2018/12/02 のログ
■カーレル > それほど好きというわけでもないから結局は酒瓶を持て余してしまう
歩いているせいもあり、身体は寒さを感じない程度には温まっていたから手にした酒瓶を
ボロを纏い路地に座り込んでいた男であろう人物の傍らにほい、と置けば自宅へ向かって再び雑踏の中に紛れ姿を消すのであった
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカーレルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 朝焼けが眩しい冬の一日。孤児院時代の仲間が仕事のため異国で暮らすようになる出発の日。見送りに誘われて、朝一番に出る馬車の乗り場に集まっていたのが先ほどの事。特別仲がよかった相手ではなかったから激励の言葉に迷ったりしたけれど、無事に済ませて解散した帰り道。
まだ明るくなりきらないうちに起きて家を出たから、すこしふらふらする。口元に手を当てて小さな欠伸を隠しながら歩いていると、仕入れの荷を抱えて走る商人に道を開けるように叱られた。
日がのぼりきらない早朝に散歩する機会はあまりなかったから、見慣れた街の景色がすこしだけ新鮮に見える。ときどき通っている食堂が、こんな時間からもう営業中の看板を出しているのに驚いた。
旅立つ仲間には馬車の中で食べるように言って簡単な弁当を手渡していた。それを作る時、朝食代わりにすこし摘んだりしていたから空腹ではない。だけど、あちらこちらから漂ってくる香りには惹かれそうになって。
「ふあ…」
今日はお店も休み。このまま帰って二度寝しようか、それとも、もうちょっとだけ散歩を楽しもうか悩みながら、また欠伸をした。
■ミンティ > 手持ちのお金もすこしくらいはあるし、たまには朝から外でお茶とデザートを楽しもうかなんて考えて、すぐに頭を振った。つい先日、新しい靴を買ったばかり。あまり贅沢をしないように、しばらくは節約した方がいいだろう。
大通りに並ぶ色々なお店からは、トーストが焼ける香ばしい匂いが漂ってきたりして誘惑は尽きないけれど、ぐっと我慢。
「…え。あ、えと……わたしですか?……おはよう……ございます」
うっかりどこかのお店に立ち入ってしまわないよう早足になりかけたところで後ろから声が掛かった。振り返ってみると人のよさそうな年老いた男性が、荷車を引きながら挨拶をしてくる。
つっかえながらも朝の挨拶をして会釈をする。今日もいい天気だと笑いかけてくる老人が差し出してきた手には飴玉が一つ。まるで小さい子におやつをあげるような雰囲気。
いくらなんでも子どもには見えない歳だと思いたい。けれど彼から見れば自分なんか、まだまだ子どもなのだろうとも思う。飴玉を受け取り、呆気に取られながらもお礼を言った。
よい一日を。そう言って横を追い抜いていく老人の背中を眺めながら、不思議な感覚。
誰にもああやって接している人なんだろうと強引に納得して、また歩きはじめる。口に貰ったばかりの飴玉を含んで。
それからしばらく散歩を続けていると、急に足元がふらついた。やっぱりまだ寝足りないのかと考えて踵を返そうとして、すこしずつ違和感が膨らんでくる。
とくとくと胸の鼓動が早くなっていて、心なしか顔が熱いような気がして。
■ミンティ > 口の中の飴玉はあっという間に溶けてなくなってしまっていた。不調はそこから始まっていて、自分の迂闊さを思い知った。
病気なんかじゃないと、はっきり言える。貰った飴の中に薬が混ぜこんであったんだろうと考え、あわてて周囲を見回した。さっきの老人が、どこかで見張っているように感じてしまう。気にしすぎかもしれないけれど一度不安になってしまうと落ち着けない。
その間にも頭がぼーっとしてきて、本格的にまずいと思った。逃げこむ場所を探して、あたりをきょろきょろ見回し、宿屋の看板が目につく。節約しようと考えていたばかりだけど、この状態で往来をふらふら歩くよりはずっといい。
焦って転ばないように気をつけながら宿へ駆けこむと、息を震わせながら一部屋借りたいと頼み、財布の中のお金をカウンターに置いた。
様子がおかしいのは傍目にもわかるのだろう。宿の主人から向けられる眼差しが好奇の色をもっているように感じられて、羞恥に涙ぐむ。
それでも一応客だからと部屋をあてがってもらえたのは幸運だった。あとから別のトラブルに見舞われないとも限らないけど、今はそこまで考える余裕もなく、ふらつきながら宿の廊下を歩いていって…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「平民地区 露店市場」にグラムヴァルトさんが現れました。
