2016/12/01 のログ
■リス > 「あらあら、そんな照れ屋さんには可愛い服を着せて自信を持って貰いませんとね。」
コロコロと、笑いながら、少女の雑談に返答。
使いやすい所に、使いやすい入れ物、よく冒険者たちが言っているのを聞いたことを思い出す。
ナイフケースなので、服と表現してみせた。
消えたように無くなるナイフ、いつの間に?と首をかしげるぐらい。
「頑丈な素材ですね。
ご注文としては可愛らしいデザインで、なおかつ実用。
ふふ、職人が全力を出してしまいそうです。」
彼女の注文を別のポケットからメモとペンを取り出して書き綴っていく。
人に伝えるために、ご要望を忘れないようにと。
「いえいえ、こういうものは職人からしてみれば今後の参考にもなりますし。」
お客様の要望は重要なものである。
需要があるので、それを見越したり、取り入れた発送ができるのだから。
ニコニコ笑いながら、首を横に振る。
「ふーむ……。
お客様のご提示いただいたお値段では、足りませんわね。
商売とは信用問題ですのでご理解いただきたく。
相場では、その倍が適正な価格でございます。」
うーん、と軽く唸って見せて。
「しかし、私共の商店を選んでくださってますし。
適正なお値段をお支払いいただくのが、筋というものなのですけれど。
宜しければ、事務所でお茶をしながら、お値段等に関して、ご相談致しましょう。
例えば、宣伝していただけるとか。」
お金ではない何かで、還元するという方法もご提案できますし?
なんて、提案を一つ。
■リコシェ > 「んー…倍かぁ…」
あらら、世間知らずの顔をして先物取引させるのは失敗…と。
まぁ普通そうだよねぇ…。なんて思いつつ、
予想以上に安い値段を提示されたのが意外で少し目をしばたたかせた。
もう少し吹っかけてくるかと思ったのだけれど。
もしも相手がこちらが表情に見える以上にこういった取引に慣れていると察した場合は
値切り合戦が起こるかなーなんて楽しいゲームを期待していたところもあった。
気が付かなければ安く買えるし、どちらにしても楽しいから損はない。
(適正価格ならこれ以上値切ることもないしなぁ…)
なんて少し残念に考えていたところに付け加えられるように提案された内容。
(あ、そういうことね)
と心の中で手拍子一つ。商人らしい焦らし術…素晴らしい…
ついていったら値切りとかなにしてくれとんやわれぇ!と事務所で怖いお兄さんに囲まれる可能性も無きにしも非ずだけれど…
「え?いいの?じゃぁそうするー」
無邪気に警戒を知らないような表情で同意してみる。
その時はその時だし。
その可能性も含めて今はこの水面下のゲームを楽しもうと考えて見たりして。
■リス > 「はい、お客様のご要望の素材等の一般流通価格等を鑑みております。
そのお値段ですと、職人さんにお支払いすることもできないのですよ。
素材等を全てお客様で狩猟等でご用いただいて、此方が作成するだけというお値段です。
割引とうも含めての話でございます。」
彼女のナイフ。
あれは、職人のしかも一部の有名なところの逸品物、それを持っていて、ほかの冒険者のような荒々しさがない所から、態とではあることは分かっている。
しかし、本当に知らないのかもしれない、だからちゃんと説明の義務を果たす。
商売は信用。
それが、儲けと共にあると、お父様の教えなのだ。
安易な値引きはしないが、ちゃんとした取引の上の割引は問題はない。
だから、両方が納得する形で、終わらせたいものだ。
「では、此方へどうぞ。」
と、彼女を案内する前に、奴隷店員に先に言ってお茶を用意するように支持する。
案内するように降りるのは、一階の事務室。
入口からまっすぐ見えた奥の部屋で、ソファーとテーブルも準備してあった。
怖い顔のおじさんは………居た。
