2019/02/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にキンバリーさんが現れました。
■キンバリー > 歓楽街のある通り。食事処が乱立するこの通りの各店舗は、客の争奪戦を繰り広げていた。
店舗は周囲に美味しそうな香りを垂れ流し、通りを歩く人々の鼻腔を刺激し、我が店へと客を誘う。
脂の焼ける香ばしい匂い、香草が織り成す甘く爽やかな匂い、はたまた一般的に異臭なのだが嗅ぐ人が嗅げば…な匂い。
人々はその香りを受け、笑みを零し、食欲を満たすべく店へと誘われていく。
そんな匂いの中、腹の虫を鳴らしながら道を歩いている少女、に見える女が一人。
「欲をそそられてしまうのって、厄介…解消しなければならないのも、厄介。」
一般人のそれとは少々違う嗅覚を持った女は、一般人のそれとは違う感覚も抱いていた。
美味しそうな匂いは食欲を擽る匂い、それだけである。女にとってそれは良い匂いではない。
悪臭もまた同じで、体に害を与える恐れのある匂い以外は危惧する匂いに有らず。
どんな良い香りでも、鼻を抓みたくなる臭いでも、そんな香りもある、その程度の認識であり、女の心を動かす事ができないのである。
それよりも微妙ながらに少しづつ違いを見せる人々の体臭の方が、女に興味を抱かせ、笑みを誘うのだ。
ある意味厄介な女である。
「…本当に厄介。」
軽く頭を振りながら否定しているのは、恐らく自分自身。女の言葉から省かれた主語は“私”であろう。
本人もそれを自覚しているようである。
■キンバリー > さて、そうしていても空腹は当然収まらず、三大欲求の内の一つが腹を鳴らし、女を脅している。
仕方なく女は手近な店を探すのであるが、食事時もあり満席ばかり、空いているのはオープンテラス位だった。
ふと女の三白眼が店の中を捕らえた。食事を終え、欲求を満たし、歓談を楽しむ客が幸せそうに見える。
「待とう…」
寒空の中寂しそうに佇むそこへ足を運ぶと、風の当たらない場所を探し、腰を下ろす。
手に持っていた鞄から本を取り出した女は、眼鏡越しにそれを読み始めた。
その本のタイトルは…――口に出して言えない。察すればそれは官能小説だ。
席が空くのを待ち続け、一心不乱に読む、読む、読む。表情を一切変えず頁だけ捲られていく様は、ある意味怖い。
しかもこんな小柄で化粧っ気もない女が、なのである。世が世なら通報案件に近い。
「陳腐な表現、にしては面白いのは…感情が理解しやすいからなのか、それとも自己を投影しやすいのか…」
目まぐるしく動く瞳はまるで学術書に目を通す様。その瞳が止まり、ぼそり、と声が吐かれた。これも怖い。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアシュトンさんが現れました。
■アシュトン > (こうやって、特に目的も無さげに歩いている日は、おおよそ暇なときである。
紙巻を口に咥えてくゆらせながら、のんびりとした足取りの男が一人。
そろそろと腹の調子も食事時だろうか、何処か見繕いたい所ではあるものの、タイミングが悪そうだ。
適当に目星だけでもつけて、後で戻ってこようかと、そんな風に考えていた頃合いだった)
「……何あれ怖い……」
(ちらっと視線の端に映った景色に、ぼそりと小さくつぶやいた。
席が無いので、寒いのをあきらめてテラス席に座る。分かる。
時間を潰すのに本を読む、これも分かる。
だが読み方が尋常ではなかった。自分の家でも、あそこまで没頭して読む人間はそうそうといないだろう。
怪訝に思いつつ、あの店は止めておくかなと通り過ぎた……その後だった。
思い出したかのように頭を左右に傾ければ、後ろ歩きで戻ってきて)
「……こんな所で何やってんすか、チビ姐さん」
(声を掛けるべきか迷った挙句、掛けることにしてしまったようだ。
仕事柄、戦場やら何やらで指揮官や――つまり地位の高い人物の護衛につくこともある。
もっとも、今声を掛けた人物が表の守りであれば、自分はあくまでも裏としてであるが。じっさいどうするかプランを立てる上で、話した事も同じ仕事をした事も、何度かはあるのだろう)
■キンバリー > 大好きな読書の時間。それを遮ろうとしている臭いが、女の鼻に届いた。
悪臭にも無表情な女が、顔を顰める臭い、生命を脅かすその臭い。
その臭いの後に耳へと届けられた言葉は、更に女の顔を顰め、眉間に皺を寄せさせる。
