2019/12/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 偶には、王都の方の冒険者ギルドに顔を出そう。
そう考え、手近な冒険者ギルドにやってきた。
男の顔を闘技場で見た者も居て、そういう者からは少し視線を感じるが、

「おっ」

そこで、見慣れたメイド服の少女を見つけた。
何やら酒をちびちびと呑んでいる。
どうやら暇そうだな、と当たりを付けると、バーテンダーにワインを頼んでから、彼女の隣に座る。

「や、ミユちゃん。カジノぶりだね。
元気だった?」

と気楽に声を掛ける男。
前にミユにやった仕打ちを考えると、隣に座った瞬間逃げられそうなものだが、さて。

ミユ > バーテンがグラスを磨いているのをボケーっとみていると、横の椅子がガタッと音を立て、
一人の男性が座ってきたかの様に感じた。特に気にかける事も無く、そのままにグラスが
綺麗に磨かれていくのを鑑賞していると、そこから聞き覚えのある声。背中をビクッと震わせて
振り向きざまに少し大きな声で、

「ああっ!あのときのっ…えーと、クリス…えと、クロス…あークレス様ですね!
 私はこの通り、とても元気ですよ。クレス様は?」

あの時の事は忘れてはいないが、あれは賭け事の事である。思い出すとまだ少し恥ずかしくなって
頬を赤らめるが、起こってしまった事を気にしても仕方ないし、あれのお陰でギャンブルという
ものがどういうものか教えて貰えたのだから、別に悪い気はしていない。

「お久しぶりです~」

と、片手を差し出すミユ。その顔は満面の笑顔であった。

クレス・ローベルク > 話しかけた途端、とんでもなく動揺する彼女。
最初は、まあ無理もないかなあと思っていたが、しかしその後満面の笑みで手を差し出された。
てっきり、怯えるなり、或いは怒られるなりすると思っていたので、これは予想外。

「お、お久しぶり。俺もまあ、元気だったよ」

と、取り敢えず差し出された手を取って軽く上下に振る男。
カジノで出会った頃から思っていたが、間が独特な娘である。
さておき、知り合いに出会えたのは幸運だ。
別に無理に仕事を取る必要もないので、暫く彼女と話して時間を潰そうと思う。

「ミユちゃんは冒険者……って訳でも無さそうだけど。
お酒飲みに来たのかな?俺はまあ、休みに王都に来たついでに、儲け話でもないかなーぐらいの気持ちで来たんだけど」

『どうしてここに』は雑談では定石である話題だが。
一応、興味もある。
ご主人様とのお勤めや、居酒屋経営で収入はあるはずの彼女が、どうして冒険者ギルドなんぞに居るのか、と。

ミユ > ミユは元々能天気、過去の事などあまり気にしないタイプ。
悪く言ってしまえば、その時その時で適当に生きてるタイプとも言える。
殺されかけたとかならまだしも、ショーの見世物にされた『程度』である。
それも半ば無理矢理二人共周りの雰囲気に圧されて仕方ない部分もあったのだから、
ミユは、クレスに対し、そんな悪い感情は持ったりはしない。

「あはは、奇遇ですね~」

手を振りながら嬉しそうに話すミユ。
メイド服なのは前の通りだが、流石に季節が季節だけあり、流石に冬服に着替えてはいる。
見る人が見れば、その生地が目が飛び出る程の高級生地であり、裁縫も細かい所まで行き届いている
一級品であることはすぐに分かるだろうか。

「ん~冒険に出たいとかじゃないんだけど、活気のあるギルドの雰囲気が刺激的で好きだから
 たまーに、呑みにだけ来てるの。今は色々な出会いもあって、富裕地区に住んでたりするんだけどね。」

少し自慢たらしく話をすると、さして高くもないエールを一口。ぷはっと小さく鳴くと、

「さっき、依頼リスト見てきたけど、単独で出来そうな依頼は人気高いのか、売り切れ御免してましたね。
 冒険者も不況なのかもしれませんね~」

揺れるお酒の水面を眺めながら、他人事のように呟く。ミユが通っていた頃はまだ単独でできそうな依頼は
選ばなければ困らない程度はあったのだが…最近は冒険者が明らかに増えているのがわかってきてるので、
増えない依頼の奪い合いになっているのだろうとミユは勝手に思っていた。
少しノスタルジックな気分になるミユではあったが。

クレス・ローベルク > 頼んだワインがグラスで渡され、取り敢えず一口。
話している感じ、彼女の笑みに嘘はない。
ならばいいかと、男はその話については取り敢えず置いておくことにした。

「ああ、わかるわかる。普通の酒場じゃ味わえない雰囲気だよね。
しかし、富裕地区か……。ミレーの娘としちゃ大出世……って言い方もおかしいけど、凄い所に住んでるな」

元々、ミレー族自体が奴隷種族である。
そんな彼女が富裕地区に住むなど、相当の幸運があった事は確かだ。
その『出会い』というのが余程いい出会いだったんだろうな、と思う。

「まぁ、今は割と国内は平和だからねえ。トラブルシュータ―的な仕事はどうしたって少なくなるんだろう。
……まぁ、良い事だろうけどね。人間同士のいざこざが無いってのは」

遠い目になっているというか、どことなく懐旧的な気分になっているようだ。
もしかしたら、昔は彼女も冒険者だったのかもしれない。
しかしまあ、湿っぽくなるのも何なので、話題を変える事にした。

「そういえば、俺、本職は剣闘士――アケローン闘技場で試合してる人なんだけど、君闘技場来たことある?」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ミユ > クレスがワインに口をつけるのを横目で見つめるミユ。
感じから見るに、再開した時に感じた少し緊張めいた雰囲気が途切れたようだ…

