2020/06/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカーリーンさんが現れました。
カーリーン > 院長先生に頼まれて、来客用の紅茶を購入した帰り道。
平民の小娘が携えるには少しばかり目立つだろう、某有名店の店名入り紙袋を抱え、
やや急ぎ足で帰路につこうとしていたのだが、ふと足が止まった。

どこそこの店の安売りだとか、珍しい異国料理の屋台が出るとか、
そんな平和な告知の類から、公開処刑などという物騒なお知らせまで、
様々な張り紙が微風に揺れる掲示板の前、視線が向かうのは求人広告。

「未経験歓迎、未成年歓迎、お仕事は簡単、ただし住み込みに限、る?」

広告の文章をそっと小声で読み上げて、思案顔で首を傾げる。
願ってもない好条件のようにも見えるが、だからこそ不安にもなろうというもの。
肝心のお仕事内容が書かれていないのが、何よりも胡散臭かった。

「……でも、いつまでも孤児院に居座るのもね」

シスターとして残らせて欲しいと言えば、院長は受け容れてくれるだろう。
けれど、やはり、独り立ちした方が恩返しになるのは明らかだった。
今すぐという話ではないにせよ、だ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > 「その依頼に、興味あるの?」

突如、少女の背後から声がかかる。
振り返れば、明るい茶色の髪の女。
見た目から受ける印象は少し年上と言った所だろうか。

「それ、うちの屋敷の依頼なのだけど。
良かったら一度見に来る?」

女は一人。
表情は穏やかで、どちらかと言うと明るい。

但し、街の情報に詳しい人間ならば、彼女こそが依頼を出している屋敷の主と分かるだろうか。

カーリーン > 背後から掛かった声が、もしも男性のものであったなら。
まるく目を見開いて振り返った先、佇む人物がいかにもコワモテの男性であったなら。
多分、少女は脱兎のごとく逃げ出していたに相違ない。
――――その程度には、世間の怖さというものを知っていたからだ。

けれども、声は女性のもので、振り返ってみれば相手は若い女性で。
恐らくまだ、少女、と言っても通りそうな年頃にも見える、
――――つまり、警戒心を煽るような相手ではなかった。
びっくり顔は一瞬で、人懐こい笑顔にとってかわることになり。

「え、……あ、うん、ちょっと、良いかなあ、って思ったけど。
 これ、あなたの、……え、え、今から?」

うちの屋敷、という言葉が、頭に馴染むまでしばしの間。
つまり、相手は少なくとも、お金持ちのお嬢様、あるいは貴族だろう。
そこまで思い至るや、うっかり敬語を忘れていたことにも気づいて、
もごもごと口ごもってから。

「あ、の、……えっと、確かに、良いなあ、って思ったのは本当、なんです、ケド。
 その、……あの、あたし、……資格、とか、技術、とか、
 本当に、全然、なんにも……なくて、ですね」

それでも良いんでしょうか、と、おずおず相手の顔を窺い見る。
語尾だけは辛うじて丁寧になったものの、言葉遣いすらぎこちなく。

ネメシス > 少女がネメシスを見定めると同時に、ネメシスもまた少女の事を
観察していた。

まだ子供と言っても通用しそうな身体、細すぎる手足、
そして性格の良さを感じさせる笑顔。

育ちの程を一瞬で確認し、接し方を考える。
どうやらこちらを恐れていることは確かなようだ。

「そんなに気を遣わなくていいのよ。
うちは堅苦しい挨拶も言葉遣いも不要だから。」

こちらを貴族と推察し、言葉遣いを改める少女に対し、にこやかな笑みを浮かべる。
ここまでは全て本当の事を述べている。

「そらそうよね、貴女若そうだし。
でも、だからこそうちで色々覚えて行ったらどうかしら。
報酬は規定通り支払うし、衣食住もきちんと提供するわよ。
契約期間も、好きなだけ延長してくれて構わないし。」

どう? と首を傾げる女。
少女からすれば破格の内容だろう。
それだけに警戒心が働いてしまうかもしれないが。

カーリーン > 「え、…えぇ、と、はい、……うん」

堅苦しい礼儀作法を求められても、勿論応えられやしない。
しかしそれはそれとして、向ける笑顔が強張り気味になってしまうのも、
言葉遣いがたどたどしいままなのも、なかなか改められるものでもなく。
携えていた紅茶の袋を、無意識にぎゅう、と胸元へ抱え込みながら。

