2018/10/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカルニーツォさんが現れました。
カルニーツォ > とある冒険者から依頼されていた傷の治療薬を届けた帰り道。
予想以上の冒険の成果に気をよくした冒険者達が約束の代金の他に、価値が分からないからと渡してくれた半分風化しかけている古代の薬品の入った壺の包みを後生大事に抱えて歩いている長身痩躯の男。

もとより姿勢が良いわけではないが、メロンほどの大きさの包みではあるが、抱え込んでいる故に背中を丸め、普段以上に小さく見える。

店への近道をしようと公園を通りかかると、視界の端に小さな影が映る。ふと立ち止まり視線を移せば、逆光になってよく姿は見えないが、その者が夕日に透かして見ている宝石の輝きに目を奪われる。

「...あれは?」

ついフラフラと誘われるように娘の方へと歩み寄っていく。

「ほぉ...美しいですねぇ...」

いつもの癖か、音もなく歩み寄り、気配を感じさせぬまま娘の背後に立つと、さらに腰をかがめて娘の顔の横から宝石を覗き込み、溜息交じりに言葉を漏らす。

ミンティ > 魔眼での鑑定ができないのと同じように、他からの魔力干渉を拒むお守りとしての使い方をするのだろうか。それなら買い手は簡単に見つかりそうだけど、なにか別の効果をもたらさないとも限らない。
なるべく早くまとまったお金を手にしたいと焦っていた先方に押されて買い取ってしまったけど、できたらもうすこし時間をかけて調べたかった。

じっと見ていても、それ以上の事はわからないまま、腕を下ろそうとして。

「……っ!」

急に後ろから人の声がして、あやうく宝石が入った箱を落としそうになった。あわてて胸元に抱え込む事で難を逃れ、びくびくしながら振り返る。
いつの間にか、そこに長身の男性が立っているのに気がついて、またびくりとした。おずおずと頭を下げて声にならない挨拶。

考えてみれば、こんなところで不用意に宝飾品を取り出しているのも不用心だったかもしれない。いきなりひったくっていくような人ではなくて安心したけど、どう話しかけていいかわからなくて、臆病そうに肩をすくめたまま。

カルニーツォ > 「いや、これは失礼致しました、お嬢さん。私、薬師をしております、カルニーツォと申します。どうぞお見知りおきを」

怯えた様子の娘の姿にばつの悪そうな笑みを浮かべつつも、背筋を伸ばし、やや芝居がかった様子で深々と頭を下げる。
改めて覆い被さるかのように娘の抱え込んでいる箱を上から覗き込む。

「私、薬の他にも魔道の品も少々扱っておりまして。いえ、その品が魔道の品と感じたわけではないのですが、夕日に透かした際の魅惑的な輝きについ引き寄せられてしまいましてね」

上からではよく見えないかと判断したのか、話ながら横に回り込み、そのまま体をくっつけるように娘のすぐ横にベンチに腰掛ける。

「失礼ながら、宝飾品としての加工はされていらっしゃらないようでしたが、それはお嬢さんのものでしょうか?」

座っていても頭一つは高いであろう、その背を丸め、箱を抱え込む娘の僅かなての隙間から箱を覗き込もうとする

ミンティ > 礼儀正しく頭を下げて名乗る男性に、あわててこちらも腰を上げようとした。しかし上から覆い被さるように覗きこまれているせいで、立ち上がるタイミングが掴めない。
ぺこぺこと何度か頭を下げて名乗り返そうとしたけど声が出なかった。お店を任されてから知らない人と話す機会も増えていたけど、あいかわらず不測の事態には対応できなくて情けない気持ちになる。

「…ご、丁寧に…、どうも。……古物商を、しております。…ティ、…ミンティと、申します」

つっかえながらだけど、やっとの思いで名乗り返す。相手の半分も言葉数を稼げないうちに、つらつらと事情を説明されて、それに相槌を打つのが精一杯。
隣に腰かけた男性の距離の近さに、また臆病そうに震え上がって。

「わ、わたしの……もの、というか……、あの…買い取った、ばかりの、もので。
 ……おは、お恥ずかしい話ですが、…どういったものか…、まだ、よくわからなくて…」

しどろもどろになりながら、すこしでも距離を取ろうと、ベンチの端にじりじりと移動する。それでも宝石に興味を示す相手には、観察しやすいように箱を傾けてみせて。

カルニーツォ > 「これはご丁寧に。ミンティさん...ホォ、お若いの古物商とは...余程目利きでいらっしゃるのでしょうね」

古物商だという娘の言葉に、宝石から目を離し、しげしげと娘の姿を見る。

「その上、なんとも可憐でいらっしゃる...いや、これは失敬」

気負った様子もなく、しれっと言葉を漏らすと、再び宝石の入った箱へと視線を落とす。こちらの方へと箱を傾けたのを、相手の許可が出た取り、一段と闇が深くなるにつれ、一層顔を箱に近づけていく。
しかし、顔を近づけるほどに娘は徐々に離れていく。娘が拳半分、男から離れた途端に、男は拳一つ分、娘へとにじり寄る。さらに娘が離れれば、男はより近くへとにじり寄っていく...そんな繰り返しの果てに、これ以上離れようとすればベンチから落ちてしまうのではないかというくらい箸まで男が娘をベンチの端へと追い詰めてしまう。
そこまで来て、男が大きく一つ身震いをする