居たけど事務職だったらしく、リスとリコシェにお辞儀をしながら退勤していった。
事務室には、リスと、リコシェ、あと、先程の店員がふたり分のお茶をポットで持ってきて、先に温めてあったカップに注いでから一礼をして、去っていった。
「さて。
では、ご商談と行きましょうか。
私、この店の店長の、リス・トゥルネソルと、申します。
この度は、当店をお選びいただき、本当にありがとうございます。」
少女は、自分の名を先に名乗り、ひとつ、深く彼女にお辞儀。
■リコシェ > 「ふむふむー?」
ゆっくりと笑顔で頷きながら説明を聞いていく。
たまに細かい質問を挟んでみたりして…
こういう細かいところでの情報修正もどこで役に立つかはわからない。
それに元々誰かと話をするのがとても好きだから。
それにしてもこの辺りでは珍しい商人さんだなぁと笑顔の裏で思う。
真面目に説明して真面目に商売をする…というのはとても好感が持てるけれど
この生き馬の目を抜く界隈で生きていけるのだろうか…と余計な心配をしてしまう。
とはいえ直接交渉をしてくるということはそれなりに立場があるはず。
一介の店員が高級品の値切りなんて対応できるわけがないのだから。
(店長さんの娘さんとか?)
なんてのんびり考えながら指示に従ってついていく。
事務所にはやっぱり怖い顔のおじさんがいて…けれど事務職の方だったよう。正直ちょっと怖い。
けれどすぐに退室した彼を見送りながら続いた言葉に
「えっと、…てんちょさん?」
少し驚いた様子を見せた。
素直に驚きを顔に出した後のんびりと言葉を返していく。
「あ、いえいえ、ご丁寧にどーも。
私はリコシェって呼ばれてますー。
はねっかえりって意味らしいですよ?
どーでもいいですけど!」
やはり今一つ緊張感に欠ける。
■リス > 「はい。
正確に言えば、トゥルネソル商会王都マグメール支店、店長ですわ。
本拠は港湾都市ダイラスにありますの。
本拠本店はお父様が。
私は、店長とは名ばかりの見習いですわ。」
驚いている相手に、お恥ずかしながら、と頬に手を当てて言葉を紡いでみせる。
まあ、父親から見ればまだまだなのだろう。
生き馬の目を抜く業界だからこそ、抜かれぬように用心し、さりとて真面目に、堅実に。
一応、リス自身は、各地域に支店を出すぐらいには、成功してると思っている。
父親の思惑は兎も角として。
「リコシェ様ですね。
ああ、元気一杯なのが伝わる由来です。
私の由来は、百合です。花の。」
彼女の名前の由来に、楽しげに笑いをこぼしながら名は体を表すのねと考えても見せる。
そして、紅茶を先に一口含んで口を湿らせる。
「では、商談に戻りましょう。
別に難しいことをしてくださいとか、そういうわけではないのですよ。
3階の警備員さんは傭兵ですし、あれの装備は、うちの商品なんですよ?
なので、リコシェさんはそれと同じことをしてもらえればいいということです。
簡単に言えば、お店を宣伝してもらう、とか。
ここで、警備のお仕事をしてもらう、とか。
先ほどお話したとおり、素材をすべて自分で用意してもらう。
そういった事をして頂けるのであれば、先ほどのお値段でも、お譲りできます。
若しくは、もっと上のランクのものをという形でも。」
現金がないなら、ここで仕事をしてその給金を使うという形にすればいいと説明する。
もしくは、自前で必要なものさえ揃えれば、その分の値段は必要なくなるから安くする。
お互いに損をしないで行くなら、これが一番簡単だろうと、そんな提案。
「……でも、リコシェ様は戦士という様子には見えませんね……。」
傭兵とかとは、何もかも違う。
最初は魔法使いかしらとも思ったぐらいだ。
警備するには難しいかしら?と首をかしげる
■リコシェ > 「はぇー…」
大御所さんの娘さんでした。
確か18位の優秀な娘がいるという話をどこかで聞いたような…?
