2017/01/11 のログ
ご案内:「奴隷市場」にジアさんが現れました。
■ジア > (太陽も高く上がる市場に、季節感のない薄着の少年はどこか気まずそうな表情で周囲を見渡していた。
朝から港で荷運びの仕事をしていた時、たまたま働いているところを見かけた商人から特別の仕事を言い使って、何か大量の金具らしきものを運んできていたのだ。
そして、地図に示された場所に来て、自分が運んでいたものが奴隷用の拘束具であるとわかった。
引き受けた仕事の内容に、気分はよくなかったものの、引き受けた以上はやらないといけないと使命感に頬を軽く叩いて気合を入れ、大股で歩き始めようとする。)
「よおし……うわっ!?」
(なるべく周りのみすぼらしい恰好をさせられている奴隷たちから目を背けようとすれば、自然と視線は下向きになる。
そして意気込んだ通り足早に進んでいたことで、不意に足元を見る視界に誰かの黒ブーツの靴先が飛び込んでくると、少年は顔を上げて立ち止まろうとして、つんのめってしまう。
とっさのことで止まるのが精いっぱいの少年は、相手が避けなければそのままぶつかってしまうかもしれず。)
■レンファ > 主の為にも出来るだけ早く使用人として使えそうな者を見繕いたいとは思うが、それも運次第だ。
往来で競られている奴隷達や商人達を観察しつつ、ゆっくりとした脚運びで進んでいればほんの少し悪くなった視界の端、一瞬何かが翳る。
半ば反射で半身を捻り、左手をもしもの支えに出しつつ、するりと滑らかな動作でぶつかる直前にすれ違う。
「―――申し訳ございません。お怪我は?」
少年の真横へと身体を移らせ、漸く脚を止めた。
ぶつかった衝撃は無かったとは思うが、念の為とばかり、些か抑揚の薄い声音で問い掛けて。
■ジア > (つんのめることで袋の中の金具ががちゃがちゃと喧しく音を立てる。
不意の遭遇に身のこなしを見せる相手に、少年は意識していなかったこともあり、まるで相手が一瞬消えたように錯覚し。
さらに相手が避けながら差し出した左手に身体を支えられた少年は、殆ど反応することができなかった。)
「あっ、あれ?…いえっ、こちらこそよそ見をしてて…ケガもないです。助かりました、ごめんなさい」
(転ぶように人にぶつかりそうになったかと思えば、誰かの手で支えられている。
しばらくそんな状況が読めなかった少年は、ぱちくりと目を瞬かせていて、かけられた抑揚のない声に慌てて姿勢を正し、弾かれたようにぺこっと頭を下げる。
見た目からして、どこかの貴族の侍女だろうかと思い、慌てて居住まいを正してお礼を言って。)
■レンファ > 金属の擦れる音に、フードの下でぴくぴくと耳が動く。
支えに出した左腕に軽い重みを覚え、人知れず吐息を逃がす。
返された言葉に表情には出さぬものの安心して。
「荷物の方は大丈夫でしょうか。――傷がついていなければ良いのですが…。」
少年が居住まいを正すのに合わせ、差し出した手を下げ同じように、然しゆとりをもった動作で頭を垂らす。
それから顔を上げれば少年の顔からその腕の中の荷物へと視線を移し、困ったように僅かに眉根を寄せて。
■ジア > (相手が深くフードを被っているのも、貴族の侍女ならそれだけ有名で、ぼんやりとした考えが浮かび。
相手の苦労はわからずとも、腕の支えに甘えまいとすぐに身を起こした。)
「荷物は多分、大丈夫です…その、凄く頑丈、だと思いますし…。
あっ、ボクはジアって言います。お姉さんはどこかのメイドさんですか?」
(深々とゆったりとした動きで頭を下げてくる相手に、少年は一度上げかけた顔でその様子を伺って再び頭を下げた。
そして頭を上げたところで荷物について言及されれば、気持ちのいいものではないため、少々表情を曇らせながら頭を振り、答える言葉もぎこちない。
しかしすぐに表情を明るくして名乗り、好奇心に勝てず改めて見るフードから垣間見えた服装について問いかけて。)