「ああ、これはまた失礼を。いつの間にかすっかり日も暮れて、しまいましたね。
 よろしければ、そちらを私にお譲りいただくご相談をさせていただけませんか?
 調度、ここからすぐのところに私の店がありますので。是非、おいでいただけないでしょうか?」

口調は丁寧なものの、先ほどから気圧され通しの娘にはほとんど脅迫と取られるのではないかという勢いでまくし立て、さらには立ち上がり、持っていた包みを脇に抱えると、両手で宝石のは言った箱ごと娘の手を包み込みむように握り、引き上げようとする

ミンティ > 「いえ……そんな…」

勉強は怠らないようにしているけど知識が豊富とは言いきれないし、魔眼の力がなければ、お店も任せてもらえなかっただろう。まだまだ未熟なのは自覚しているから、肩をすくめたまま、首を横に振る。

容姿を褒められても似たような反応を返すばかり。初対面にも関わらず親しげに話しかけてくる男性に、どう応対したらいいのかわからなくて困り顔になる。
ベンチは三人くらいで腰かけたら埋まってしまいそうな、どこにでもあるようなもの。横へずれて距離を取ろうとしても、自分が移動した分よりも接近してこられると、すぐに追い詰められてしまう。
さすがにすこし危機感を持って、立ち去る口実を探すように目を泳がせはじめて。

「……え?あ、……お譲りするのは、構わないのですが。
 安全なものかどうか、まだ…わからないので、一度持ち帰って……あっ、あの…!」

突然の商談におどろいて、目をぱちくりとさせた。この距離の近さは宝石への興味が強かっただけかと思いかけたけれど、強引に手を引かれると、さすがにあわてふためいた。
一度日を改めてと言いたげにするけれど、それが相手に伝わっているかもあやしい。強引に手を引かれるまま、夕闇の中を連れていかれてしまい…。

カルニーツォ > 「オォ、これは僥倖。お譲りいただけますかっ」

両手を掴んだまま上下に大きく振りかけて、慌てて自らの手の動きを制止する。
一旦手を離すもののすぐに今度は娘の手首をがっしと掴む。直接手首を締め付けているわけではないのだが、男の指先同士がまるでニカワで張り付いたかのように離れず、普通の人の力では調度手枷のように振りほどくこともできない。

「いやはや、これは本当にありがたい話です。ほら、あの店ですよ。どうぞご遠慮なく」
娘の言葉の後半は耳には入っても意識に上ることはなく、半分引きずるように娘を表通りから一本裏に入った自分の店へと案内する。
外見は小さな喫茶店のようにも見える、その店の前に立つと男は指をリズミカルに数回鳴らす。それに呼応したかのように軒下のランプに火が灯り、二人を照らし出す。
さらに一歩先に進み、入り口の前で再び指を鳴らせば、カチリと鍵が開く音がして、スーッと扉が開く。

「いや、大分冷え込んできましたね。どうぞそこへお座りください」

店内に入り、男が口笛を吹けば天井や壁に備え付けられたランプに火が灯り、二人の背後で扉が音もなく閉まる。
明かりに照らし出されたのはカウンター席が五つととテーブル席がひとつだけの小さな店。一見、喫茶店か酒場のようにも見えるが、カウンターの奥には薬棚が壁一面に設えられている。

「今、お茶を出しますね。因みに、売値はおいくらくらいをお考えで?」

娘にカウンター席を勧め、自らはカウンターの中に入ると湯を沸かしながら話しかける。湯が沸いたところで、背後の薬棚からいくつか薬草らしきものを摘まみ、薬缶の中に入れれば甘い匂いが店内に広がっていく。

ミンティ > 手首を強引に掴まれた経験は今までにもあった。しかし締めつけが強いわけではないから、彼の手によって痛みを感じる事はない。それなのに振り解けない硬さを、すこし怖くも感じた。
「あの」とか「ええと」とか、強く出られない態度を言葉に変えているうちに、どこかへと連れていかれる。彼の人となりを完全には掴めていないから、人目のないところで宝石を奪われるかもしれないなんて事まで考えてしまう。
そんな危惧も杞憂に終わり、ちゃんとした店構えの前まで連れてこられ。指を鳴らす音でランプがともり、入り口のドアが開くのを見ると、ぱちぱちと目をまばたかせ、その光景に見入って。

