2018/07/07 のログ
■ソウレン > 「この国は不安定、その上斜陽の国家ときている。
…けれど、刺激は多いね。色々な人や種族が見れる。案外、私もそれを楽しんでいるのかもしれない。
食だけでもない、そんな気がするのだけどね。」
同じ意見を求めるわけではないが、目の前の少年の姿をした者もそうなのではないか、などと思ったり。
握り飯を作り終えれば、それが〆。
使い終えた調理器具などを水に晒していく。同時に自分の手を洗い、拭き終えてようやく一息。
「香辛料を使えば日持ちがよくなる。そういう事も含まれているのかもしれないが…。
なるほど、人の性格、か。そういう考え方も面白い。
東の方では…うん、自己に厳しい者は多くいるが、他人に対しては礼を尽くす。
言ってしまえば甘いといえるかも。それが優しさだというなら、そうなのかもしれない。」
少年の想像や推察は当たっている所もあるのだろう。
真実は得てしてそう単純なものではないだろうが…。
それが含まれ、またそれとも違う、色々な顔を見せてくれると女は思う。
「もちろん。伴侶がいればそれはそれで楽しみが生まれるだろう。
ただ、今の私はこの道楽居酒屋の店主。
時間外で一夜の楽しみを見つける事はあっても、仕事の時間は仕事を楽しんでいるよ。」
やれやれと言った苦笑い。
期待されているのかもしれないが…少なくとも勤務中はNGなのだ、と微笑を浮かべておく。
「似た言葉を最近聞いたな。美人であれば付加価値が生まれる、とか。
まぁ、しゃちほこ張らずに食べるといいのではないかな。今の君は客なのだから。
食べてみればわかるが…捨てるには少々もったいない食材だよ。」
自信があるのか、その言葉を言って。
それから視線の先、手に何かついているかな?と両手を確認している。
■スナ > 「そうじゃな……うむ。そうじゃ。食だけじゃあない。でも、食堂の女将がそれを言っちゃいかん。
俺もきっとまた、日をおかずここにくるじゃろうから、その時はまた台所に立って『ソウレンの味』を供しておくれ。
……もっとも、『女将』以外のソウレンの顔があるのじゃとしたら話は違うがの。それはそれで興味深い」
確かにこのマグメールは政情不安、斜陽の国だ。巷には退廃が溢れ、その風潮にさらに拍車をかける事件も先日あったようだ。
なればこそ、そんな国の中心にてひとり店をかまえるこのソウレンという女性、ただものであるはずもない。
俄然興味をそそられるスナであった。
「……そうかぇ。仕事は仕事、ぷらいべーとはぷらいべーと。良い職人じゃ。
ぷらいべーとをきちんと持っている奴は良い。そうでなくば、ただのカラクリ人形じゃ。
伴侶がなくとも味わえる楽しみはこの街に溢れている。俺もこの国のそういうところは好いておる。ククッ。
シェンヤンの息詰まる感じが気にくわんでコッチに来たが、なるほど、東の国に移ってみるのも悪くないかもの……」
程よい人肌の温度に冷めた白米を、口中でもぐもぐと噛み締めながら、洗い流すように清酒をちびり。
コメ特有の優しい甘みと、女性の柔肌に似た温もりに、思わず顔がほころぶ。
「まぁでも、ソウレン……俺はおまえさんの料理、この『幽谷』という店の料理、客として気に入っておる。それだけは確かじゃ。
甘く優しい味の料理が、ソウレンを、おまえさんの来た東の国というものを悉に表しているものではないとしても、じゃ。
おいしかったのならば、それでいい。そして現においしかった。ククッ……ふぅ、ごっつぁん」
優しく語りながらも、スナは握り飯2つをぺろりと平らげてしまった。お腹は空いていたのだ。
ふぅ、と深い息をひとつ付くと、スナは空いた皿を卓の上へと整頓し、軽やかに舞うように椅子から飛び降りた。
「ありがとよ、ソウレン。良い飯じゃった。お代を受け取っておくれ。
……ん? ああ、俺の視線のことはあまり気にするな。誰にでもああいう視線を使っちまうんだ……商売柄、な」
ソウレンが己の手指を気にする仕草を見せれば、スナは照れたように頭を掻き、言い訳めいたセリフを紡ぐ。
