2019/03/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にさんが現れました。
> 平民地区の一角に在るレストラン「喜食館」
平民・貧民・富裕層から、注文を受ければ貴族や王族にまで食を饗する腕前と実績の店。

ランチタイムを終えて一時客足が落ち着くこの時間に、ディナー用の仕込みをやってしまおうと調理場と食事処の中間のカウンター席で、
傍らで出汁をとりながら、傍らで野菜の下ごしらえをしていく。

「くぁ……眠み。
少しは営業時間、考えねぇとな。」

朝の7時頃から朝食を求める人のために開店するため、準備も含めて起床は6時前。

夜は1時頃には主だったキッチンは閉じるが、大抵はバーや居酒屋のように酒を嗜む客が残っていれば明け方まで付き合うために、
ここ最近の青年の睡眠は、片手の指で数えられる時間となっていた。

くにくにと首や肩をいたわるように曲げてストレッチをし、
気怠そうな視線と呼吸だが、料理にだけは手を抜かないとばかりに、
作業の要所要所では、きりりと集中力に顔が締まる

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアンブレイラさんが現れました。
> 1つの仕込む野菜を手にしている時間は、ほんの2秒ほど。
手首のスナップを効かせて宙に放り、
その中空の野菜に目にも留まらぬ速さで包丁を入れていく。

2秒の中で切り刻まれた野菜は、36片ほどになって皿に落ちる。


キャベツやエシャロットなどの、最も旨味の出る部分と雑味となる部分を見極め、使用する料理に合わせた切り方や隠し包丁を入れて、
後々にじっくりと味が染み込みやすく、野菜のエキスを煮出しやすくしていく。

通常捨てるような野菜くずにも旨味や栄養はあるので、これらはだし汁に加えて、適度なところで引き上げ、富裕層向けの贅沢な肉料理のカッティングで余り物として出た、新鮮な肉片や小麦と混ぜて肉団子にする。

これらは平民や貧民に人気の、格安の肉団子スープに使われる。
価格の割には、素朴な旨みとボリューム満点で、
料理人本人も大好きな味だ。

アンブレイラ > 王都マグメールにきてからまだ辺りの食事処もよく分かっていない
そんな彼女、アンブレイラはたまたま平民地区で見かけたレストラン「喜食館」
をみて足を運んだだろう。

「平民、貧民、富裕層、誰にでも提供しますとのうー…
わちきにも食べられる品があるじゃろうか……っといけないいけない、
身体は少女、らしくいなきゃな…」

玄関前で足踏みをし、心を締めて扉を開ける。ちょうどシェフらしき青年が
ランチタイムの終わり、ディナーへの準備だったのだろう、よく煮込まれた
エキスのいい匂いが店内に漂っているだろう。

「おじゃましますー、すいませんー、空いてますか?
この通り、貧しい身ですがそれでもわちきに食べられるものがあればー…」

所持しているものは日雇いで得た数枚の銀貨のみ。しかしそれでも最低限の食事は
摂れるだろうと、休憩中のシェフに尋ねる

> 玄関のドアが開く音、カウベルの音にシェフの青年は緩やかにそちらに向き直って

「いらっしゃいませ!
ああ、空いてるし、食べられるよ。」
と、お代の額や有無すら問わず、落ち着きのある声で応える。

「これ、メニュー。
食べたいものがあったら、なんでも頼んでくれていい。
足りない場合は、…まぁ皿洗いとか、
ちょっとした手伝いで払ってもらってる。」

と、差し出したのは全区画共有のメニュー表。
銀貨一枚でこれほどの量を?と思えるランチセットから、
一食で平民の月給が消し飛ぶものまで、選り取り見取り。

「どうぞこちらへ」と店長自ら椅子を引いて、身なりも素性も気にせず、客として奥の席に招く。

アンブレイラ > 入ったなりその店内の洒落たところ、調理場のいい匂いから高そうだと
思っていた彼女だが、その青年は気さくに案内をしてくださったので、安堵と
ちょっとした拍子抜けをしたらしい