「……これが、お薬屋さん……ですか?」

想像していたよりも寛げそうな店内の様子に、またおどろいた。しきりにまばたきを繰り返しながら、きょろきょろと周囲を見回す。
薬品を扱っているお店には何度か足を運んだ事があるけど、そのどれとも違った雰囲気に感心して、徐々に警戒も薄れていく。

「あ、いえ、お構いなく……。
 ええと、実は…売値もまだ、決まってはいなくて……
 どういうものか、もうちょっと調べがついてから…と考えていたのですが」

そう言いながら鞄から伝票の写しと手帳を取り出した。いくらで引き取ってきたものかを証明しながら、いくつかの金額を手帳に書き込んでいって、首をかしげる。
お店を任された立場上、あまり安値で売ってしまうのも躊躇われる。考えこむ間に、店内に広がる甘い香りに鼻を鳴らして。

カルニーツォ > 「ええ。単に薬を調合するだけではなく、薬茶や薬草入りの菓子や料理を喫茶店として提供していましてね。まぁ、喫茶店の方は閑古鳥が鳴いていて、完全に私の趣味ですがね」
娘の目を瞬かせる様子を笑いながら見つつ答える。

「なるほど。しかし、あまり客の前で仕入れ値を明かさないほうがよろしくはないですか?誠実さは商売の上でも重要ですが、手の内をみせすぎると足下を見られますよ?」

仕入れ値まで明かしてしまう娘の正直さに思わず苦笑を漏らす。

しばらくして十分に薬草を煮出すと、温めたカップにその薬茶を注ぐ。甘い香りが立ち上る薄い桃色の液体の入ったカップを娘の前に差し出す。

「失礼ながら、目がお悪いようなので、目の疲労に効く薬茶を煎じてみました。甘味のある蔓草と一緒に煮たので飲みやすいと思いますよ?それからこちらもどうぞ。売れ残りの試作品で申し訳ないですが、血の流れを良くする薬草を練り込んだケーキです」

続けて冷気を発する魔道の箱から濃い緑色の生地のロールケーキが載った皿を取り出す。もし娘の魔眼が薬の正体をも見分けられるのであれば、男の言葉通りのものであることが分かるだろう。
薬茶と菓子について「だけ」は。

笑みを浮かべ、娘と話しつつ、音もなくマントの中から釣り香炉を取り出す。カウンターの裏で釣り香炉をゆっくりと揺らすと、やがて香炉から甘い香りの煙が漂ってくる。
微かなその香りは薬茶の香りに紛れて店内へ広がっていく。

男の暗示と合わせ、これまでにも幾人もの娘達を夢の世界へと誘ってきた、効き目は効果は薄いものの、気づかれにくい、催眠効果をもった甘い香りの煙が

ミンティ > 口数がすくないから、かわりに何度も相槌を打って、話をちゃんと聞いていると態度で示す。店の説明を聞きながら、また店内を見回した。喫茶店のような雰囲気になっている理由を知って納得しつつ、せっかくいい雰囲気なのに客入りがすくないのは、もったいないと思えて。

「……どうしたら、お客さまが足を運んでくれるのかって…難しいですね。
 え?……あ、す、すみません…、その…交渉事は、あまり得意でなくて…」

今までも何度か指摘されて反省した部分に言及されて肩を落とした。もともとの性格のせいか、なるべく誠実に話を進めようとするのは悪い癖。商人には不向きな性格をあらためて自覚して溜息をこぼす。
そんな風に気落ちしているタイミングだったから、差し出されたケーキの甘い香りにつられてしまう。
この薬茶とケーキでいくらくらいの金額になるのだろう。手持ちのお金がいくらくらいだったか思い出して、食事分くらいは払えるだろうと判断する。
カウンター席に腰かけ直して、小さく頭を下げてフォークを持った手を伸ばす。眼鏡越しでは魔眼も働かない。だからといって眼鏡をずらし上げたりもせず、切り分けたケーキを口に運んで。

「すこし……変わった味ですね。でも…おいしいです」

甘いものを食べたら、すこしだけ元気も出てきた。
一息こぼして、お茶にも手をつける。喉を潤して、味わいを楽しむように目を細くして、香炉からの甘い香りに表情を柔らかくした。その香りにどういった効能が隠されているかは考えもせず、小さな口ですこしずつケーキを楽しんで…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカルニーツォさんが去りました。