「……じゅ、13、です、えと、多分。
 あの、つまり、あたし、孤児なの、で……え、と」

血筋はおろか正確な年齢すら分からない、つまりは限りなく底辺に近い育ちの身。
彼女の口にする条件は、正しく破格と呼ぶに相応しく、
きっとこの先、こんな幸運に恵まれることはないだろう、と思えるほど。
こんな小娘に提示されるものとしては破格が過ぎて、警戒心も沸き起こったが―――
逡巡するように俯いたのは、ほんの数秒といったところで。
すぐに顔を上げると、ぴょこん、と金髪を揺らして頭を下げ、

「じゃ、っじゃあ、よろしく、お願いしま、す。
 あたしに、出来るかどうか分かりません、けど、
 ……け、見学、だけでも、させてください」

好条件の魅力に、結局は負けた。
目の前のお嬢さんが、怖い人には見えなかった、というのもあるけれど。

ネメシス > 「じゃあ、その紅茶は院に持って帰るのかしら?
後でお土産も持たせてあげるわね。
そうだ、帰る時は院まで送ってあげるわ。」

孤児院出身と聞き、色々と想像を膨らませる。
後で孤児院のことも調べておくことにしようと。
院の経営者によっては進んで娘を差し出してくることもあり得るかもしれないから。

ネメシスは少女の返答を黙って待ち続け。

「では、うちに行きましょうか。
最終的な判断は貴女に委ねるわ。」

少女の手を取り、二人で富裕地区へと向かう。

富裕地区内にある大きな屋敷がネメシスの住む家である。
柄の悪い騎士団員や、女性団員も存在する大きな屋敷。
ネメシスと少女はまっすぐ屋敷の中の一室へと進んで。

「とりあえず、仕事内容を説明していくわね。
お茶でも飲む?」

通された部屋は来客対応用の部屋の一つであった。
広めの部屋に、テーブルやベッド。

ネメシスと少女は厚手のソファに二人並んで座っている。
使用人の一人が二人の前によく冷えたアップルジュースが入ったグラスを差し出す。

ジュース自体は不思議な点はないが、部屋中に香が炊かれていた。
女性の性的な興奮を促進させる、媚薬めいた香。

「まず、私がこの屋敷の主のネメシス・フォン・マクスウェル。
気軽にネメシスって呼んでね。
貴女の名前は?」

ネメシスはついに自らの名を明かすと、少女の名を尋ねる。

カーリーン > 大事な高級紅茶の袋を、思い切り抱き潰しかけていた。
彼女の指摘で初めて気づき、あわあわと腕の力を緩めて持ち直しつつ、

「あ、はい、うん、そう、です……、
 ――――え、いえっ、お土産、なんて、……え、えっ、」

お土産をくれるだの、送ってくれるだの、ますますもって厚待遇だ。
そんな扱いを受けた記憶などない少女は、いっそうあたふたと。
相手の思惑など知る由もなく、取られた手を遠慮がちに握り返して、
連れられるままに街を――――街を、自分一人では来たこともない界隈へ。

ぽかん、と口を開け、きょろきょろと辺りを見回しては、
すごいお屋敷ばっかり、と溜め息すら吐きながら。
辿り着いたのも、やはり立派なお屋敷で――――ただ、ほんの少しだけ。
擦れ違う人たちの中に、それこそ逃げた方が良さそうなコワモテがちらほら、
いったいどんな場所へ連れて来られてしまったのか、繋いだ掌がじわりと汗ばむ。

ともあれ、促されるままにその部屋のソファに座り、
かちんこちんに固まった少女の手が、美味しそうなジュースのグラスに伸びることはなく。
室内に漂う嗅ぎ慣れない香りを、不審に思ったりはしない。
さすが、お嬢様のお部屋には良い香りがしているんだなぁ、と、その程度の認識で。

