしている間に少女を匿った事を忘れ、感謝の意味が一瞬分からなかった。
そうかそうか、そういえばそうだったと勝手に納得しながらミレーの耳を見つつ頷いている。

少女が男の身体に触れると、はだけるマントからは白金の探検が8本腰に携えられているのが
見えるかもしれない。

シチュー > 「そうだよ!お兄さんが僕のこと救ってくれたの!
お兄さんはー恩人!僕の恩人!」

状況を再確認した様子の相手に向かって満面の笑顔を手向け。
ぴこぴことケモミミ揺らしながらもう一度繰り返し念押し。

「あれ?
……わー……!すごい、キラキラしてる……!
お兄さんって冒険者なの?それとも魔物ハンター?」

はだけたマントの隙間から、王都の武器屋さんでもあまりお目にかかれない武装を見つけて興奮気味な声音。
その輝きと相手の顔とを何度も視線を往復させながら尋ね。

チマキア > 「…たまに路銀を稼ぐ時に…働くだけで…特にアテも無く歩いてる。」
「魔物ハンター……そういう職業があるなら、私はハントされる側だな…そうなると……」

職業らしい職業にはもう就いていない。昔は魔族の国である程度の地位にはいたが
この見た目からは想像も出来ないだろうが、これでもいわゆる隠居生活というのを
過ごしている所だった。

自分の周りをチョロチョロと回る姿を追いきれない目線で追っている。
お兄さんとは呼んでくれるが、雰囲気としては晩年の老人そのものである。

シチュー > 「そっかー、お散歩が好きなんだね。
――えー?どうしてさ?……ってことはお兄さんは実は魔物!だったりして!あは!」

勝手に相手の言葉を解釈するとふむふむと大きな身振りで頷いてみせ。ハントされてしまうほうだと考えるにしては、目の前の相手からは凶々しさが感じられなかった。
相手の持つ師範レベルをはるかに超える体術にも気づかず、冗談を言われたのだと笑いかける。

「ねえねえ。僕にお礼させてよ。
この先にとっても美味しいケーキ屋さんがあるんだー。
お兄さんに甘いもの、ごちそうするよ!」

ゆったりとした視線で自分の姿を追う相手にくすくす肩を揺らして笑う。再び衣服の裾を掴みながら、空いてる片手で路地裏の奥を指差して。お礼に甘味を、と誘いかけるのだった。

相手が頷くのなら、嬉々として彼の手を引いていき。
首を振るのなら、この場でいったん別れようと。
どちらにしても別れ際には、「またね、お兄さん!」と声音を弾ませるものと――。

チマキア > 「………………………」

冗談だと思い笑う少女に対して、暫くの反応を示さないまま無言でいるかと思うと
少女に対してあざらしのような柔らかい笑顔を向けた。恐らく余計【そう】だとは思われないだろう。

その後に聞こえた言葉は意外だった。甘味物、もうどれぐらい前に食べたのだろうか
検討もつかない。しかしコレから何があるのかと聞かれたら、どうせ自然地帯に戻って
廃墟で一人佇んでいるだけである。いつも通りに過ごす時間ならそれこそ無尽蔵にある。
男は傾げた首が戻らないまま、手を引かれるのであればそのまま相伴に預かる事にした。

去っていく時まで、この年老いた様子が変わる事は無かったが
掌を見せて、相手を見送るのはそれこそ久々の事になる夜だったという。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からチマキアさんが去りました。