■グラムヴァルト > 日も高く昇った市場通りは、馬車での移動が制限される程に人の行き来が激しくなる。右に左に立ち並ぶ露店の品々を眺めつつの移動でもあるため、ぶつかって言い合いになったり、そこから殴り合いの喧嘩に発展したりといったトラブルも多かった。
そんな人混みの中、頭一つ突き出た長駆ゆえに細身に見えるも、実の所は広い肩幅を有するグラムヴァルトもまた相応に難儀しているかと思いきや、流れに乗って川を降る落ち葉の如き足取りは誰にぶつかるでもなく危なげがない。
ブレーのポケットに両手を突っ込み、前傾気味に背筋を丸めた歩き姿は銀の三白眼が作る凶相も伴いチンピラそのもの。
しかし、襟紐を緩めた白シャツから覗く浅黒い胸筋は鋼板の如く鍛え上げられ、肩当ての無骨さ故に目立たぬものの、黒皮ジャケットに浮き上がる肩や背筋は凶悪なまでの盛り上がりを見せており、そこらの三下とは存在を異とする『本物』である事を伺わせる。
そんな、命の取り合いを日常とする化物がこの様な場所で何をしているかと言えば、何のことはない。獲物の物色中である。
彫り深い眉庇の影の下、ギョロリ、ギョロリと左右に走る銀の小瞳が、行き交う娘の顔立ちや肉の付き具合を値踏みする。
■グラムヴァルト > 「―――ま、少々肉が付きすぎだが、今日の所はあいつで手ェ打っとくか」
低い声音がなんとも失礼な台詞を小さく零す。獲物の選定を終えた若き狼が足先を向けるのは、先程から数人のゴロツキにしつこく声を掛けられ困りきった表情で逃げ道を探す一人の娘。 当然、救いの手を差し伸べるなどという目的はない。他に美味そうな獲物が見当たらなかったというだけの事だ。
先に唾をつけようとしていた小物の群から獲物を横取りする事にも何ら思う所はない。
「邪魔だ、どけ」
故に、真っ直ぐ娘へと向かうグラムヴァルトの眼前で無防備に背を晒すナンパ男の頭部を掴み、その傍らにいた下っ端の側頭にぶつけて一度に二人を昏倒させる。まともな口上すら無い突然の攻撃行動に困惑しつつ、それでも好戦的な怒気を向けた残りの三人に「―――――…ア゛?」高みから牙を剥いた唸りを一声。人を殺す事に覚悟の一つさえ必要としない狂狼の銀眼に射竦められた男たちは怯えた声音を小さく漏らし、冷や汗の滲む目配せと共に倒れた仲間を担ぎ上げ捨て台詞一つ残さず逃げ去った。
利口な腑抜け共の背を見やるのと何ら変わらぬ銀眼が、感謝の気持ちも露わにこちらを見上げる少女を見下ろし、ニヤリと持ち上げた口角が鋭い犬歯を剥く。
「オメェにはしばらく付き合ってもらうぜ」
無造作に伸ばした手が娘の二の腕を掴み、抵抗など許さぬ力強さでぐいと引き寄せ抱き止める。己が救い出されたのではなく、別の獣に捕らわれたのだとようやく気付いた娘は慌てて別の救いを見出そうとするものの、そんな物が都合よく現われるはずもない。哀れな娘と獲物を捉えた王狼。二人の姿が市場の喧騒を後にする。
ご案内:「平民地区 露店市場」からグラムヴァルトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 自分のものではないべッドの上で目をさましたのが一時間くらい前の事。宿の一室を見回して、どうしてこんなところで寝ていたんだろうと考えこみ、朝の顛末を思い出す。
通りすがりの親切そうな老人から渡された飴玉を口にしたとたん、頭がぼーっとして、身体が熱くなっていった。おかしな薬が混ぜられていたのだろうと理解した時には家まで逃げ帰れるような状態じゃなくて、それで近くの宿に掛けこんだ。
状況を整理し終えると溜息をこぼす。あまり人を疑ってばかりいたくないけれど、すこし不用心だったのは確か。
けれど不幸中の幸い、部屋をとったあとに追加のアクシデントはなく、今まで休んでいたおかげで身体の不調もなくなった。服の乱れを直し、部屋を出て。
朝とは違う賑やかさに、きょとんとする。部屋を借りる時点では他の事に気が回らなくて目についていなかったけれど、どうやら酒場が併設されているらしい。
今から帰って夕食をつくるのも、すこし面倒に思ってしまう。この際だから、もうちょっとだけの出費くらいは諦めようと騒がしい空間へ向かって、行き交う人の間をすり抜けて、カウンターへ辿り着いた。
「あの、冷たいものを。……あ、ええと、アルコールは、あまり強くないので…
それと、軽く摘める食事を、なにかお願いします」