眼鏡が下げられ、その声の主を睨み付ける女。上を見た事により元々三白眼である瞳の白が、更に広がる。
「…見てわからないの?席が空くのを待っている、時間が余っているから読書をしている。
――それから何度も言うけれど、私は小柄。以上。」
声の主は過去の女と接点があった。
色々と噂のある鼻持ちならないあの貴族の警護をした時、一緒になった人物だ。
このような小柄な女では力不足と感じたのか、この貴族は事もあろうか裏の人間にも警護を頼んだのだった。
自分のプライドを砕いた貴族と、この男性。そしてこの男性は、その頃から自分をチビ姐さんと呼んでいた。
忘れるに忘れられない人物の一人である。
「冷かしなら立ち去って。話があるのなら座って。…相変わらず奇妙な匂い。」
寒空の下悴んだ手に息を吹きかけると、女は瞳を本に戻し、眼鏡を整え読書に戻る。
■アシュトン > (煙草の臭いは、それこそ好き嫌いだろうが。この男が纏う臭いにはまた別のモノがある。
それは勿論と、仕事に用いる道具が、元となっている訳だが。
もっとも、普通の人間で気づけるモノでもないだろう。彼女だからこそ、といった所か。
ややと鋭ささえも感じる視線にさらされると、喉元で小さく笑い。わざと見せつけるように咥え煙草を指に挟めば、小さな皮袋に突っ込んで火を消してしまう)
「それは、見りゃ分かるんだけどさ。天下の往来でここまで熱心に本読んでる人ってのは、そうと見かけないんでな。
何か別の目的でもあるのかなって、思ってね。
いやぁ、チビ姐さんの方がなんか可愛らしいじゃん?」
(肩を軽く揺らすような仕草と、小さく上がる口の端。
相変わらずの足取りで近づいてゆけば、ぐいっと上から本を覗き込むような姿勢に。
なお、貴族が裏の仕事を雇うなんてのはそう珍しい話でもなく。彼女がどう考えているかはさておき。此方は別にどう、という風には思っていないようだ)
「いや、ちょうど俺も何処かで飯にありつこうと思ってたんで。良ければご一緒させてもらっても?
……それに気づくのはチビ姐さん位ですよ。いやはや、敵じゃなくてよかった。これでも、前よりか気を付けてるんだけどねぇ。
んで、結局何を熱心に読んでるで?」
(ぶっきらぼうながらあっさりとOKな事に数度瞬きをするのだが。答えるのが早いか、向かいの席に腰をおろし。
読書へと再度熱中し始めた姿を、興味深げに眺めはじめた)
■キンバリー > 小憎らしい言葉と共に本を覗き込んでくる彼。それを隠しもせず、頁をめくる女。
小説は山場、佳境に入っていた。冒険ものであれば強大な敵との対峙、そんな所であろう。
内容的にもかなりハードで、血みどろな戦闘が起きている、そんな場面だ。
が…これは官能小説だ。どんなシーンかは想像にお任せする。
さて。彼が自分の目の前に座ったのなら、それとほぼ同時に本を閉じ、テーブルの上に置き、眼鏡をその上に載せる。
そして椅子を鳴らして小さくも大きく立ち上がると、見下ろす様な一言告げた。
「煙草の匂いよりも、貴方の匂いをなんとかして欲しい。
それから…可愛らしいかどうかは貴方の主観。私は嬉しくない。以上。
座りたければどうぞ。読みたければどうぞ。私は別の本を読むから。」
なんともまあ、刺々しい言葉であろうか。
勿論距離の遠い人にはそれ相応の言葉を吐く。こんな言葉、所謂女の本音に近い言葉がすらすらと出てくる辺り、一緒に仕事をした期間も長いのだろう。
そしてそのまま女は店の扉を開け、顔を突っ込み、
「何か暖かいお酒を二人分、お願いできますでしょうか?」
と店員に告げた。先ほどまで彼に届けていた声より半オクターブ高い声で。
程なくして席に戻ってくる女。その手には暖められたウィスキーが二つ。
その内の一つを彼の前に置きながら、彼の前に着席する。
■アシュトン > 「……なーんか、人通りのある場所でよんじゃ駄目な部類の文章が見えるんだけど
こういうのが好きだったのか、ちょっと意外と言えば意外」
(ちらちらと見える内容に、双眸が徐々に半開きとなってゆく。夜中に薄暗い部屋で、オジサマ方が愉しむような部類の本ではなかろうか。
心理描写と情景描写が、かなりじっくりたっぷり濃厚に書き連ねられている様だ。
S系の男に、小柄な女性がねっとりと……あ、次のページでフィニッシュっぽいですね。
割と、というか今までの対応通りというか。どちらかと言えば硬い印象の人物だが。
やや神妙な面持ちで、書面と相手を交互に見やる)
「完全に消せるモンなら消したいんですけどねー。香水ふりかけまくるよりかマシじゃない?
