2018/07/14 のログ
ご案内:「平民地区:安酒場」にバルベリトさんが現れました。
■バルベリト > 先日のタナール撤退戦より暫く時間が経過していた。
その間に雑務をこなしながら、医療班のメンバーに助っ人のように手伝いをしてくれた人物の人相は聞いていた。
服装や貴族では無さそうだという考えで平民地区をふらっと歩いていたが、そうそう目当ての人物に出会えるわけではない。
一日を探索という名の食べ歩きを繰り返しながら、辿り着いたのは1軒の安酒場。
なんか、酒場の目の前に。聞いた人相と一致している人物が見え隠れしているのだが、これは幸運と呼ぶべきなのだろうか?
「おーっす、おねーちゃん何、酒呑む店探してるの?」
掛け声は軽い。ナンパでもやっているのかと言うほどに。
片手を上げながらずかずかと近寄るのは相手の方へ。どうやら相手も己も、同じ店に入ろうとしていたようだった。
ご案内:「平民地区:安酒場」に紅月さんが現れました。
■紅月 > ーーーひょこっ、ひょこっ、しゃら…
御仕事休みと決めた日の行動と言えば、遺跡探索か山林散歩か酒場発掘+α。
本日は、何となく酒場探しの気分で。
ひょこっ、ひょこっ…
酒場の中の雰囲気を覗こうと扉の小窓目掛けて背伸びをしてみたり、横の窓から見てみたり。
「やっぱり此処かなー…?」
わくわく、ほくほく…
検分に満足したのか、ようやっと地に足をつけてほんわりと…コクリ、ひとつ頷いて。
「……ふみゃっ!?
…ん、ぅ? ……えっ、私?」
不意にかかる明るげな声…に、猫か何かのように、ビクゥッ、と。
いっそ軽く跳ねたんじゃ無かろうかという勢いで驚く紅娘。
しかし、その掛け声から『どっかで姉チャンがナンパされてるのか、美人か』とキョロキョロ。
見回すも其れらしい姿はなく、しかも何か見知らぬ男性がコッチきた。
思わず『なんだ私か…否、えっ?』と、きょとーんと目をぱちくりさせて自分を指差す。
「あぁ、うん!
美味しい酒場発掘の旅の真っ最中なんだ~」
何だか縦にも横にもデッカいお兄さんを見上げ微笑みつつ、のほほんと答える。
■バルベリト > ヒールの高さも含めれば女性としては長身とも取れる相手。
自分が巨躯だった為に身長の高さよりもアクセサリーの数々が目と耳を引いていた。
そういえばあの時の医療班の言葉に、治療の手伝いをしてくれた人物はアクセサリーを多数、擦れ合う音を立てつつ身につけているという話もあった。
――――まぁ十中八九このこの娘がそうなのだろうか。そう目星をつけながら驚いた様子の紅娘に一声は続く。自分を指差す様子の相手にそうそう、と頷き酒場の出入り口を背面越しに親指を向けて示し。
「俺もこの店使おうと思ったんだが、一人だとちっと寂しいかんな。美味かは使ったことないから判らんが、もし暇なら一緒にどうだ?
今なら大サービスで酒代出すぞー。」
まぁ恩人への報奨金の一部と思えば安い安い。
聞けばあの時、龍の手当てまで完璧にこなした相手は煙のように消えてしまい、褒章の金品が彼女の元に届かず、返却された経緯もある。
もし違ったらナンパって事で自腹を斬れば良いだろうということで。
「東西南北、様々な地方の酒も扱われているらしいぜ?こういう暑い日はさっぱり冷えた酒でツマミでもどうよ。」
■紅月 > ほほぅ、酒の場に華を添えようと、ってことか。
「え、いいの…?っわぁあ、嬉しいっ!