「そうそう、一言で言えば騒がしい事には代わりないんだけど、酒場にはない、この落ち着かない雰囲気。
 ギルド独特。なんとも言えない雰囲気が好き。…たしかにね…私の本来の身分にすれば大出世です。
 とはいえ、メイドという身分に変わりはないんですけどね~…」

しかし、満更でもない笑みを零すミユ。貧民地区に隠れ住んでた頃とは天と地の差である。
逆に言えば、富裕地区に住んでる以上、なかなか下層に気楽には出れないという縛りみたいなものもあり、
ミユには少ないほうだが、ある程度柵もあったりして、それはそれで苦労というものもあった。

「平和がいちばん!とは言っても、冒険者さんが食いっぱぐれる程平和になっても困るですしねー
 バランスが難しいです…最近は行く所がなくなりすぎて、近場の既に冒険し尽くされたような
 ダンジョンを再発掘するのに、隠れ扉探しとかの依頼とかもあるのですよー…でも隠し扉は
 あっても、トラップだったりして、イチかバチか見たいなところもあって、危険度は高いです。
 そういえば、最近は傭兵の依頼も減ってる様ですね…街道が安全になるのは良いことですが、
 護衛の仕事がなくなるのも困ったものです。」

そう話すと、次は一気にエールを煽り、ぷはーなんて富裕地区住民には似合わない様な声を上げている。
そういう姿をみるに、まだまだあっちの世界には慣れていない様でもあり。多少は居心地の悪さを
感じているのが見えるかもしれないが。

「…ふん?」
湿っぽい話題はここまで、と言う雰囲気に気付いたミユは、クレスの話に切り替える事にした。

「アーケロンですねぇ…色々噂は聞いてます。昔は絶対出れない位弱かったけど…
 今はどうかなぁ? もしかしたら、勝てるかも?なんてあまり現実的かもしれない妄想に
 浸ってたりもしますけども。」

アーケロン闘技場の事は噂では色々聞いた事はある。といっても、本気で戦える場所、負けた女性を
いたぶって観客を楽しませる事もあったりと…まあ、その程度ではあるが。

クレス・ローベルク > 「す、すごい詳しい人だね……?」

案外、ベテランの冒険者だったのかもしれない。
しかし、此処まで一気に語るという事は、意外とこちら側への未練――否、昔に戻りたいという訳でもないのだろうから、それはあくまでも昔に戻らないという前提での懐旧なのだろうが――とにかく、そういう気持ちが見て取れる。

「(あれ、……もしかして、これイケるんじゃあないか?)」

と考える男。
男には、実は闘技場の幹部から言われている『仕事』があった。
正直、頼んだ方も頼まれた方も実現可能性は低いと思っていたが……とそこまで考えた所に、絶妙な話の運びとなった。

「へぇ、じゃあ結構興味あるんだ。
……うーん、そうだね。ミユちゃんの実力次第だけど、大体闘技場に来る人達は強さに自信がある人だから――普通に賞金稼ごうと思うと、難しいかな」

と、そこで男は言葉を区切る。
そして、少し声を潜める。
実は別に声を潜める必要は無いのだが――こういう、『こっそりと教える感』を出す事で、裏技感、お得感を出すのは営業の小技だ。

「……普通じゃない方法があるんだけど、聞いてみる?」

ミユ > 【次回へ続く…】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミユさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にさんが現れました。
> 太陽がそろそろ沈む、そんな夕暮れ時。
平民地区を通る大通りの一本、その端っこを少女は歩いていた。

「うーん…この辺りにあるーって、言ってたと思うのですけどねー…?」

そんな呟きをもらしながら、キョロキョロと辺りを探るような仕草。
他に行き交う人達とたまにぶつかりそうにはなってはいるも、危なげではあるが不思議と避けていた。

呟きと仕草から、何かを探しているか、道に迷っているか、そのどちらかと分かるものだろう。

> 少女の視線、それをよく見れば探しているものの予想は立てられるかもしれない。
その視線の先は通りの先と言うよりも、建物や、そこに掛けられた看板に向けられているからだ。
トテトテと緩やかな歩調を崩す事無く歩み続け、たまに、開いた扉から中を覗いたりもしている。

「はぅー…でもでも、そろそろお日様も沈んでしまいますねー。
ご飯の時間ももうすぐでですし、今日は諦めた方が良いのでしょうかー?」

ふと気付いたように、視線が前から上に向く。
建物の影からしか見えないが、夕暮れ時なのは何となく分かる。
言葉の語調から焦りは感じられず、急いで探している訳でもなさそうに感じられるかもしれない。

なのだけど、実のところは早く見つけたいところ。
仕事がいつまでも出来ないままなのは、ちょっと心苦しく感じてしまうからだ。
少女が探しているのは、そうした事の出来る場所、冒険者ギルドであった。

> くぅ、と小さく少女のお腹が鳴る。
緩やかだった歩みがどんどん遅くなり、ピタリと止まる。

「お腹…空きましたねー…」

両手でお腹を抑えるようにして、ポツリと呟いた。
カクンと小首を傾げながら、肩から提げた鞄に両手を添える。
鞄を開いてゴソゴソと漁り、取り出したのは小ぢんまりとした財布。
その財布を更に開いて中を覗き込み、少し考え込む。

お世話になっている場所に戻ればご飯は出て来るかもしれない。
しかし、その場所は富裕地区で結構距離がある。
歩いて戻ったら、その途中で倒れてしまうかも?なんて考えてしまう。
近くにご飯を食べれる場所はあるけど、覗いた財布の中身はなかなかに酷い様で。
遠慮無しに食べて大丈夫かな?なんて思えるような。
進むか戻るか、少女は二つの選択肢に迫られる。