2019/08/07 のログ
■イグナス > まだまだ暫く、食べてたとか――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「 茶房「ゴブリンダンス」」にベルモットさんが現れました。
■ベルモット > 【待ち合わせ中です】
ご案内:「 茶房「ゴブリンダンス」」にシスター・マルレーンさんが現れました。
■ベルモット > 『獣人が住んでる所に濫りに近寄ってはいけないよ。あれは人の形をした獣で、その感情や価値観を人の定義で推し測ることは危険なのだから』
──あたしの国では良く言われた事だ。
国元では人と獣人は住んでいる地域自体が分けられていたから、きっと昔々に諍いでもあって相互不干渉の協定でも結ばれたんでしょう。
結果としてあたしは伝え聞いた事だけで、人と人の形をしたものの判断をしていた。
「まあ事故とか防ぐ為の言い伝えだったんでしょうけど……杓子定規に全部が全部……それもやっぱりおかしな話よね」
人の形をした竜と逢った。
人の形をした鬼と逢った。
故郷の言葉だけで判断するならそういった存在と交流する事は危険で、憚られる事だ。
人の形をしているからと言って判断基準や思考までもが同じであると判ずる事は危険だ。
勿論、判る。解っている。でも、人の形をしているのだから、全てが違うと判ずる事もまたおかしいんじゃない?
最近は、そんな事を想う。
「ただ場合によりけりと言っても……きちりきちりと色々を決めたがるのは天才錬金術師だからこその懊悩ってやつ?」
色々な事を考えながらにあたしは大通り沿いの飲食店に席を取っていた。オープンテラスの落ち着いたお店だ。
夏日であっても今日のように水の気が薄く、からりとした日にはそれなりに混んでいる。
その横を、大通りを丁度檻馬車が通った。中には獣人──この国ではミレーと呼ばれる少年少女が入れられていた。
この国ではミレーは基本的に奴隷階級に在る。物扱いで、財産だ。馬や牛と同じ扱いと言ってもいい。
ただ人の形をしているものが物扱いされているのはあまり良い気分ではなくって、檻馬車を見送るあたしの表情は砂糖を入れ忘れたお茶のように渋い。
大きな傘に覆われたテーブル上のグラスに満たされたお茶には、砂糖とミルクだってたっぷりと混ざっているのに。
■シスター・マルレーン > 戦いに次ぐ戦い。
毎日仕事が課され、それをこなして。更に仕事が課され、それをこなして。
様々な相手と戦い、追い散らし、懲らしめ。
流石にちょっとだけ身体の重いシスターが、ふらりと食事をとるためにお店に入る。
「流石に、なんか腕が重いんですよね………。」
鉛のような肩と腕に苦笑を浮かべながら、軽く汗を拭って。
今日はまだ、じめじめしていないから過ごしやすいけれども。
「………あら。」
席を自由にどうぞ、と言われた彼女はくるりと周囲を見回して………目を止める。
豪雨。
山小屋。
血塗れの部屋。
いろいろなものが矢継ぎ早に頭の中に浮かんで消えて。 少しだけ、声をかけるかどうか戸惑う。
血の記憶っていうものは、思い出したくないものだ。
彼女の中で、自分の存在がそのまま血の記憶とつながっている場合もある。
そうなれば、自分の姿そのものが食事をまずくしてしまうかもしれない。
………視線が合えば、僅かに微笑んで手を振って。 その表情を伺う。
表情が強張るかどうか、じー、っと。
■ベルモット > 次に目についたのは通りを歩く冒険者と思しき一団だった。
あたしとそうは年が変わらないだろう彼ら彼女らの顔は一様に瞳に希望の灯った、一旗挙げてやろうという気概に満ちている。
きっとパーティ結成間もない新人の冒険者達なのだろうと思った。
「この国、やっぱり色々盛り上がってる感じよね。魅力的な話が一杯あるし、というかあたしもそーゆーのに惹かれてきたし。
野外活動ならやっぱりパーティ、組むべきかしら?悩ましい所だけど……」
御行儀悪く頬杖をついた姿勢で甘くて冷たいお茶を口に含んで、喉を潤してからの言葉は泡のように細い。
何故なら冒険者ギルドに所属こそしていないけれど、何かと色々な風評は耳に流れて来るもので、
やれどこそこのパーティが報酬の取り分で揉めただの、痴情の縺れで殺し合いになっただとかは堆くあるんだもの。
それなら一人の方が気楽で良いわ。なんて思ってしまう。──勿論、独りは独りで危険と隣り合わせでもあるのだけど。
「………あら?」
雑多な事を考えながらに視線を大通りから外すと、以前に視た姿に止まる。
雷雨の夜に逢って、災難に遭ったシスター。名前は確か、マルレーン。
明るい所で出会うとまた少し印象が違って視えて、緩やかに笑む様子を好ましく思ったわ。
「こんにちは。シスターさんもお食事?席が決まっていないなら此方は如何?」
だからあたしは相好を崩して向かいの椅子を促すの。
思えばあの夜も、独りのままだったら危ない所だったなあ。なんて喉元過ぎた恐怖を能天気に反芻しながら。
■シスター・マルレーン > 「……ええ、そう。 ちょっと食事をね。 お席、一緒しても大丈夫?