おやおや、相変わらずの塩対応。まーいーですよ、お言葉に甘えまくってやるから」
(と応える割に、喉元でくくっと笑っていた様だが。
文面を追いかけながらぺラッとページを捲れば、予想の通り。
掠れるような否定を零しながらも、男が口にするように、隠しきれない絶頂を迎えるとかそんなシーンであった)
「うん? いや、申し訳ない。ご馳走になってもいいのかな、コレは
折角だしお返しに、飯でも奢りましょうか?
それとも、この本みたいなのがご希望だったりして?」
(ページをめくる手を止めると、一つ視線をグラスへと移し。
それを手に取り掲げれば相手の方へと差し出す。乾杯の仕草、といった所だろうか
グラスを揺らせば中の液体が波を立て。なんとも冗談交じりのような、そんな言葉を投げかけた」
■キンバリー > 「好きよ?だって。愛情という独占欲の塊がどういう風に性欲に繋がり、それがエスカレートしていくのか。
感情と性欲の変化を理解するのには一番解り易い書物。」
意外、と言われれば淡々と紡がれる言葉。
そんな事を言っても、結局場面や流れの好みの傾向は現れる訳で、彼の目にした頁が女の欲を擽っていたのは確かである。
しかしそんな事を隠しもせず、腫れ物を見るようなじとりとした視線を彼に向けた。
見てもいいと言ったのは女の方であるのに失礼甚だしい。
「香水も個性なら良いのだけれど。そこらに同じ匂いがする人間は奇妙で不快。
個性ある貴方の匂いの方がマシ。」
自分の小説、その頁を捲りながら飄々と言葉を続ける彼。
別の本を読む、と言ったわりにはその視線は頁を捲る手、その筋の動きを見ていた。
頭の中で、小説の一部にあった男性の手の表現と重ね合わせており、ほんの少しだけその場面がリフレインしていた。
「どうぞ、奢ってあげる。…食事は店内でするつもり。その為に待っているから。
…同席なら嫌。だから奢ってもらわなくて結構。」
乾杯の仕草に溜息を落としながら睨む、睨む、睨む。
この視線は、彼の『ご希望だったり』の言葉に対する返答だ。どうやら図星なのだろう。
■アシュトン > 「本を書いた人物が望むのと全く違う、やけに論理的というか哲学的というか心理的な答えが返ってきてしまった。
こういう内容って、最終的に言えば女性の方が大なり小なり男性に対して好意があるのが前提だよな。いやよいやよもって感じ」
(読んでいる位置を指し示すように、指先が文字列の横を滑って行く。
胎内に熱い精を放たれ、息をかみ殺すようにしながら女が小さくと奮えている、そんなシーンである。
相変わらずと何とも言えない視線を注いでくるのを小さな笑みで受け止めながら、自分なりに読んだ感想を呟いていた)
「俺もちょっとねぇ。貴族のダンスパーティーとか凄いぜ、匂いが。
おや、それは褒め言葉って事でいいのかな。有り難く受け取っておくよ」
(デレ、なのだろうか。そいういう事にしておこう。
またページが捲られる。女性の衣を横へと逸らしてゆくように。
残りからしてピロートーク、かと思ったが。なんと、第二回戦へと入ってゆくようだ。どうも本の中の男、完全に落としてしまう気満々だ)
「そいつは有り難い、丁度冷えてきた所なんだ。
…………めっちゃ見られてる」
(すごい目で見られている。乾杯にかかげた腕をひっこめると、ちびり、アルコールを口にして)
「懐具合がいいから、豪勢にいこうと思ってたんだが、ふられちゃ仕方がない。
しかし、俺としちゃ本命の方は、拒否しなくてもいいのかな?
