2019/11/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にジェイさんが現れました。
ジェイ > 平民地区と富裕地区の間にある酒場。
富裕層の客にも満足できるようにという配慮か。
落ち着いた内装と暗めに抑えた照明が、店内を淡く装っている。
例えば、ギルドを通せないような依頼を持ってくるものと受ける者。
例えば、客を探す娼婦とそれを買い取るような者。
或いは、一夜の恋人を探す者同士。表沙汰にできない情報を売り買いする者達。
この場にいる限りは、他人には干渉しないのが暗黙のルール。
“商談”のまとまった者から奥や二階の個室、あるいは囲いのある席へ移動する。
ここは要は、そういう店だ。

「―――すまないが、もう一杯。」

そこのカウンター席――言い換えれば、フリーの席のスツールに腰を下ろしている。
オーダーに応えて差し出されるのは琥珀色の入ったグラス。
淡い蝋燭程度の灯りを、透明な氷が映し出す。
――何の用事があるという訳ではない。
ただ、こうして時折、この店で時間を過ごすのが習慣だった。
依頼を受ける時もあれば、女を買う時もある。勿論、何もなく酒だけ楽しんで帰る時も多い。
今日はどうなるか――そんな不確定な時間を味わいに来ている。
そんな風に表現すると、いささか気取り過ぎではあるが。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にハーティリアさんが現れました。
ハーティリア > 「ふぁ、あぁ……。」

どこか湿り気を帯びた欠伸の声と、ドアの開く音を引き連れて中に入ってきたのは、絶世の…と枕詞をつけても、みためだけなら言葉負けしないだろう白磁器のような肌の美女めいた風貌。
ただ、大口を開けるのを掌で多いながらの欠伸はなんともその造形にそぐわぬ雑な所作であるが…。
ただの人であろう他の客は、どこか浮ついた視線を向けるだろうが…魔力を感じ取れる者には、死体に魅了と呪いの魔力をムキになって詰め込んだような、艶と悍ましさを感じさせる事だろう。

「んん……あー、ワインあるかい?…銘柄?オススメでいいさね。」
甘い魅了の香りと死の気配が同居した人形めいた美貌を崩した欠伸をしていたソレは、適当なカウンターの席に腰掛けて注文を投げる。
任された店主は、ならばとばかりに高めのワインを空けているが…当の本人は気にもせず。

ジェイ > 店内の空気が、塗り替えられる。
この店には珍しい雰囲気の人物だ。その外見もそして、内面も。
最初に感じるのは、死体のような気配。
そこにありったけの魔力を詰め込んだような存在。
その底は――見えない。感知できない。
つまるところ、真っ当な人間ではない。自分と同様に。

「これは、珍しい……。」

独り言のように紡ぎ出された言葉。
思わず、といった風に零れ出たそれは、席に着く美貌の耳にも届くだろう。
黄金の視線を、無礼にならぬ程度にその姿に向けながら、グラスを口元に傾ける。
視線以外の感覚は、彼女――便宜上、彼女と表現しよう――に焦点を集中させている。
相手が敏感ならば、注目されているのがわかる程度には。
そして、それがわかっても構わない程度には。

ハーティリア > どうぞ、と銘柄を指定しなかったのを良いことに、富裕区の客に出すランクのワインをしれっと空けた店主からグラスを受け取り…クイ、とワインの赤と遜色ないほど、赤い唇で一口。

「ん…美味し。……ん?おや、まあ。」
視線に、というより…意識されているのに気付いたのか、体にまとわりつくような薄手の、むっちりとした体躯のラインが浮き出るような薄手のローブを身にまとったソレがそちらに目を向けると…今度はこちらが驚いたように目を見開く。
見開いた目に微かに浮かぶ六芒が、彼の継ぎ接ぎされた異質の魔力を目視していた。

「ごきげんよう、珍しいのはお互い様だろ?そんな舐めそうな程意識されたら…感じるだろ?」
クツリと、喉を鳴らして笑みを浮かべ、声は涼やか、口調は雑派…どうにもちぐはぐな言葉を赤い唇から紡ぎながら…愉しそうに目を細めるソレからにじむ甘い香りに…周囲の客は知らず識らず陶然としている。

ジェイ > 魅了。術式というよりは、“性質”のそれに近いと感じる。
嗅覚を抑える。神経伝達物質に干渉。
彼女の魅了――魅力と言い換えても良いだろう。それに侵された部分を再構築する。
と、視線が、此方に向いた。茶色の六芒星と、静かな金色が触れ合う。

「こんばんは――これは失礼。確かに珍しいのはお互い様だな。」

此方の魔力を感じようとすれば、此方のことを探ろうとすれば。
一言でいえばちぐはぐのモザイクのように感じるだろう。
人と、魔と、獣と、それ以外も雑然と、けれども整然と組み合わさったような感覚。
座る席は、間に1つ、2つスツールをはさんだ距離。
会話には支障はないし、手を伸ばせば届く。その程度の距離だ。