「――――え、……え、ある、主ぃ、っ!?」

思わず、彼女の顔を無作法に指さしてしまった。
すぐにマズイと気づいて手を下ろし、膝の上にピタと揃えたが。

「あ、っ、あのっ、―――――あたし、あたしは、えと、
 カーリーン…カーリーン・サンジャック、です、っ。
 家は、あの、……貧民地区の、孤児院、で」

答える声は、滑稽なくらい上擦っていた。
おどおどと泳ぎがちな視線が、やや上目に彼女を見遣り、

「あの、……ね、ネメシス、さん?
 あたし、……あたし、ここで、あの」

こんな立派なお屋敷で、いったい、どんな仕事が出来ると言うんでしょう。
――――そう問いたかったが、声が詰まる。
心臓がバクバク乱れ打ち始めているのも、緊張のせい、だと思っていたけれど、果たして。

ネメシス > 「怖かったでしょう?
うちはこう見えて騎士団なのよ。
だからああいう強面がたくさんいるんだけど。
ちゃんと女の子もたくさんいるから大丈夫よ。
貴女に手を挙げる人も居ないと思うわ。」

屋敷に入った時から手が汗ばんでいた。
それに気づいたネメシスは、部屋に入る迄手の甲をもう片方の手で優しく撫でて。

「そう、私がこの屋敷の主なの。
驚かせちゃったかしら?」

少女の反応が非常に面白く、口元に笑みが浮かぶ。
緊張で固まったままの少女とは対照的に、ジュースを飲んだりと気儘に過ごしている。
当然、指を差されても顔色を変えることもなく。

「自己紹介ありがとう、カーリーンさん。」

カーリーンに笑みを向けたまま、チラリと使用人に目線を送る。
使用人が僅かにほくそ笑んだ。
金で転ぶと孤児院と判断したようである。

「そうね、仕事内容は使用人の格好をして屋敷の掃除や家事などをしてもらうことかしら。
道具も使い方も全部うちの子たちが教えてくれるからそんなに難しくないわ。

ま、最初に覚えてもらうのは私のお世話かしら。」

少女の頬に手をやり、顎を掴んで引き寄せる。
香の効き目が良ければ、このまま唇を奪うことだろう。

はたして…。

カーリーン > 「き………騎士、団………」

そんな職業に就いている知り合いなんて、勿論、一人も居ない。
半ば茫然と、その名称を唇でなぞるだけはしてみたが、実感は沸かなかった。
国を護るために戦う人たちだ、とは、なんとか理解したけれど、
名のある騎士様は王様から、爵位を貰っていたりするのだと、
――――それもこれも、お伽話の中でしか馴染みがなく。

掌を、手の甲を、柔らかく包んでくれる彼女の両手は、
とても剣を取って戦う人のものとは思えなかったが。
けれども彼女が、ここの主だと言うのなら、つまり。

「ね、…ネメシス、さんは、……ネメシス、さんも、騎士様、なの」

騎士様、という単語を紡ぐ声音には、ほのかな憧憬の色が滲む。
いつの間にか、青灰色の瞳がうっとりと潤み始めていた。
まるで夢の中に居るようで、自分がお伽話の中に紛れ込んでしまったようで。
相変わらずバクバクと煩い心臓の音も、熱の籠り始めた呼吸も、
何もかも、気持ちが舞い上がってしまっているからだと錯覚してしまうほど。

――――だから、気づかなかった。
彼女と使用人の間で交わされた意味ありげな目配せにも、
そもそも、彼女との距離が近すぎるという事実にも。
頬から顎へと滑らされた手指の意図も、近づいてくる彼女の顔も、

「お、世話、って……… ぇ、と、―――――……っ、っ、」

柔らかくて温かい何かで、口を塞がれてしまう。
反射的に目を伏せて、鼻腔を擽る甘い香りに吐息を零して、
―――――はた、と気づいて、膝の上の片手を浮かせ。

「ん、んっ――――――ゃ、……」

何これ、どうして、なんで、――――キス、なんて。
女の子同士なのに、どうしてこんな、なんでいきなり、頭がぐるぐる迷走し始めていた。
浮かせた手は彼女の肩口辺りを探り当て、そっと押し返そうとするけれども、
何故だか、思うように力が入らなかった。