■レンファ > 少年の言には、そうですか、と短いながらも安堵の色が薄らと滲む返答を。
然し、些か強張っていると言うか、ぎこちないと言うか。
そんな印象を受けはしたものの、突っ込んで聞くのは不躾が過ぎるだろう、敢えて追及はするまい。
そうして続けられた名乗りと問いには、徐に立てた人差し指を、そっと柔らかく少年の口許へと触れさせようと。
「あまり人目を集めたくはないのです。どうかご内密に。
―――レンファと申します。」
この賑やかしい往来では少年の声も然程目立つ部類ではないだろう。が、耳の良い者はそこかしこにいる。
今日の目的を思えば、商人にも奴隷にも、その生来を取り繕われては困るのだ。
言外に、メイドである事への肯定と、その事を口にしないで欲しいと請いながら、己も名乗り返して。
■ジア > (相手の情動が薄く見える表情とは裏腹に、少年は秘密の行動をしているようにも見えて、自分が奴隷用の枷を運んでいたことも忘れてわくわくと目を輝かせている。
そして、急に伸びてきた相手の指が唇に触れそうな距離まで近づいてくると、面食らった少年はついその仕草通りに口を噤んでしまって。)
「わっ…は、はいっ…レンファお姉さん。
…そ、そうだっ、転びそうになったところを助けてもらいましたし、もしボクに手伝えることがあったら何かお礼をさせてください」
(そして相手がそうした意図までは察せず、わからないまでもこくこくと何度も頷いていく少年。
ふとそこで、相手に言おうとしていたことがすっかり抜けてしまっていたことを思い起こして、ずいっと歩み寄りながら少年は相手へと問いかけてみて。)
■レンファ > 触れるか触れないか、ギリギリの位置で止めた人差し指。
少年の頭が幾度も縦に揺れるのを見れば、ふ、と微かに喉の奥で笑む音が上がって。
「手伝える事――…。」
続けられた言葉には、思わず同じ台詞を繰り返す。
流石に、自身の受けた命を他者に頼む訳にはいかぬ。
数秒の間静かに考えていたが、何も思いつかなければ浅く眉尻を落とし。
「お申し出はありがたいのですが、今日の所は何も。
それに、私の不注意でもありますし…ジアさんに怪我がなかっただけで十分です。」
■ジア > (初めて笑った様子、というより情動の変化らしきものが見えた相手に、少年は少しきょとんとする。
そして、緊張を読み取られたと気恥ずかしくなって褐色の肌ではわかりづらい僅かな熱が浮かんで。)
「そうですか……。
じゃあ!貸し一つにしてください!思いついた時でいいですから。
よく港か町の鍛冶屋にいるんで、できることならできる限りやります!」
(怪我を負うところを助けてもらった恩返しをしたくても、権威があるわけでも金品に恵まれているわけでもない少年にできることは労力で払うぐらいのもの。
しばらく考え込んでいる様子の相手が返す言葉にはしゅんとしてから、すぐに立ち直って提案した。)
■レンファ > 元を正せば己にも非はある。
然し、少年の真っ直ぐなまでの返答にフードの下で僅かばかり目を開いては幾度か瞬かせた後、柔らかな弧を小さく描き。
「分かりました。思い付きましたらその時はお願い致しますね。」
ころころと変わる表情は見ていて楽しい。が、その反面で騙されやすそうだ、等と失礼な感想も抱く。
相手の見た目が己よりも年若いが故、少しばかり心配だ。
それから少年が主にいる、と言う場所へと思考を這わせ。
「店番の方なんですか?――それとも見習いを?」
■ジア > 「はい!」
(生まれの性質もあって、恩を受けたままでいることは心地いいものではなく。
相手が笑顔で了承してくれれば、少年も満足気であって。)
「あ、えっと、店番……することもありますけど、ただの鍛冶屋見習いで、港も荷運びだけ……で、でも!ちゃんと一人で武器を作れるように練習してますから!
