2019/09/26 のログ
ガルディ > 入店するのを確認したバーは、やはり男も覚えのある店だった。
その店の取り次ぐ依頼の種類も把握している。店はあくまで取り次ぎであると知れれば、追跡は其処まで。
其処に顔を出す男と少女で違うのは、破滅を与える側か受け取る側か。
男はそれ以上踏み込む事無く少女が姿を現すのを外で待って、場所を移す。

「――『小鳥』はつまみ食いなんかより悠々と冒険してる方が似合ってると思うんだが、どう思う?」

店から出た少女が一つ、二つ角曲がって、更に篝火の少ない路地へ曲がる――その向こうから、長身の男が身を乗り出した。
寂れた酒場で扱う符丁を含んだ物言いで、受けた依頼の内容を知っているとチラつかせて。

「よう嬢ちゃん、はじめましてだな。……早速で悪いが、名前を聞かせてもらっていいか?」

初めの問いに対しての返答も待たず、少女へと詰め寄る。
特に奥地である酒場へと向かう数少ない路地の一つである其処は、辛うじて二人並んで通れる程度の広さ。
逃げようとするならば少々荒っぽい手付きで。大人しく後退るなら、ジリジリと。
どちらにせよ、壁と巨躯で小さな身体を挟みにかかり。

シルフィエッタ > 寂れた酒場を出る。入った時と変わらない、ひっそりとした雰囲気。
その中に足を踏み出し、今度は元の場所へと帰る道を歩き出す。
角を一つ、二つ――足音も気配も控えて進むと、やがて辿り着くのは暗い路地。
篝火の死角になっていて、どんよりとした薄闇が蟠るそこは、不意打ちには丁度良い。
警戒して進むその先、暗がりから抜ける為のそこに、一人の男が立っていた。
こちらの姿を認めるや、含みの有る物言いが飛び込む。変わらぬ表情の裏、どきりと心臓が跳ねた。

「おや、さては『小鳥』が摘み食いも冒険も、その両方を愛する欲張りなのを知らないね?」

相手がこちらの"仕事"をちらつかせるならば、こちらも相応に相手をしなければならない。
敵なのか、そうではないのか――後ろ暗い稼業に足を突っ込んだ中で、味方、等ということだけはあるまい。
問いの返しを待たずに詰められる距離。とは言え、ここで下手に手を出すのも愚か者だ。
逃げも退きもせず、むしろ笑みすら浮かべて、彼が前に立つのを見上げることにする。

「やぁ、はじめまして。随分とせっかちだね、キミは。名を尋ねる時は自分から、と教わりはしなかったかい?
 ――おっと、恋人の距離まで詰め寄って来るのは勘弁願いたいね。話すだけなら逃げはしないよ?」

仕方無しに彼と向き合えば、背中には壁、前には巨体。しかし少女は揺らがない。
この程度でいちいち動揺している様なら、そもそもこんな場所に用事など作らないのだから。

ガルディ > 少しばかり意識的に、威圧的に、歩みを進めるようにした。
けれども小柄な少女は少なくとも見た目の上では表情を変えず、愚かな脱兎の如き真似もせず。
むしろ、男好みの笑みを浮かべる度胸に釣られて口端をわずかに上げて。
軽口混じりに制止する少女の言葉は聞かない。

「何、あんまり可愛らしい『小鳥』が捕まりそうなんで、昂ぶってんのさ。
 ……上下がある場合は別だ、とも俺の家では教わったかなぁ」

暗がりから抜ける側には腕をついて遮り、脚の合間へと脚を入れて更に距離を詰める。
頭突きと急所は警戒し、頭と腰だけは遠く。
フードを降ろさせて、暗がりでも色の解る碧髪を見下ろして。

「この間な、とある公園で嬢ちゃんを見たよ。随分熱心に数を数えているようだったからよぉく覚えてる。
 ――さて、俺は誰にこの情報を売っぱらうのが一番儲けになると思う?」

敵となるか、そうはならないのか――それは、少女の選択肢次第である。
味方とはならなくとも、敵とならないだけの取引は出来る。既に軽く材料は提示した。

「……触ってみな?」

そう耳元で囁いて、少女の手を取り、強引に自分の腹部へ向ける。
指先でなぞらせるのは、とりあえずいかがわしい場所ではなく。ベルトのバックル。
その意匠は、盗みに入る家でなくともその近所であった筈の、男の実家の家紋。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 裏通り」からシルフィエッタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 裏通り」からガルディさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 -大通り-」にルナルさんが現れました。
ルナル > 屋台や露店が並ぶ大通り。ルナルは今日も露店を出していた。
彼女の露店はいつも盛況であり、早々に売り切れるのだが……

「鳥鍋は失敗でした」

目の前で煮える鍋。
味は良いが、さすがに食べ歩きに向いてなさすぎる。さらに椀が返却制なため、熱々の鍋を手早く屋台の前で食べるという苦行の店になっていた。
そんなところに来る客はほとんどおらず、珍しく閑古鳥が鳴いている。

ルナル > 鳥一羽をつぶし、ほぼ全部の部位を使った鳥鍋は、複雑な旨味を醸し出しているが、欠点のせいでだれも買わない。

これは夕飯にして、今度はギルドの食堂で作ろう。そうルナルは決心した。

ルナル > そうして時間は経過していく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 -大通り-」からルナルさんが去りました。