2020/04/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレフさんが現れました。
■アレフ > お花屋さんの朝はけっこう早い。けれど、早起きは故郷で慣れていたから、苦にはならずに朝のお手伝いをさせてもらった。…まあ、思いもかけない夜更かしをしてしまったので、ちょっといつもより眠かったかな、なんて思った途端。
少年は昨夜のことを思い出し、見る間にほっぺを真っ赤に染めた。
ぶんぶんぶんぶん、と頭を振り、落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かす。
往来でそんなことをやっているのだから…。
やっぱりどこからどう見てもおのぼりさん、だった。
「ええと…、冒険者ギルド…は…」
手には、簡単な地図がある。
ギルドまでの道のりを書いてもらったものだけれど。
こうまで入り組む道というものを、故郷を出るまで見たことがなかった少年は、まだまだやっぱり慣れないのだった。
いくつか、大きな街は経てきたけれど。
おじーちゃん、おばーちゃん、やっぱり王都はすごいです。
…その、イロイロと。
なんてまた昨夜を思い出し、頭だけではなく今度は手までわたわたと振り回し。
…おのぼりさんを通り越して、若干不審者だったかもしれない…。
■アレフ > 今日こそは、きちんと冒険者にならなくちゃ。
少年はそう心に決めて、地図へとどんぐりまなこを落としてゆく。
「ここが…こう、でぇ…………あれ?」
地図の印と現在位置。
それがどうにも符合しない。
当たり前だ。ずっと、地図の上を目指して歩いてきたけれど、角を折れても地図の持ち方を変えていない。
…少年は、自分の進行方向を、常に地図の上にしたままに、こうしてとことこ歩き続けてしまったのだった…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にゾーイさんが現れました。
■ゾーイ > そんな少年の背後を通り過ぎる人影。見た目は少年よりも少し年上ぐらいの女の子。
猫の耳と尻尾の生えたミレー族の少女は、見るからにおのぼりさんな少年に狙いを定めてスリを働こうとしていた。
「(地図に気を取られてるし隙だらけ。チャンスは今かな?)」
目にも止まらない早技で、少年にピックポケットを仕掛ける。
■アレフ > 困ったなあ、と。少年は地図に見入っている。
そして、どんぐまなこを見上げると、今度はきょろきょろと周囲を見回し、『ここ』が『どこ』かを確かめようとしている様子。
「あ…、と。ごめんなさい」
そんな時。傍らに人の気配を感じたものだから、少年はつい、そう言ってしまった。きっと誰かにぶつかってしまったに違いない、と。
そして少女は、見事に少年のポーチの中身を掏り取ったことだろう。
…けれど。
妙にその、掏り取った中身が軽いというか…むしろスカスカ…というか。
■ゾーイ > 「ん、大丈夫大丈夫ー」
そんな返事をしながら首尾良く行った犯罪行為にニンマリと口を歪め、財布の中身を確認する、が。
「……(ちぇ、全然入ってないや)」
はぁ、と一つ嘆息すると、くるりと少年の方に向き直り。
「ねぇ、そこのキミ! これ、キミの財布でしょ。落としてるよー!」
と、中身に手をつけることなく手でひらひらとさせながら呼び止めるのであった。
■アレフ > 少女が中身を隠し、向き直ったその瞬間、だった。
手にしていた革袋、少年の財布と思っていたものが、手の中でぐにゃり、と質感を変えたのだ。
そしてそのまま、革袋だと思っていたものが、粘体質の、一種のスライムめいたものへと変じて、少女の手へと絡みつこうとし始める。
「あー…」
そんな様子を見て少年は、あ、またか、と。困ったように溜息をついた。
そして、よくよく見るとその相手が、ミレー族であることに気づいてどんぐりまなこをまん丸に。
…少年が暮らした故郷は、寒村過ぎて本当に人間しかいなかったのだった…。
「あのぅ…、スリはだめですよ…?」
これこそ、少年の祖父が持たせたお守り。
おのぼりさんな孫が、絶対にカモにされると読んでいたというのだから、祖父の愛は偉大だった。
■ゾーイ > 「え、え? 何これ!?」
グニャリ、と掌の中で溶けるように形を崩したそれが、手に粘りつくように張り付いてきた。
「しかもスリってバレてる! ちょ、これ一体何!? キミ、何なの!?」
手をバタバタさせてネバネバする何かを振り解こうとしながら。
■アレフ > ねばねば、ぬとぬと。
スライムは少女の手首を戒めて、そのままズズ、ズズ、と腕へと這い登ろうとする。
もし少女が無意識にでも別の手で剥ぎ取ろうとしていたなら、それこそスライムの思うつぼ。
両手をそのまま拘束して、はい、お縄にできました、状態だったのだけれど。
「おじーちゃんのくれた、お守りです」
僕からスリ取ると、そうやって捕まえてくれるんです、と。少年はとことこと少女に近寄りながら説明した。見た目通りに素直で人が好いのだと、こんな時でもまるわかり。
「もういいよ、帰っておいでー」