ネメシス > 「そうよ。もっと言うと、騎士団の副団長で、聖騎士なのよね。」

ネメシスはあまり実感していなかったが、なるほど見る人によってはこういう見方もあるのかと納得する。
確かに、傍目には王国を守る守護者であり、そういった世界に縁のない立場からすれば
夢物語のように華やかに見えるのかもしれない。

ネメシスは絶えず少女の理解を待つようにゆっくりと語り掛ける。
これから毒牙に掛けるにしても、それも可愛いからのこと。
手の甲を包んだりとしているネメシスの対応は、決して演技などではなかった。

「お世話はお世話よ。
私を満足させることが仕事よ。
こんな風にね。」

唇を奪った後は、香の影響で昂ってきている少女の身体を解そうと。
リップ音を響かせながら頬や首筋にキスをし、同時に舌で愛撫する。

肩口に手が当たろうと、そのままソファの上に押し返し、チュニックの上から胸元を弄る。
小振りの胸にある小さな蕾を指で摘まみ、クリクリと捏ねまわしては、快楽を感じさせて。

「他の仕事は最悪、上手くできなくても構わないけど。
この仕事だけはやって頂戴ね。
その代わり、お給料は弾むわよ。」

高額報酬の理由はこういうことであった。

「断って帰っても良いけど、その場合は孤児院から買い取るわよ。」

カーリーン > 「―――――聖、騎士………」

もはや、すごい、という感想しか浮かばない。
貧民地区の孤児院育ちである以上、王家や貴族の裏事情にはとことん縁遠い。
加えて、彼女は綺麗で、優しくて――――だから口づけられるまで、
彼女が何をしようとしているかなんて、気づけなかったのだ。
そもそも、彼女はどこからどう見ても、女性、に見えたので。

「ま、………え、ちょっ、待っ、て、………満足、って、だって、
 ゃ………だ、ネメシ…ス、さ、……―――――っ、て、待って、んァあ、っっ!」

何を言われているのか、何をされているのか、
理解することを、頭が拒んでいるような有り様だった。
けれど、女としても未成熟な筈の身体は僅かな愛撫にも容易く蕩けて、
柔らかなソファと、もっと柔らかな彼女の身体の間に閉じ込められるまま、
戦慄き、火照り、あらぬところを濡らし始めてしまう。
着衣越しの手指に胸の先端を探り当てられ、揉み捏ねる動きで玩ばれるや、
抗う言葉は呆気なく途切れて、甘く掠れた啼き声が上がり。

信じられない、と言いたげに彼女を見上げる双眸はとろりと潤み切って、
彼女の指の下には、小ぶりではあるが硬く尖った肉粒の感触。
不自然に色づいた頬を歪ませ、泣き出しそうな表情をしてはいたが、

「………っ、て、変、よ………。
 ネメシス、さん………女の、ひと、じゃ、ないの………?」

腕も足も力が入らなくて、そんな台詞を吐くのが精一杯だった。

ネメシス > 「そ、聖騎士なの。」

なんだかこんな反応は久しぶり。
ネメシスは得意げな顔を見せ、ふふんと胸を張る。

「うん? 満足って言って分からない?
私を気持ちよくさせることなんだけど。」

潤んだ瞳や、口元から溢れる吐息が少女の身体が準備できつつあることを示していた。
それでもまだ事態が呑み込めないのか、少女は困惑気味の表情を浮かべつつ、悲し気な表情を見せる。

「そっか。 そうよね。
じゃあ、先に私のことをもっと教えてあげる。」

ソファの上にカーリーンを寝かせたまま、先に服を脱ぎ始める。
ブラウスのボタンを外せば、スカートも脱ぎ捨て、更に上下の下着すら脱いでしまい。

色白の肌に、たわわに実った胸。
ここだけ見れば充分に可愛らしい女性と言えるだろう。
但し、足の間からは巨大で且つグロテスクな男性器が。
むわっとするような濃い雄の香りを漂わせ、汗ばんだ肉棒。
竿の部分は人の腕ほどあり、真っ赤に染まった亀頭は拳ほどの大きさ。

「私の身体、こんなのが生えているから毎日大変なのよ。
貴女を雇おうとした理由、分かったかしら?」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカーリーンさんが去りました。
ネメシス > 継続予定
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からネメシスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都マグメールの平民地区。
富裕層でも、貧民層でもない、文字通り、平民の多くが生活する街は、
王都の中でも最も面積も広く、人口も多い賑やかな場所である。