「あら、感謝いたしますわ、えっと、どのようなものが…
お手伝いでの支払いもあるのですね、まずは選ばせて頂きますー」

(存外に柔軟なシェフじゃの、わちきにも大概の家事等手伝いはできるのじゃが、まあ
まだ初対面の者に手入れをすることはおせっかいというものじゃな)

メニュー表はとても分厚いように見えた。当然国に来たばかりの、しかも古の
知識では何がどれくらいの量のある品で、おいしいのか、食べられるのか、
わからないでいる。ただ、自身の銀貨の数はよく分かっているので
適当に3枚分を払う事を考えて選ぶ

「では、このオニオンスープと根菜の炒めをお願いいたしますわ」

書いてある説明では、農家が日常的に食すとされる素朴な味付けと栄養バランスが
人気と書いてあるが果たして―

> 「はい、承りました…と。
ではこちら、前菜とお通しも兼ねてどうぞ。
お腹の負担が減って、食欲もりもりになりますよー。」

と、平民区画や居酒屋めいた時間では、手をつけるも付けないも「ご自由に」と、調理の間に楽しむ舌慣らし。

うっすらレモンのエキスの入った水に、
二口ぶんほどのふっくらしたパンと、浅漬けのピクルス。
レタスと山菜と豆に、数切れのベーコンとチーズの乗ったサラダ。

それを手際よく出した後に、直接厨房に入っていく。


手早い調理で、彼女が相当にがっつく速度で、前菜を平らげでもしない限りは、一通り食べ終わって、ちょうど舌と胃の準備が整い、
食欲が増した頃に、店内に入ったときのあの良い香りの大元がやってくる。

「ではこちら、オニオンスープと、根菜の炒めになります。
…いまは混んでないんで、パンとサラダはおかわり自由!」

と、琥珀色のスープに、ニンジンや玉ねぎ、かぼちゃなどがゴロリと入った大盛りの炒めもの。

肉の気配が欲しいときは、サラダのベーコンで補填できるので、
ほぼ栄養面では完璧なチョイスだった。

「あ…熱いから、気をつけて。
……ここ最近、このあたりに来たのかい?」

と、彼女が食事するのを嬉しそうに見ながら、向かいの席で下ごしらえを再開して。

アンブレイラ > 並べられたその料理は、本当に無料なのかと疑う
ほどのサービス旺盛で質も量も申し分ない前菜。
まずお通しを食べようか食べまいかと待っている内にすぐに来る主菜。

「わ、わ、わあ……、す、すばらしい早さ、おいしそうなサラダと…スープと…
え、パンまでついてくださっておかわり自由ですか…!?」

驚きのあまり目が見開き、しばらく固まっていたがお腹は空いているので
ようやくフォーク、スプーンをとり軽く味見をしたあと、善しとして次へ次へ口に入れる。
彼女の霊が生前に食べていた品に比べれば遥かにおいしく、濃い味だろう

「こ、こんなにおいしいものがあるのですね…!
え、ええそうです、ほんの一週間程前に王都に来まして…
家という家は無く定職は現在探している所ですね。実は1日程何も食べてませんでした…」

警戒心もなくシェフに自身の経緯を話していく。お腹はまだ満たされていないものの
金銭面は銀貨残り4枚といったところ。とはいえ無料といわれたならばと、パンの
おかわりを頂きにいく。無意識に4切れを取ってしまい、おかわりの許容を超えてないか
と焦ってしまう。

「あ、あわわ…これはすいません、取りすぎてしまいまして…、でも手に付けたので食べます。
んえと、なんだか申し訳なくなってしまいます、このようにおいしいものを頂けるなんて…」

謂われたとおり自由に食しお腹は満たされたのだが、人のいいアンブレイラは、何かお返し
できることがあればと、たじたじしている―

> 「ああ、『材料が切れましたので本日はこれまで』っていうのだけは避けたくてね。 それに、おかわり自由の品はランチ用に作ったものだから夜はお出ししないんだ。

普段はまかないか、俺が食べちゃうところだったから、遠慮しないで」

少女の煌めくようなリアクションにくすっと笑いつつ、
片手間で食材の下ごしらえなど造作もない…はずなのに、どうしても手が止まって、彼女が食べる姿に釘付けになってしまう。