商売柄、なんてのはごまかし。単なる色目である。
湿気の取れてきた獣耳を畳むようにひとつ撫でると、まるで手品のように耳は頭頂へと溶け込んでしまった。来た時と同じように。
■ソウレン > 「忠告痛み入る…また来た際に満足いただけるよう精進しておくよ。
楽しみにしてもらえると、私も嬉しいな。
…女将以外の顔、ね。まぁ……そうだね。見たいのなら、必要な物は『幸運』ではないかな。」
お金などでは動かない。
それ以外の顔を見つけたければ、必要な対価は運だという。
実の所、気まぐれなだけなのかもしれない、が。
「仕事を好いているのならその限りでもない、とは思うけれどね。
気を張り詰めさせて延々仕事をしているというのなら…その通りだろう。
でも、ま、私の仕事はそんな連中に一時休まる時間を提供する事。酒と料理にはそんな力がある…そう思わないかな?」
少年が肩の力を抜いて楽しめたなら、それでいいと女は思っている様子。
握り飯をぺろりと平らげる姿を見届け、お粗末様、と微笑を浮かべる。
「東に寄ってみるのなら、悪くない、とだけ言っておくよ。
住めば都とは言うけれど、合う合わないはあるだろう。それに、旅路もそれなりには楽しめる。
あぁ…気に入ったのならまたいらっしゃい。
店は大体、この時間ならやっているからね。」
少年が椅子から降りれば、調理場から出てくる。
たすきは外し、ゆったりとした着流しをなびかせて少年の元へ。
そして、代金を受け取る。
ただ多くは受け取らず、これで構わないよ、と巾着から幾許かの硬貨を受け取るだろう。
「別にサービスしているわけじゃない。
元々の設定料金以上に受け取るつもりがないだけさ。
次に来た時には、君の商売なんて話も聞かせてもらいたいものだね。」
獣の耳を折りたたむ姿を微笑みをもって見つめる。
店から出るというなら、自ら引き戸を開けに進んでいくだろう。
■スナ > 「『幸運』か……ククッ。こんな雨の日にこんな素敵な飯にありつけた以上の幸運が俺にあるかね。ふふっ」
空になった食器をもう一度見やり、わざとらしく舌なめずりしてみせる。
特徴的な清酒の味と香りが、まだ舌の裏に残ってる感じがある。悪くない。
「……ま、生きてりゃ何があるかも分からん。ソウレンも、これから暑くなるが、体に気ぃつけーよ。
他人を休める仕事も大事じゃが、お前さんの体や心も大事に、の。じゃぁな」
金貨を手渡すと、先んじて引き戸を開けてくれるソウレンににこやかな笑みを向けて会釈し。
スナは、来た時と同じように7月の雨をものともせず、悠然とした歩みで街並みの向こうへと消えていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からソウレンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマルティナさんが現れました。
■マルティナ > いつものように冒険者ギルドに立ち寄るマルティナ。
だが今日は仕事の依頼をする側である。
依頼用紙は持参しているのでそれを受付に渡すだけだ。
そして受付の職員がそれを受け取るが、困った表情をしていた。
内容が内容だけにそれも仕方がないのだが。
――護衛依頼――
・報酬 5,000ゴルド
・募集人数 一名以上
海路でダイラスへ向かう護衛を募集しています。
ダイラス行きの船代は報酬とは別に依頼主が負担します。
報酬の支払いはダイラス到着後現地の冒険者ギルドにて。
船代の負担に帰りの代金は含まれませんのでご留意下さい。
詳しくは面接で。
依頼主 マルティナ・ラーゲルフェルト
不審な点としては内容の割に高すぎる報酬というのがまず一つ。
冒険者が護衛を雇って、特に危険のない海路を行こうというのも妙なものである。
護衛対象の身分によっては道中の襲撃もあり得るのでこのぐらいの報酬もなくはないだろうが、色々とちぐはぐで不審な依頼となっていた。