…それじゃあ、お言葉に甘えて。」
勝気で元気、イメージは変わらないままの少女が笑顔を向けて向かいの席を指し示し。
その表情に無理を感じなかったものだから、少しほっとした様子で向かいの席に腰を下ろしましょうか。
「ベルモットはお食事?
………そうね、錬金術師っていう職業の方が、普段何をしているのかはよくわからないのだけれど。
お仕事の調子はどーう?」
首を傾げて尋ねてみる。
どうやら、アレを思い出したくもないトラウマにしている様子は無さそうだ。
とはいえ、自分から口にすることでもないのだから、当たり障りのない言葉を口に出しつつ、やってきた給仕に甘くて冷たいミルクをお願いする。
■ベルモット > 「んふふ、こんな所で逢うなんて奇遇ね。あの日の翌日に足が筋肉痛になったのを思い出すわ」
夜の森を街道に出るまで走り続けた事を思い出して肩を竦める。
結局、あの後小屋はどうなったのかしら?と脳裏に疑問が訪れて、次にはシスターさんの言葉に追い出されていく。
「お食事……というよりはちょっと休憩。ほら、あたしって天才錬金術師だから忙しいし?
そうねえ、何をしているのか。知らずば言って聞かせましょう!」
調子を問われたならばあたしの鼻が華麗に鳴って、暫し天才の軌跡を語る事になる。
西に病気に苦しむ人があれば寄って病を軽減し、東に大切な家具を壊した人があれば寄って華麗に修復す。
謝礼は気持ち程度に受け取って、代わりに名前を売り歩く。そういった草の根活動を滔々と語るのだけど、
はたしてシスターさんの耳に入った事があるかは、それこそ神のみぞ知ると言った所かも。
「……と、いう感じで日々忙しくしているわ。幸いあたしの錬金術は場所を取らないしね。
もし貴方も何か壊れたものが~とかあれば、あたしが直して上げれるわ。……あんまり特殊なものはダメだけど」
例えばあたしが仕組みを知らないもの。教会に飾られた精緻で鮮やかな色彩を誇るステンドグラスであるとか。
そういった物は上手く修復できなかったりする。
「で、そういうシスターさんの方はどう?確か冒険者もしているのよね、ギルドの方で何か耳寄りなお話とかある?」
手をぱしんと合わせて話題を切り替えるようにすると、丁度給仕の男性がミルクと、あたしが注文していたものを持ってきてくれた。
それは硝子の器に涼やかに盛られた、氷を薄く削りだしたものに果実や何やらを盛ったもの。
匙で一口頬張ると思わず頬も綻ぶし、店名に違わずゴブリンだって踊りそうな味だった。
■シスター・マルレーン > 「ふふ、そうですね。
私もあの後ちょっと風邪をひいてしまって。」
とほほ、と肩を落とす。濡れた身体で休む間もなく右に左にと動き回っていたのだから仕方ないのだが。
また遠い目をした。
そして、ベルモットが語る言葉を耳にして、ふんふん、と頷いて話を聞く。
病を治し、物を修復し。
自らの名前を高めながら旅を続ける自由な彼女。
