2020/04/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマコさんが現れました。
■マコ > 夜の街の冷え込みも、大分ましになってきた。
常に薄着に近い格好をしているマコにとって、これは大変嬉しいことである。
春も半ばに差し掛かったころ、木々の花粉もだいぶんおとなしくなってきている。
もう少しで、じめじめとした夏がやってくる。
その前の大きな雨の季節の前に、マコはできる限りのお仕事を入れていた。
この町に戻ってきてから、今日でおよそ1週間程度の時間が過ぎている。
「はーい、それじゃまた何かあったらねー。」
ゴルドの詰まった袋を下げて、マコは冒険者組合を後にした。
戻ってきてからチェックしてみたら、何とマコの登録はまだ残っていた。
おかげでスムーズに復帰することが出来、この町での生活基盤も、すぐに落ち着かせることが出来た。
宿を一から探さなければならなかった、というのはなかなかに大きな問題ではあったが。
「さってと……晩御飯、何にしようかなぁ…。」
この時間なら、手ごろな酒場はあいているだろう。
”できるだけ人が少ないところがいいんだけどなぁ…”
マコは独りごちて、手ごろな酒場を物色し始めた。
■マコ > 宿代などを考えれば、そこまで大きなお金を使うようなことは避けたい。
だが、基本的に美味しいもの好きなマコにしてみたら、食に関しての妥協はあまり考えたくなかった。
安くて美味しいものはそうそうない、だったら少し御金を使うことになる。
”まずは帰って、宿代を分けたほうがいいかなぁ…。”
ゴルドが詰まっている袋を眺めながら、少し考える。
だが、考えるということはやはり、お腹がすいてくるということ。
しかも労働を終えてからの考え事なので、余計に腹が減ってしまう。
盛大に、腹の虫が空腹を訴えるかのように音を奏でた。
「ああもう……もうちょっと我慢してよ…。
ボクだってお腹はすいてるんだからさぁ……。」
困った顔をしながら、マコはお腹をさすった。
お腹と背中がくっつく、という表現があるが、その言葉を言った人物にマコは感心する。
本当に、うまいたとえをしたものだと。
そんな考えを持ちながら、通りを歩いているとそこはかとなくいいにおいが漂ってきた。
何の匂いかと思えば…夜中でもやっている屋台であった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエリーナさんが現れました。
■エリーナ > 「やれやれ……」
今日はなんだか疲れることだらけであった。
素材探しに遠出してみれば、気配を感知しにくい幽体に背を取られる。
適当に転移した先は川の中。
帰りに素材入れのリュックの底が抜ける。
精神的に疲弊したために魔力がいまいち出ずに、連続転移による帰還が遅くなり、結局はこんな夜中。当然飯を作る気力などない。開いてる店もそうそうない。
ぶらぶらと街を歩いていれば、やっと屋台を見つけて今に至るというところだ。
「……うん?」
自分の対面。逆方向から歩いてくる少女も、なんだか屋台に惹かれていそうな雰囲気がするな?
疲れるだらけの一日の最後に、隣には華くらいあってもバチは当たらないと思うのだが。なんておもいながら屋台まで歩いていく。
■マコ > 空腹は限界に近いほど。
屋台から漂ってくるいい匂いに、ついついつられてしまいそうになってしまう。
というかつられてしまっている、ふらふらっとした足取りは屋台へと向かっていた。
”こういうお店って、結構穴場的な感じがするときがあるもんね。”
というか、こんなところに屋台なんか出てたんだ。
自分が知らない間に、個人経営のお店でもできたのだろうか。
お酒はほどほどでいいし、何かおいしいものでもあるかなと思い、マコはその屋台に足を踏み入れた。
「こんばんわー、何かおいしいものある?」
飲食店?に来て開口一番がそのセリフである。
店主の反応は、まあきっとありきたりなものだろうし割愛する。
その屋台の、反対側から来ていた女性と目が合った。
見上げてしまうほどの長身で、少しうらやましい。
背が伸びなかったマコにとって、長身の人物というのは、なかなかに憧れてしまうのだ。
「こんばんわ、もしかして君も?」
…だが、目上だと思われる学長が警護にならないのは、マコの悪癖である。
■エリーナ > うん。女の子は屋台に入った。故に今夜の夕飯はここに決まり。
飲食店が他の店舗と頭一つ抜ける条件の一つが付加価値である。
このお店にはたった今付加価値が1つついた。勝手につけた。
「一通り、夕食って感じのをもらえるか?なにか強めの果実酒もあればそれも」
心は寒いが懐は温かいのが今夜だ。色々めんどくさいので多めに持ってきた。
故に多少無茶なものがでても支払いは可能だ。大人の力だ。
背は低めで、めりはりのついた女性らしい膨らみのある少女。
自分もこんなふうに、女の子らしい身長に生まれたかったと思うことはしょっちゅうだ。