「良ければお詫びに、一杯奢ろうか?」

そして、落ち着いた色合いの声音がそんな風に持ち掛ける。
陶然、と“彼女”の色に染め上げられていく中。
彼の瞳と言葉だけは、平静なそれを保った侭でいて。

ハーティリア > こちらが彼に意識を向ければ、彼がこちらに意識を向ければ…おのずと探る意思と興味は交差して。
そうして互いを意識すれば…無造作に、垂れ流れていただけの「色」がそちらに向かう。
首にかかった髪をどける仕草、体から立ち上る気配も、漂う香りも、そして……

「だろう?…おや、じゃあお言葉に甘えて。」
返す声…五感六感を刺激する全てに魅惑が宿るのは…淫魔の祖種ならば当然の事。
まるで、色の違うピースで作ったパズルでも見ているような気分に、ふっと瞳の六芒が瞳孔の色に紛れて見えなくなり。
己の色に未だ染まらぬ男を、楽しげに眺めている。
クイ…と残ったワインを流し込むように飲むと。

「じゃあ、店主さん、おかわり…ちょーだいな?」
差し出したグラスに、まるで夢見心地のような表情の店主が、言われるままにトクトクと注ぐ。
お勘定を催促できるのかすら、怪しく見える程だった。

「あぁ、そうだ。……俺はハーティリア、しがない花売りよ。」
よろしく、継ぎ接ぎクン、と名を知らぬ彼を適当に呼びながら、グラスを掲げて笑みを浮かべる。

ジェイ > 深淵を覗けば、覗き返される。
それと同じように、此方の伸ばした探査の指を辿って触れる「色」。
気配と、香り、色香と呼べるものを感じる。
傾城、傾国というのが似付かわしいだろう――。
けれど、それはこの継ぎ接ぎ細工の魂にまでは届かない。
魂なんてものがあるとすれば、だけれども。

「ああ――遠慮はしなくていい。
 いや、多少はしてもらおうか。
 流石にこの店の酒全部を買える程の持ち合わせはない。」

向けられていた聴覚が触角が味覚が嗅覚が
そして、人が持ち合わせていない感覚が引いていくのを感じるだろう。
六芒の色合いが瞳の色に紛れるのときっと同じくらいに。
それは、これ以上深入りしない。と暗黙に告げるように。

ワインを流し込むのに合わせて、自分も酒のおかわりを頼んでおこう。
店主が勘定を忘れてくれるのならば、申し分ない。

「――……ハーティリアか。俺はジェイだ。傭兵をしている。」

“花売り”それは“どちら”の性を対象に?と浮かんだ疑問を飲み込んで
名乗られる名前に、名乗りを返す。
「乾杯」と何に捧げるか口にしない侭、グラスを掲げ返す。
そしてまた、酒精を口に流し込むのだろう。

ハーティリア > 別に意図したわけではないけども、まるでお互いの内側を壁で守るようなやりとりが水面下。
しれっと、彼に意識的に向けていた視線をふいと外すだけで、一気に甘い香りが霧散した。
継ぎ接ぎ細工の魂にはぜひとも…死者の王【アンデットロード】としては触れてみたかったけれども。

「ははっ、いやいやそんなに飲まねぇよ。味を楽しんでるだけだからねぇ。」

死者が飲んでも酔えねぇだろう?と言外に、意識して作った色を雑な言葉で散らすようにケラケラと笑う。
まあ、とばっちりで色香を当てられた店主は、まだ色惚けた状態から戻ってこれてはいないが。

「ジェイ、ね。 長かったら適当に縮めようかと思ってたけど、必要なかったな、よろしく、ジェイ。
 それにしても、お前さんみたいなの…作ろうって思う奴がまだ居たんだねぇ。奇特だこと。」

ひらりと手を挨拶代わりのように軽く振りながらも、掲げたグラスで乾杯と返し…コクリと、また赤い酒精を口に含む。
喉を潤す葡萄の香りに、ほう…とどこか甘い吐息をともに漏らしたボヤきとも付かぬ言葉は、ここに居る大半には理解できないことだろうが。

ジェイ > 漣さえ立たないやり取り。
深い深い水面下での屍魚の探り合い染みた者。
屍の王にと合成の魔人のそれ。淡い酒精が弾ける香りに消えていく。
霧散した甘い香りの後に残ったのは、雑然とした言葉。
楽し気に笑うその言葉に、帽子の下、一度首を振って。

「どうかな?それくらいは容易く飲みそうに思ったが。
 ――ああ、店主への“それ”は解除しなくて構わない。」

惚けた状態からは帰ってこなくても構わない。
本気か冗句か。そんな風に言葉を告げる。
その意図するところを、悟られぬように、表情に色は乗せない侭
また、一口氷の入った琥珀色を傾ける。
カラン――と涼やかな音がグラスを鳴らして。