俯瞰してみれば、青年が何故このような趣旨の店を開いているかは、
この呑気さと、大雑把さと、美味しそうなものを食べる人を嬉しそうに見つめる笑顔を見れば、おおまかには分かるだろう。

「なるほど、そりゃお疲れ様だ!
ああ、いやま、パンの方は別にかまわないんだけど…ふ~む、そうだな。」

改めて少女の姿を見る。

…この店に迎え入れる者としては珍しくない綺麗とは言えない衣類、
しかしその空色の髪や非対称の深い色の瞳…服越しに分かる豊かな体。
魔術や化性の類に詳しくはないが、第六感が告げる、常人とは違う気配。

それらを総合して「ハイ、提案。」と、緊張を与えぬユーモアのある口調と仕草で片手を上げて問いかける。


「とりあえず、今日のお代は結構。
…お安めの料理なんで、何日かのちょっとの皿洗いや掃除で返してもらえれば、それでいい。

それで……ちょっと最近、人手が欲しくてね。
朝と夜に、簡単な掃除や後片付けをお願いできるかな。
それをしてくれるなら、この店の一角の空き部屋を貸すし、
…まぁ朝と夜の数時間以外、自由時間はかなりあるから、他は好きに動いてくれていい。

君がやりたい仕事や家を見つけるまでの間で、どうだい?」

と、あまりこの街でうろついていて無事に済む気配を感じない、
その汚れの奥に感じた可憐さや無防備さを気遣って、
…反面、人手が欲しかったのも本音で、ひとまずの提案。

アンブレイラ > 普段でもしっかり処理先がある食材だからと、
おかわり自由な理由に納得した彼女。しかしながら彼女の心情は感謝でいっぱい
大抵の事はしてやりたいという、一時的に主従の主を求めるかのような目の潤いだった

「さすが、若いのに素晴らしいです、てんかいちの……あ、えっと、なんでもないです。
でも、貴方もお疲れ様です、パンは本当によかったのですね……」

(むむう、つい素性が出てしまう所じゃったの、少し出てしまっておったか。
しかし彼には何かしらの悪意があって優しくしているようには見えぬ…、いや何か裏があった
としても、ご恩には報いねばな)

冷や汗をしうつむいた後再び頭をあげ彼を見れば、何やらじーと見つめてきている。
何かを探られているようだ、そう思い緊張する。その様子はしかし第三者からみれば
異性のみつめあい、そこからはじまる恋心。そのようにも受け取られるのは互いに青年に見える
からか。そして彼が片手をあげ明るく声にした“提案”というフレーズにビクッとする

「は、はい!」

続けて告げられたその提案を聞く。聞くにつれてはまず安心。家事はむしろ好きなほうだ。
しかし、それが一日のみならず、寝泊まりを兼ねて彼の元で働いてくれという趣旨を聞いて
少しばかりはやはり悩む

「…なるほど…なるほどです…。人手が足りない…、それはいけないことです。
確かに、私ができること、掃除や後片付けをすれば貴方が助かるし、私もまず生活できますね…」

事実、港町のハイブラゼールでも、不良と思わしき輩に声をかけられた事はある。自身の
取り憑いたボディは控えめにいって女らしく、魅力的だろう。
考えたところ、彼の下にいることは何のマイナスも無いと思えば、ついに頭を上げて彼を見つめ

「…働きます!わちきを貴方の下にいさせてください!よろしくおねがいします!」

と、最後は快く承った。

> 「てんかいち…?」

きょとんとした様子で、少女の口から出た言葉に頓狂な声を上げつつ、
悪意のある隠し事といった類いではなさそうだが、おそらくは少女が秘する、何らかの一面にも青年は興味をいだいて。

あまりにも真っ直ぐに感謝の念を向けられて、少し気恥ずかしそうに頬を掻きながら…。

「まぁ、さっきも言ったように君が次の仕事と寝床を見つけるまでの、つなぎと思ってくれればいい。
もうちょっとお高いコース料理なんて頼んでたなら、どの道おねがいしてたぜ?」