同席は嫌でも、同じベッドは構わないって解釈しちまいそうなんだけどな」
(もう一口と、酒を含めば口箸が上がり。此方からもじーっと瞳を見つめ返すと、頭を軽くと横に傾けた)
■キンバリー > 「それは男性の欲を叶えるものだから。女の欲を叶えるものなら逆が多い。それだけよ。
中には両性の欲を叶えるものもある、そういう文を見るのが楽しい。以上。
――そろそろ返して。」
淡々と答えながらも、先程まで自分が捲っていた頁の先が気になっていた。
何しろ物語りも佳境だったのである。そしてその先は女の目に届くことなく、あまつさえ彼の目に入っているのだ。
その手先は優雅にも淫靡に、頁を捲っている。胸のざわめきを隠すべく、女は彼を睨み続けた。
その顔は自分を見つめながら傾けられる。
「貴方が見られる様な言動をしているからよ。本命?なんの…――……ぁ……」
ふと、先程までの自分の発言や行為を振り返った。彼がそう言葉にするのも頷ける、所謂隙を与えてしまったのは自分だ。
「キ、キミねぇ?…そんな事は無い、私だって相手を選ぶ。
だから同席も嫌。ベッドの上でも勿論嫌。分かるでしょう?
――考えてもみなさいよ…………」
前半の少々大きな声に反して、後半はぶつぶつと呟く様な声。
それを喉へ流し込むように、両手で酒の入ったマグを持ち、こくりと呑む。
眼鏡を外したのはその視線を遮る為。湯気で曇るのを拒否する為。どちらかは判らないが、その視線は明後日の方向を向いていた。
■アシュトン > 「なるほど、そりゃそうか。男に都合のいい内容になってるわな。
女性はおぼろげに想像は出来なくもないんだが、両性ってのは良く分からんな。
どっちか寄りになるのか?完全に中間じゃ話が動かないだろうし。
ん~……読みたければどうぞって言ったじゃん。俺もちょっと興味湧いてきた所だし。
どうせだから一緒に読む?」
(正直な所を言えば、そのまま返してしまっても良かったのだが。
とはいえ、彼女が言い様を変えるという事は、何かしらの付け入る隙、といった所なのだろう。
悩むようにページを左右にヒラヒラと、行ったり来たりとした後に。
これは名案、とばかり。
本とグラスと手にして立ち上がれば、座席の脚を、己の足で引っ掻けて。ずるずると、隣の位置へ。
なんとも遠慮なしに、隣の位置へと腰を下ろす)
「そうかい? お空の下でこんな本読むのと、そう大差ないだろうさ。ふふふん」
(何かを気づいたような小さな呟き声が聞こえれば、片目を僅かに細める)
「勿論、こう言うんだ。俺からしちゃ、大歓迎なんだけどね。
そういう割には、さっきはっきりと否定しなかったじゃぁないか。それこそ、指摘されて気付いたみたいにさ。
さっきまで随分と遠慮なしに言ってた割には、口調が弱くなってきてるぜ?
俺ならこの本みたいに……それこそ一晩中、可愛がってあげる自信が、あるんだけどな」
(隣まで移動してきたのも、この為だったのだろうか。
スイと逃げてゆく視線を追いかけるよう身を乗り出せば、微かに酒気を帯びたと息が耳元へと届く程。
ゆっくりと甘く流し込むような口調と共に、そろりと伸びた指先、先に本を捲っていた動きそのままに軽く肩へと触れようとする)