とりあえず脳内にメモしておかなくちゃと思いながら相手の評価を書き換える。
それならまず間違いなく商人としては手練れ。
酸いも甘いもそれなりの経験があると考えたほうが楽しそう。
…それに百合の花は結構好きな部類。
「なるほどなるほど?」
商談と称して提案された内容は実にわかりやすいお話で…
(要は評判と信用を金銭代わりに支払えって事ですね?)
商売人としては至極合理的な考え方。
そして具体的な選択はこちらにさせるという辺り中々際どい。
確かにやり手の商人さんなんだろうなぁ…と思う。
正直相場の倍の金額を提示されても支払いはできる上に
材料をとってこいと言われれば入手ルートもあった。
…竜の皮とか加工できるんだろうかとも思うけれど。
「あははー、わたしよっわぃから護衛には向かないかもー?」
…けれどそれを提示する位だったら初めから支払っている。
半分は探し物だけれど半分は遊びに来たのだから
もう少し遊びたい。
「宣伝は出来るかもしれないけど…うーん」
なので考え込んで見せた。
実際私にそれが出来なければどうするだろうとも考えながら。
■リス > 彼女が考え込み、吟味している間は紅茶を静かに口にして瞳を閉じる。
彼女の考える時間を邪魔してはいけないだろう。そういうのを嫌う人もいる。
なので、質問があるときにはにこやかに返答し、それ以外の間は静かに待っていた。
どんな思考をしているのか、自分の慮外の質問や選択肢の提示はあるのだろうか。
それらを待つように、静かに時間は過ぎていく。
友達同士の会話のような、くつろいだ時間帯ではあるものの。
「………」
護衛には向かないと彼女が言うのであればそうなのだろう。
ナイフは実用、必要な鞘も実用。
という事は、身軽な冒険者なのだろうか、そこまで考えて、彼女は相手を見る。
何やら、態と渋っている様子にもみえる。
お金に困っているというよりも、こちらの引き出しの数を確認しているのかもしれない。
ふむ、少女は考える。
「そうですね、そこまでというのであれば、何がしかの理由があるのでしょう。
それであれば。
知識を対価にするとか。
リコリス様は、冒険者に見えますが戦士には見えません。
ですので、リコリス様から見て当商店の警備に関して、何がしか改善点あれば、その知識を対価とする、とか。
……非常に、おすすめは致しませんが、金貸しもしております。
ただ、こちらは本当によく吟味の上でのご利用でお願いします。
金を借りてまで必要なものなのかどうか、と。」
そして。
じ、と少しだけ、彼女を見つめる。
まだ、引き出しが欲しいのですか?と問いかけるように笑みを浮かべながら。
■リコシェ > 難しく考えることは少ないけれどこういった駆け引きの時間はとても好きだった。
コツは欲張りすぎないこと。長引かせすぎないこと。
相手の笑顔の意味をはかるならそろそろ潮時かもしれない。
そのギリギリを攻めるのは好きだけれど、カードをこれ以上切ってくることはないだろうし
具体的なことはこの辺りが限度かも…?
…だから
「んー…知識?」
警備には困って居ないように見えていたけれど
とは言え正直搔い潜ろうと思えばかいくぐれるなぁ…とは
どこかで考えていたのは確かで。
いくつか他に手段は考えられるけれど…
落とし処としてはそんなところかもしれない。
正直宣伝役はすごく簡単な方法があるのだけれど…
(それをやると身が持たなさそう)
「うんー…正面切って切り合いとかはあんまり好きじゃないかも?
でもでも、大抵の罠とかは切り抜けられるかな?
ケガとかしたくないし。そういうので大丈夫?
