2019/05/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に刀鬼 紫沙希さんが現れました。
刀鬼 紫沙希 > 「よう、やってるかい?」

平民地区内にある屋台。
椅子が何個か置いてあり、そこに座って食事をするスタイル。
鬼はこの店を立ち上げる時から面倒を見ており、今でもこうして顔をだすついでに食事をして行くのが習慣となっている。

店の親父は鬼の顔を見るなり食事の準備に入る。
程なくして大きな山菜がふんだんに盛られた蕎麦が置かれる。

鬼は箸を手に取ると蕎麦を一口すする。

「やっぱ蕎麦って言えばここだよな。 親父、酒も出してくれ。」

仕事中だろ?と問いかける親父にいいんだと笑う鬼。
陶器の酒杯に入った冷たい清酒をひとくち。

「くぅ~~~。 おかわりだ。」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にaderaさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からaderaさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアデラさんが現れました。
アデラ > 「……………………」

食事中の鬼の近くを、少女が一人、うろうろと歩いている。
屋台にはそぐわぬ雰囲気の服装で、どちらかと言えば富裕地区にいるのが似合いそうな少女だ。
それが、遠慮がちにではあるが気配を消す事もなく、鬼の顔を覗き込んでいる。
視線の行き先は――前髪だ。
正確に言えば前髪の中に紛れる一本角。

「……オーガ? それとも獣人……」

種族を図りかねて首を傾げているようだが、独り言が唇から零れている。
席にも着かず不躾な視線を飛ばす少女は、自分へ向く怪訝な目には気付かぬ様子。

刀鬼 紫沙希 > 鬼の耳は食事中に近付く気配を見逃さなかった。
何度か飯の最中に襲撃を受けたことのある鬼にとってそれは当たり前のことである。

よっぽどとなれば近くにいる子分たちが寄ってくるのだが、目の前にいる少女からはそのような危険性は微塵も感じ取れない。

そして、覗かれている気がする。

「どっちでもねえよ、嬢ちゃん。
私は鬼ってもんだ。
まあ座りなよ。 興味があるなら触っても良いぞ。」

先日もオーガと言われた鬼は苦笑を浮かべて少女に声を掛ける。
ちょうど屋台は開いたばかり。 鬼の他には客は誰も居らず、一人位座ってもなんら支障ないだろう。

アデラ > じい、っと瞬きの回数すら減らして向け続けていた視線。
隠すという意図が無い事もあろう。その挙動は容易く、目視されるより先に暴かれる。
が、声を掛けられれば一瞬、何故気付かれたか分からぬように硬直した。

「っ、と……ごめんなさい。あまりじろじろ見る気は無かったんだけど――」

あまり上品でない自分の行為を謝罪するが、その台詞が途中で途切れる。
隣の席へ免れたことより、その次の言葉を聞いたが為だ。

「――いいの?」

好奇心に背を押されるまま、隣席にすぐにも腰と落とし、早速とばかり手を伸ばす。
あたかも気性な動物を見つけた研究者のような目の輝きで――実際、魔術を専攻する学生ではあるのだが。

「オニ……そう、聞いた事があるわ。へぇ、普通にこっちにもいるのね……。
 あ、あ、これって掴んだりしても痛くないの?」

妨げなくばがっしりと、か細い指が角を掴むことだろう。

刀鬼 紫沙希 > 動きが止まれば、鬼の顔に笑みが浮かぶ。
黙って見たかったのならもう少しやり方あるだろうと思えば可笑しくなる。

「気にするな。 俺が逆の立場でもそうしている。」

ずるずると蕎麦を口に入れている鬼。
時々、少女に視線を向ける位か。

「興味があるんだろう?」

姿や顔つきからして貴族のご息女か。
小さく、柔らかい手が前髪の中にある角へ触れる。
鬼はその間に親父に茶の注文し、少女の目の前に冷たい茶が置かれた。

「数はあまり居ないようだし、私みたいに定住しているのは更に少ない様だぞ。
触っても問題ない。 良い機会だからしっかり触れて行け。 学生だろう?」

鬼は少女に角を触れられ、僅かながら心地よかった。
蕎麦を僅かに残した状態で酒を味わっている。

アデラ > 「興味は――ええ、とても」

珍しい生物、という括りに入れてしまうのは些か失礼だが、不興を買わずには済んだ様子。
その事に安堵の色を見せつつ、茶が用意されれば店主には小さな礼。
が、その意識は今、角の一点に向けられており、それ以外の事は然程目に入らない。
暫くはその強度を、質感を、魔力を帯びているなら特性を、指先で知る事に熱中していた。

「そうよね、定住どころか本物を見たのも初めてだもの。
 竜人とか魔族とか、そっちの方がまだ沢山いるわ……。
 強い生き物ほど個体数は少ないって聞くけど、そういう事かしら……?」

