2019/03/22 のログ
■ティエラ > 平民地区にある冒険者ギルドの中、依頼を貼り付けているボードの前にひとりの女が立ち尽くす。
その女の出で立ちは、金色のサークレットに、闇に溶けるような深い藍色のローブ。
フェイスヴェールで口元を隠しているそんな女の佇まいは魔術師然としているものだった。
ただ、前衛職の達人であれば、その女は格闘を身につけていることが分かる。
彼女を魔術師とみるか、格闘家としてみるか、それは……見るものに委ねるようなものである。
女本人としては、魔術師でもあるし、格闘家でもある。
ひとつのことに、こだわりを持っていないというのが正しい表現だ。
そんな特異な立ち位置ゆえに、固定のパーティを組まずにどこかのパーティに助っ人として入ることが多い。
今回は、声をかけてくれるようなパーティもいないようで、一人で受けられる依頼を探していた。
■ティエラ > 「んー……。
なんか、めぼしいのは、流石にないわね……。」
一人で冒険して活躍できるのは、総じて高ランクの冒険者か英雄である。
故に、掲示板に貼られるのもチームで動くことを想定している依頼ばかりである。
個人でできる依頼と言ったら、薬草採取とか、街の中の雑用ぐらいなものだ。
薬草採取を受けるのも良いのだけれど……それだったら、依頼を受け内で自分で採取し、薬を作って売ったほうがいい。
むしろそれにしたほうがいいかしら。
女は一度掲示板から離れて、冒険者たちが休憩に使うテーブルの空いているところ、そこに腰を下ろして軽く頬杖をつく。
パーティメンバーを探しているチームを探すか、飛び込みの依頼を待つか。
それとも、戻るか。
ぼんやり、とギルドの中を眺めて考える。
■ティエラ > 少しの間待ってみるが、飛び込んでくるような様子はない。
こういう時は、待っていても仕方がないのは経験則だ、恐らく飛び込んでくるような依頼はないだろう。
チラリ、と目線を動かしてみたら、冒険者チームは準備が出来たようで出発をしているのも見える。
今残っているのは、帰ってきたものか、依頼にありつけない冒険者……ティエラの事だ。あとは、冒険者ギルドの職員ぐらいであろう。
「うーん……今日は日が悪かったわね。」
仕方がないか、今日は冒険者じゃなくて、どこかで露天をして、酒場に予約を入れて、踊りを見せようかしら。
いくつか資金の入手の手段がある女は、そうしようかと思うのだった。
とりあえず、少しお腹が減ったので、食事を注文し、食事してから移動をしよう。
■ティエラ > 軽い食事を注文し、それが運ばれてくる。
冒険者の食事は基本的に手早く食べられてカロリーの高いものであるから、あまり食べるとお腹周りが心配には――――ならない。
基本冒険者は動き回るしカロリーの消費も多いから、この程度はすぐに消化できる。
純粋な魔法系であっても、一般人よりは動くのである。
ぱくりもしゃもしゃ、と手早く食事を終わらせて、水を飲んで、ふぅ、と一息。
よし、と軽く気合を入れてから、女は代金を支払い立ち上がった。
そして、そのままギルドから出ていくのだった。
「今日は、どうしようかしら。」というつぶやきを残して。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からティエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 任されている古物店があるところよりも華やかな印象がある大通り。若者向けの服や装飾品を扱うお店が何軒か集まっているからか、自分に近い年ごろの人が他よりも多く感じる。そんな往来を、通り沿いの小さな広場に置かれたベンチに腰かけて眺めていた。
片方の手には鉛筆を握り、ときどきちらちら周囲を見ては、広げた手帳になにかを書きこむ。もうしばらく、そんな事を繰り返していた。
「……んん…」
自分と背格好が近い人が身に着けているものを簡単なイラストと文章にして書き留める。こうやって情報を集めたら、自分でもすこしくらい服を選ぶのが上手になるんじゃないかと思っていたのだけれど、そう簡単にはいかないらしい。