材料もある程度だったらそろえてくるよ?」
提案に乗ってみる。
■リス > 「はい。
ありがとうございます。
では、知識と素材で頂きます。
素材をお持ち頂いてからの作成になるのと、素材がより良いものであればご返金、もしくは、上方修正しますので。」
彼女の提案に、笑顔で返答させてもらおう。
そして、一枚の羊皮紙を取り出して、ペンで書き込んでいく。
悪魔契約に使用される由緒正しい羊皮紙。
それに関しての内容は、ナイフシースの代価として、彼女の知識を対価としてもらった証明書兼、これから持ってくる材料で最高の仕事を行うという誓約書。
もう一枚は、警備の改善点を、書いてくださいな、と普通の羊皮紙。
「ふふ、少しだけ、残念。」
書いている時にぽつりと呟く言葉は、本当に残念そう。
気づかれているかも知れないし、隠すつもりもないが。
あれで唸るようなら、本当に最終手段として、一晩の同衾を提案していたところだ。
商人としていろいろ我慢していたが、彼女のような可愛らしい子を抱きしめたい衝動もあった。
商売とは、かけ離れた行為だし、それで、店が得するわけでもないから、最後まで出せなかった。
成約し、喜びがあると同時に、チャンスを捨てて残念だったわ、と。
■リコシェ > 「わーぃ。交渉成立っと」
相手の顔に走る後悔には気が付かなかった振り。
具体的な要求を先に切るのは駆け引きにおいては悪手なのだから
それを最後まで押し留めた相手には気が付かないふりをするのが礼儀。
「ん、良い”商人さん”と取引できてよかった」
誓約書に目を通し、内容を確認する。
知識の範囲等もしっかり目を通しておく。
羊皮紙に書かれた情報を支払いとするという記載を確認。
…これに関してはおまけしてあげるべき。遊んでくれた礼として。
「こっちのよーひしはいらなぁぃ」
そちらはそっと返す。
そしてその項目に書き加える。
「侵入されたくない場所に…そだねぇ…一輪挿しでも置いといてくれる?
期限はこちらで区切っちゃうけど、この間私警備に穴があったらそこに入り込んで回収しちゃうから。
そうすればいつどこが弱点かわかるでしょ?実戦形式のほうが分かりやすいと思うし」
しっかり確認したと伝えると同時に相手にもおいしいところを作っておいた。
”情報”の価値がわかっている彼女のことだもの。
羊皮紙に適当に書かれるより実際に侵入されて被害なしというのは報酬としてはだいぶ上乗せだろう。
経営者、商人としては得をする取引になったはず。
■リス > 「はい、今後共、よろしくお願いいたします。」
交渉成立に、笑みを浮かべてお辞儀を一つ。
彼女の性格から見れば、すごく疲れたものなのだろう。
紅茶の方はいかが?と、新しく暖かな紅茶を持ってこさせる茶菓子も添えて。
「まだまだですわ。」
ええ、駆け引きも、何もかも。
”商人さん”でしか居られなかった。悪い女の子でもあるが、うまく切り替えきれなかった。
商売とは、やはりかくも難しいと、楽しげに。本当に楽しげに言葉を放つ。
「ダメです。
商売に関しては、お互いの序列は同じ。
一方的にと言うのは私が許せません。」
書き加えられた物。
そして、彼女の提案、それを聞いて首を横に振る。
そして、いたずらな微笑みを浮かべてしまおうか。
「これは独り言ですが……
リコシェ様の髪の毛に合いそうな、ルビーの髪飾りがあります。
今度出会ったら、おすすめしてみようかしら。」
と、言いつつ、それを侵入した時に持って行ってくれと暗に言うし、そこに一輪挿しを置くだろう。
なぜなら。
「あれだけ万全の警備を敷いておいて、泥棒にはいられるなんて、警備員に不手際があったということでしょうし。
実際に何かないと、なあなあで済ませる人もいますし。
知識もいただけましたので、警備の見直ししないとですわ。」
そう、人というのは失敗を心に刻まないと。
何もなかった、じゃあよかったで済ませてしまう。