上下の身分、多種多様な種族が往来する街並みは貧民街に比べれば、
一見すれば治安が良く、住みやすさを感じさせる事だろう。
衛兵の詰め所が存在する平民地区では必然的に街中を警邏する兵士の数も多く、
行き交う人々に彼等が目を光らせている。
だが、それが必ずしも治安維持のために輝いているとは限らない訳で。

「――――其処のアンタ、少し良いか?」

なめし革の胸甲を身に纏い、腰に剣を佩いた警邏中の兵士風の男が
道を行き交う女の後ろ姿へと声を掛ける。
ちらりと覗いた横顔が好みであったのか、或いは、顔見知りだったのか。
口端に滲んだ嗤みは、この後、彼女に降り掛かる災厄を象徴しているかのようであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレヴィさんが現れました。
レヴィ > 平民地区の歓楽街に数ある酒場の一つ。
大勢の客で混雑する店内の一角でテーブルに伸びるようにしてエールを啜る。
エールのほかには干し肉だけが置かれ如何にも金欠という様子。

「あ~~~、今日も疲れたッスー…酒が美味いっス…」

最近はほとんど仕事をしていなく、久しぶりにギルドに顔を出せば死んだ人扱い。
そして仕事を受けようにもブランク有りと見られて簡単な配送しか引き受けれず。
それも行き先は山中の村…ようやく戻っても報酬は雀の涙と踏んだり蹴ったりの一日。
これを一杯飲めば後は宿代しか残らない事、しかしその酒が美味くて思わずダレてしまいながらちびちびとエールを啜って。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアルファさんが現れました。
アルファ > カランと錆びたカウベルが鳴る音もかき消えるごった煮返す酒場に潜り込む。
狭苦しいテーブルの隙間を縫うようにカウンターへと向かった。
そこも客で埋め尽くされていたが茶髪の客の隣が空いているのを見つけた。

「エールをくれ」

腰を下ろしながら店主に注文を告げる。だが忙しいのか煩くて聞こえないのか
中々にエールが運ばれてこないのにテーブルに肘をついてぼーっと待っている。
そんなときに隣の客が美味そうにエールを煽るのに気づいて。
薄紅の目はそちらのほうへ何気なく向いた。

レヴィ > 本当なら一気に飲み干してお代わりと行きたいところだがそれが出来ずにちびちびと啜り。
少し温くなりだしたエールの半分ほど残るジョッキを置き干し肉を齧り。
その塩気に再びエールに口をつけようとすると新たな客が来たのかカウベルの鳴る音。
その音に目を向けると黒ずくめと言える人影。

珍しい格好と思い眺めていると丁度隣の席に腰を下ろすのが見え。
注文をしたようだが恐らくは聞こえていないだろう言う店内の騒動。
多分聞こえていないという事を伝えようとすると丁度こちらを向いていた男と目が合い。

「多分聞こえてないッスよ。もっと大きな声で言わないと駄目っス。
おねーさん!こっちの人にエールを一つッスよ!」

何処まで吸う必要もないがほんの気まぐれと声を上げて男の代わりに注文。
これで来るはずと笑みを向けて。

アルファ > 嚥下されるエールから彼女へ視線を変えて。
やがて掛けられる親切にはつりと瞬いた目はそのまま大きく瞠る。
茶髪の人が出した声は盛大に酒場に響き渡り。一時の興がカウンターに集まったからだ。
程なくして慌ててくるウェイトレスに手短に注文を投げて。
改めて目を相手に向けながら語る。