にっと笑って、あまり拘束したくはない旨を念押しして、
あくまで寝たいときに寝れる部屋・働きたいときに働ける場所を、
一時的に貸すだけ、と彼女に伝える。
…逆に、期限を設けたわけでもないので、此処で働く永さも自由意志。


アルバイトを雇った時よりも、何処か一段、主従めいた契のような言葉に、
おいおいと困ったような様子と…その実、胸の奥底に、ぞわりと、
その主を求めるような瞳や物腰に応えたような、淡く背徳的な快感があった。

それをごまかすように、屈託なくわらって

「はは、貴方のもとにってそんな、大げさな……でも、助かるよ。
俺は、断。 ここ「喜食館」のオーナーで、シェフだ。
『わちき』さんは、なんと呼べば良いかな?

その自分の呼び方、ちょっと好きだよ」

と、聞き慣れぬ言葉遣いや、見慣れぬ容姿に、相手の素性に興味があることを態度で伝えて。

「ああ、食べ終わったら一緒に片付けに洗い場の方へ。
簡単に部屋、案内するよ。」

アンブレイラ > 彼が自身の漏れた古臭い言葉に反応したのでやはり
まずかったなと反省をし、平静に戻ったか、いや熱をもった彼女は彼の返答
を噛みしめるかのように聴く。どうも、奢ったような客にはどのみちお手伝いを
お願いするプランだったらしい。彼女は自分からむしろお願いさせたと解釈されれば
なんとも強引なもので、それこそよくない客だが、結果として互いの利になりそうである。

「はい、よくなるまで働かせていただければ幸いです…、大げさでしたか?
断、様ですね。オーナーの事でしたら何でもお応え致します!わちきは「アンブレイラ」、
短くいってレイラとお召しくださいませ!」

彼女にとっての常識では、アルバイトという概念よりもオーナーに従うことは仕える事として
なんでも尽くす勢いである。現代からすればおせっかいが過ぎる部下である。
ただ、彼女の身体は被検体だった過去もあるし、ある程度のこき使い、仕打ちには
慣れているだろうし、精神体もそれを理解していての一種、何かの願望があった事も否めない。

「ええ、洗い場の方、お邪魔させていただきます、早速の仕事ですか、了解しました!
部屋の方も、よろしくおねがいします!」

> 「アンブレイラ… レイラ、だな よろしく。」

明るい笑顔に返事にと、今の所何一つ文句のない人手が埋まりそうな予感に、満足そうに椅子から立ち上がって

「じゃあ、とりあえず食べ終わった皿を持って…こっちへどうぞ。」

と、青年も傍らにあった仕込み食材を持って、連れ立って洗い場へ。

食事処から洗い場・兼・調理場までは、ゆったり歩いて10秒もかからぬ距離で、ここからなら迅速に注文を聞き、配膳できるだろう。
洗い場の桶には、数枚の皿が入った漬け置き用の水がはられていて

「じゃあ、ここの桶に水が張ってるから、皿を入れといて…
あとで今日寝る前にでも洗っといてくれ。
…で、こっちが…」

そのまま厨房のドアを開け、廊下を通り過ぎると、裏口に一番近い一室に案内する。

6畳一間ほどの、木製と漆喰の簡素な部屋。
ベッド・テーブル類は一通り揃っていて、あまり使われた形跡はない。

「ここが、レイラの部屋。
ここには鍵はないけど、裏口は閉店後は鍵をしめるから…あと合鍵、わたしとく。
部屋の中は、てきとーにいじっても構わないからな?」

と、部屋の中を案内しつつ、家具が埃っぽくないかチェックし、
ポンポンとベッドを叩いたりして。

アンブレイラ > まずは自分の皿からと、要領は分かっているが木製ではなく陶器の皿
を触ってはどのように洗えばいいか確かめて、それと注文を受けてからの
配膳の手順も聞く。食堂の店員としての直接的な素養はないが、作法としては
時の王に膳を届けることと似ていると考える。

「ふむふむー、まずは皿を水に浸けておけば、夜洗う頃には汚れが浮いている…ですね
寝る前のやることが増えました!」

続けて案内された部屋は裏口に近い。みれば彼女の身分としてちょうどいいほどの
こじんまりとして綺麗なままの部屋。自由に模様替えなどできるらしいが、部屋の鍵は
無いらしいようで。ただ古の宮に鍵などあるわけないから彼女は気にした顔は見せない。