服はないし窮屈だし変に目立つし。目立つのが格好のせいだと自覚はない。
「や。こんばんは。君も夕食かな?」
なんてフランクに返す。この魔女、ちょっと崩れていたほうが丁度いいくらいの友達感覚である。
■マコ > 屋台に入れば、やはり小さい店だからだろう。
カウンター程度の席しかなくて、しかも知れも5人も入ればいっぱいになってしまう。
本当に、趣味でやっているだけとも言えるような、そんな規模のものだった。
だが、マコは知っている。
こういう店のほうが、料理は期待できるものだ。
ワクワクしながら何を注文しようかなと、メニューが書いてある板をじっくりと眺めていた。
今日は何腹かなぁ、とお腹をさすりながら考えている。
「あ、うん。そうなんだ。
お仕事の帰りでね、できれば静かなところで食べたいなって思ってた時に、このお店を見つけたんだ。」
とりあえず、軽く何か食べてからにしようか。
おつまみ程度のものをマコは頼みながら、槍をラックに掛けさせてもらう。
服装、少し特徴的だが個性的な黒い帽子。
飾り付けているが、黒を基調にしているような服を見るに。もしやして魔女だろうかと予想を付ける。
この町にはマジックアイテムを売っている店も多い、魔女がいても何ら不思議ではなかった。
■エリーナ > うん。屋台はこういう狭さが安心する。パーソナルスペースに触れるくらいで丁度いいのが屋台。
色々考えるのが面倒な精神状態なので、おまかせ注文をしてしまったが、料理の香りで多少元気が出る。
好みの味ならなおよし。やはり食は生きる楽しみだ。
「なるほど。私と同じだなあ。
静かなところか。あまり酒場の騒がしさは好きじゃないのかな?」
動きやすい軽装に槍。冒険者か。見た目は若いが、なかなか面白そうな子だ。
椅子に座れば、スペースを取る魔女の三角帽をとり、帽子掛けへ。
自分のトレードマークである三角帽を取ると、なんていうか、こう、個性が寂しい。
「さて、私は適当にすませちゃったけど、君はどうする?
なかなか良さそうなお店だけど」
■マコ > 「ううん。ただ単に気分の問題。」
いっぱい食べたいと思う時は、できるだけ静かなところを選ぶようにしている。
ご飯は味わいたいときにしっかりと味わうものだと思っているから。
帽子をとれば、確かに個性が少しわかりにくいかもしれない。
しかし、それは自分も同じだ、この服が個性のようなもの。
もしこれを脱いで、普通の軽鎧なんかにしてみたら、ただの小さな冒険者というしかなくなってしまう。
何にしようか選んでいたところだったので、まだ考え中だ太が、なかなかおいしそうなものが並んでいる。
完全に穴場だこれ、とマコは嬉しくなったのか、お任せにすることにした。
「ボクも、店主さんのお任せにするよ。
つい最近できたところなのかな、ボクが知ってる限りだけど…。」
”って言っても、ボクも1週間くらいいなかったんだけどね。”
少し苦笑しながら、マコは後ろ手に頭をかく。
■エリーナ > 「なるほど。今夜は騒がしさよりものんびりしたいってことか」
思えば、自分も今夜は喧騒と静寂ならば静寂のほうが好みだ。
静かに、のんびりと味わって休む。そういうのが今夜はしっくりくる。
しかし、軽装にしてもなかなかに大胆がすぎるというか。革や帷子ではなく、ここまで軽い服。
そりゃ動きやすいだろうが、うむ。あと見た目も可愛いのでいいが。
ああ、悩んでいる悩んでいる。美味しさを前にしたときに右往左往するのもまた楽しみ。
こういうのは屋台だからできるという感じがして、また楽しみだ。
「私はあまりこの辺りで外食をしないんだけど、ちょっとは噂くらい聞きそうなものだけどな。
新しい場所なんだろうかなあ。
って、一週間か。少し遠出の依頼でもあったかな?」
自分も真似事じみたことにはなるが、冒険者としての仕事そのものはしたことがない。
故に、内容には非常に興味がある。釣り眼の金眼が猫じみたきらめき。
■マコ > マコはどちらも嫌いではなかった。
静かにゆっくりとご飯を楽しむのも面白いし、騒がしいところで、豪快に飲むのも嫌いじゃない。
ただ、今日はお腹がすいているので、あの騒がしいところでお酒を飲むと酷いことになりそうだから、止めたというだけだ。
「ううん、そういうわけじゃないんだけどね。
こう、なんていうのかな……、ちょっとフラーっと、どこかに行きたい気分だったんだ。」
だからいろんなところを回ったし、いろんなこともした。
船にも乗ったし、歩きもしたし、いろんな人ともあった。
それがまた楽しくて、またどこかに行きたくなって。
でも、最終的にこの町に戻ってきてしまったという感じだ。
「あ、そういえば名前言ってないね。
ボクはマコ、たぶんわかってると思うけど、冒険者だよ。」
■エリーナ > 今日はきっと、酒場が開いていてもそっちにはいかなかったろう。
ああいう場所の騒がしさは良さも悪さもある。知らん男に尻でも触られたら顎を割っているところだ。
そういう意味では、この場は非常に運が良かった。
「ふうむ。旅行っていうところかな?