眉を寄せて、手帳に書きこんだものをじっと見つめる。当然の話だけれど、装いなんか十人十色。いくら他の人を観察したところで自分になにが似合うかなんて、わからない。それでも、なんとなくだけれど、見えてくるものがあるような気もして。
■ミンティ > 手帳を閉じて一息、ベンチから腰を上げて歩きはじめる。どんな服なら自分に似合うかはわからなかったけれど、人が着ているものを見て羨んだりするくらいの感性はある。純粋に可愛いと思ったもの、それと似たようなものを探して、あわせてみよう。
鞄に筆記用具をしまって、こぶしを小さく握る。いつかは越えないといけないハードルだと自分に言い聞かせて一番近いお店に向かった。
それからしばらくして、帰り道、大きな紙袋を抱えて歩く顔は、心なしか機嫌がよさそうなものになっていたかもしれない…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にソウレンさんが現れました。
■ソウレン > ひそひそと遠巻きに囁く声がする。
鋭敏な耳はその声も拾っていたが、気にした様子もない。
王都にとっては変わった姿見の女へと奇異の視線を向ける者が少々。
夜の鍛錬場は魔力や火の灯りでそれなりの視界は確保されてはいるが、
いかんせんそれほど明るく無い為、日中に比すれば人はまばら。
さて、その中の一角に女は一人。長剣をぶら下げて過ごしていた。
片隅には断ち切られた巻き藁が積まれている。
斬る度に几帳面にきちんと整理して積み上げているのだ。利用する者のマナー、とでも言っている様子。
たまに使ってやらないと剣も鈍る、と思ってやってきたわけだが。
最初こそ面白がって手合わせを頼む傭兵達もいたが、
それぞれ峰打ちされたり、ひたりと首筋に刃を当てられたり。
次第にそういう者も減り、今では巻き藁を断ち切る腕前を見てひそひそと囁くばかり。
「……骨がないのも考え物だな。」
ぽつりと誰にも聞こえないように、ぼやく。
男だろう教えくらい乞えばどうだ、と叱り飛ばしてやりたい所だったが。
皆すごすごと引きさがっていったので機会を失ってしまった。
やれやれ、と内心で考えつつ一つ増えた巻き藁の残骸を隅っこへと運び、女は新たな巻き藁を構えていく…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にオルティニアさんが現れました。
■オルティニア > 「――――そこのあんた、暇そうね!」
山と積まれた巻藁を傍らに、一人で淡々と両手剣を構える異装の長駆。
彼女に対して何とも言えない視線を向けつつも、野次一つ飛ばさない周囲の男たちに若干の違和感を覚えつつ、しかして傲慢なエルフ様は今日も今日とてマイペース。
鈴の鳴るような可愛らしい声音が、片手を腰に、形の良い顎先をツンと持ち上げた小躯の唇から紡がれた。
夜会巻きにした髪の形は上品なれど、エルフというイメージからは幾分外れた暗色の色彩。
偉そうに張った胸元は無意味に馬鹿デカいおっぱいが若草色のチュニックを張り詰めさせて、その癖背丈は子供めいてちんまりしている。
とは言え、華奢な腰に絡む剣帯に佩いた細剣は護拳の装飾も見事なひと目で業物と分かる高級品。立ち姿にも存外隙は見られず、それなりの実力を兼ね備えているとわかろうか。
「ふふん、感謝なさいニンゲン。このエルフ様が、暇潰しにあんたの相手をしてやるわ」
ゆっくりと持ち上げたしなやかな細指をビシッと突きつけ、エルフ耳ぴくぴくさせつつ言い放つ。相手の都合とかあまり考えていない。
■ソウレン > 「?」
とん、と新たな巻き藁を立てる作業を終えた時、
やけに甲高い声が聞こえた。主に下の方から。
子供でも迷い込んだのだろうか、と後方へと視線を向けちょいっと見下ろす。
なんだかやけに得意げな少女。耳の形状からすればエルフだろうか。
「ふむ? 君がか?」
ずいぶんと可愛らしい姿だが、腰に佩いている物はなかなかの良品の様子。
なればそれなりに腕が立つという事だろうか。
…いささか風貌や立ち姿に雰囲気は足りていないように思うが、見た目だけだろうか。
内心で首をかしげる点はあるものの、根性の足りない連中よりかは楽しめるかもしれない。
「…こちらも暇はしていた。有難いという所かな。是非手合わせを願おう。」
少々尊大な印象はあるものの、まずは見てみなければな、とすっと歩みを進める。