お酒はワイワイ飲むと楽しいもんねぇ?」
タダより高いものはない、なんて言うが…比較的各地でタダをバラ蒔いてる紅娘、ノれる物にはノっておこうと嬉々として了承。
彼の纏う空気からも危ない感じはしないし、普通に人間族の其れ。
まぁ、いざとなれば背負い投げて逃げればいいし…大丈夫大丈夫。
…男の親切心など露知らず、なんとも呑気にケラケラと笑って。
「ほ~、東西南北…米酒あるかなー、冷でクイっと!」
キラキラと目を輝かせ、期待に胸を弾ませる。
■バルベリト > 「やー、俺としても良かった良かった。断られたらおじさんショックよー。そうそう、酒は多人数で飲んでこその面があるからな。
コメ…ってあれか、濁った酒とか、済んでるのに口当たりが辛い酒とか、甘い奴とか。」
確かあった筈だ。生憎100%と言い切れないが、かなりの種類の酒を用意しており、平民地区に有るのが不思議なレベルの品揃え。
メニューの分厚さも平民地区では有数である。
相手の同意を得られたことで、揃って暖簾を潜る。お店の人は何を勘違いしたのか知らないが個室の方に通された。どうも東国をイメージしたらしい部屋は、掘り炬燵形式に足元を深く掘られている。
広めの机の上に、見慣れない――豆を使った調味料?液?みたいなもの。
さらには数冊に及ぶメニューが広げられていた。
「酒の種類もあるし、米酒に詳しいなら――普段葡萄酒をのむよーなタイプにお勧めの米酒とかあるかね?その辺も見繕ってくれりゃ嬉しいわ。」
■紅月 > 「…ぷふっ。
いやいやぁ~、まだオジサンには若いでしょうよー?
そうそう!ビバ純米吟醸っ!!」
無駄に熱い米酒推し。
ちなみに次点は甘くて美味しいリキュールかシードルである。
暖簾を潜れば店員さん。
運がイイのか何なのか、二人で個室を広々占領できるという僥倖。
「デートだとでも思ったのかねぇ?
…おーおーこの店アタリだわ、掘っり炬っ燵~♪
うんうん、醤油もちゃんとあるね…凄い、抹茶塩まである」
店員の気遣いを愉快げに笑いつつ、故郷の雰囲気にホッコリと…この感じだと刺身とかの海鮮もありそうだ、イイ店見っけと上機嫌。
好奇心の赴くままにキョロキョロと…まるで初めての遊び場に連れて来られた子供のように、キラっキラと目を輝かせ。
さて、とりあえずメニューの一冊…酒の其れを開く。
「はいはいダーリン、任されました!
ワインかぁ、ワインなぁ…まず飲みやすい甘口なのから入って、次にやや辛、が無難かねぇ?」
それともドーンと辛口からいってみる?…なぁんて冗談混じりに付け足して。
とりあえずは二人揃ってフルーティーな甘口の純米吟醸を頼んでおく。
…グラスで来るか升で来るかは賭けだなぁ、なんて密かに思いつつ。
さぁ次は肴だ、と、何がいいか悩む。
「兄さん生魚食う文化ってどう思う?ダメそう?」
■バルベリト > 「くっ、どう見ても俺より若い娘に言われても慰めになりゃしねぇ!」
ジュンマイギンジョウ。という謎のワードだ。
どうやら米酒の一種らしいのだが、確かにおいてある。となると彼女に任せたほうが下手な素人判断でハズレ酒を引く可能性は低くなるだろう。
嗅ぎ慣れないのは茶と塩の混ざり合った香りと、醤油という特有の調味料の影響か。普段だと香辛料ドサー、肉汁ジュワーなアテしか食べてないので、これはこれで興味深い。
「おー、こりゃいいな。のんびり腰を降ろせるし、足がきつくない。椅子じゃねーから壊す心配もないからな。」
自分の体重も考慮の上でだ。ギシリ、と床板が軋むのは仕方無い話。
手早く注文をしてくれる相手に、ついでに東国風豆味噌煮込みや、冷奴、ついでに口をさっぱりとさせてくれるキュウリの漬物を頼むと、興味深い推奨。
「お、生魚か。食べた事はねぇけど、オススメなら行って見るぜ?折角珍しい物が並んでいるなら、珍しい物食べてこそだろ。それに――聞くってことは、お前さんも食べたいか、興味あるんだろ?遠慮なくいこうぜ。」
生魚を食するのは滅多に、というか初めてではある。
興味はあるが中々手が伸びなかったのだが、こういう機会、こういう場だからこそ挑戦もできようというもの。
仲居さんはちらりとこちらの服装を見て注音を取った後、パタパタと奥へと消えていくだろう。
■紅月 > 「あっはははは!