たまにはそういう日もあると、退屈しなくて済みそうだ」
転移でぶらつくことはある。歩きではとてもいけない遠くへと。
しかしそれはその日限りのものであり、何日もかけてどこかへというのはそうそうない。
そういうのも、心を楽しくしてくれそうだ。
「ん?ああ、そうだった。すまんすまんボーッとしていた。
私はエリーナ。薬屋をしているよ。
やっぱり冒険者だったか。とはいえそんな服でよく怪我をしないなあ……」
■マコ > 旅行、と言えばそうなのかもしれない。
そんな意識は全くなかったが、考えてみれば確かに旅行といっても差し支えはないだろう。
ただ、それと違うのは全くの無計画だったというところか。
たくさんのところに、気分一つで言っただけだから、さして何かを探しに行ったわけでもない。
旅行というには、あまりに金銭的に乏しかった旅行だ。
その日の路銀を稼ぐために、仕事をしたことだってある。
「退屈はしないかもしれないけど、大変だよ?
野宿することだってたくさんあったし、変なのに襲われたことだって…。」
ま、あそれらはすべて撃退できるレベルであったことは運がよかったのかもしれない。
あははっと軽く笑いながら、出された最初の料理、鳥の串焼きをほおばっていた。
「あー、よく言われるんだ…。でも、動きやすいし気に入ってるんだけどね。
時々見えちゃうけど、まあ減るもんじゃないし…。」
ただ、本人は自覚していないのだが、この服は割と体のラインが出る。
なので、ふくよかな胸の形もくっきりと見せてしまっているのでかなり目立つのだ。
元々、決して小さくはないサイズではあるし。いや身長は低いが。
■エリーナ > 自分が旅をするなら、さてどうしよう。あまり店をあけてはお客さんに迷惑だから、小旅行にするべきだろうか。
色々と、考えてみるのも良いかもしれない。
そう。こんなご時世だ。色々な備えも要るだろう。
「なるほど。なるほど。野営一つ取っても面倒だからね。獣避けとか。
はあん、変なのねえ。マコは可愛らしいし、変なのも変な気を起こすかもねえ」
けらりとこちらも軽く笑って。こちらも出されたりょうりを。猪の煮料理をかじる。
「身のこなしが優れているんだなあ。私は結構鉄壁な服を着ていかないと安心できないたちだから、なんだか羨ましいな。
まあ、減らないけども、だから変なのが増える可能性もあるにはあるかもだなあ」
あははと笑う。ぴちりと張り付くような、ボディラインがハッキリ出る服。
足の露出もなかなかに大胆。これはこれは、変なのは変になる。
そう品評する魔女の目も、同性ながらちょっとスケベなものではあるのだが。
■マコ > 「アハハ、それが女の子だったらむしろ大歓迎なんだけどねぇ…。」
そのセリフは割と嘘偽りなく、さらっと言ってのけた。
変な気を起こしてくれるのが女の子だったらなどと言うあたり、もしかしなくてもエリーナと同類だろう。
こちらを見てくるその視線に、少しその変な気を感じても、マコは何ら気にしてはいなかった。
「そうなのかなぁ、ボク自身はよくわかんないや。」
別にみられたからといって、気にするようなことでもない。
勿論、さすがに突然触られたら触りかえ……基、撃退するかもしれない。
が、それが悪意のない者ならば別に構いはしないだろう、貞操概念はあまりない娘なだけに。
「でも、エリーナの服装もおしゃれだよね。
魔法使いなのは何となくわかるけど……イメージと違うよね。」
”もうちょっと、地味な感じなのをイメージしちゃうな。”
それを払しょくするためなのか、それともただ単にお洒落さんなのか。
マコは、エリーナの服を少しだけ眺めた。
■エリーナ > 「はは。見知らん男にそうみられるのもなんか腹が立つからなあ」
おや、この子は女子のほうがお好みか。なんてちょっと感じる。
いやまあ、うん。食事をしながらで悪趣味かもしれないが、疲れた心には実に癒しになる身体だ。
「全く、若い娘がそんな事じゃあ不用心じゃあないか?
