2018/11/30 のログ
ご案内:「平民地区 宿の一室」にレオンハルトさんが現れました。
■レオンハルト >
薄暗がりの中、目覚めたばかりの青年貴族が思うのは、ここが一体どこなのかという事。遠く聞こえる街の喧騒から、時刻は既に朝も遅い時間だと分かった。にもかかわらずの薄暗さは――――やはり、想像通りの木窓である。レオンハルトが普段使いする様な富裕地区の高級宿では無い。
とはいえ、木窓が漏らす明かりも隙間風も最小限。平民の利用する施設の中ではそれなりに質の良い宿らしい。壁の一角を煙突と繋げていると思しき室内の暖気や、先程喉を潤したポットの中身たる果実水の清涼な甘酸っぱさからもそれは確かだ。
「――――――残る問題は……」
しなやかに鍛え上げられた白皙の長駆が寝台の上、長い指先で目元を抑え一筋の冷や汗を伝わせながら視線を落とす。一糸纏わぬ下肢に蟠る毛布の中、青年貴族の前腕に抱きつく様に身を寄せた裸身の主が誰なのか、まるで覚えていない…。
■レオンハルト >
その寝顔を確認すれば、すっぱり抜けた昨夜の記憶と共にあれこれと思い出す可能性もある。 しかし、閉ざされた木窓の作る薄闇の中では、余程に顔を近付けねば判別は難しい。現状で分かるのは、前腕に触れる柔肌の瑞々しさから、まだ若い娘なのだろうという事くらい。
記憶をなくす程に羽目を外しながら、それでもそれなりの相手を選んだと思しき己が美意識を、この一点に置いては褒めてやってもいいだろう。
「―――…ま、いつまでも先送りに出来る問題ではないね」
ふぅ…と一つ溜息つけば、青年貴族は華奢に見えてもしっかりと肉のうねりを見せる細腕を伸ばして木窓を開いた。途端流れ込む冬の寒気に白金の前髪を揺らしつつ、青年貴族は差し込む日差しに照らされた眠り姫へと涼やかな碧眼を落とした。
■レオンハルト > 寝台にてすやすやと寝息を立てていたのは、行きつけの酒場で女給を務めるまだ年若い娘。頬に散ったそばかすと三つ編みにした赤髪の垢抜けない素朴な少女。
少なくともまるで知らぬ相手で無かった事には安堵する。酒場のマスターの小言くらいは覚悟せねばならぬだろうとげんなりするも、腕に抱きつく少女が浮かべる幸せそうな笑みを目にすれば、レオンハルトの口元にも柔らかな笑みが浮かぼうか。
少女が働くのは、それなりに忙しい酒場だ。今しばらくは休ませてやろう。そう考えた青年貴族は身体を滑らせ、少女の傍らに改めて横たわる。
レオンハルトの一日が始まるのは、もうしばらく後の事になりそうだった。
ご案内:「平民地区 宿の一室」からレオンハルトさんが去りました。