ククッ…アレだ、オジサマは40以降と思いまするぞ?」
具体的な年齢を挙げてやろう、恐らく彼は40以下だと…実は童顔なんてオチないよね?
…なんて思って居れば、彼の口から飛び出すビックリワード。
「いや待って、何よ壊れるって。
潰した事あんの、椅子」
再びの、おめめぱちくり。
椅子、椅子って壊れるモンだっけ…鈍器として使わなければ壊れない、ような?
「ほっほぉう…いいチャレンジ精神。
いいねいいね、好きよ~そういうの!
故郷では…いや正に東国なんだけど、生魚を普通に食べるのよ。
魚卵も生食いするし、こう…クラーケンを小さくした、イカとかタコも普通に食うし。
新鮮なのはすんごく美味いの!」
己は冒険者である。
だから、というのもあるが、未知や未知への冒険心のある人は好感が持てる。
新鮮な刺身の旨味に驚くがいいっ!
■バルベリト > 「甘いな、オジさんは50過ぎだ。」
これについてはある意味で正しい。
そう、ある意味でだけは。
「いや、こー見えておっさん重いから。安物の椅子だとベキっとね?足が折れちゃうのよ。特に座る瞬間とか。」
どこか遠い目。安物の木の椅子を壊し出入り禁止になった店を思い出すような……。それでいて体重とかいう天敵を憎む色を見せないような。
すべては椅子が悪いのだ。そうしよう。
「大体スパイスとか香辛料効かせたモンばっかで飽きてたしな。生魚ならそんなに香辛料とか使わないんだろ?ほー。大体衛生面でしっかり火を通して食べてばっかりだったからな。そこに塩と唐辛子と山椒ぶちこんだりとか、腹を捌いて中にスパイスを詰め込んだ焼き料理が多かったな。……イカ、タコ…あいつらいいよな、腕たくさんあるから…。
あれも生で食えるのか。大体炙った奴とか、干した物しか食べた事ないな。」
ふっと何か悲しそうな目だ。先日の書類仕事を思い出したのかもしれない。魚卵も生で食べるというのは凄い文化だと思う。
大体が火を通し、その上でスパイスを使う事で古くなった食材の風味をごまかして食べる事が多かったから。
そして先に届けられたのは酒と、冷奴。
彼女の希望通りに升に並々と注がれ、少し持ち上げるだけで中の澄んだ酒がこぼれてしまいそう。
透明度が高く、覗き込む自分の顔が映り込んでいる。
さらにいえば升の表面は木目が其の侭だが、内側にはしっかり漆が塗られ、更に金粉が天の川をモチーフにしたように筋を描く造り。
「うぉ?なんだこりゃ、コップとかとも違うな?このまま口つけて呑むのか?」
■紅月 > 「ごじゅ……なん、だと…っ!?
一体どんなアンチエイジングを…運動か、マッチョになればいいのか。
ってか50でフサフサなら充分勝ち組だと思うんだけど」
驚愕…この国の人老けにくい説が己の中で急浮上中である。
そういや身内にも、外見20中身80の御方がいらっしゃった…やっぱりこの国よくわかんない。
「はへー……座る、瞬間…ぶふっ。
ちょ、痛い、それめっちゃお尻痛い奴っ!」
相手の遠い目が尚更笑いを誘う。
…腹筋が!このままでは己の腹筋が割れてしまう!