「身体を壊さぬ程度に忙しいのは良いことですよね。
何もしないと、ふわふわしてしまいますし。
……今は修復ではなくて、物を作ろうと思っているところなんですよ。
ほら、騎士様などが籠手をつけているでしょう。ああいったもの。」
そんな自分の素直な欲求を口にしつつ、首を少しだけかしげて。
「ふふ、私は人のためになる仕事は何でもやる、がモットーですから。
お得だったり、耳よりだったりする情報は、お金を出しても情報が欲しい、というグループが全部持って行っちゃいますからねー。
………遺跡が一つあるって噂は聞きましたけど、まだ見つけてないですし。」
………話ついでに、それ私も下さい、とお願いする。 おいしそうだった。
■ベルモット > 「む、そうだったの?敬虔な信徒が体調を咎めるだなんて神様は冷たいのね。
解熱剤の備蓄、もし無かったら分けて上げるから言って頂戴ね。恩を返す好機だもの」
項垂れる様子に私の眉が緩やかに曲がり、何故か籠手を作ろうとしている事に更に曲がる。
「籠手……籠手かあ。ううん、流石にそれはあたしも無理ね。
いえ、構造とか仕組みをきちんと理解すれば錬金術で作れるんだけど。天才も万能ではないというか」
誤魔化すように氷菓子を一口二口と食べ進んで、頭を抜ける鈍痛に渋面となる。
シスターさんが耳寄りなお話に触れていない事にもちょっとだけ渋い顔にもなるけれど、
事が遺跡に及ぶと、唇が得たりと歪んで判り易い。……かも。
「まあ遺跡!確かあれよね。有名なのは九頭龍山脈。あれからあたしが掴んだ話によると、
なんでも彼の地に賢者の石の材料が眠るのだとか実しやかな噂があるそうだけど!
……あ、もしかして遺跡探検に向けて防具の新調をしようってこと?」
給仕に注文を出すシスターさんの事をじろじろと見ながらに言葉が続く。
彼女の恰好は物理防御力に秀でているようには見えないけれど、かといって騎士様が纏うような鎧が似合うとも思えない。
何よりそういった代物は重い。シスターさんはあたしよりは背もあって、体格も良いけれど重装備は過重に思える。
「それなら籠手じゃなくても革鎧とかの方がよくない?ほら、あの人が着ているようなやつ」
指差す先は大通り。腰に幅広な剣を携えた屈強な男性が道を歩いている所だった。
■シスター・マルレーン > 「大丈夫大丈夫、もう治りました。
冷たくはないわ? だって一日で元気になったんだもの。」
うん、と頷きながら拳を握っては開いて。
元気になった、と笑顔を見せる。
「………あはは、まさか。 私は単なる修道女で、ちょっとだけ冒険者もやっているだけだもの。
入り口を調べてこい、と言われているだけよ。
行くなら、10人単位でメンバーを集めないといけないもの。」
微笑みながら、相手の「興味あります!」という視線をかわす。
一緒に行こう、もそうだし、一人で行くのも危険だと思う、と言外ににおわせ。
「……んー、防具じゃなくて、武器、かな?