念の為何度も確認を受けて、最終的に最低難易度の依頼として貼り出される事となった。
そして依頼を貼り出している間、面接のためにその場に残るマルティナ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスナさんが現れました。
■スナ > 冒険者ギルドの戸を開き、新たに入ってくるのは齢10~12といった風体の少年。
質素だが丈夫なつくりの布服に、ベルトに輪を通して固定したポーチ。
ちょっとした旅なら問題ないだろうが、いわゆる冒険者というには少し心もとない装備といえる。武器も佩いてない。
実際スナは冒険者ではないが、冒険者の真似事をすることは多い。お金のため、スリルを求めて、あるいは暇つぶしとして。
そんなわけで今日もスナは適当に選んだ冒険者ギルドに来たわけで。
まずは依頼が張ってある掲示板を見ようと、そちらに向かうが。
「………………??」
視界の端に妙な影。なんと表現していいか……痴女? そうとしか表せない何かがいる。無論マルティナのことである。
スナは細めた瞼越しにもあえて視線を合わせないようにしつつ、掲示を見る。
そしてさほど間をおかず、バーカウンターにいる店主に話しかける。
「のう、マスター。この、ダイラスへの船旅の護衛というやつが気になったんじゃが。
詳しい話を聞かせてもらえんかの。面接というのは、いつやれるんじゃ?」
小柄なナリとは裏腹に、その声色は低く渋い。
■マルティナ > 冒険者ギルドへと入ってきた少年。
マルティナが言えたことではないがおおよそこの場に似つかわしくない姿である。
その少年が、自分の依頼に目を留めたようだ。
自分自身は若干無視されている事にも気づいているが、マスターに話しかける少年に割り込むような形で間に入る。
「あ、それ私の依頼です。
詳しいお話しは私からしますね」
あくまでも雰囲気や表情は穏やかで友好的。
ただし勃起した巨根を見せつけるような、ほぼ裸といってもいい最低限の着衣姿である。
初対面の相手は大抵まともに話しかけられるとそれだけ引かれてしまうものである。
「立ち話もなんですし、こちらの席へどうぞ」
しかしマルティナは自分の姿に何も問題がないかのように、少年をギルドの隅の席へと誘っている。
テーブル越しに対面で座れる小さな席だ。
少年に拒絶されなければ、マルティナは先に席の一つに腰掛けて彼の事を待つ。
先導する後ろ姿は当然お尻も丸見えで、お尻の間から生えた尻尾もしっかりと見えている事だろう。
■スナ > 「お、おう……?」
マスターから話を聞こうとした矢先、視界に割って入るは先程の痴女。目に見えてスナの顔がひきつる。
「お、おぬしが……ええと、マルティナ……かぇ?」
掲示に記載された署名と、目の前にいるうら若き変態少女とを交互に見比べる。さすがのスナもこれには若干狼狽を見せる。
とはいえ、わずかながらも予想していた展開でもあったりなかったり。
「……ん、ああ、そうじゃな。立ち話はいかぬ。お主が依頼主なら、お主の『面接』とやらが入るんじゃろうしの」
同席を促されれば、未だ引きつりの引かない顔のまま、すごすごと彼女に付き従う。
曝け出されたお尻も、その谷間からにょっきり生えている尻尾も否応なく見せつけられ、視線を奪われてしまう。
ケモノの尻尾によく似てるが、おそらく人工物だろう。そして……肛門に刺さっているのもよくわかる。
「………なんとも、なんとも。随分と涼しげな格好じゃの、ええ? マルティナ……さんよ。
先に名乗っておこう、俺はスナという。詳しい話、聞かせておくれ」
彼女の対面に座ると、スナはしげしげと少女の顔を見つめ、会話の姿勢に入る。
その痴態に気が引けてはいるものの、嫌悪の色はない。
■マルティナ > スナと名乗った少年は驚いてはいるものの、依頼主を見て諦める気はないようだ。
胆力と雰囲気からして見た目通りの存在ではないという事は薄々感じ取れる。
「んぅ……、っと。
スナさんですね。
ええ、私は依頼者のマルティナです。
どうぞよろしく。