「あー、ね?そうそう。
生魚は醤油くらいかな…東国は外ツ国から見たら少々キチガイじみて衛生や鮮度に拘りあるから、そこは安心よ。
生卵をそのまま飲めるレベル。
…東国スパイスって、唐辛子と山椒コショウ、ニンニク生姜、カラシとワサビくらい?
お国柄でベースがあっさり味なんだよね、素材の味を活かす健康的な食卓」
他は…桂皮(ケイヒ=和シナモン)くらいか。
…どうしよう、彼に無償にワサビ・納豆・梅干し辺りを食わせてみたい。
「あー…タコ…に、知り合い居るけど、実際すごく便利そうだったよ。
生魚を短冊形に切って並べたり、イカなんかを生け簀から捕って捌いたヤツを『刺身』って言うんだ。
…新鮮なイカって甘いんだぞー?」
ただし、生け簀のを捌いたイカは新鮮すぎて皿の上で蠢くけれども。
触腕うねうね。
「お、升酒…仲居やるぅ、見事な増しっぷり!
あー飲み方な、例えばお上品な女の子連れてくるなら溢すのも構わず持ち上げてもらうんだけどねー。
私はズズッといっちゃう~」
宣言の通り顔を近付け、けれど器用にあまり音をたてず啜って。
「それからグラス、升の順に飲むのなー。
溢れた分はおしぼりに吸わせとけばいいよ?
…いいなぁこの升、欲しい」
持ち上がる程度に水嵩の減った小さなグラスを持ちつつに説明し、ふと升を見れば…「こういった芸の細かさが愛おしいんだよね」と、和やかに呟いて。
「…あっ、冷奴!
お豆腐には醤油だよー」
■バルベリト > 「フハハハ、アンチエイジングなど必要ない!必要なのは心に宿る煩悩のみ!あれだ、要は気持ちが若けりゃ見た目もついてくる的なアレ。」
なんか素直に半分騙された相手を見ると頬も緩むが、その後の言葉で臀部に体重と重力が掛け合わされた衝撃がモロに伝わり、床板を貫通した事は言わないほうが良いだろう。
「マジかよすげぇな。俺らだと徹底して火を通すし、生でメシくって腹傷めたら怖くて何も出来ねぇぞ……どういう衛生管理してんだその国!
醤油??ってこれか。」
どれどれと指先に一滴垂らす。舐めるとなんともいえない塩辛さと、豆由来の味が伝わって来る。
単体では塩っ気が強いのだが、ソースのようなものか。
食品と併せるなら良い味になりそうではあった。
「ほーん、珍しいな。肉につけてみるのも面白いかもしれないな。
小麦とかのパンにはあわなそうだが……。こ、こうか?」
飲み物に、まずは口を近づけてずぞぞぞぞと吸い上げる。
麦とかで作る酒に比べて少し舌に刺さる様な刺激感。炭酸の感覚はないが、それでもこのビリっと痺れるような感覚は悪くない。
舌の上に乗せると徐々に酒の棘が和らぎ、米の甘さが顔をのぞかせ、喉に流していくと臓腑を熱くさせてくれる。
悪くない。そして豆腐に醤油を垂らす。
うん、豆腐というのはやわっこいし、味は淡白だが醤油とは良く合う。
入れすぎなければこれを突いて日本酒と楽しめそうだ。
「こういう酒も良いもんだな。果実酒と違って酒だー!って感じがする。」
求ム語彙力。遅ればせながらグラスと升が持てるくらいまで中身が減ったところで改めて持ち上げ、かんぱーい、と。
「イカが甘い~?大体辛いイカしか喰ったことないからな。甘いイカって果物とか砂糖みたいな甘さなのか?」
無知故の質問。丁度その後。
仲居さんが船盛の様にして刺身を盛ってきた。
イカタコに限らず、赤い肉を連想させる刺身。白い身の肴。紅色の皮をした魚や鮮やかな貝類、と。
運ばれてきた瞬間目を白黒させる大人の姿がそこに!