レンファお姉さんはメ……も、もう一人前なんですか?」
(まさか相手に心配されているとは露知らず、問いかけられた言葉には見栄を張りかけたものの、結局正直に答える。
意気込みだけではどうにもならないと肩を落としながら、相手はどうなのか気になり、うっかり言われるなと念を押されたばかりの職業を口にしかけたのを押しとどめて問いかけ。)
■レンファ > 「そうなんですね。ジアさんがお店を構える日がとても楽しみです。」
少年の言葉から推測するに、真剣に取り組んでいるのだろうと思えばこその返答は、相変わらず抑揚が薄めではあるが世辞ではない。
そうして相槌めいた吐息を逃がしては、己の意を組んで言葉を変えてくれた少年に、良く出来ましたと言わんばかりの眼差しを送った後、静かに頭を左右に揺らし。
「いいえ。日々精進してはおりますが、私などまだまだ半人前です。」
■ジア > 「ホントですかっ?もしその時まで貸しを返せてなかったら、お店のものから何でも1個持って行ってくださいね……も、勿論、その前に返すつもりですよっ?」
(相手は秘密の任務をしているのだと勝手に解釈する少年は、その任務を間抜けな通行人その1である自分がブチ壊しにしてはいけないと考えを飛躍させていて。
口を滑らせなかったことにほっとしながら、相手の言葉に冗談めかしてから、ふるふると首を左右に振ってみせて。)
「うっ、レンファさんぐらいの人でもまだ半人前なんだ…ボクも頑張って半人前になりますっ」
(そして謙虚な相手の態度に、少年は未熟さを覚えた気がして、ぐっと意気込むように言う。)
■レンファ > 「大盤振る舞いですね――ええ、ですがまずは私が頼みごとを思いつかねばなりませんね。」
大前提がそこである。
自身の身分と職務が故、そうそう他者に頼み事をすると言う事が少ない。
彼が店を構える前に見つかれば良いが、等と考えつ、次ぐ言には再び小さく喉を鳴らし。
「そこは一人前で良いのでは?―――あ、」
告げて、ふと思い出したように短く声が上がる。
頼み事を、思いついた。
■ジア > 「そこまで待たせて、ちょっとお手伝いじゃ割に合わない気がして…あ、もちろん急かしたりしてるんじゃないんです」
(いつになるかわからないことであるがために、少年もずいぶんとお大尽な考えで喋ってしまっていたものの、そこまで待ってもらうことには相応のお返しをしなければという意識で。
相手が考えこむように見えれば、少年はあわあわと弁明していく。)
「見習いから一人前までの道はきっと遠いので、一歩一歩…えっ、な、なんですか?」
(謙虚で飾らない相手と話していると、近づいていた道が実はもっと遠いのではないかという思いが少年に浮かんでくる。
驕らずに踏み固めていこうと考えている時に、不意に短く声を上げる相手に、少年は驚いたように問いかけた。
ぶつかりかけた時でさえ、今のような反応を視なかったためで。)
■レンファ > 慌てて弁明する様子には、待たせてしまうのは己の方なのに、と苦笑めいた表情が仄かに浮かぶ。
律儀な――と言うには、少々過ぎる気もするが、真面目なのだろう。
それは鼓膜を揺らす、少年の意気込みにも似た台詞にも表れているような気がする。
「僭越ながら、ジアさんが一人前になった暁には、その第一作を私に賜りたく思います。―――駄目でしょうか…?」
そうして紡いだ頼み事は、記念にも、その後の戒めにもなるだろう、少年が一人前となった時に打たれる筈の第一作を貰う事。
静かな声音で請うた後、呼吸を幾度か繰り返す間を空け、ゆるりと頭を傾いで問い掛け。
■ジア > 「え、ボクの第一作…?わかりました、人に譲って恥ずかしくない武器を打てる鍛冶屋になりますね!」
(相手が思いついたのは、貸しの返し方であり、少年はそれを熱心に聞いてから、疑問符を浮かべた。
見習いを卒業した第一作はいわゆる試し打ちのようなもので、ゆくゆくの価値は不明ながら性能の水準までは保証できるものではなく。
しかし、人に譲るならそれを無理にでも高めるつもりで向かう心づもりだと意気込んだ少年はこくっと一度頷いてから笑みを浮かべて。)
「あっ、いけない。ボク、配達をしなきゃいけないんでした。
それじゃ、、ありがとうございましたっ…必ずレンファさんの武器を作るために、一人前になってみせますから!」
(会話がひと段落したところで、ずっと手に重みを与えていた枷の金属音に、少年ははっとなる。
そもそもここにきた用事を済ませていないと気づいた少年は、足早に去ろうとしてから、改めて相手へと振り返ってぶんぶんと手を振ってそう伝え、目下の仕事である荷運びに戻っていくだろう。)
■レンファ > 他者が扱うに足る第一作であれば、大成はその後の少年の努力次第ではあれど、一先ずは居を構えても矢鱈と生活に困る事もないだろう、との算段。
その辺りは、商人やら鍛冶師仲間との折り合いもあるとは思うけれど。
加えて、第一作で自分の様な立場の人間が扱うに足る物が少年に作る事が出来れば、自分としても他者へと薦めやすい。
そんな算段は挙動に出す事はないだが。
「ああ――お引き留めして申し訳ありません。
此方こそ。第一作、賜る日を楽しみにしておりますね。」
少年の台詞にゆっくりと持ち上げる口角。
淡く笑みを浮かべては少年へと再び礼を取って見送ろう。
そうしてその姿が雑踏へと飲み込まれていくのを見留めては、己も再び主から任された仕事の再開となるのだろう。
ご案内:「奴隷市場」からジアさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場」からレンファさんが去りました。