どこに悪い人がいるかなんて解ったもんじゃないんだから」
ここに居るのが悪い魔女ではない、なんて確証はないのだ。とはいえすぐに触ったりする無礼はしないが。
まずは語らいだ。貞操観念は薄いが、礼儀はちゃんとしておきたいというのが長年生きてきた結果だ。
「うん? あー。そりゃあね。古式ゆかしい魔法使いはもっと地味な服だろうけれど――
でもそんなのつまんないだろ?」
心のなかにそういう娯楽は大事だ。昔のクラシカルなうくも良いだろうけど、ちょっとつまらない。
アクセントの白いレースや凝った装飾。多段に分かれた作り。
魔女らしさもあり、だがおしゃれに。そんな魔女は、眺められると少しだけ誇らしげに胸を張る。
■マコ > どこに悪い人がいるか、確かにその通りだ。
だが、自分もまたその悪い人のうちに入るかもしれないから、気にならないということもある。
にししっと悪戯っぽく笑って見せて。
「確かにそうかもねぇ、ボクもわりとたべちゃう女だし♪」
まあ、ほぼ隠す気なんかないわけだった。
焼き鳥を食べ終えて、その味に満足しつつ次はお腹にたまるものを注文していた。
このお店、なかなかのあたりである。
「あー、それよくわかる。
確かにみんな一緒だと面白くないもんね。」
自分は違うものを期待、その気持ちは本当によくわかる。
全部一緒だとつまらない、それが個性というものなのだろう。
その、誇らしげにはった胸…ああ、そこそこ大きいな、なんて思いつつ。
でも、何となくだけど自分によく似た匂いを感じる。
女の子が好きそうなセリフだったり、考えであったり。
■エリーナ > 「食いっけのある女の子もまあ、うん、いいね。嫌いじゃないぞ」
なるほどなるほど、この子はなかなかに色んな欲が旺盛で。
趣味としては花を愛でるタイプか。なかなかに良い子じゃないか。
鮭の蒸し焼きを頬張り、強いコケモモの酒を呷る。うん、いい店だ。
「そうそう。私はもうちょっと特別でいたいからな。店をやっていると、そういうのが大事になってくるときもあるし。
マコのその服も、マコだってすぐ解ってもらえだろうしね」
少しは違う、少しでも違い。自分はこうだというアピール。
咲き誇る花束なら、めいっぱいがいい。まあ、一応私だって女なのだから。
そして胸は結構あるのだ。スタイルはいいという自信はある。
……この子には負けるが。
気の合いそうな子だ。趣味が合うというのは、そういうことの第一歩。
グラスを傾けながら、そっと笑顔を向けた。
■マコ > エリーナの言葉を聞いて、マコはおかしそうに笑った。
やっぱり、エリーナもそっちの気があったのかと。
「アハハっ、やっぱりエリーナもそっちのタイプかぁ。
ふふっ、ボクは全然かまわないよ?」
お互い女の子がいいと思っているならば、別に抱いたって抱かれたって。
ただ、ボクはちょっとだけせめっけが強いよ?なんて冗談めかして笑って見せた。
可愛い声が聞きたいなぁ、なんて流し目をして見せたのは、少しだけお酒が入っているからなのか。
それとも、誘ってきたからなのかは不明だが。
「うん、特にボクの場合は商売上、名前が売れたほうが儲かるんだよね。」
だから、身なりにも多少は気を使って居るつもりだ。
頭だって、本当は降ろせば割とロングなのだ。
美味しいものを食べながら、少しだけの女子会に花を咲かせる。
今日はこの店に来て正解だったな、と上機嫌なマコであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマコさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエリーナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレフさんが現れました。
■アレフ > 「ふわぁ…………」
傍らに、自分の身体よりも大きそうな狼を一頭伴った、なんとも小柄な姿が王都の門を見上げている。
ポカン、と口を半開きにして、下から上まで見上げていったものだから、すっかり口もどんぐりまなこもそれはそれは開かれていた。
「…王都って、大きいなあ…」
その傍らで、狼が大きな欠伸をした後で、くいくい、とその小柄な姿の服の裾を咥えて引っ張った。道の真ん中でぼけっとしてると危ないぞと、わざわざ教えてくれたものらしい。
「わわ、ごめんごめん、ありがとう」
そういうと、慌てて道の脇に寄って立った。そして…。
「もう大丈夫。迷わないよ。ここまで送ってくれてありがとう」
気を付けて森へ帰るんだよー、と。狼の頭を撫でてやる。
どうやら春になって群れから巣立った若い狼らしい。腹が減って襲ってきたところをケンカ?して、仲直りにビスケットを差し出した。
全部食べられてしまったけれど、お礼にこうして王都まで送ってくれて大助かり。
…これでもう、迷わなくて済むはず!