「なんじゃこりゃー!?」
■紅月 > 「ハートか、煩悩かぁ…ぼ、煩悩が食欲しか思い付かんのだけど」
ぐぬぬ、くやし……、…今、ミシッて、いわなかったか…?
い、いやいやまさかぁ…ハハッ!
「どんな、どんな…強いて言うなら『変態レベルの職人が住む、内輪懲り性の国』だから?
そうそう、その黒いの…ん、よくわかったね、肉を生姜と醤油で焼くとたまらんよぅ~?」
旨いものに国境はない。
幸い東国の食材にはツテがある…また会うことがあれば何か作ってあげるのも良いかも、しょうが焼き定食出せる食事処知らないし。
実に旨そうに食べる男を、酒を片手に頬杖ついてニコニコと…いやはや微笑ましい。
胸も机に乗ってるって?乗せとくと楽なんだよ肩が。
「いいよねー、喉にカァッとくる酒!
これは甘口だけど、辛いのはもっとキリッとしてクるよ。
…あいな、かんぱーい!」
キン、と、小さいグラス独特の高い音が鳴る。
ぐっ、と大きく一口飲んで「…っくぅ~!旨っ!」と、笑顔咲く。
「やー違う違う、独特よ独特。
食ってみないとわからんて…私も初めてん時はビックリしたもん」
愉快な質問に思わず笑って。
そんなナイスタイミングに来た船盛の鮮やかな事…正に美しい宝船である。
「こちら祖国自慢の船盛に御座いまする。
美しき海の幸をどうぞ御堪能あれ!
…なんて、ね?」
仲居さんの台詞を取っちゃったかもしれないけど、言ってみたい気分だったんだから仕方ない。
ニコニコと上機嫌に食べて食べてと勧めてみる。
■バルベリト > 「いやほらもっと他にあるだろ!?えーと、せいよく?」
凄く棒読み。思い返せば最期に性衝動に駆られたのって何時だ。
安酒屋は食事や酒に金をかけた場合床素材なんかに回す金が無い=お客さん体重超過ですよとなりかねない。
幸い気付かれていないようだ。
「ほー。生姜は時々食べてるけど、ソースとは合わないからな。
今度試してみるか。醤油ってどこでもうってんのかね。これ、やっぱり塩っ気強いから日持ちすんのかな。」
ぐびぐびと音を立てて飲む――のとは違い、一口含んでゆっくり転がし、飲み干すとまた一口含む――。
間間に豆腐や煮込みを一緒に口に運びながら。
片手で頬杖をつく相手、本来は自分だけではなく相手も味を楽しんで欲しいのだが、美味い酒には勝てなかった。
――うーん、でかい胸も一緒に目が入る。頬が赤くなるのは酒のせいにしておこう。
「へ~……これがサシミ?綺麗なもんだな。海の幸……これも醤油で食べるんだよな?え?小さい皿に醤油入れるの?で、緑色のこれもつけると味が変わるの?」
彼女の言葉にセリフを取られた仲居さんだが、気にした様もなく醤油のたらし方や山葵について教えてくれる。
では最初は彼女が勧めていたイカというクラーケンからいこう。
箸が摘むのは透き通るように白いイカの刺身。
黒い醤油に少しだけつけると迷う事無く口の中へ。
新鮮なのか、甘い。なるほど。これは確かに甘いと表現できる味だ。
イカの甘さ、砂糖とかとは違う味わいと弾力を堪能しつつ、酒を一口。
「甘ぇ!なるほどな、これは確かに甘いわ。醤油とも合うし、いいなー。東の国。こんなもん毎日喰ってたら太りそうだわ。
あ、いけね。俺だけじゃなくてアンタも――って名前聞いてなかったな。あなたのお名前なんてーの」
無茶苦茶軽い口調だった。
■紅月 > 「ぷっ!あははっ!
