2017/11/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリューテさんが現れました。
■リューテ > 『ボウズー!次は平のB区画にこいつとこいつ!』
「あ、わかりました!魔符の準備だけお願いしますねー!」
まだ日も高い時間。本来なら学業にもいそしむ必要はあるのだが家庭の事情により、週に何度かはこうして配送の手伝いをしている。
得られる賃金は些少である――とはいえ、さほど裕福ではない家にとっては貴重な貴重な収入なのだ。
無論、勉強も重要なので配送業の合間を縫うようにして休憩室の一角で大人から簡単な勉強等を教わることもある。
配送業も、魔法が使えない一般人からすればまだまだ需要が根強く、廃れる様子を見せない業界。
少年と言う事も、特別な力も一見するともってない為にめったな事では隣村等への配達は向けられることがない。
大半はこうして、王都の中でも安全な区画への小荷物の配送が頼まれる程度のこと。
魔符、つまるところ伝票2枚を預かり、一抱え程度の荷物が2つ。
それを手にして事業所を出て行く姿――。それは見るからに、ただの。普通の。一般的な少年の姿だろう。
内面。魂などを詳しく精細に調査しない限りは。
■リューテ > つい最近だった。女性への奇妙な興味を抱き始めたのは。
朝に初めて性というものを強く意識した夢を見た――その時から、不思議と女性への興味。というか下心めいたものを強く感じるようになっていた。
配送業をしている今も、通りすがりの露出の激しい女性を見れば目で追ってしまい、慌てて視線を下げてキャップで隠す。
……耳元まで赤く、紅く染まってしまうのだがどうしても目で追ってしまうのは止められないのだ。
どうも母親や父親に相談するのも憚られてしまう気がする。
たまに、見ていることに気付かれてしまった女性からクスクスとした小さな笑い声を向けられることもあるが――足早に、通り過ぎてしまう事が多い。
人目のある中だと羞恥心の方が上回ってしまい、なんとももどかしい気持ちを抱えたままで街中を歩き続ける事になる。
――配送先に、若い女性がいた時に。たまたま、偶然で。筆降ろしをさせてもらった――ような記憶がぼんやりと残る。
あれほど興味を抱く女性との行為のはずなのに、不思議な事に行為中の記憶が霞が掛かった様に思い出せない。
自分自身では、興奮しすぎたからかな、という事で折り合いをつけるようにしている――なんにせよ、気持ちよかった、という感想だけは持っているのだから。
■リューテ > 「えーと、ここの針屋を曲がって、パン屋の近くに……」
持ってきた地図と魔符を見比べる。土地の随所に目印はあり、地図にも無数の付箋と走り書きや目印、特徴を書き込んだ自分の相棒だ。
少し古い地図ではあるものの、自分のぼんやりとした記憶とは違ってしっかり記録に残されている、頼りがいのある相棒。
その地図と、魔符の住所が一致する場所は、もう目と鼻の先――届け物を届ける先にはどの様な人が待っているのだろう?
そういえば、この興味も――『あの夜』から強くなった感情の一つのような、気もす……る………。
■リューテ > (ぬるい――てぬるい―――手緩い――)
少年の内面。人には見えず、人ならざる者が力を持って調べようと検知する事さえ叶わぬイド、少年の本能の奥深く。
そこに根を絡み付かせるようにして今を生き抜く、最後の魔王の一粒の魂が苦虫を押しつぶしたかのような呪詛を吐く。
もっとも、聴こえる者はここに居らず、外の空気を震わせることすら叶わず、宿主たる少年にすらほとんど作用しえない感情の波なのだが。
やむを得ず、この身体を宿主として寄生している魔王の意図するところは、もっと人は性に大っぴらであり、その性から通じる子種を吐き出す行為から――自らが再度、魔王としての血肉を取り戻すための根を張り巡らせ、魔力を、生命力を吸い上げる。
……まず、その目論見は宿主の年齢からして遠い目標に思えた。
そして魔王としての権能の大半は維持できずに失われ、命の危険が迫る瞬間のみ強制発動させる座標転換と――魔種の原始的な仕組みだけしか残すことが出来なかった。
ぬるい、というのは――勇者達の力量を見誤り。
宿主を選ぶ時間無く、単純に意識を乗っ取れるかどうか――それだけで宿主を選んだ自らへの叱責でもある。
……夜の間ならば、幾分は己を表層意識ににじませる事も出来る。
性行為による理性の蒸発により、己が表に出る事もある――。
だが、この日中という時間の大半はこうして――少年の意識の奥底でたゆたうしかない己の身分が恨めしい。
■リューテ > 「あ、ここだここだ。こんにちはー」
届け物の先は――うら若き女性の住まいだ。住居の規模から一人というよりは――良い稼ぎの親か。或いは親族、ないしは夫がいるのだろう。
黒い髪は良く櫛が通され、日の光を艶やかに照り返す黒曜石の鏡の様。
開かれた扉から見えるのは悪趣味な金銀荘厳な財宝――ではなく、香木をそのまま切り出し、工芸品の様に彫られた調度の品。
見るものを威圧する事がない調度品に出迎えた相手を持て成す薫り高い芳香。あぁ――コイツだ。コイツを犯せ。抱け、種を吐き出せ――!
意識の奥底で魔王の己が如何に本能を揺さぶろうが。宿主の少年は、せいぜいが頬を赤く染めながら届け物を手渡し。
魔符に一筆書き添えて貰い、その場を後にする――。魔王が今、日中に少年に影響を及ぼすのはこれが限界なのだ。
……もっとも、魔王本人も与り知らぬ話ではあるが。
少年に寄生した時に複雑な絡み方をした魂の根幹が相互作用を働かせ――邪悪だった魔王に僅か、僅かだが変化の兆しが見え隠れしているのは――まだ、兆しだけの話であった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリューテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトゥーラさんが現れました。