ぐ、と力こぶ…も、できないけれどポーズを決めて、ドキドキしながら王都の門をくぐってゆく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に魔王劉仙さんが現れました。
■魔王劉仙 > 王都の朝は早い、大きな門の近くには門が開かれるのを待っていた馬車組の大きい商人の隊列、
貴族かその他の隊列、中小の商人の馬車とかががやがやと出ていく。
代わりに門の外で野営していたと思われる同じような馬車の群れの入都の長い列が連なり、
一際賑やかな時間帯だ。馬車でさえ並ぶが一部の札を持つ貴族とか冒険者は列に並ばず、
簡単な検査を経て出入りしている。その中の黒尽くめの豪奢な馬車がからからと軽やかな音を立てて王都の門を潜っていく。
2頭仕立ての馬車は黒レースのカーテンで中が覆われており中が分からないが、
中にいる人物は頬杖を突きけだるげに外の様子を眺めている。
と、何かを見つけたのだろうか、止めよ、と馬車内から御者に命じガラガラっと音を立てて馬車が止まる。
調度アレフ少年がいる横付近にぴったりと。
■アレフ > きょろきょろと、少年はそれはもう、物珍しそうに周囲を見渡し見回して、おのぼりさん全開で歩を進めていた。
あ、美味しそうな匂いがする、とか。
わあ、なんだろうあれはキラキラして、とか。
きっと周囲で見ている者にとっては、微笑ましいくらいその考えはダダ漏れ状態。
冒険者ギルドとかいう組織に顔を出し、ひとまずは立派な勇者になるべく修行しておいで、というお爺ちゃんの言葉もちょいと抜けて、ただもう観光客状態。
…と、そんなことろに。なんとも立派な馬車が傍ら停まったものだから。
小柄な少年はどんぐりまなこを開いてまじまじと、その二頭立ての馬車を見上げている…。
■魔王劉仙 > 馬車のドアを少し開けレースのカーテンを捲ってもらい、
座ったまま馬車内にいる人物はアレフ少年を眺めている。
じっと眺めているが、上半身を出す様に体を動かして馬車外に狐耳をひょっこりと出して
アレフ少年へと言葉をかけてみよう。
見るからに冒険者なりたてかその前かの服装に身を包むのを眺めてから。
「そこの伸びしろがある少年、冒険者になるのか?」
豪奢な馬車から出てきた人物は女、それにケモミミ。尻尾は見えない筈。
非常に伸びしろというか将来化けるぞ的なオーラを放っているように見える少年を見つける事が出来て
女は薄く微笑んで少年を見下ろしている…。
■アレフ > 窓から現れたその姿を見て、少年はなおもどんぐりまなこを大きく大きく見開いた。黒目がちの瞳がそれはもう、きらきらと輝いているは、志す冒険者という言葉に我知らず胸高鳴ったのと…そして。
…人間以外の種族に会うのが、これが初めてだったのだ。
こくこく、こくこく、と少年は返事も忘れて頷いている。
わー、耳だ、キツネの耳だー、という声が、これまたダダ漏れるような状態で、少年の黒々と光る瞳はそのもふもふの耳へと注がれて。
■魔王劉仙 > 窓というか扉そのものを開けて貰った女はじっと少年を上から下まで眺めていたのだが、
正体を晒すことなく貴族めいた振る舞いを持って少年と対峙している。
時折狐耳がひょこひょこ揺れていたが おのぼりさんじょうたいの少年をその場に放置することをよしとせず。
少年の柔肌たる手を優しくつかみ馬車の中へと入れて―扉がぱたんとしまってカーテンで中の様子が見えなくなる。
ややあってその馬車はがたがたと再び動き出し王都の中へと―
■アレフ > 「え、あの…っ、ちょっと…っ??」
キツネ耳のお姉さんは、きっと悪い人ではないんだろうけれど。そのまま手を取られてやはりどんぐりまなこはぱちくりとする。
わたふたと慌てる様子は見せないけれど、根っから人を疑うことを知らない様子で、そのまま小柄な身体は馬車の中へと飲み込まれ…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から魔王劉仙さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアレフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にリリトさんが現れました。
■リリト > 人の冒険者、というのは冒険者ギルド、という場所で仕事を受けてお金を貰うらしい。
そんな仕組みを先程知ったリリトは、自分も冒険者のマネごとができるのではないかと思いついて
ちょっと興味本位で冒険者ギルドを訪れてみたのだった。
どう見ても一般市民、冒険者には見えない薄布をまとった変な服装の、どう見ても人間には見えない風体の少年。
それが他の人を真似て、掲示板でいろいろと依頼の張り紙を見て回る。
といっても、自分に出来る仕事といえば薬草採取や子守や家事代行、あるいは猫探しがせいぜいだろう。
どうやら良い依頼はほとんど取られてしまったようだから残る依頼は
難しいものや割にあわないものばかり。
「んん……、世の中そんなに簡単にはいかないかぁ……」
ちょっとしょんぼりしつつそんなことを呟く。
そしてそれをぎょっとして見つめる冒険者たち。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からリリトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレフさんが現れました。
■アレフ > てくてく、とも、とぼとぼ、とも。どちらにもとれそうな様子で歩く小柄な人影。
ショートソードを背に負って、きょろきょろと左右を見回し、もう夜更けの街路を進んでゆく。
おじーちゃん、おばーちゃん、都会はやっぱりすごいところです。
石畳を歩いてる人たちだけで、村のみんなより多いです…。
そんなことを考えつつ。少年は石畳をうろうろ。
冒険者ギルドも今宵の宿も、どちらも見つからないままただてくてくと歩いているのだから、それは疲れるというもので…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカレスさんが現れました。
■カレス > 今日も懇意の客の家々に花を配り歩く仕事を終え、帰途につくカレス。
いつもより遅くなっちゃったけれど…。
左手には空っぽになった花籠を下げ、薄手のワンピースを夜風にはためかせながら、自宅を兼ねる店舗に向けて歩く。
………と。ひとりの少年とも少女ともつかぬ若者が、目の前をとぼとぼと歩いているのが目につく。
こんな夜更けに子供がひとりで街をうろつく? なにか訳アリの気配。
まぁ見た感じは王都に慣れない田舎者、お上りさんという風情だけれど。
「……こんばんわ。ねぇキミ、こんな夜更けに一人で何してるの?」
てくてくと近づいては、腰をかがめて目線の高さを合わせつつ、まずはご挨拶。
いかにも普通の花屋のお姉さん、といわんばかりの柔和な笑みをつくる。いや実際普通の花屋をやってるんだが。
■アレフ > 背後から届けられたその声に、最初少年は自分にかけらけた声だとは思っていなかったらしい。
きょろきょろと左右を見回し。そして振り向いて、艶やかな姿に一度ぱちくりとどんぐりまなこを瞬いて。そのうえさらに左右を見回し…ようやく自分のことだと気づいたらしい。
「あ、はい。あの、その…宿を…」
それから、冒険者ギルドを、と続ける。探しているのだけれど、見つからなくて、と続けて少年は屈託なく微笑んだ。
疲れてはいるようだけれど、特段困った様子はない。
いざとなれば野宿くらい、そう考えているのは明々白々。
…そういかにもなおのぼりさん、だった。
■カレス > 「あら、まぁ……こんな時間まで宿探ししてるの?