確かに、宝石は痛い。が。
それで今後をと言うのであれば必要な投資だ。
■リコシェ > 「うんー、よろしくねぇ」
紅茶を口に運びながらのんびり、無邪気な花のような笑みを浮かべる。
この人は決して善人ではないかもしれないけれどきっと仲良くできるとおもう。
なら、またよろしく…この後も縁が続くと匂わせる言葉がこの場にはふさわしい。
「そーぉ?」
商人としては正しい対応だったと思う。
あんな交渉を全員に持ち掛けていたならともかく、その交渉を持ち掛ける意味がある相手を
的確に選んで事を進め、利益を得たのだから。
それに個人的にはお遊びに付き合ってもらったお礼のようなものなのだけれど…
プライドもあるだろうし、素直にその制止を受け入れ、羊皮紙に筆を滑らせていった。
そして呟く。
「独り言だけどそれ探してみたら無くなってる気がするなぁ…」
そしてこちらもまるで長い間友人だったようによく似た悪戯な笑みを浮かべた。
対価である以上、きっちりと完璧にお仕事はこなすつもり。
これは新しいゲームの始まり。
なら、お互いに楽しんでこそ。
「それじゃぁ…」
一つのゲームの終わりと新しいゲームの始まりにサインを残す。
ああ面白い遊び相手ができた。当分退屈しなくて済みそう。
■リス > 「ふふ、もし宜しければ。
非番の時は一緒に買い物とか食事もいたしましょうね。」
こう、商売とは別でのお話もしてみたいわ、紅茶を飲みながら笑って見せよう。
善人ではない、商売人である。
仲良くしたい人とは、どこまででも仲良くしたいわ、と。
「あらあら。
まあ、なくなったら、その時に考えましょう。」
彼女の手から、羊皮紙を受け取りながら、引換証を渡す。
彼女のひとりごとに困った様子もなくコロコロと笑ってみせた。
「ゲーム、スタート、ですね。」
彼女にウインクを一つ。
あとは、仕事とは関係なくお茶をして終わる。
そんな商店の一日。
■リコシェ > 後日、ルビーの髪飾りと一輪挿しは見事に消え失せ、しかも警備部あてに匿名の荷物が届く。
その中には警備員の背中を延々1時間近く映した記憶水晶がおさめられており
それを解説する言葉こそないものの警備の穴をこれでもかと映しだしていた。
なにせその映像に映っている警備員もその他も映されていることに一切気が付いていなかったのだから。
その事件の数日後、新しい遊び相手のところへお茶を飲みに来た一人の少女の髪に
紅色のきらめきがあったのは…また別の話。
ご案内:「王都マグメール 平民地区:トゥルネソル商会」からリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区:トゥルネソル商会」からリコシェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある酒場」にナルラさんが現れました。
■ナルラ > ここは平民区にあるとある宿屋も兼ねている酒場
様々なものが行き来し、時には冒険者の斡旋などを行う冒険者の宿
その1階で今日は簡単な宴が行われていた。
「さあ、今日は酒のツマミは私が用意してある、遠慮なくやってくれ」
テーブルの上に並べられたのは妙な鉄の器に盛られた酒の肴の数々
鶏肉や魚、時には腸詰めや燻製肉など、様々な食品が調理されたものが並べられた
「安心しろ、毒などは入っていない」
そう言って毒物を検知する魔道具、《毒味食器》のナイフを取り出せば、その器の一つ一つに入れ、変色が無いことを見せる。
「今回は諸君に、新しい保存食品の試食をしてもらおうと持ってきた
得意に代金を取るなどもせん、ここに並べられたものは自由にやってくれ」
そう言って、鶏の煮込みを一つフォークで刺し口に運ぶ
「味は保証しよう、最初の一杯もおごるぞ」
■ナルラ > タダ飯にありつけて、酒も飲める。
そうなれば最初はおっかなびっくりだった試食会も、次々に料理へと手が伸びる