ちょっとちょっと、何で男性がソレ棒読みな訳?
いやまぁ、私も自分からってタイプじゃないけど」
この国の男の人って性欲魔神だと思ってたんだけど、どうやら目の前の殿方は大丈夫らしい。
「ん?醤油なら…知ってる範囲で陽明商会とトゥルネソル商会かなぁ?
醤油は日持ちするけど酸化すると美味しくないから、ほんとは少量をマメに買った方がおいしいねぇ」
冷奴よりむしろ、男の笑顔がイイ肴になってる気がする。
いや本当、気持ちのいい食いっぷり。
旨そうに飯を食うヤツが嫌いな奴なんて、居るかい?
って、あれ…やっぱり洋酒メインに飲んでると和酒はまわりやすいのかな?
彼はほろ酔い模様らしい、ほんのり赤い。
「刺身はねー、色で鮮度がわかるんだよ。
とれとれピチピチならではの赤!」
豆知識を付け足しつつに、迷いなく食べる彼の表情にニヤニヤ。
彼に勧められ、そろそろ己もと船盛をつつく。
…中トロおいしー!
花でも舞いそうな幸せの笑み。
「こっちだって釣りたて捌いたらイケるはずだよ?
ダイラス辺りなら生食も出来るんじゃない?
…あー、そういやそうだ」
目先の酒に釣られて名乗り忘れてた。
あと、新たな和食友にもホイホイと。
「私はコウゲツ…東の果ての地にては紅の月と書きまする。
普段はトレジャーハンター…他にも採取や魔獣狩りなんかの、いわゆる冒険者してるんだ」
箸を置いて姿勢を正し、真っ直ぐに彼を見詰めて名乗る。
■バルベリト > 「男だからって全部が全部性欲旺盛なわけねーだろ!
無いっつったら嘘になるが、リチャージに時間掛かるっつーか。」
男だからって性欲旺盛大魔神で見るのよくない。
いや無い訳じゃない。実際テーブルの上にずしりと重そうな乳房が乗ってたのを目で追っかけているし。
ただ、そこから先の欲求に延びないというだけであってだな?
「んー、難しいとこだな。どっちの商会ともツテはねーし。
こまめにショーユを探してみるか。美味い飯あってこそのやる気と生きがいってもんだしなぁ
川魚を生で食おうとは思わないが。」
んがー、白身魚も美味い。今度は緑色の物を少しだけ魚につけて、醤油に浸すのは半分以下。
透き通る白身がほんのり薄黒く染まる。それを口に運ぶ。
イカと違ったこりっとした白身魚の柔らかい弾力が良い。が、鼻先につーんと突き抜けた緑色のカラさ。
涙目になるが味はキライな味ではない。その後で甘口の米酒を口に含んで喉に流し込む。
「美味ぇ!けど辛ぇ!なんだこの緑色の奴!ほー、赤い色は新鮮なのか。んじゃ俺はこっちの赤身…?皮がちょっと焼かれてるっぽいし、色も赤褐色っぽいが。」
これは純粋なサシミではなく、なんでもタタキというものらしい。
幸せそうに微笑む相手を見ているのは良いものだ。――騎士の矜持なんざ知らんが、少なくとも人の笑顔、幸せそうな表情を見て悪い気になるよーな人間はいないだろう。
「ほうほう、紅月さんね。……いやぁ探した探した。」
そう口に出してから改めて姿勢を正した。ミシミシという音が響くが気にしてはいけない。
「俺は第8師団長のバルベリト。先日のタナール砦で世話になった隊の長を、まぁ暫定的にさせてもらってる。
龍の世話までしてくれたおかげで、迅速に撤退出来たし被害も少なかった。ちっと場所が場所なんで、本来は王城とかに招いて御礼するべきなんだが――ここで礼を言わせてくれ。
ありがとな、紅月。でもな!攻めて報奨金とかもらってから姿消してくれよー!」