春になって、旅の人も多くなってきたからねぇ……今から部屋を見つけるのは難しいんじゃない?」
カレスもよく旅をする。珍しい花を探したり、遠くに仕入れに行ったり、それ以外にも色々。
だから宿の事情もある程度わかっているし、野宿の辛さもわかる。特にお風呂入れないとことか。
「てことはキミ、ひとりで王都まで旅をしてきたんだね。宿がないってことは今日着いた感じなのかな。
……あ、私はカレスって言うの。この王都の……あっちの方で、花屋をやってるのっ♪」
カレスは旅の若者にむけて、ひときわ明るい笑顔を作りながら、自己紹介をする。
まるで花が咲いたようなにっこり顔。
軽く首をかしげてみれば、ブロンドヘアがさらりと揺れ、何の花ともわからぬが心地よい香りが漂う。
「……ねぇ。よかったら、一晩だけでもウチに泊まらない? 私、一人暮らしだし」
■アレフ > ぺこり、その名乗りを受けて少年は深々とお辞儀をした。
「ぼくはアレフです。はじめまして」
あっちの方…という指示された方角をなんとなしに覗いてから、少年はにっこりと微笑んでまた、深々とお辞儀を示す。
「ありがとうございますっ
あの、その…お礼は…」
王都に向けて旅をしてくる間、ちゃんと節約はしてきた。一晩くらいのお礼はできるはずだし、これからギルドで冒険者にもなるつもりだ。
よし、お礼はできると頷くと、少年は幾分おずおずとしつつも、さすがにほっとした様子をありありとみせ、「よろしくお願いします」と頭を下げたのだった。
■カレス > 「アレフちゃんね、よろしく♪
……ん、お礼? フフッ、どうしようかなー……そうね、いまの宿代の相場の半分くらいでいいかな?
ぶっちゃけ私の家、この辺の宿ほどキレイでもないし、寝床も一人用だし……ね」
可愛い少年少女と一晩をともにする。好色な淫魔や痴女であれば、「お礼なんていいよー」と言うところ。
だけどカレスは淫魔であると同時に商売人でもあるので、そこんところはきっちり締めてくる。
とはいえ平均的の宿代の半分程度であればアレフにとってもよい条件と言えるのではなかろうか。
「ま、でもアレフちゃんがお行儀よくしてたら宿代おまけしちゃおうかな? 悪い子ならもっと取るけどね。
……さ、もう春とはいえ夜は冷えるよ。早く行こう♪」
ともかく、アレフが自分の誘いに乗ったようであれば、遠慮なく手を繋ぎ、引っ張るように己の家へと案内していく。
すぐに、一軒の店舗へとたどり着く。花屋《睡蓮の谷間》。色とりどりの花が軒先に飾られている。
戸を開け、奥に入ればそこは居住区。決して広くはないリビングとダイニングが1つずつの、手狭な家だ。
ベッドはもちろん一人用。女の一人暮らしである、片付いているとはとても言い難い。
あちこちに花籠や脱ぎ散らかした衣服が散らばっている。
「………ごめんねー、人を招くことってあんまりないから片付いてなくて。
でもウチ、お風呂だけは立派だから。すぐ準備してくるね♪」
招き入れたアレフをリビングに残し、カレスは外に出ていく。湯船の窯に火を入れてくるのだ。
■アレフ > 「半分…」
そもそも、王都の宿屋の相場も知らない少年は、それがいかほどかもわからないのだけれど。けれど、その提案自体が好意的で嬉しいと、またもぺこりとお辞儀をした。
もうこのお辞儀の回数が、典型的におのぼりさんだ。
そんな、おのぼりさんです状態をありありと露呈しつつ。
少年は招かれるままに夜の王都を進んでゆく。まさか、手を繋がれるとは思っていなくて、そこはさすがに俯きがちに。
やがて…現れた花屋は、故郷の村では見ることできないお洒落な店。
驚きも露わにきょときょとと見回しつつ、いつしか気づけばリビングに…。
「そんなこと、ないです。
あの、何かお手伝いすること…ないですか??」
客として招じ入れられているとはいえ、このままお世話になるのも、と。少年はそう思ったのだろう。問いかけは、出てゆく背か、戻り来たところどちらにかけられただろうか…。
■カレス > 「お手伝い? あらあら♪ ほんとうにお行儀のいい子なのねぇ…。
旅で疲れてるところに頼み事するのはちょっと気が引けちゃうけど……うーん」
焚き付けを終え、リビングに戻ってきたカレス。風呂があたたまるにはもう少し時間がかかる。
なにか手伝えることはないか、と聞かれてしばし考え込む仕草をしてしまう。
部屋の片付け? いや、この子に見られて恥ずかしいモノも転がってたりするかもしれない。
それはそれでこの子がどんなリアクションするか楽しみではあるが、カレスにだってある程度の羞恥心はある。
……ならば。
「そうね。アレフちゃんは晩ごはんはまだ? まだなら食事の準備を一緒にしましょう?