「ありがとよ。おかげで無事に注文できた。
 俺はアルファ。美味しそうにゆっくりエールを飲んでる君はなんていうんだ?」

笑みの吐息まじりに尋ねかけたときには銀トレイにエールとチーズ。そして茹だった豆がもられた皿が置かれ。
喉仏も見える角度で一気にエールを煽っていく。

レヴィ > 慌てやってくるウェイトレスにやり過ぎたかなと舌を出し。
丁度顔見知りだったので軽くだけ謝って置き、注文を受けて戻っていくのを見送る。

「ほんの気まぐれッスよ。もっと大きな声で言わないと聞こえないッスよ。
その言い方、ナンパみたいッスね。私はレヴィっス、よろしくッス」

注文が通れば運ばれてくるのも早く、男の前に並べられていくのを眺めながら名乗り返し。
軽くジョッキを掲げエールに口をつけて。

アルファ > 「レヴィッス……変わった名前だね。よろしく。そんな申し訳無さそうな顔しなくて良いさ。
 中々の美声だったよ」

戯れを含めて伝えながらも半ばまで飲み干したジョッキから浅く口を離して会話する。

「ナンパ?そんなつもりじゃないんだけれど。
 この街の女の人ってそんなにナンパを受けてるのか?
 前にもそう言われたよ」

く、と一息に飲み干して、唇を震わせながら至福の吐息が溢れた。
仕事終わりの一杯を堪能している。
再び通りかかるウェイトレスに、此度は先ほどより大きく明瞭な声で伝えてから。

「ところでレヴィッス。さっきからずっとエールを一杯しか煽ってないが下戸なのかい?」

チーズの一欠片を唇に運びながら問う。

レヴィ > 「違うッス!レヴィ、できるッスよ。
美声?そんな事ないッス」

冗談だろうが男の言葉に違うと訴え、美声と言われても不思議そうにして。
ジョッキに口は付けるが殆ど中身が減らず、干し肉を口に運び。

「そうッスか。それならいいっス。
されるというか女に飢えてる男が多いッスね。
前にも言われたんスか」

一気に飲めていいなと羨ましそうについ見てしまい。
視界そか割りを頼めない懐具合にちびちびと飲むしかなく。

「だから、レヴィ、ッス。そうじゃないッス、二杯目が頼めないっス」

そんな金がないとはっきりと言い切り、干し肉を齧り続けて。

アルファ > 「ああ、妙な訛りがあるから分からなかった。
 レヴィ。では美声ではなくッスという言葉をつける人の名前として覚えたよ」

冗談を間に受けるその顔を僅かに口角を持ち上げながら再び運ばれてくるエールを手にする。
だが口を付ける前に相手の物欲しそうな視線に気がついて止めた。

「……まぁ、俺も女に飢えてるのは否定しないけれど。
 とっかえひっかえナンパだと思われるのは嫌だな。
 うん。前にも酒場で話しかけたらナンパはいらない…みたいな顔されて無視された。
 そうとう嫌な気分だったよ。ま、それも酒で洗い流すけれどさ」

去り際のウェイトレスを呼び止めて耳打ちをする。
そうするとすぐにもう一つのエールが彼女のテーブルに置かれ。

「それじゃこれは注文を手伝ってくれたお礼だ。
 乾杯しないか?」

手の中で一口もつけられていないグラスを相手に差し出して小首をかしげる。

レヴィ > 「そんなに変ッスか?判りにくくないッスよ。
私は美声じゃないッスから、それでいいッスよ」

男の表情の変化にやっぱり冗談だったかと目を細め、しかし本当にそういう覚え方をする知り合いもいるので特に文句は言わず。
そしてエールを口に運ぶのを止めるのをどうしたのか、自分のもの欲しそうな視線には自覚がなく。