と。少年がそう言うと。スライムはズズ、ズズズズズ、と小さくなり、ぽたり、と地に落ち少年に向けて動き出す。
そして少年が手に取ると、また元の革袋のような姿に早変わり…。
■ゾーイ > 「そんなマジックアイテム、聞いたことないよ……あーもう悔しい、一本取られた!」
ミレー族の少女は頬を膨らませて悔しがっている。
隙だらけで見るからにおのぼりさんな風体だったのが、逆に誘い込む罠だったなんて。
「でも、どうしてボクを捕まえないの? 突き出せば高く売れたかもしれないのに」
一応聞いてみるが、まぁ聞くまでもないだろう。
わざわざ魔道具の効果を説明して、しかも開放してくれたのだから、(都合の)いい人には違いない。
■アレフ > 「ぼくのおじーちゃんは、魔法使いで…」
この他にもいろいろと変な道具をよく作るんですと、少年はどこか乾いた笑いをしてみせた。
もしかすると、まだまだ妙なモノを持っているのかもしれない。
とりあえず、その中のひとつであるスライム財布の革袋を、もう一度ポーチへと納めて、そして。どんぐりまなこを少年は、悔しがっている少女へと。
「ええと、捕まえてもどこに連れていけばいいかわからないし。それに…」
あはは、とやはり困ったように笑いながらにそう告げて。
そして少年は、こんなことをのたまった。
「それにおねえさん、悪い人じゃないでしょう?」
などということを。スリ相手に少年は、当然のように言うのだった。
■ゾーイ > 「魔法使い、ね。こんなの作ってるなら、錬金術師とかそっち系か…」
どこに連れて行けば良いかわからない、その答えには納得できた。
地図を見ながらでも迷っている様子からすれば、主要な施設なんて把握していないだろうから。
けれど、次の言葉には今度はこちらが目を丸くした。
「悪い人じゃない? ボクが?」
なんで?と言いたげに首を傾げる。
少女は間違いなく自分が犯罪者だという自覚がある。実際、今この少年に犯罪を働いたのだから。
■アレフ > 「錬金の業も詳しかったですし…魔物にも詳しくて。魔法使いじゃなくて、『ワシは学者、学究の徒ぢゃ!』ってよく言ってました」
どこが違うんでしょうねえ、なんて。少年はのんびりと口にして。そして、もう一度濡れたようなどんぐりまなこを少女に向けて、柔らかく微笑んだのだった。
「はい」
答えは明瞭、そして簡潔。
ただ、是と答えるだけで理由もない。わかってます、とでも言いたげな、なんとも不思議な少年だった。
■ゾーイ > 「変なの。ボクが本当は悪い人だったらどうするつもり?
武器だって持ってるんだよ?」
腰の鞘から短剣を抜いて、大道芸のように器用に弄んでみせる。
「それに、そんなキミが貧民地区も間近ってところで何してたのさ?
観光ならもっといい場所があると思うけど」
■アレフ > あはは、と少年はまた、困ったように微笑んだ。
そして、少女にこんなことを告げる。
「そんなに頑張って、悪い人って言わなくたっていいんですよ?」
このご時世だ。武器のひとつくらい懐に飲んでいるのは当たり前。それよりも、懸命に自分は善人ではないと否定している少女のことが、少年は年上なのにとてもとても微笑ましくて、可愛らしく想えたのだった。
けれど、そんな余裕もそれまでだ。
問われた言葉に、やっぱり困ったような顔になる。
「冒険者ギルド…探してたんです。登録したくて」
でも…どこなんだろう、と。少年はまったく見当違いの明後日の方向を眺めやり…。
■ゾーイ > 「……なーんか悔しい」
ムスッとした様子で半目でジトーっと少年を見る。
見た目は明らかに年下なのに、掌の上という感じがして。
「あのさ。キミ、さっきから地図見てるみたいだけど。コンパスはどうしたの?」
先ほどから思っていたことを口にする。
地図は確かに便利なものだが、東西南北が把握できていなければただの紙切れだ。
■アレフ > あははは、と。少年はまた困ったように笑う。
悔しいと言われても困る。けれど、そんな様子もまたどこか微笑ましくて。
きっと、彼女の方がずっとずっと苦労もしてきて世間にも詳しくて。少年は、柔らかい瞳で少女を見ながら考える。
「…でも、なんだか可愛いです」
なんて、ふと呟いたあとで。とんでもないことを言い出した。
「…こんぱす…って、なんですか?」
妙な魔道具やら魔物には詳しいくせに。
そんなこともこの少年は知らないらしい。
■ゾーイ > 「可愛いって言うな! 年下の癖に生意気だぞー!」
ぷんすかと怒る。
コロコロと表情が変わる様が、より一層そう言った情緒を感じさせているとも知らず。
「……いやいやいや、なんでそんなことも知らないのさ。ちょっとこっち来て?」
腰のポーチからコンパスを取り出して、少年に見せる。
「これは磁石で出来ていて、常に自分が東西南北のどっちを向いてるかがわかる道具。
地図だけあっても、方向がわからなかったら何の意味もないよ?」
■アレフ > 「ご、ごめんなさいっ」
だって、可愛いのになあ、と。それでも少年は諦めきれないらしい。そのもふもふもの耳も。ふかふかのしっぽも。故郷にミレーはいなかったから、被差別種族である筈の彼らに対しても、少年は偏見などもっていない。