根菜しかないからそれを煮るだけになるけれど、ナイフくらいは使えるよね?」
そう言ってカレスはダイニングの隅にある調理台へと向かっていく。
かたわらの籠には人参やじゃがいもなどがまぜこぜに入れられている。そこから数個を取り出し、水桶で洗い始める。
「……そういえば、アレフちゃんはどこから来たの?」
食事の準備を進めつつ、世間話。
■アレフ > 「はい、喜んで!」
炊事は嫌いじゃない、というか、好きな方だ。故郷でもよくおばーちゃんを手伝ったものだと、少年は勇んで腕まくり。一緒にとことことついてゆくのは調理台。
随分背の低い少年には、調理台の上に手を伸ばすのは大変だけれど、当然野菜の皮むきくらいはお手の物だと胸を張る。
「えと…わかりますか?」
そう前置きをして、少年は人参の皮を剥きつつ村の名前を告げたのだが。それはもう、間違いなく聞いたこともないような寒村の名。
「ええとここからだと…」
という説明を聞けば、九頭竜山脈をぐると迂回し、とにもかくにも南東へ…。そりゃもう、随分な田舎だったのだった。
■カレス > 「………うーん、ごめんね。聞いたこともない村だわ……。
私もけっこうあちこち旅してるつもりなんだけどなぁ……」
台所で二人並び、洗い終えた根菜類を包丁でカットしてはザルへと上げていく。
実はカレスはあまり皮むきが得意ではない。不得意な作業をそれとなくアレフへと押し付けつつ。
彼が口走った故郷の名前を聞けば、やはりカレスには心当たりがない。
この国は広い。辺境ともなれば、王都の者のほとんどが知らぬ村々もいくつもあるだろう。
「ひえぇ……あのでっかい山脈を迂回? それはご苦労さまねぇ……。
……家事もできる面倒見のいい子が、どうしてまた一人で王都なんかに来たのかしら?」
二人分の腹を満たすに足る根菜を切り終えたなら、カレスは土間の竈にも火をくべる。
水に香辛料と塩をたっぷりと振り入れ、野菜もドボドボと突っ込む。実にシンプルな料理である。
「ありがと、アレフちゃん。助かりましたよ♪
……そろそろお風呂も湧いたと思うけど、入ってきたら?」
手を拭いながら、カレスは浴室のほうへと目配せし、先にお風呂に入るよう促してくる。
もしこの言にしたがってそちらに向かうなら、そこはリビングとはうってかわって小綺麗に片付いた浴室。
風呂釜はさすがに大人ひとりが体を丸めて入るようなモノだが、洗い場は広く暖かく、スノコまで敷かれている。
この時代において、平民の一軒家にこれほど立派な風呂があるのは珍しいかもしれない。
■アレフ > あはは、と少年は若干乾いた笑いをみせた。
そうなのだ。故郷の名を告げて、知っていると言われたのはもう、旅立って二日目までだ。それ以降、村の名を知っている人など、会ったこともない。
おじーちゃん、故郷はほんとにド田舎でした…。
そんな哀愁を込めて胸の中で懐かしいおじいちゃんに語り掛ける。
人参もジャガイモも、おてのもの、とばかりにするすると皮を剥いて。ひとつひとつ調理台の上へと上げてゆく。
そんな折、問われた言葉に少年はどんぐりまなこを瞬かせ。
「えと、その、冒険者になりたいんです」
修行なんです、と告げた後。あとは煮込むだけとなった段取りを少年も確かめたらしく、いいんですか、と視線が問う。
「あの、ぼく、後でも…」
家主より先というのはやはり、という遠慮が働いたのだろう。けれど、半ばは背を押されるようにして向かえば、そこはやはり故郷では考えられない浴室が。
「う、わぁ………」
しばし少年は全裸のまんまで目を輝かせてその浴室を眺めてそして…。
ざっぱーん、という盛大な飛沫の音はきっと、ダイニングまで届いてしまったに違いない。
■カレス > 「フフッ、冒険者かぁ……わかるわかる。一攫千金を狙うならやっぱりそれだよねぇ。
王都に来る若い子って半分くらいはそれだし……フフッ、私だって一時は冒険者目指してたこともあったよ♪」