それじゃあ依頼について説明しますね。
まあ依頼の都合上護衛とは書いてありますけど、頼みたい事は船旅の間のお世話です」
椅子に座ると付け尻尾が押し込まれ、一瞬甘い息が漏れ出る。
だがそのまま何事も無かったかのように話しを続ける。
「お世話というのは、主に食事と性欲処理と排泄に関してですね。
あとは船内の移動もしてもらいたいと思ってるんですけど」
さらっと性欲処理や排泄と言っているが、果たしてスナはついていけているだろうか。
しばし様子を伺ってみる。
■スナ > あんな器具を尻に刺していては椅子にも座りにくかろう……と思うスナだったが。
案の定、マルティナと名乗る少女は座り際に束の間痴情に染まった顔を見せる。
スナは細めた目で彼女の仕草を見つめているが、憮然とした表情は崩さないまま。少しだけ、ふん、と鼻息を鳴らす。
「ふんふん、世話とな。まぁきっとそれには護衛も含まれとるんじゃろが……ん、ん……」
彼女の説明を、真面目な面持ちで聞くスナ(真面目ぶっていると見ることもできるだろう)。
白昼にそぐわない字面の単語がスラスラと飛び出して来るのには、不可視化したスナの獣耳がピクピクとせわしなく動く。
保っていた仏頂面も時折ひくつき、口角が上がったり瞼が震えたりといった反応を見せるが、椅子を蹴るような様子はない。
「……ククッ。なるほどの。要はお雇い娼婦の募集ということかぇ。シモの世話も含むとあればあの高額も納得がいく。
しかし何かぇ。お前さん、一人では厠にも行けぬのか? ……あー、いや、ちょいと失礼な物言いだったの。
この国にはいろんな事情を持った人間がおるからの。しかし依頼を受けるとなれば、お前さんの事情もある程度は聞かせてもらうぞ」
いまのところ、スナとしてはマルティナの素っ頓狂な依頼と話題に追従できているようだ。依頼を拒否する姿勢もない。
むしろその顔には笑顔が浮かんでいる。どこか張り付いたような、作り笑いに見えるそれだが。
「んで、面接というのは今の話だけかぇ?」
にんまりと嫌らしい笑みを浮かべたまま、左手で頬杖をつき、右手で軽く相手を指差しながら問う。
■マルティナ > 本音は図りきれないがスナは笑顔。
とんでもない話しをしているのだが、とりあえずは大丈夫なようだ。
そしてここまで聞いて逃げ出したりしないなら最後まで話しを続けてもいいだろう。
「事情ですか……。
大したことではないのですけど、船旅の間赤ちゃんプレイを楽しもうかと思ってまして」
またもや酷い単語をさらりと口にするマルティナ。
しかし本人は平素通り、にこやかなもので。
「そういう訳でして、排泄の処理もその関係で含まれています。
一応おむつの着用を考えているのですけれど。
ああそれから、これが大事なところなのですが赤ちゃんプレイなので当然甘えさせてくれる方じゃないといけませんからね。
そうであれば年齢も性別も問わないのですが……。
スナさんはその辺り、大丈夫でしょうか?」
流石にこれは怒るかな?
と心配に思いながらも、何を意図しての依頼かはこれで全て明かした。
まだ質問や疑問があるなら答えるし、これらを聞いた上でスナは果たしてどんな応答をするか。
■スナ > 「な、なるほど、の……あかちゃんぷれい……な……。なるほどなるほど」
平静を装って(事実さほど動揺してはいなかったが)話を聞いていたスナ。
しかし、ことここに至って、とうとうスナの全身に狼狽の色が濃く現れた。
明らかに視線をはぐらかすような首の動き、トントンと机を叩く指のせわしなさ、机の下の貧乏ゆすり、etc。
一点は、彼女の依頼がよくある呪いや生い立ちから来る「やむを得ない事情」によるものではなく、純粋な変態趣味から来ていること。
いや、彼女が平然と変態ワードを口にしていることからして、呪いとか催眠とかの影響である可能性もあるのだが。
そしてもう一点は……。
「……んー、んー。なるほど。赤ちゃん、ね。お主が赤ちゃんになる、と。