…ちょっと撫でたいな、とは思っていたけれども。
「へぇぇぇぇ………っ!!!」
気を取り直して説明を受け始めた少年。
やはり、学究の徒の孫らしく、知的好奇心はかなりのもの、であるようで。
「じゃ、じゃあ…、ギルドは……こ、ここ、こっち!?」
声が上ずっているのは、自分がとんでもない間違いをしていたことに気づいたせいではなく。
ようやく正解と、正解に至る道具に触れられていることの興奮であるようで。
■ゾーイ > 「ボクから見たら、キミの方が可愛いんだからさー」
まだ二次性徴が終わり切っていない男児特有の可愛らしさが滲み出ている。
撫でたいなぁ、と思っているのはこちらも同じだった。
「はい、ここまで!」
パッと磁石を掌に隠して取り上げてしまう。
そして意地悪そうな笑みを浮かべてこう言うのだ。
「これは貴重品だし、ボクも今は一つしか持ってないから、タダでは見せてあげられないなー。
どうしてもって言うなら、報酬次第で譲ってあげても良いけど?」
■アレフ > 「え…」
可愛い、と言われて。途端にそのほっぺが桜に染まった。
そして今度は、少年の唇が少しばかり尖らされる。
「ぼ、ぼくはオトコノ…じゃない、男ですからっ」
そんなことありません、と言った後に。イジワルそうな少女のその笑みに、これまたどんぐりまなこを瞬かせる。
「報酬…ですか?
あの、ぼくにお支払いできるなら…」
ぼくもあまり、お金は使えないけれど…どうだろう、足りるだろうかと、少しばかり不安そう。
■ゾーイ > 「えー、可愛らしい男の子って貴重なんだよ?
すぐ大人になっちゃうんだから」
唇を尖らせる様子に、クスクスと笑みを見せる。
ここから反撃開始だと言わんばかりに、顔をくっつけて。
「報酬はぁ……キミ自身♪」
避けられないなら、ちゅ、とその頬に軽く口付けをしてやろう。
きっと慌てふためくんだろうな、という期待で表情が緩む。
「単刀直入に言うよ、キミを抱かせて?
そうしたら、このコンパスを譲ってあげる」
つまりは、エッチなことをさせろということで。
さて、少年の答えや如何に。
■アレフ > そんなことを言われても、少年は早く大人になりたいのだった。
逞しくて、強そうで、凛々しい勇者が理想であるのに決まってる。
と…そんなことを考えていられたのもここまでで。
ほっぺに弾けた甘い熱。
あわあわ、わたわた、とほっぺを染めてわたついた後に。
告げられた言葉に少年の、どんぐりまなこがまじまじと、光彩を異にする不思議な瞳に向けられて、そして…。
「えと…、はい、それでよかったら?」
なんで、抱っこだけでいいんだろうか、と。少年の頭上には今、無数のクエスチョンマークが乱舞しており。
■ゾーイ > にまり、と笑って手を差し出す。
「はい、交渉成立!
それじゃあ、人に見られない場所に移動しようか?」
どうやらこの少年は、『抱く』という単語のもう一つの意味を知らないらしい。
さんざっぱら恥をかかされた分、この無垢な少年にどんなことをしてやろうか。
そんな期待で仔猫の頭はいっぱいだった。
■アレフ > ともかくも。少年は是と答えてしまったのだ。
求められている内容を理解していようといまいと、交渉は確かに成立してしまったものだから。
少年はまったくちっとも何の疑いもなくその手を取って…。とことこ、とことこと導かれるまま歩き出し…。
頭にあったのは、「なんで人目を避けるのかなー」という、そんな程度の疑問符だった…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からゾーイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアレフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレフさんが現れました。
■アレフ > 平民地区の一角にある冒険者ギルドの建物から、随分と小柄な人影が吐き出されてきた。
背に剣を負っているけれど、それはショートソード。
盾も持って、一応は冒険者…と言えなくもないけれど。
どこからどう見ても子供が背伸びしているようにしか、見えない。
けれど本人は立派に冒険者のつもりなのだった。
「はぁぁぁ…」
大きく大きく、少年は溜息をつく。
いやもう、人がたくさんでたくさんで…。
冒険者だけで、村のみんなよりたくさんいます…。
と、少年は今夜もまた、故郷のおじーちゃんおばーちゃんに、都会の凄さを胸の中で申し述べるのでありました。
■アレフ > よし、と少年は大して出てこない力こぶを作って気合を入れた。
これで今日から冒険者。
立派な勇者になるための修行がいよいよスタートなのだ。
けれどまずは。
「今夜の宿をなんとかしないと…」
と。冒険よりも現実を考えないとならないあたり、ちょっとせちがらかったりする。
手にした地図とコンパスで、今度こそは迷わないはず!
そう意気込むと少年は、宿を求めてとことこと…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアレフさんが去りました。