危険と秘密に満ちた《まれびとの国》。政情不安なこともあり、冒険者として一旗上げる野望を抱く若者は実に多い。
そしてそんな若者はおのずと王都に集う。情報も揉め事も人の多いところに集まるものだからだ。
……さすがにこの子くらいだと若すぎるようにも思えるが、修行ということであれば分からなくもない。
「……さ、いいから入っておいで。どうして冒険者を目指したとか、また後で聞かせてほしいな♪」
そして、一番風呂の誘いに渋る少年には、背中を押すようにしつこく入浴を促してくる。
……が。
アレフが湯船にざっぱーんしてそう間を置かず。
「どう、アレフちゃん。湯加減はどう?」
がちゃり。浴室と脱衣場を隔てていた木の扉が突然開く。そこにはすっかり衣服を脱ぎ捨てたカレスがいた。
豊満な乳房も、やや日に焼けた四肢も、慎ましやかに陰毛が茂る下腹部も、まったく覆うことなく。
キッチンからはパチパチと薪の爆ぜる音が聞こえるが、カレスは火の元に構うこともなく、戸を閉めて風呂場へと入ってくる。
「お姉さんも一緒にお風呂入っていいかな? フフッ…♪」
小さな湯船を覗き込むように、縁に手を掴んで身を乗り出してくる。
■アレフ > こんなに広い浴槽を独り占め、などというのはこれはもう、故郷では考えられない贅沢だった。
広さで敵うとしたら夏場限定の水浴び、そう渓流の清水に飛び込むことくらい。
それはもう、冷たくて、あっという間に身体が冷えたなあ、なんてことをのんびりと考えていた少年は…。
「え、えええ、あああ、あの、かか、カレスひゃんっ!?」
と、頓狂な声を上げてしまった。
そのまま湯船の中で回れ右。見ませんでしたとばかりにぎゅー、っとぎゅーっと眼を閉じてはみるものの…。
けれどもう、脳裏にはしっかり焼き付けられている。
くらくらとくるくらいに感じているのは、決して湯あたりなどではない。その裸身を見てしまったことによるものなのは言うまでもなく。
■カレス > 声掛けもノックもせず、入浴中の浴室に無遠慮に入ってきた妙齢女性。
裸体を目にするや否や、少年は悲鳴とも驚嘆ともつかぬ声を上げてアッチを向いてしまった。
ふふ……と思わず笑みが溢れる。今までの面倒見の良い成人女性とはちょっと違う、艶っぽさの増した笑み。
「いいじゃないの、一緒に入ったって? ここは私の家のお風呂なんだし?
それに、女の子同士じゃない♪ 恥ずかしがることないよ?」
そう茶化すように後ろから声を掛けながら、カレスはのっしと脚を上げ、湯船へと入り込んでくる。
そっぽを向くアレフの背に胸をくっつけ、むっちり肉の乗った太腿で彼のお尻を挟んでしまうほどに。
ひとりは少年といえど、二人が入り込んでしまえばこの湯船は大変狭い。
カレスはアレフを女の子だと思っているのか? まぁ、途中まではそうだった。
ふんわりとした髪の毛や華奢な肢体、声変わり前の甲高い声、すべやかな肌。
しかし交流するうちに、所作の端々や「ぼく」という一人称からも、この子が男子であることには気づいていた。
「ね、ほら。こっち向いて? 暖まったら、一緒に体洗おう? 長旅で疲れてるでしょ?」
……しかし、カレスの物言いは未だに彼が男の子だと気づいていないかのよう。
■アレフ > 「ぼ、ぼぼ、ぼく、おとこのこですぅっ!」
つい、慌ててしまったのだろう。本当なら、おとこです、と言いたかったに違いない。けれど口から出たのは『おとこのこ』、という言葉だ。言ってから気づいたとしても、これはもう、取り消しなんてできっこない。かぁ、と頬が染まるのは、湯のせいもあってそれはそれはまっかっか。
「ひゃ…っ!?」
けれど、そんな羞恥も長続きさせてもらえない。ぴっとりと背に感じる柔肌に、どきどきどきどきと、鼓動はもう、うるさいなどというものではなくて。
「だ、だめですよぅ、み、見えちゃうからぁぁっ」
ナニが見えてしまうかなんてもう、それは言うまでもない。
懸命に前かがみになっているものだから、それはもうお察しください、というところ。