ナルラはその様子をカウンター席に腰掛け様子を見ていた
「なかなか、好評のようだな」
今日振る舞われた食品、先日オーギュストによってもたらされた新しい食品の保存方法、それを解析して量産した試作品である。
物自体は数日で完成したのだが、経年劣化魔法による実験による問題点の発見
そしてそれらの改良に時間がとられ、最初の公言通り1週間の時間を要した
ちなみに彼らが食している食品は、経年劣化魔法によって2年の歳月が経っている食品の数々である。
■ナルラ > 缶詰、鉄製の缶に食品を密封し保存するこの方法
食品保存方法は、燻製や発酵食品、氷室、瓶詰め
または魔道具の冷蔵庫や宝箱など様々な方法があるのだが、この缶詰にはそれらを凌駕する利点がいくつかある。
・魔法を使用せず長期保存できること
・携帯に便利なこと
・缶自体が調理器具や食器になる事
また缶の中身の料理の種類も色々用意したため、戦場や旅先での非常食として、飽きさせない等の利点もある。
酒場に集まった冒険者連中には好評のようであり、酒場の主にもこの商品を取り扱わないかと商談も持ちかけている。
マグメールやハイブラゼールに作成するためのプラントも用意した
この売上は第7師団の新たな資金源となり、貴族連中の思惑で予算不足になることはある程度緩和できるやもしれない。
■ナルラ > 「店主、あとコレも張り出して置いてくれ」
そう言って告知用の張り紙を店主に手渡す
『最新型携帯食料、缶詰1つ5ゴルド~50ゴルド
長期保存、約2年間保存可能
冒険の供に、酒の供に、食事に一品追加
専用開封道具、1つ10ゴルド
模造品は長期保存できません、紋章入りの缶をお選びください』
まあ、告知用の張り紙はこんなものでいいだろう
ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある酒場」にリコシェさんが現れました。
■リコシェ > 「むぐむぐ…なんだかこう…ちょっと変わった味がする気がする?」
そんな中元気に飲み食いする人影が一つ。
比較的初めの時期から参加しており特に遠慮する様も見せないことから
新しくこの場を通りかかった冒険者達の食欲の呼び水になっていた。
「あ、おにーさんこれおいしいよこれ」
近くで躊躇っている冒険者の一人にまるで知り合いのように気軽に声をかけそれらを勧めていく。
何食わぬ顔で全く違和感なく参加しているものの、実は彼女自身は冒険者として登録すらしていない。
時折似たようなことはするものの完全な部外者だったりする。
けれど、とりあえず新しいもの、珍しい物好きとしてはこういったお祭りみたいなものには
是非参加しなければという謎の使命感ですっかりこの場に溶け込んでいた。
「あ、おじさんこの人にエール一杯おねがーぃ」
雰囲気だけで見れば常連のような空気を醸し出しながら店主に注文してみたりして。
■ナルラ > 飲み食いする連中の中で、特に食いっぷり良い者を見れば近づいていく
「なかなか良い食いっぷりだな、何か食べたい料理とかあるか?」
そう言って彼女の目の前に新しい缶を置いていく
ビーフシチュー・牡蠣のオイル煮・豚肉塩漬け・鶏肉煮込み
まだ封の空いていない状態の缶、実際にどう使うのかを見せようという魂胆だ
「もし加熱の魔法が使える者がいれば、よく見ておくと良い
この状態のままであれば2年持つ、
温かい料理を旅先で迷宮で、戦場で、手軽に食うことが出来るぞ」
そう言って、缶の蓋を開ける特殊な形をしたナイフ、缶切りも懐から出してみせる。
■リコシェ > 「あ、これが食べたいー」
近づてきた男性が主催者と知りながら特に気負うことなく屈託のない笑顔を浮かべる。
相手の身なりや物腰からお偉いさんとは予想しているもののこの場では威圧が目的ではないだろう。むしろ逆のはず。
そして品目を見比べると牡蠣のオイル煮を指さした。