棍だと、狭い通路だと不便なのよ。
防具に関しては、この下がチェインメイルだから。」
分厚い修道服の胸の部分を引っ張って、その下、と告げる。
チェインメイルと修道服越しの豊かな胸だった。
■ベルモット > 「そーお?大丈夫ならいいけど……でも防具はそうは行かないわ。防具で全身固めても動けなくなったら意味が無いもの。
あたしは~……天才錬金術師なんだし?一目で判る恰好ってものが大事だから鎧なんて着ないけど……あ、もしかしてそれで籠手?」
シスターさんも一目でシスターと判る恰好が大事なのかもしれない。
そう思い至ってあたしは一人で納得しかかり、次にはシスター服の上からでも判る女性らしさに富む胸部へ目線が移った。
同時にチェインメイルを着込んでいると言われて、思わず身を乗り出しかかってしまう。
「ええっ!?その下に着ているの!?……てっきり胴回りのサイズが無いから籠手なのかなあ。とも思ったんだけど……」
涼やかな顔でとんでもない事を言われたんだから無理も無いわ。
しかも籠手は武器とまで言われたら尚の事。重装備に重装備で格闘戦をやろうだなんて、とても正気には思えない。
「単なる修道女はチェーンメイルなんて着ない……というか街中でまで着なくていいと思うんだけど。
……着ないといけないような所に行ったりするの?」
言外に貧民街を示唆するように手にした匙が通りを指し示した所で給仕がシスターの分の氷菓子を運んできた。
きらきらとしていて、不穏なものなんて何一つないかのように煌びやかな菓子は眺めていても好く思う。
「ほら、炊き出しとか時折やっているのを見るけどやっぱり治安は悪いものだし……
細路地なんかだとやっぱり仰るように棍は不利でしょうし。シスターさん綺麗だもの。気を付けないと駄目よ?」
事実、通りを歩く何人かはシスターさんの事を一瞥して行くもので、色々大変そうだなあ。なんて勝手に苦労を慮りもするのだった。
■シスター・マルレーン > 「それもありますね。 ………この服を脱ぐことはほとんどないので。
籠手なのは、………まあ、純粋にちょっと手の怪我が多くなったので。
木製で作ってくれるところを探しているんですよね……。
そんなに太ってませんー。マッチョでもないですー。」
唇を尖らせて、胴回りのサイズありますー、って口にする。
「………あはは、そうですね。
着ないといけないようなところばかりですよ。
どうにも、修道女はか弱い印象があるようで、何をするにも最初に狙われることもありまして。
普段から着て安全を確保するのもそうですし、いざという時に当たり前に動けるように、という鍛錬の意味も含んでいますね。」
とほほ、と遠い目をする彼女。
氷菓子をさくりと食べれば嬉しそうに表情をほころばせながら、ころころと笑う。
「ベルモットは流石に依頼を自分で受けてお客さんを相手にしているだけあって、口が上手ね?」
なんて、ウィンクを一つぱちりと。
■ベルモット > 闘技場に出場した経験があり、冒険者としても活動しているシスターさんなら街中のゴロツキ風情は何でもないようにも思う。
思うけれど、それはそれ、これはこれというもので氷菓子を頬張るあたしの顔は苦い物でも食べたかのように渋い。
シスターさんにウィンクされると、少しだけ緩んでしまうのだけど。
「上手いだなんて事無いわ。普通普通……それと貴方が太ってないのは知ってるわよ。小屋の中で視たもの。
薄暗かったからマッチョかどうかは判らないけど……あとあたしが言っているのは胸周りの方。特注品だったりするの?」
和やかに氷菓子を食べながらの会話はそれ程に甘くはない。
日頃から修練を重ねていると思しき言動と、小屋の暗がりで視た彼女の身体は余り一致しなくて、
もしかして明るい所できちんと見たら凄く逞しかったりするのかな?なんて与太な事をも考えて、
ついついシスターさんの事をじろじろと見てしまうんだけど、服の上からでは解る筈も無かったわ。
「あたしも多少は杖、使えるけれど……シスターさんを視ていると鍛えた方がいいのかなって気がしてきたわ。
或いはシスターさんに来てもらうとか?今度ちょおっと九頭龍山脈まで行こうかなあって考えてて……良かったらどう?
まだまだ未開の遺跡が見つかる土地だし、上手く行ったら報酬も名声も手に入るかも!
貴方も遺跡を探しているなら一石二鳥よね?大人数が必要そうなら戻ればいいのだし!取り分は、5:5でいい?」
質問が幾つか重なり転がって最終的に提案へと落着する。
さも良い事を思いついた。そう言わんばかりに手を叩いて臨時パーティの提案をし、
ウエストバッグからソロバンとメモ帳を取り出だす。