巻き藁を立てた場所よりは少し離れ開けた場所にて。
不意を打たれるなどとは考えず、剣を持ったまま普通に背を向け歩みを進め、ゆっくりと振り返る。
だらりと長剣を下げてはいるが、いつでもどうぞ、という雰囲気だ。
■オルティニア > 高みから降ろされる『君がか?』なんて言葉にエルフ耳がピクッと跳ねる。稚気を残した美貌がちょっぴり不機嫌そうな気配を醸す。
しかし、見た目でこちらを軽く見る様な言葉から一転、彼女の中でどういった結論が出たのか殊勝な言葉が続くのならば、覗いていた不機嫌がパッと得意げな笑顔に趣を変えて
「ふふふふんっ、いいわ! 相手したげる――――ええっと……」
言いながらキョロキョロと周囲を探っていた双眸が、さっさと歩き出した長駆に気付いて慌てて後を追いかける。頭一つと半分くらいはあるだろう身長差は大人と子供。しかし、胸元のボリュームについてはエルフ娘の圧勝という歪なコントラストに惹かれたか、周囲で鍛錬に励んでいた男たちが動きを止めて、ニヤニヤ笑いを浮かべつつ遠巻きな視線を向けてくる。
エルフ娘としては『ふふんっ、エルフの美貌にどいつもこいつも鼻の下伸ばしてんのね!』くらいの印象なので気にしていない。一見隙だらけにも見える女剣士の背に襲いかかるなんて卑劣な行動は、頭の隅にすら存在していない。
そして彼女が手合わせのために用意された闘場の中央へと歩み出て、緩い構えと共に振り向くならば、こちらもニヤリと笑って華奢な銀剣を引き抜いて
「―――精霊よ!」
高らかな一声を響かせて、光の粒子をその身に纏う。
周囲の灯りを圧する光量が収まった時、エルフ娘の豊乳は薄紫の銀光を放つ胸当てに覆われて、同様の輝きを帯びたガントレットで両肘の先を鎧っていた。
そのままピッ、ピュンッと十字を切るように細剣を振るい、しかしいきなり仕掛けたりせぬのは、未だ相手の情報が乏しいがため。
このエルフ様、これまで散々痛い目に合ってきているので、事、戦いにおいては存外慎重だったりもするのである。
■ソウレン > 「ほう。」
得意げな様子をうっすらとした微笑で眺める。
精霊を喚び、白銀の鎧を纏う姿を見て少し感心した声を上げた。
なるほど、自信の元はこれか、とも考える。
対してこちらは着流しに半纏というどう見ても普段着のような代物。
周囲の男どもは何を期待しているのやら、とこちらは向けるだけの意識の余裕はある様子。
「ふむ。慎重だね。」
如何せん普段着の女性剣士など軽く捻ってやろうという男共を相手してきたわけで。
それだけでも感心してしまうのだ。相手を視るというのは基本中の基本だ。
剣においては侮りなどは不要。普段着の相手であっても。
長柄の根本と、下部に緩く手を添え、やや剣先を下げた構え。
ゆらりと構えれば、わずかにエルフの少女に近づいていく。
と、と歩みを進めればぴりりとした緊張感が伝わるかもしれない。
■オルティニア > 「フフン、何の情報もなく飛び出すのは自信過剰の馬鹿か、桁外れの強者、後は我慢の足りない臆病者くらいよ!」
かつての自分が自信過剰の馬鹿だったことは伏せて、ベテラン顔して語るエルフ様。その長耳がぴこぴこしているのは、得意げな表情を見せる時の癖なのだろう。
「……………………」
両手剣といえば真っ先に思い浮かぶのは刀身の長さ。素人はその柄の長さを忘れて振り回す事も多いのだが、眼前の長駆は巻藁の残骸にあれだけ見事な切断面を残すだけあって流石にわきまえている。それだけでも結構な手応えを感じさせてくれて、小生意気そうなエルフが可憐な唇に不敵な笑みをニヤリを浮かべた。そして――――。
「――――……ッフ!」
すり足がじわりと間合いを詰め始めたその刹那、先の言とはまるで裏腹な踏み込みが地を這う電撃の如き勢いで華奢な小躯を駆けさせた。攻め気を匂わせた相手の機を奪う雷速の踏み込みは、そのまま彼女の刃圏を侵すかと思った所でいきなり反転、スウェイバックで間を外す。
■ソウレン > 「ふむ。それもそうだな。」
したり顔で語る内容にふむふむと頷く。
概ね同意をする内容であった。
得意げな表情を浮かべているのはやはり自信の表れなのか、それとも頭でっかちなのか。
……試してみるか。という考えが浮かぶ。
ざり、とゆっくりとした歩み。