先ほどからさりげなく選んでいるのは生ものや痛む足が速い食材を使ったもの。
ここまで大盤振る舞いをするなら周知が目的。
せっかくご相伴に預かっているのだから宣伝には協力するつもり。
他と比較してもより傷みやすいものを保存できるという実績を目の前に並べてみせるのが目ざとい冒険者には一番のパフォーマンス。
それに彼女自身どこまで何が保存できるのかという点をしっかり見極めるつもりだったから。
「おー…なんだか変わったナイフ」
今度作る新しいナイフに似たような機能を付けたものを用意しようかな。
なんて思いながらそれを扱うさまを目に焼き付けていく。
もしこれが普及するなら便利なはずだから。
■ナルラ > 「ああ、コレだな……コレを食う時はパンがあるとなお良い
旅先で固くなったパンだけという味気ない食事が劇的に変わるぞ」
そう言って店のものに固パンを焼いたものを注文し
缶切りで缶詰の蓋をあける
「このナイフは缶切り、この缶を開けるための道具だ一つ10ゴルドで販売する」
そして缶を開け、簡単な呪文の一説を唱える
特に魔力のないものでも、金さえ払えば教えてもらえる初歩的な魔法
《加熱》の魔法。
牡蠣のオイルにはいい匂いをさせていく
「好みでにんにくや辛子を入れるとなおよい」
そして、焼いたパンも良いタイミングで持ってこられ
「さて召し上がれ、くれぐれも加熱は蓋を開けてからだ、でないと破裂するから気をつけろよ
ちなみにこの牡蠣のオイル煮は20ゴルドだ」
■リコシェ > 「いただきまーす」
辺りに漂う美味しそうな香り。否応なしに期待が高まる。
その香りに生唾を飲み込みながら先に行けと牽制しあう冒険者達をよそめにかぶりつく。
「んーーー!おっいしー!これお酒とすっごいあいそう。
てんちょー。モスコミュール頂戴?」
頬を抑え身をくねらせて少し大げさにボディランゲージを交えてみる。
実際とてもおいしかったし。
美味しいものは大好きな彼女のこと。実にいい笑顔を浮かべた。
ここは冒険者向けの酒場。
地味な仕事が多いとはいえ好奇心が服を着て歩いているような人物も多い。
ここまで目にしてそれを刺激されないなら冒険者とは言えないだろう。
「お、俺も一口くれ」
耐えかねたような誰かの言葉をかわぎりに、より多くの冒険者が殺到していく。
なんだかんだ言って食事はとても大きな関心ごとなのだから。
■ナルラ > 「まあ、試食用の缶は限りがあるからな早い者勝ちだ
あと気になった物があれば店主に言ってくれ、この酒場では取扱をしてくれるらしい」
食べっぷりの良い少女、彼女のおかげでプロモーションは成功とも言える
それにしても、この娘は良い反応をする、小動物というか愛玩動物というか
「あと、この缶は他所で真似するには最低でも5年はかかる
模造品も多く出回るだろうが、是非この紋章の入ったものを購入してくれ
楽しみにしている食事に、命を奪われたくなければ注意してくれ」
実際に製法の確定、缶の製造から経年劣化テスト
普通にやればそれくらいかかるだろうしコストも割にあわないだろう
そう注意を呼びかけつつ、ナルラ自身も魚の油漬けをパンに載せ食す
宴が終わればこの娘にチップでも渡すべきだろうか、そう考えながら。
■リコシェ > 「あ、じゃぁ缶切り含め一通り2個ずつー」
さらっとなくならないうちに購入しておこう。
1セットは自分用。もう1セットは最近知り合った商人の友人に売り込みに行くつもり。
目ざとい彼女のこと、これの価値をすぐに見抜いて交渉に着手するだろう。そうすれば安く購入し続けるつても確保できる。
一式で買った値段も品質に対してはおまけがついてもおかしくない。ついでにお高くないよと周囲にアピール。
実際に商店に並ぶときには低く見積もっても3~5倍ほどの値段がつくだろう。それだけの価値がある商品になる。今買っておくのが賢いはず。
なら後することは…とりあえず食べる!
