2017/04/16 のログ
プルメリア > 女の前には、帽子が逆さに置いてある。 その中に輝く、銅や銀の硬貨。
酒場を出る客が、通り過ぎながらついでに放るチップであった。
また一枚、ちゃりんと音が鳴る。 女は小さく頭を下げながら、演奏を終えた。

…特に拍手は無いが、女は気にした様子も無く、傍らのテーブルの酒を取る。
フェールを片手でそっと上げて、グラスに口をつける。 見えた地肌は褐色で、異国の生まれだと分かった。
赤く瑞々しい唇を酒で湿らせて、ゆっくり息を吐く女はぐ、と伸びをした。

反らした背、代わりに張られた胸。 ゆったりとしたドレスでも分かるほどに双房は豊か。
ふう、吐息を漏らしながら両腕を下せば、たふん、とリュートの上に胸が乗って揺れた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカインさんが現れました。
プルメリア > それを見た客の中、先程から機会をうかがうようにしていた男二人組が女に近づく。
弦の調律をしていた女が、近づいてくる足音に気付き、顔を上げる。

「…こんばんは、何か御用ですかしら? 何か歌のリクエストでも?」

淑やかな声と口調で問いかける。
酔っぱらった男たちの下卑た笑顔にも気づかない様子で、ぽろんと弦を鳴らす。
その手を、男の一人が無造作に握る。 驚いた声を漏らして身を固める女。
もう一人の男が逆側から、無遠慮に女の細い肩に手を回して口説く。
いや、口説くと言っても、下品で直接的な言葉で女の胸や細い身体をほめそやすだけなのだけれど。

「え、ええと、あの、こ、困ります、まだ、仕事がありまして…
 それに、あの、手、放して…」

酒と汗の匂いが近づき、耳元で無遠慮な声を浴びせられ、女は怖がるように首を竦める。
他の客は、男二人の体格の良さと、普段の風評の悪さを知っているので、止めようとしない。

カイン > 「――そういうのは無粋だと思わないか?花が咲いてるのをそんな方法で手折るのは、全く見てて面白くないな」

女を罵倒する男を横からやんわりとたしなめるような声が不意にかかれば、
暴漢を引き離そうとする男が現れる。誰も止めようとしない群衆の様子を一瞥しながらも、
肩を竦めて女の手にかかった暴漢の手を掴めばやんわりと横に外す。
酔っているからかそれとも単純に乱暴者なのか怒りを露わにするも動じた様子のない割ってはいった男に、乱暴な怒声が浴びせられる。

「何をそう怒ってんだか、ここは酒を飲む場だろ。…ほら、これでも飲んで――ろっ!」

しかしそんな様子もどこ吹く風といった風の男が朗らかに言ったかと思えば、直後に近くにあった酒瓶を手に取り暴漢の口に突っ込んだ。
かと思えば絡まれて居た女性の手を取ろうと反対の手を伸ばし。

「いようお嬢さん、この後何か予定はあるかい?なかったらこいつらから逃げるついでにデートってのはどうだろう」

拒まれなければそんな言葉を痛みにもがく男と唖然としてるその仲間を見ながら問いかけた。

プルメリア > 「あ、あの、誰か…っ …え?」

不意に、聞き覚えのある声が降ってくる。 そちらに顔を向けると同時に、手を掴んでいた酔っ払いの力が消える。
酔っ払いの怒声にびくっと肩をすくめてリュートを抱きしめる女の姿は、カインには怯えて小さく見えて。
カインの登場に驚いていた酔っ払いは、片割れが瓶を口に突っ込まれて倒れるのを見れば、歌姫から手を離す。

「この、声は…カイン様? あ …え、えっと、は、はい、喜んでっ」

自体を飲み込むのに時間がかかりながらも、何度も頷いて。
足元に寝かした杖を取れば、置いてあった帽子もその杖に着いて来て。
きゅう、とカインの服の端を握りしめたまま、カインが連れていくままに酒場を後にするだろう。

「助かりました、カイン様… ああいう人って、女を買うんじゃなくて、犯そうとするから…
 …お金も払ってくれないで、置いて行かれたりするので、本当に困ってしまうんです…」

カイン > 「おう、覚えておいてくれたようで何よりだ。久しぶりというほどでもないか?」

最後にあったのはいつぶりだったか。一週間はたってない気がすると告げながら、
怯える女の手を強めに握って見せながら笑いかける。とはいえ相手に見えないということは百も承知ではあるのだが。

「喜ばれるほどのことでもない気がするけど――よ、っと。
 そういうわけでオレがもらっていくんでね、お前らの出る幕ではないさ」

我に返った取り巻きが手を伸ばしてくるのをあしらいながら、
プルメリアを庇いながら酒場を出てしまえば流石にそこまでは酔っ払いたちも追いかけては来ない様子。
これ以上の面倒は避けたかっただけに安堵した様子を見せながら改めて横を歩く女に視線をむけ。

「ああいう手合が居ると酒が不味くなる。オレの都合でやったことでもあるから気にするな。
 ――それはまたなんというか大変だな、同じ男としては耳が痛いはなしではあるが」

プルメリア > 覚えてます、とちょっと頬を染める。 山賊に襲われていた所を助けてくれた恩人だ。
次の日には立てなくなる位に攻めてくれた相手だ、春を鬻ぐ身としても印象深い。
夜の街の表通り、この時間は流石に静かで。 吹く風は春の夜にしては少し寒い。
慌てて出てきてしまったので外套を置いて来てしまった女は、薄手のドレスで小さく身震い、くしゃみ。