それを見せた瞬間に鋭く踏み込んでくる姿が、見えた。
まだ微笑を浮かべている。
その表情のまま、ひゅうん、と風を切る音。
ゆったりとした軌跡は、踏み込んでいれば刃の真芯で捉える位置を通り過ぎる。
「ほう。」
放たれた剣閃に比べて女の立ち位置は然して変わらない。
腕の力と体重移動、剣の重量バランスで放つモノだ。
剣の位置は先ほどとは逆に振り切った姿。
感心した声を上げた姿は、しかし間を外されたようにも見える――。
■オルティニア > 長駆の剣士の初手は、舐めているのかと思える程に緩い代物。その剣跡は素振りの手本にしたいくらいの物で、きっちりと立てられた刃筋は余計な力を入れずとも巻藁をスパッと断ち切る事が叶う見事な一振りではある。
とは言え、予想外だったのはその緩さくらい。
疾風の如き踏み込みのためにエルフ娘のスウェイバックは大きく飛び退った様な錯覚を与える物の、実のところは一瞬ブレーキを踏んで上体を傾けただけ。豊満な乳肉が数瞬回避から取り残されるも、緩い逆袈裟に追いつかれる程ではない。
しかし、いかにも様子見といった一手と余裕たっぷりの感嘆の声に、エルフ娘は軽い苛立ちを覚えてしまう。緩い一振りは切り返しも容易となるし、舐めきった様な声音も誘いの可能性がある。
それを頭の片隅で理解しつつも『だったらそれを上回る動きで攻撃してやればいい!』なんて考える辺りがこのエルフの未熟さだった。
余裕を持って回避を終えたオルティニアは、後方に倒していたいた上体をギュンッと前傾に戻し、精霊の力も借りた踏み込みで地を爆ぜさせつつ刃圏の内側に潜り込み
「――――シァァアアッ!」
長物を振り切った死に体に対して三度続けての刺突を放とうとする。
■ソウレン > 感心していたのは本当である。
相手を侮ったまま向かってくる連中よりも余程見どころがあるように思う。
緩急をつけた動きも見事。
剣閃の内側に入り込み、刺突を放とうとすれば女の微笑が目に入るかもしれない。
腕の立つ者との手合わせは、なかなかに心が躍る。
それが自然と笑みを浮かべさせるのだ。
充分な速度を乗せた刺突に対して女がとったのは回避の動き。
振り切った勢いのままにくるりと身を一回転させて横にずれる。
着流しの袖、半纏の裾に穴をあけ、ぴっとわずかに血が飛散する。
「…ふっ…!」
その痛みを心地よく感じながら、女は得物を振るう。
高速の刺突。その先端を、見えている、とでもいうように。
カンッ、と鋭い音を立てて長剣の柄尻で上方へと軽く弾く。
瞬間、逆の軌跡を通り、先ほどよりも加速した返しの刃が翻る。
■オルティニア > 爆速の踏み込みは両手剣のスイートスポットの内側、オルティニアの銀剣の間合いに小躯を割り込ませる事に成功させた。こうなってしまえば、どれほど早く切り返そうともこちらの突きの方が効果が高い。
『その余裕の笑みを蒼褪めさせるがいいわっ!』なんて思いつつのトリプルスラスト。ルーキーには到底追いきれぬ高速の三連突きが、パパパッと続けざまに閃光を瞬かせる。
「―――――んなッ!?」
しかし、長駆の着流しが見せた動きはエルフ娘の予想を上回る物だった。
無理に長剣を戻そうとして無為に柔肌を貫かれるのではなく、両手剣に流された死に体に逆らう事なく最小限の動きでダメージを抑え、二発目をダンスの如く華麗なスピンで背筋に流し、思わず見とれつつも放った止めの一撃を
「あ……っ」
軽い音と共に上方に逸らされた。『ヤバ…ッ』と思ったその瞬間、先の舐めた視線とは異なる彼女の"本気"がその双眸にギラリと灯った気がした。
「……ンぎッ、にぁあぁああ―――ッッ!」
恥も外聞もない無理矢理な動きだった。
既に刃圏の内も内、根本に近い部分での斬撃は、本気であってもオルティニアの胴を断ち切る程では無いだろう。それでも、たとえ殺気がこもらずとも、まともに受けたらただでは済まないと分かる剛速が、優雅さなど欠片もない回避行動を選択させた。バッと自ら刃に突っ込む様に飛び上がり、細剣と共に打ち上げられた両手を胸元に寄せて交差させ、火花を散らして長剣を受け止める。
飛び上がると共に虚空に向けて蹴りでも放つ様に振っていた細脚の反動が、刃を重なる双手甲を支点にギュルルルッと宙で数回転し
「―――――ぶべッ!」
どべちゃっと無様に地面に落ちた。