「お部屋もまた、新装なのですか?それと、合鍵……
ええ、ちょっと生活感でてしまうかもですが、よければそのようにさせていただきますね!」

合鍵、っというフレーズに少女ならドキッとするものである。合いになる方が好青年だから
よりそうであろうか、アンブレイラの精神の本来は歳老いなので、憶測でこう
振る舞うんじゃないかと過去の記憶をたどり行っているだけであるが―

「悪い家具やらあったら大丈夫ですよ、自分で直しますので!」

> 「そうそう…う~ん…イツザイだな、レイラ。
頼もしいよ。

おお、立派な部屋にしてやってくれ。」

話を聞く素振りや理解の早さに、感心の声が漏れる。
…そのルーツなどに至る考えを青年が知るよしもないのだが、
洗い場や配膳の基礎を学んでいく振る舞いは
見た目の薄汚れた紺色のレースや、貧しそうな印象からは若干遠いような…

「…ん?」

――と、そこまで考えを巡らせて、薄汚れた――ーのくだりで、思い至る、彼女の姿。

「ああ、服や、身なりも…もうすこし綺麗にしないと、だな。
ちょっとそこ、ベッドに座って待ってろ。」

と、一旦席を外して…厨房の方から、お湯と桶と、タオルを数枚持ってくる。


「レイラ、…服や体も、綺麗にしないと。」

と、彼女の手を取って、
頬や腕を暖かく湯で湿るタオルで優しく拭っていく。

じっと、ワイン色の瞳が、左右で異なる彼女の瞳を見つめて、
拒まれなければ、その空の色の髪を、指で整えるように梳り…

「この服、気に入ってるのか?」

と、指先がその服を優しくなぞり、服越しに、女性らしく実る体にふれる。

アンブレイラ > じっくり新しい自分の居場所をどのように
しようか思考を巡らせていれば、自分の服装がどうもこの街らしくないことを忘れていて。

「あ…そうですね!はい、綺麗にしてくださるのですか?は、はい!お待ちしております」

そして待っていれば、タオルを持ってきてくださったので、その湯の温かさがほんわかと
伝わり頬が緩む。

「ああ…あったかいですねえ……。服…ですか?はい、気に入っています、私がここに来る前
からずっと着ていたので。」

“ここ”これの意図するものが二重も三重もあるのは秘密として…
髪まではその彼の手で触れられるはよしとしても、その手が下がり、服に差し掛かったところ
でくいっと身体を後ろに引っ込む。

「あ…、少々お待ち下さい、あの……やっぱり、恥ずかしくて…
う、後ろ向いてくださいませんか?そこの店員服に着替えますので…」

このまま彼が彼女のお願いを聞かず、服を開けさせれば見えてしまうだろう、
かつて被検体として侵された事による針跡や傷の数々が。彼女はそれを見て彼が
恐れを抱くのではないかと思い咄嗟に反応した―

> 「王都にはイイ温泉が湧いてるところもある、今度連れて行くよ。」

心地よさそうに表情を緩めて拭かれている様子を見つめ、
丁寧に白い肌を磨き上げていく。
しかし、その手付きの慈しみが、犬猫を拭くのとはわけが違うのは明白で…

「ああ、それじゃあこの服も綺麗にするなりして、大事にしような。
…うん、思い入れのこもってそうな服。」

と、布地を撫でつつ、体を引かれて指先が離れる。
明確に拒まれた…というのとは違う気がして、
今、気に入っているといった服から、容易に店員の服に替えると話す様子に、何かを察して。

「―――見せてくれ、レイラ。」

と、それまでの朗らかな指示や様子とは、声の深さや静かな強みが一段違った言葉。
大事と言われた彼女の服を、乱れさせたり破くことの無いよう…
けれども、何かを隠そうとするその様子は無視できず、少し強引にレースを捲りあげて…