「ああ。よろしく。ハーティリア。縮めるのならば、ハーティか?
 さて、何を思っていたかまでは知らんな。それに、随分昔の話だ。」

彼女の名前に対して言葉を返した後
少しだけ、挟んだ沈黙。刹那、口元を綻ばせた。
苦笑するような、何かを面白がるようなそんな笑みをグラスの向こうで少しだけ。

「――推測だが、君と似ていたんじゃないかな?」

例えば、死をも乗り越えてしまうくらい。
彼女のことは何も知らない。読み取れたのはあくまで今の情報だけだ。
けれど、尋常ではない何かが形作っているのはわかる。
そんな気がしたから、告げる台詞。

ハーティリア > 攻防、というには殺意なく。交渉、と呼ぶには言葉が足りない。
そんな探り合いは、甘い香りと共に消えていく。

「失敬だねぇ、俺は元々酒はあんまり飲まねぇよ、ミルクのが好きだもの。」

酔えないのなら、わざわざ酒精で後味の苦い物を飲む必要はなかろ?と肩を竦めて。
あくまで味を愉しむだけ。楽しんだらそこでおしまい。
あとは酔いたい奴が飲めば良い、酒とはそういうものなのだから。

「ハーティでも、ハティでも、ハーツでも…好きなように呼んでおくれ。」

問いかけられるとクスリと笑みを浮かべ、彼に選択を委ねるように言葉を返す。
実際、その名で呼ばれたことがあるかのように。

「…俺ぇ?…あぁでも…そうだなぁ、確かにやろうと思ったら、できなくもない、か。」

確かに、己と同じ『リッチ』なら…死霊術に屍体の扱い、錬金術も含めて、できなくもない。研究時間も文字通り、飽きるほどあるだろう。

「はっは、やめろよー。100年以上前の日記見つけられた気分になるだろぉ?……いや、まさかなぁ。」

突如、心の中に沸き起こった「自分がそういうのを作るのにハマってた時期の産物」という疑惑。
流石にそれはないだろう、とは思うものの…少しばかり視線が記憶を探るように宙をさまよったとか、そうでないとか。

ジェイ > 「そういうものか?
 確かに、わからないでもないがな。」

自分だとて、アルコールは容易く分解されて酔うことはできない。
真似事、と言われればそうなのだろう。
けれども、酒に罪はないし、それを酌み交わす行為もまた同様。
だから、グラスを干して、カウンターに置いて。

「ハーティリアで良いだろう。略すにはまだ、出会って間もない。
 それに、その響きはそう悪くないしな。」

選択を委ねられれば、結局、略さない名前を好んだ。
艶やかな彼女に、似合っている。
この、どこか花が開くような響きを感じさせる名前は。

「どうだろうな?どちらにせよ、碌な者じゃないのは確かだ。」

ふわりと、席を立ちあがる。
彷徨う視線の行方を追いかけることはしない。
相手に微かに浮かんだ疑問の答えは知ろうとしないし、知りたくもない。
“そう”であろうとなかろうと――どちらでも構わないのだろう。
いずれにせよ――この酒は悪いものではなかった。
だから、そっと帽子を取って別れの挨拶代わりに振ってみせよう。

「――さて、そろそろ失礼するが。また、何処かで。」

再会を約するような言葉をひとつ。
そして、カウンターに滑らせるには二人分には少し多い代金。

ハーティリア > 「そういうもんだろう? 好きなだけ飲めるからこそ、好き嫌いが出るもんさ。
 いくら飲んでも酔わないなら、飲みたいだけ飲めば十分だろう?
 まあ、酔う奴も、飲みたいだけ飲むんだから一緒か。」

結局、生きてようが死んでようが、飲み食いは好き嫌い次第だな…と結論がついて、苦笑いを浮かべながら。

「ふふ、そりゃあどうも。 そうそう、好きなように呼んでおくれ。」

略すも好き好きなら、その逆もまた自由。
じりじりとしたやりとりも、悪くはない、今は。

「確かになぁ…あれ、俺地味にろくでもない扱いされてねぇ?」

俺に似てるんだよなぁ?と苦い顔をしながらも、すぐにそれは苦笑いから笑みへと変わり…この野郎、と赤い唇が楽しげに軽口を叩く。

「おや、残念。もう少し話していたかったけど…じゃあ、またどこかで。」

再会を約するような別れに、縁があれば、とは言わないでおいた。
二人分には少し多い代金のそれ…夢見心地の店主の手元には、きっちり二人分の代金だけが残るだろうが…。

「じゃあ、俺も…気が済んだらまあ、適当にブラつくか。」

そうってワインを傾ける男の痕跡は、金と甘い残り香以外は…店主のもとには残らなかったようだが……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からジェイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からハーティリアさんが去りました。