角をぺたぺたと触る手。それが次第に、位置をずらして行く。
角の付け根に周り、頭蓋や頭髪を中心に確かめ、更に後ろへずれてうなじ――というより首の筋肉。

「見た目だけだと、そんな普通の人と変わらないのね。筋肉の強度とかどうなのかしら。
 竜だと鱗とか有ったりするけど……鬼って、力が強いのよね?」

手で触れて、顔を寄せ、兎に角遠慮は無く、距離も近い。
初対面の相手に質問を矢継ぎ早へ投げかけながら、少女は手の感触を楽しんでいた。

刀鬼 紫沙希 > 「楽しんでもらえているなら何よりだ。」

角に魔力が通る。まるで精密な検査でも受けているようだ。
特殊な機材も何もない場所で咄嗟に出来るとは魔力の使い方に精通しているのだろうか。

「そりゃ良かったじゃねえか。
俺は竜人だの魔族だのはあまり見たことねえな。
まあ、俺が強いかはともかく一般的には鬼ってのは強い種族だな。」

髪や首筋まで触れられると、ちょっと食べにくい。
箸を静かに動かして残った蕎麦を口にする。
空になった器は店主が引き取り、早速洗っている。
ちなみに鬼の身体は平時では並みの女性とそう大差ないだろう。
多少なりとも鍛えているが、それでも女性騎士や冒険者と質感での違いはないはず。

「全く変わらんぞ。 力は強いが、それはその時に限った話だ。
今みたいにお嬢ちゃんの可愛い手が触れている時に力を出したら怪我させてしまうだろう?」

多少酒が入っているが、白い肌の女性の身体。
但し、服の隙間から背面に掘られた竜の刺青が見えるだろう。

鬼はこの興味津々で触れる少女の顔を見上げて。

「私は刀鬼 紫沙希。 あんたは?」

アデラ > 「体格は普通……これも竜や獣人と同じね。
 やっぱり強い生き物って、根本的な構造が違うのかしら……」

人間は筋肉の大きさに筋力が比例するが、人外はその常識を遙かに飛び越えていく。
鬼の身体に触れて、その事を改めて知った少女は、興味深そうに幾度か頷いた。
が――手は離れない。満ち足りた筈だが、鬼の首にぺたりと触れたまま。
そればかりか、少しずつその手は降りて、服の隙間から背へと伸びて行こうとする。
竜の刺青が躍る背。それもきっと、鍛えられてはいるが、鋼のように固まってはいないのだろう。
健康に鍛えられた人間のような肉体。その感触を楽しむ手は、些か研究目線から逸脱している――

「怪我させてしまう、なんて……鬼は優しいのね。
 でもね、強い生き物はもっと乱暴になっても良いと思うのよ、私。
 獣も竜も魔も、力が有るなら振るってくれれば――なんて」

鬼の背の側に立ち、過剰なまでに接触を深めながら。
少し声を潜めて、耳元に届けるように少女は囁く。

「アデラ。普通の人間。……だけど、人間じゃない生き物って、好きよ」

刀鬼 紫沙希 > 「人間の体構造で私並みの力を出そうと思うならそうとう大きな体になるだろうな。
その代わりこっちは君みたいな便利な魔法はそうそう使えなくてな。」

学生と思われる少女の研究材料になった鬼は盃を傾けては彼女の話を聴いていた。
首を触れていた手がいつしか鬼の背を触っている。
鬼はおいおいと困惑するがこの少女は止まることがなく。

「…随分危ないことを口にするお嬢ちゃんだな。
こっちは酒が入っているんだ。あまり煽る様な事を口にしないでくれよ。」

酒に強いはずの鬼だが、いつしか顔に朱が交じる。
少女の手つきや、呼吸が気付けば妙に艶めかしくて。

「どうやら往来で飯食いながらする話でもなさそうだな。
場所を変えるか?」

アデラ > 「危ない事――さあ、何かしら。
 私、そんなおかしな事を言った覚えは無いのに。
 ……それとも、ムラサキ。想像しちゃったのかしら」

まだ引き返し得るぞと警告するような言葉に、挑発的な笑みを返す。
手も息も、他者を煽って牙を剥かせる為の手管は止まる事が無い。
鬼の背へ押しつけられるドレスの胸元は薄く、体温も鼓動も色濃く感じられるだろう。

「鬼の力で思いっきり、か弱い人間を痛めつける所。
 逃げようとしても泣き叫んでも、その子は逃げられなくて玩具扱いで。
 鬼が満足するまでずうっと、好き放題に使われる……そんな事を?」

くすくすと喉奥から笑い声を零しながら、唇の位置は耳元で留めたまま。

「鬼なんでしょう。なら、力尽くで攫ってみて。
 ……私、好きなものが多いの。人間じゃない生き物もそうだし、強い人も、乱暴な人も」

刀鬼 紫沙希 > 「おいおい、大人をからかうのも大概にしておけ。」

鬼は多少酒臭くなった息を吐き出す。
研究熱心な学生と思っていた少女はタガが外れていた。
それもわざわざ危険に身を置く類の。
押し付けられた胸元から生身の身体の感触が伝われば、鬼も漸くその気になっていく。

「お前、わざわざそんなことをしてもらいに俺の所に近づいて来たのか?
やれやれ、本当に困ったお嬢ちゃんだな。」

常軌を逸した提案だが、鬼と言うモノは本来彼女が言うような生き物だ。
財布を取り出し、店主に食事代を支払えば細腕が彼女の身体を抱きかかえる。

見た目からは想像できない程の強力はまさに彼女が待ち望んでいた姿。

「じゃあ、行くぜ。」

戦利品の如く彼女を片手に、鬼は走り去っていった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から刀鬼 紫沙希さんが去りました。
アデラ > 「きゃっ――」

荷物のように片手で抱え上げられれば、上げるのは喜悦の声。
攫われ連れ去られる、物語の姫の如き境遇を楽しみながら、
その先に待つ暴虐を夢見て、身体は熱を帯びて行く――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアデラさんが去りました。