「男はそういうものッスから。
この街にそう言うのが多すぎるだけッスよ。
それは災難ッスね……きっとナンパばかりで疲れてたッスよ」

そう言うのは忘れるのが良いと何度も頷き。
男がウェイトレスに何かを囁いたと思うと目の前に置かれるエール。

「後で返せって言われても無理ッスよ?
乾杯は喜んでッス」

勿論と前に置かれたグラスを手に持ち、男の方へと差し出して軽くグラスを合わせる。

アルファ > 「変とは思わないな。ユニークだ。
 俺は好きだよ。その語尾。
 それじゃお近づきの印に」

乾杯という変わりに小気味よいグラスが鳴る音を響かせて。
再び酒を煽っていく。しかし飲み方は中々進まない。

「しかし君は面白いな。飲んだ後どうやって返せというんだ」

隣の相手に興味が惹かれ。体は酒を求めるが唇を濡らす程度にしか飲まない。
丸椅子に座る体も相手の方に向いてゆく。

「エール一杯しか飲めないなんて財布を擦られたりでもしたのかい?
 今日はどこで休むんだ?家はマグメールにあるの?」

レヴィ > 「別に編って言われても気にしないッスよ。これが面白いって言う人もいるッス。
ユニークって言う人もいるッス……そうッスか?
かんぱーーいッス!」

グラスが鳴る音を響かせ口をつけ、先ほどまでとは違い一気に半分ほどを飲んでしまい。
その後は最初に飲んでいたエールを足して1杯分として。

「返せないッスよ、だから困るって言ったッス」

無理なものは無理とはっきりと告げ、干し肉を口に含んでエールを飲んでは幸せそう。
そして男を見ると自分の方を向いていて不思議そうにして。

「違うッスよ、仕事の報酬が安かっただけッス。
どこって家に帰るッス、ちゃんと家持ちっスよ。
時々宿に泊まる事はあるッスけど……」

そう言ってはエールに口をつけて飲んでいく。

アルファ > 景気良い乾杯の声に目を細める。
相手は普通に話しているのだろうがどうにもその物言いが面白い。
新しいグラスがくれば惜しみなく飲み干すところもまた。

「はは、良い飲みっぷりだ。
 返せとは言わないよ。レヴィの挙動だけで充分エール代の元は取れた」

少々失礼な物言いをしながら喉を潤わす程度にグラスを傾けて相手の素性を聞く。

「そっか。その安い報酬で一杯分を楽しんでいたのか。
 あ、言い方が悪かったかな?別に君がホームレスだなんて思ってないよ。
 ただ、俺はここで酔うまで飲んだらこの上にある宿で部屋を取るつもりだ。
 良かったら一緒にそこで酒を飲まないか?
 部屋のみも君といたら楽しそうだ」

ナンパなどしないと言ったが相手の言動が気に入った。
それだけ伝えれば前を向いてチーズを肴にエールを嗜んでいった。

レヴィ > 「お酒は一日の疲れを取る秘薬ッスから。
それならそれでいいッス、お互いに損もないッスね」

挙動でエール代と言われると少々引っかかりはする。
しかしそれ以上にエールをタダで飲めるという事が重要で気にせず。

「久しぶりだから初心者向けしか受けれなかったッスよ。
ホームレスがこんな小綺麗な格好してないッス。
そう言う事ッスか、別に構わないッスけど酒代はアルファ持ちっスよ」

ナンパでないと言いながらしっかりと部屋飲みに誘うあたりナンパだと笑い。
ただ男と飲んでいると奢って貰った事もあるが楽しい時間で誘いに乗っても良いという気持ちに。
なので酒代は男持ちと言えばエールを飲み干して笑みを向け。

その後はしばし酒場で飲み続けた後、男の部屋に共に引き上げて部屋飲みとなり。
本当で部屋飲みだけで終わったかは二人だけが知る事で……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアルファさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレヴィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に影時さんが現れました。
影時 > ――偶にはこういう依頼も、良いだろう。

教えること自体は嫌いではない。ただ詞を垂れることばかりが全てではないが、何事にも対価は必要だ。
最低限の扶持は得ている身であっても、不意の事態には金銭で購う方が手っ取り早いことも多い。
しかし、やってみると弟子に教える以上に色々と大変なことも多い。それが他者に教えるというコトだ。

「……あー、力み過ぎだ。もうちょっと力抜け。そうそう、そんな具合な」

そんな声を響かせるのは、夕刻を過ぎて夜に差し掛かった平民地区の一角。
属する冒険者ギルドが訓練場として開設している露天の空き地だ。
所々に雑草が目立つが、しっかりとした石壁で固められた土地となれば、数人単位での模擬戦でも出来る。
その片隅で、まだまだ真新しい装備で不慣れな動きで思い思いの武器を振るう駆け出し冒険者達の動きを見守る。

つまり、講師役が今回の仕事である。

自分も含めて、力量のある冒険者が講釈することで経験の薄い、浅い者達のスキルアップをさせたい。
その意向は大変結構。だが、個々で我流も混じる者達の教え方となれば、素直に伝わりがたいものも多い。
かねてより家庭教師をしているからこそ、一層に分かる。他者のふり見て、己がふりを直す。
近場に置かれた木箱に座しつつ、腰から外した鞘込めの刀を肩に立てかけながら見遣ろう。