俺の心を正直に言うとじゃな……まぁ、シモの世話とかは別にかまわん。俺は野の獣、ヒトの汚物なんかにひるまぬ。
マルティナ、お前さんが赤ん坊に変わるところを見るというのもなかなか興味深い。
じゃが……お前さんが甘えられるよーな立場になれるかどうか、そこに自信がない。
俺は野の獣じゃから子も沢山成した記憶があるが、子育てっつーもんに参加したことはほとんどないんでの。
嫌というわけではないが、純粋に自信がない……ククッ、真っ昼間に何を言っとるんじゃろーな、俺は」
真剣な面持ちと口調で、スナはそう吐露する。言い終わったあとは皮肉めいた硬い笑みを伴って、再び頬杖を付く。
いくら彼女が性別を問わないと言っても、いきなり母親めいたロールプレイをするには、それなりの覚悟がいる。
未だに己が躊躇する分野がある、ということを自覚し、どうしても自嘲の笑い声が漏れてしまうが。
あくまでもそれは、マルティナの変態的な言葉選びと提案を笑ったものではない。
「とりあえず俺の今の気持ちはそんなとこじゃが……まぁなんだ、それで5000ゴルド貰えるっつーのは魅力的じゃ。
前向きに捉えている、とはっきり言っておく。
ゆえに、残る問題はおまえさんのオメガネに叶うか否かというとこじゃな……どうかの」
■マルティナ > 「むぅ……。
そうですか。
それは残念ですね」
他の条件はほぼ呑めるようだが、甘えるのは難しいというのは非常に惜しい。
「それでは……、申し訳ないのですが今回は保留という事で……。
依頼はもうしばらく貼り出しておきますので、もっと条件に合った方が現れなければ改めてお願いするという形でも良いでしょうか?」
中々に勝手で都合の良い言い分ではあるが、依頼を出す以上誰に受けてもらうかはやはり選り好みする権利もある。
そして今回の場合、内容が内容である。
他に依頼を受けてくれる者が現れない可能性も十分考えられるのだ。
「急いで向かう目的でもないので、長ければ一週間か二週間ほどは募集を続けると思います。
本当に勝手で申し訳ないのですが、何人か面接をした上で判断したいかと」
申し訳なさそうな顔をして、テーブル越しにスナへ頭を下げるマルティナ。
話しの最中、さらっと人外である事を告白していたのはそれほど重要でもないのであえて触れる事でもない。
雰囲気からおおよそ予想も出来ていたし、単に腑に落ちたというだけのことだ。
■スナ > 「保留、かぇ。まぁ仕方ないの。お前さんにも相手を選ぶ権利はある。大金を出すというならなおさら、の。
それにまぁ、俺以上に『ママ』に適した人間はゴマンといよう。よい巡り合わせがあるとええの。
5000ゴルドを逃したのは悔やまれるが、過ぎたことよ。いや、まだ逃したと決まったわけでもないが」
ふぅ、と緊張が抜けたようなため息を吐きながら、スナは柔らかな笑顔を取り戻す。
「さて、面接とやらが保留で終わったのなら……ちょいと俺からの質問にも付き合っておくれ」
柔和な笑み……相手を蔑むでもなく、かといって至極真面目というわけでもない、砕けた雰囲気を纏ったまま、スナは姿勢を但し、言う。
「依頼という形もあるし、俺は大抵のあぶのーまるな行為にも忌避感なく、興味もある方じゃったから、ここまで話が続いたが。
大抵の冒険者は、『排泄』とか『赤ちゃんプレイ』とかそういった言葉が出てきた時点でドン引きして逃げ出すと思うぞ。
……いや、それ以前に、その身なりを見た段階でも、か」
そんな変態痴女をスナはなおも真っ直ぐに見据えたまま、やや強い言葉も選んで、マルティナの見た目を形容する。
「『普通』であることにそんな大それた価値はなかろうが……それでもお前さん、『普通』ではないと思う。
お前さん……何者なのかぇ?」
あなたは人間なのか、魔族なのか、妖怪なのか。
あなたは誰かの奴隷なのか、自分の意志でその容姿をしているのか。
普段の生業は何なのか。なぜそのような大金を趣味に出せるのか。
……そういった、諸々の『謎』への解を期待して、あえて曖昧な質問をする。
■マルティナ > 「何者、ですか?
