2019/02/05 のログ
アケル > さて――それから暫しの後。
猫のように首の後ろを掴まれ、店先にぶら下げられる幼女の姿があった。

「むぅ……不服なのだわ」

子供が酒場に入るものではないと、至極真っ当なことを言われて諭される。
足は地面に着かないままプラプラと揺らして、そのまま何処かへ運ばれて行くのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアケルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露天市」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 青い空の下、ゴザや屋台があちこちに広げられ、そこでめいめい好き勝手に、商売をしている。
その客もまた、多種多様。
貴族、平民、王族……紛れてはいるが魔族の様な人外までも居て、混沌とした様子であった。
そして、剣闘士クレスもその中で、商品を見回っていた。

「いや、色々あるな……。食べ物の屋台なんかもあるし……あそこのテントは娼館?
いやはや、よくやるよ……」

後で行ってみようかな、と思いつつ、取り敢えずは露天や屋台を見てみる。
やはり、第一の目当ては武器だろう。
男にとって剣は消耗品。
幾つあっても損はないし、他の種類の武器だって、開拓してみる価値はある。
勿論その他、本にも興味はあるし、こういう催し物の醍醐味は、何と言っても屋台の食事だろう。

「さーて、どうするかな、今日は」

クレス・ローベルク > 串肉などを歩き食いしつつ、男は露天市を適当に歩いて回る。
気付けば、人混みから少し離れた休憩スペースに来てしまった。
休憩スペースと言っても、簡単な椅子が幾つか置かれているだけであり、そこからそう遠くない場所で、ちらほら露天もやっている。
折角なので、腰を落ち着けようと思ったが、その更に隅っこに、珍しいものを見つけた。

「お……?」

それは、奴隷市場だった。
隅に植樹された木の下であるため薄暗く、それがまた妙に奴隷市場の雰囲気にマッチしていた。
粗雑な服を着せられた男女が、ざっと十名ほど死んだ目で中空を見ており、その横で中年の太った男がゴザを引いて座っている。
よく見れば、彼等はほぼ全員、ミレー族のようだった。

「こりゃまた集めたもんだね……」

『お、お客さん!奴隷をお求めかい?
連中はつい最近、ミレー族の集落から仕入れてきたもんでさ』

「へぇ……」

道理で、肌に鞭の跡などがない。
男は奴隷など買うつもりはないが、しかし、新品の奴隷などバフートでも中々見れるものではない。
折角なので少し冷やかしてみることにした。

クレス・ローベルク > 「んー、やっぱ奴隷は今の所良いや。ごめんねー」

『ちぇっ、最初から買う気のない奴は大体皆そう言うんだよ。
やっぱ場所が悪いよなあ……クジで外れちまったからな……』

そうぼやく奴隷売りに別れを告げ、休憩エリアに戻ってくる。
休憩エリアの周りは、どちらかというと食べ物中心だ。
王都の食べ物だけではなく、外国の食べ物も多い。
シェンヤン風や東国風、魔族風と言われる魔物料理などもあるが、

「折角だから、東国風行ってみるか……
あ、お団子売ってる」

折角なので、あんこと草餅をそれぞれ三本ずつ買っておく。
紙に包まれたそれらを、交互に一本ずつ食べつつ、休憩コーナーから出店の多い会場中心へと戻っていく。

クレス・ローベルク > 団子を食べながら、再び人の多い中央に戻る。
中古の剣を二三本買って、取り敢えずこれで最低限の用は終えた。
後は自由なのだが、

「うーん、やっぱ本かな。
流石に恋人へのプレゼントを中古で済ますのはないし」

ちらほら本を売っている所はあるが、中々纏まった量の本を売っている所は少ない。
さて、どうしたものかと思っていると、何やら大きな物を置いている店を見つけた。
テントなどで庇を作らず、ただそれと、店主が座っているござだけで構成されている店。
よく見るとソレは、

「うわ、、何だこれ。本棚まるごと持ってきてるのか」

それも、かなり大型の本棚を二個もだ。
中にはギッシリと分厚めの本が揃っている。
折角なので中を拝見させてもらうと、

「……あー!『魔術概論Ⅰ』やっす!ダイラスで買ったやつの1/2以下じゃん!」

前に買った本がかなりの安値で売られていて、ショックを受けてしまった。

クレス・ローベルク > あまりの大声に興味を引いたのか、優しそうな老婆が声をかけてきた。
この店の店主としてござに座っていた彼女は、やや可愛そうなものを見る目で

『あー、お客さん。魔術概論Ⅰの5版を、まさか定価で買ったのかい。
最近、班上げされて、殆ど同じ内容のが古本市場にどばっと出回ったから、安くなってるんだよ』

残念だったね、と老婆の店主は言って、また店に戻っていく。

「嘘だろ……?結構高かったのにアレ……」

がっくりと肩を落とし、別の本を見ていく。
本棚二つ分とはいえ、男の頭の高さまではある本棚だ。
まだまだ見終わるのには時間がかりそうだ。