目に映る、顕になった白い肌に痛々しく刻まれた、痕。
それを見た青年の手がすぅ…と引かれる。

それは、傷跡に恐れや不快を示して手を引いたと思われるかもしれないが、ぎゅっとタオルを湯で絞り直して、再び、
女の肋や腹部、その傷跡が肌に多少、凹凸を残していようところは、一際やさしく撫でて

「……もう、痛かったりはしないのか?」

と、静かに尋ねる。

「凄いな…」「酷いな…」「どうしてこんな…」という言葉は、どれも脳裏に浮かんだ本心ではあるが、
気を使ってそれらを言わなかった…わけではなく、はじめに出てきたのは、その痛々しい傷跡に湯が沁みないかという心遣いと

「…綺麗だ」

と、傷を慈しむように洗いながら、自分も、相手も、安心できるようにつぶやいて。
暖かな手とタオルが、胸元に優しく触れる。

アンブレイラ > 「え…―」

彼女は更に強く拒もうとはしなかった。見て、離れる人ならそれまで。しかし彼が自分の
名前を言う言葉が芯をもち、自分に突きつけられてきたから、きっと恐れられる事は
無いと。その服を捲りあげられる時はただじっと、静かにしていた。

「……やっぱり…、こんなんなの、私…だから、怖いよね…誰も私に構わないから……きゃっ」

自身を否定する言葉、しかしそれは本心が半分、表面上が半分である。精神的には被害を受けた
本人ではないから、その時の痛みはわからない。しかし、その身体に馴染んだ霊として当然
自身の身体になった訳だから真摯になる。
一度引かれた断の手が、再び、今度は一層優しく彼女の肌を撫でる。

「ああ……あ…、こ、怖くない?私、でも…
痛さ…は、確かにある。鋭い痛みじゃなくて、なんか、気持ち悪い、違和感のような痛み。
大丈夫、湯は沁みても大丈夫ですよ。」

取り憑いた彼女の心自身は最初、なんてこんな酷い仕打ちを、か弱い少女にこのような仕打ちを
した人間、許さないなどと、憎悪、怨念もあった、今も心の底で眠らせているし、この王都に
来た理由も仇なすべき者の情報集めだから

しかしそんな感情が湧き上がるよりも先に、彼の言葉に心が惑う

「ふえ…綺麗…なんて?
断…様は優しいのですね…。従者とはいえこんな、お気遣いしなくていいのに…」

(……この子、非常に勇気があるのう…。わちきよ、こんなんでいいのじゃろうか…
しかし、これは今も暫くも、彼の優しさにまかせておくことがよいじゃろうか…
それにしても、断の手遣い、柔らかいのう…)

今では上半身裸同然になった自身の身体を手やタオル越しになぞられていても不快感はなく、
身体を避けることはしないでいる。別の感情の高まりがあるかどうかは定かではなく―

> 「…良かった。 拭いて欲しいトコロあったら、言ってくれ」

丁寧に、丁寧に、豊かな乳房の下、背中に腋、首筋…そして、腰へと
暖かさと柔らかさがなでおろされていく。

一体、何をどうされたら、このような傷が残るのか。
一つ一つ聞き出したい気持ちもあれば、とてもじゃないけどそうはできない、という思いも同時に溢れてきて。

上半身を清め終えると、ベッドの上で豊かな彼女の身体を抱き寄せるようにして、するりと暖かな布が、
臍の辺りを、そしてその下の衣服も開放させて進んでいく。

顔と顔は、先程の食事の時や面接の時を考えると、
これまでで最も近く接近しているだろうか。


「こっちも…いいな?」

するり、と顕にした臍の下から、ゆっくりと指先と暖かさを含んだ布がこすられていく。
彼女の体を抱き寄せながら、持ち上げたり、手足を開かせて洗う様子は、
他人を労る様子にも、男が女を愛撫する様子にも見える。

倒錯した目線で見れば、まるで所有する大切な美術品を磨くようにも…。
少なくとも、青年にはそのようなつもりは、まだ欠片もない。

ただ指先と視線に、主従の色と、高ぶり始めた牡の色が帯び始めているだけで。

> 【中断 継続予定】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアンブレイラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からさんが去りました。