今はただの冒険者ですけど、そういう答えがお望みではないのですよね」
この風体と奇異な依頼である。
疑問や興味が湧くのは仕方のない事だろう。
かといって全てを正直に言う訳にはいかない。
他はともかく、魔族のペットという部分だけは秘密なのだ。
「マルティナ・ラーゲルフェルト。
元王女ですけれど、国は既にありません。
今は色々と事情はありますが、気ままな冒険者稼業で暮らしています。
私、こう見えて結構強いんですよ?」
今のは比較的上っ面の、身の上の部分。
だがスナが聞きたいのはそれだけではあるまい。
更に言葉を続ける。
「普通ではない、という事に関しては確かにそうかもしれませんね。
普通の快感ではもう満足できませんし、この格好や依頼もその一環でご理解頂ければ。
この格好をしてると、皆さん驚いたり欲情したりで面白いんですよ?
でも、ふふっ……、この事はなるべく秘密にしておいて下さいね?
一応、なんでもないフリをしてるので」
要するに、異常性を理解しているが普段はこの格好が異常と思っていないように振る舞っているという事だ。
■スナ > 侮辱の意図はないにせよ、そう取られかねない質問であった。
罵倒が飛んでくることも覚悟していたが、なかなかどうして、マルティナは真摯な回答をよこしてくれている。
それに応えるように、スナも不可視の獣耳を澄ませ、ときおり相槌も打ちながら言葉を聞いた。
「……なるほど、なるほど。お前さん自身も冒険者じゃったと。
強いけど、普通の快感では満足できんので、護衛という体を装ってパートナーを雇おうとしたんじゃな」
スナが最初思っていた以上に、このマルティナという女性は理性的な『変態』のようだ。
己の身の上を語るその言葉に矛盾はない。熱に浮かれた様子もない。極めて淡々と、変態行為に向き合っていることがわかる。
なにか大事な前提が抜け落ちているような気もするが、初対面の男にすべて語るハズもなし。
「なんでもないわけじゃないが、なんでもないという体で振る舞っている、と。ふむ。まだ事情アリというわけじゃな。
まぁいいさ。十分すぎるほど、お前さんのことはわかった気がする。答えてくれてありがとうな。
しかし……ククッ」
スナの喉仏が震え、これまでになく甲高い笑い声を漏らす。束の間、スナの顔に下卑た笑みが浮かぶが、すぐに柔らかな笑顔に戻る。
「ん、すまぬ。じゃが、正直な感想を言わせてもらうと……俺はお前さんが羨ましい。
実際、俺だってお前さんと似たようなことを思う時があるぞ。人を雇って、犯し犯されながら旅をしたいとか。
犬のように紐を繋いで路地を歩かせたい、あるいは俺自身が犬になりたい、とか、イロイロな。
じゃが、そう思っても、なかなか人には言い出せぬもの。嫌われる、引かれるといった反応は、いまだに忌避してしまう。
それをこうして、張り紙を用意して、大っぴらに喧伝できるお主の……豪胆さ。正直羨ましいさね。お前さんの生き方、良いぞ」
豪胆……いや、きっとそれだけではこの所業は為し得まい。
どこか『壊れている』必要があるだろう……その点についても含めて、スナは純粋に、羨ましい。
「質問には応えてもらったが、きっとまだ俺の知らないマルティナがいるんじゃろう。それが俺にはとても気になる。
今回はどうもお前さんのママにはなれそうにないが、別の時、別のカタチでお前さんと触れ合えるとええな。
……さて、では今日はこの辺で失礼しようと思うが、ええか」
言いつつ、スナは椅子から腰を浮かせる仕草を見せる。
■マルティナ > 随分と買いかぶられてしまったが、結局変態行為を好んでいるという面は演技であるという事が心苦しい。
とはいえ全て演技だと信じているのは本人だけで、仕方ないからという言い訳をしながら性根は随分変態に染まっているのだが。
「そう仰るのでしたら、近い内にでも一緒に楽しんでみませんか?
