2019/10/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 薄暗い古物店内で一日中すごしていると、ただでさえ感情表現を苦手とする顔が、ますます固まってしまいそうな気がする。だから時には外に出て太陽の光を浴びるついでに、あまり高くはないお店で外食したりする。
その帰り道。まだ明るい時間だったから近道のつもりで裏通りに入ってしまったのが失敗だった。数人の男性に呼びとめられて、どこかへ遊びに行こうかと誘われる。もちろん仕事があるからと断って、先を急ごうとしたけれど、見るからに気が弱そうな顔をしているせいだろう、しばらくしつこく付き纏われてしまう。
危うく腕を掴まれそうになって、あわてて駆け出し、どこかのお店の裏に積み上げられた木箱に小さな身体を寄せて息を潜めた。ときどき物陰から、おそるおそるまわりの様子を窺って。

「……はあ」

彼らはもうどこかへ行ってしまっただろうか。探している声も聞こえないから、こっそりと移動を開始する。なるべく、なにかが視線を遮ってくれるような移動の仕方で表通りへ近づいていこうとする姿は、傍目に不審に見えるかもしれないけれど、自覚もなく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 彼女がこっそりと歩いていくその直ぐ近くの店。
そこから、青い闘牛士服の男が出てくる。
最も、こちらは裏から出たのではなく、裏通りを正面入り口に設定してある店なのだが。

「ううん、今日の食事処はいまいちだったな……」

あまり愉快そうではない、表情でそう呟く男。
スープは悪くなかったがパスタの茹で加減がなぁ、などと呟きつつ、ふと通りを見てみると、

何かメッチャ隠れながら歩く女の子の姿があった。

「なんだ、ありゃ」

人目を忍んでいる――のだろうが、実際には寧ろ目立ってしまっている。
明らかにこういう裏道の類に慣れていない、一般人の挙動だ。

「ふむ」

一つ頷くと、男は彼女の後ろから足音と気配を消して近づく。
魔物除けにも使われる気配絶ちだ――一般人にはまず気づかれまい。
そして、殆ど至近距離と言える所まで近づいて、

「うわああああああああ!」

と悲鳴か、さもなくばアンデッドの絶叫のような声をあげてみる。
要するに何の害意もない悪戯だが――さて、彼女の反応は

ミンティ > 基本的に建物同士の隙間を縫って伸びているような裏道だから、時間帯は昼下がりであっても、表通りに比べて薄暗い。見通しがきかないほどではないけれど、不安は煽られてしまうから、いつも以上にびくびくしながら慎重に進む。
小石を一つ踏みつけてしまうだけで、足が痛くなったわけでもないのに身を竦めて、息をひそめる。緊張で高鳴る胸を鎮めるように片手を起きながら、素人なりに気配を殺しているつもりになって。
しばらく歩き続けて、やっと、もう一つ角を曲がり、まっすぐ進めば表通りに出られるところまでやってきた。この時間だから、人の多いところに出てしまえば、先ほどの彼らに見つかってしまっても、強引にどこかへ連れていかれたりはしないだろう。そう考えて、ほっと息を吐いて緊張を解く。

「――――!」

ちょうど油断したタイミングで、急に背後から大きな声が聞こえた。あまりの驚きに、とっさに振り向く事もできず、頭の中を真っ白にして固まってしまって。

クレス・ローベルク > 「ああああああ……りゃ?」

てっきり、驚いて声を上げるとか、或いは怒るとか、そういう対応を予想していた男。
そのすべてを裏切っての不動に、今度は男の方が少し慌ててしまう。
良い年の大人が、大きな声を上げまでして、得た結果が無視。
こんな居たたまれない事はなかった。

「い、いくら何でも無視は酷いんじゃあないかい、ねえ、ちょ……っと?」

回り込んでみると、色白の小さな顔の少女が、瞳を見開いて固まっていた。

「ありゃりゃ?もしかして、魂抜けちゃってる感じ?おーい、起きろー。
起きないとセクハラ……は日が高すぎるか、くすぐったりしちゃうぞー」

と顔の前で手を振ってみる男。
流石にこのまま去ってしまう訳にもいかない。というか去ってしまったら、多分明日には衛兵から『謎の驚かせ男』として不審者扱いされてしまう。出来ればそれは避けたい所だ。
故に、彼女が正気を取り戻してくれないと困るのは、実は男の方だったりする。

ミンティ > 心臓が止まってしまったかと思うくらいの衝撃に、微動だにできない。大声の主がこちらに危害を加えてくるような魔物だったなら、このまま抵抗もできずに食い殺されてしまっただろう。
幸い相手は人の姿をしていて、大きな声以上のなにかを仕掛けてこなかったから、凍りついたようになった思考も時間とともに落ち着きを取り戻し。はっとしてから、息を吹き返したように大きく乱れ始めた胸の鼓動を、片手でぎゅうっと押さえて。

「……っ。…ぁ、…ええと……?あ、えっと、その、す、すみません……っ」

なにが起きたのかもよくわかっていないから、こちらの様子を気にするように目の前で振られる手と、相手の顔を確認して、とっさに謝ってしまう。
自分が通行の邪魔をしていたからか、きっとそんな理由で叱られたのだろうと思いこんで、眉を八の字にした申し訳なさそうな顔で、ぺこぺこと何度も頭を下げる。