「ふふ、カイン様はいつも誰かを助けているのかしら?
 ええ、ちゃんとお金を払ってくれる人の方が多いのですけど、
 時々、目を見えないのを良い事に、服も全部持って行かれてしまった事も…
 宿の肩に身を売って服を頂いて、やっと自分の宿に戻れた、なんて事も…」

苦労話をしながら、寒さと先程の不安から、カインに身を寄せる。
遠慮がちに抱き着いたカインの逞しい腕に、屋wら赤な胸の感触。

カイン > 「酒を飲んでた所に出くわした騒動というだけだ。
 これが何事もなければ素直に褒め言葉の一つくらいは投げて置いた所だが」

ああいう騒ぎになってしまえばそれもまた難しい。
春先とは言え薄着だからだろうか、寒さかそれともそれ以外か身を寄せる女の体の体温。
笑いながら己からも肩を抱き寄せて、あまり笑い話にもならない笑い話に声を上げる。

「何とも困った話だな、そこまでゲスに成り下がる気は流石にないが。
 それで今日の宿はどこだったんだ?あの酒場か?」

先程自分達が出てきたばかりの酒場を振り返った後、女に声をかける。
この街に来たばかりのはずの女が常宿を用意しているかどうかも怪しいとは考えていた。

プルメリア > 「出来る事なら、何事も無く穏やかに夜を過ごしたい物なのですけれどね…
 ん、…ふふ、暖かいです 外套、今度取りに帰らないと …無いかしら」

さっきの酔っ払いと同じように肩を抱かれても、カインの手は暖かくて、怖くなかった。
酔っ払いとは違う、男の匂いが鼻を擽れば、この間の夜の事を思い出してちょっと照れ臭い。

「あ…ええと、その、まだ決めていなくて…出来る事なら、あの宿でと思ってたのですけどね
 この町の詩人ギルドに荷物を預けて、宿を転々としているので…
 … …ねえ、カイン様」

額を男の胸に当てるようにすり寄せ、ちょっと恥ずかしそうに。

「今日、私を買っていただけませんか? …お題は、一晩の宿と朝ご飯で
 …カイン様のベッドの中、お隣にご一緒させて頂ければと…
 ダメ、ですか?」

カイン > 「仕事柄とこの街、どちらの要素でもまあ難しいだろうな。
 何かトラブルが有るのはこの街の風物詩のようなものだ」

軽く笑って飛ばしながら、いくらか落ち着いた様子に背中を軽く叩く。
寒いからこそ触れ合う人と人との肌の体温が普段より高く感じて熱を伝え合わせる。

「何とも運のない話だったな――ほう?」

あの酒場があの後どう荒れたのか考えればそれはそれで面白い。
喉を噛み殺して笑いながら、女の言葉を聞けばほうと声を上げ。

「いいだろう、買ってやる。その代わりこの前以上に足腰型タナ唸るのは覚悟してもらうぞ?」

プルメリア > 「せめて私の目が見えるのならば、普通の歌唄いとして春を売る事も無かったのでしょうけど…
 トラブルを楽しめる位に豪胆にならないといけませんわね…はぁ」

ちょっと愚痴っぽくなってしまいながらも、背中を叩く手の大きさに心が落ち着くのを感じた。
元々が甘えん坊なのだろう、優しくカインが触れ合えば触れ合うだけ、女も安心したように微笑む。

しかし、男の挑戦的な声に、ぴゃ、と子猫のような声を漏らし、少し恥ずかしそうに両手指を合わせる。

「が、頑張ります …身を売る私としては、それなりに、プロとしての誇りがですね…
 …で、でも、なんか今日も負けちゃう気がします…カイン様は、激しいし、何度も出来るんですもの…」

お腹の奥に灯る熱。 それを自覚すれば、両手で自分の頬を押さえる。
ヴェール越しで分かるくらい赤くなった顔は、やはり、娼婦とも思えない表情で。

カイン > 「そうだな、だが目が見えなければこそオレは楽しませてもらっている部分はあるのでな」

反応が常人よりも面白い。そう口には出さないが言外にバレバレかもしれない。
ため息をつく様子をしたり顔で眺めているところも実に人が悪い。

「ほう、プロとしての誇りと来たか。
 ではそのプロ根性とやらをぜひ見せていただきたいものだな。
 今日は期待してもよいのだろう?」

女の体を抱き寄せながら、足を向けるのは男が常宿としている宿の方だった。
その後二人が一体どういう顛末を迎えるのかは二人のみの知る所だろう。

プルメリア > 「あら、悪い人 …ふふ、でも、目が見えないからこそ、人の心は見えるものですから」

冗談っぽく笑いながら、細い人差し指でカインの胸板をぐりぐりする。
盲目の悲壮感は無く、こうしてみると、口調や仕草のたおやかさに反して表情は豊かな女だ。
目が見えていたのなら、相当なお転婆だったのではないかと思わせる笑顔。

「きょ、今日は…っ がん、ばり、ますっ
 …あ、えっとそうだ、この間買われたお客様に、胸を使った方法をー…」

そんな話をしながら宿に連れていかれた女。
…まあ、後日談と言えば、腰が立たなくて、報酬の朝食はベッドの中で食べることになった事を挙げておくのでした。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカインさんが去りました。