犬扱いも、もっと他の事も、私ならお手伝い出来ると思いますよ」
立ち去ろうとするスナを呼び止める。
マルティナの本心はともかく、変態的に振る舞わないといけない以上スナの告白にもそんな提案を返す。
どうせ船旅まで暫く時間は空いているのだ。
それにダイラスに渡った後も暫くすれば王都に戻ってくるのだし、これから機会はいくらでもあるだろう。
■スナ > マルティナの掛ける声に、ニッ、と白い歯を覗かせて笑みを向けるスナ。
「ククッ、それはありがたい申し出じゃの。金は貰えぬとしても……いや、こちらが払うにしても、興味深い遊興じゃ。
それまでせいぜい、ケツの中をキレイにして待っておくとするかの。それじゃ、またな、マルティナ」
立ち上がり、後ろ手にヒラヒラと手を振りながら、ギルドの戸口を開けて去っていく。
掛けた言葉が本心であるにせよ、ないにせよ。マルティナは尊敬すべき『変態』であることには変わらない。
そうであれば、そのように触れ合うべし。嘘も真もコインの表裏のようなもの。
「……ああ、羨ましいのう、本当に」
ぼそり、誰にも聞こえない独り言が漏れる。スナもまた、変わりたかった……いや、『壊れたかった』。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマルティナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシャルレさんが現れました。
■シャルレ > 雨あがりの隙をついて、街へと散歩に出てきた。
昨日は丸一日、雨がつよくてお使いも中止、外に遊びにいくのも止められてたから。
僅かな隙間の雨上がりにいつもの散歩コースに出てきてみた。
猫だから難なく通れる隊舎の塀の上、空き家の屋根の軒下を通り、酒場通りに…。
だけど、昨日と今日の雨のせいか通りには人も少ない気がする。
軒下のとこの瓦礫の上に座って、ここなら濡れないと、とおりを歩く人を白い猫が眺めてた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に黒須さんが現れました。
■黒須 > 「くぁ…。ふぅ…。」
(雨上がりの道。
ほとんどと言って良いほどに人が居ないこの道を歩いていた。
なんてことはない、今は師団からの仕事がないため、前の仕事もやめたため、暇なのである。
大きな口を開けて欠伸をすれば道に広がる水たまりをぴちゃぴちゃを戸を立てて歩いている。
足の裏は皮膚が熱いためか、ほぼ気にしていない模様である)
「さてと…暇だな…何をすっか…ん?」
(歩いている最中にふと瓦礫の上で道を眺めている白い猫に気付く。
普通なら通り過ぎるも、この猫は少し違う気がして気になり、ゆっくりと怖がらせないようにそちらを向けば距離を取る様に近寄り、その場に座り込む)
「…取って食ったりはしねぇ。お前…普通のネコじゃないだろ?」
(正体が普通のネコか化けた人間がは知らないままで話しかける。)
■シャルレ > じーっと見てた。
近づく人は、こちらに気づいて距離が近くなる。
三角の耳をくるっと回し、しっぽを揺らして。
「にゃーぁん」(おにーさんヒトと違う匂いするー)
言葉が通じるかわからないけど、猫の鳴き声で鳴いて返す。
小さい鼻先をスンスンとさせて、顔を伸ばす、相手の匂いをかぐように。
■黒須 > 「…ああ、やっぱり、お前はネコじゃねぇな?」
(鳴き声でわかったのか知らないが、完全にネコでないことだけは理解する。
そのあと、自分の匂いを嗅がれている様子を見ればゆっくりと手を上げて、手のひらを近づける。
確かに、人間ではない、だが、ミレー族でもなく魔族でもない。
純粋に犬の匂いである)
■シャルレ > 「にゃー」(なんでわかるのー?)
小首をかしげるように白い猫が正面から見つめる。
手のひらを近づけてくると、鼻先でスンスンしたあとに、ざらついた小さい舌で
ぺろっと舐めてみる
犬っぽいけど、人だ…と不思議顔だけど猫にその表情はわからないかもしれない。
舐めたあとで…
「にゃー」(へんなのー)
■黒須 > 「さあな?きっと…魔力のせいだろうな?」
(この前の出来事で、自分に「逆転」の魔力が備わった。
試しに使うとわかった。今は「動物の言葉がわからない」を「動物の言葉がわかる」っと言う状態にしたため、理解できたのである)
「…それは…お互い様だと思うがな?」
(自分の手の平を舐められ、手を動かし、優しくネコの頭を撫でる。
大きな手にしては器用な行動である。
潰してしまいそうな、ぎこちない行動が普通なのに、このネコの小さな頭を撫でる時はとても慣れているような撫で方である。
しばらくした後、手を離す、ネコの近くに座る様に瓦礫の近くの地面に腰を落とす)