「ごちそーさま。おにー…さん?」
盛り上がった試食会を存分に堪能した後、興奮冷めやらないその場から少しだけ離れ、お酒を片手に主催者のもとへと歩み寄った。
のんびり笑顔を浮かべて隣良い?と首をかしげる。
「えと、これって持ち込んだりしてもいいかなぁ?
これにすっごい興味を持ちそうなお友達の商人がいるんだけど…
もし良かったら紹介したいから連絡先とか聞きたいなー!なんて?」
■ナルラ > 早速その少女が購入した、それにつられて何人か連鎖的に購入していく
とりあえず目新しいものに関しては、誰かに使ってもらうまでが難しい
それで今回のプロモーションであるが、どうも彼女のおかげで上手く行きそうである。
「ああ、気に入ってもらえて嬉しいよ、まあ隣は開いてる好きに座ると良い」
そうカウンター席で再び一杯をやっていると、先ほどの少女が話かけてくる
相席に関しては快く了承、そして続く言葉は彼にとって渡りに船であった
「ああ、商品を取り扱って貰えるのはありがたいな……私自身これから色んな場所に売り込む予定だったからな。
なんなら紹介してもらえるなら、少しバイト代を出そうか?」
そう言いながら、店主に頼み書くものを持ってきてもらい、一筆を認める
「王城か富裕層にある私の邸宅にでも来ると良い、ナルラに缶詰の商談で来たと言えば、話がつくようにしておこう」
そう言って一筆書いた紙を少女に渡す。
「一応自己紹介をしておこう、ナルラ・ホーティ・カルネテルだ」
■リコシェ > 「はーぃお邪魔しまーす」
若干酔っ払い気味の様子で隣に腰掛ける。
少し調子に乗って飲み食いしすぎたかなぁ…と思いつつ
新しい儲け話をする程度の冷静さは残っているつもり。
身分証明代わりにもらった紙を眺めながらしばし熟考
…ぽく。ぽく。ぽく
「うーんと…偉い人?
バイト代は…うーん。
かえって揉めかねないから気にしないでほしいのー」
今日の大盤振る舞いも納得のお偉いさんでした。たぶん。
どうも最近お偉いさんに縁がある。
バイト代は嫌味にならない程度に断る。
協力者を仕立てての営業は承認の常套手段だけれどそうと知れた時の説得力が欠けてしまう。
それに偶然居合わせた正真正銘のお客のままでいたほうが…
「そのほうが楽しいもん。
はーぃ。そう伝えておきますねー」
例え偉い人相手でも通常営業。
若干口調は改めつつも雰囲気は一切崩さない。
「そーいえば少し気になったんですけど、
どーしてこんな地味な場所で地味な売り込みを?
こんな技術だったらもっとこう大々的にうちだしてもおかしくない…ですよね?」
商売にタブーはつきもの。
地雷は踏まないように思いっきり正面から聞いてみる。
■ナルラ > なかなか陽気で豪胆、それでいて愉快な女、そんな印象を受ける少女
自分の名を言っても、ソレっぽい反応のないところから流れ者か何かだろう
「まあ偉い人だな、バイト代はいらないのなら……そうだな、
新しい試作品が出来たら試食にいくつか渡す、それくらいでどうだ?」
金銭のやり取りで、何かあると商売にとってそれが足かせになりかねない
なかなか頭も回るようである。
「それは、こういう場所に集まる人間が、この商品を普及させるのに適していると判断したからだ
一般市民や、冒険者や旅行者にとって保存の効く食品は必要だろ?
それに大々的に売り込みをすると、下手に目立ち敵も作るからな
まずこの商品を流行させるための下地をつくる、大々的にヤるのはその後だ
他に真似をしようとするものが現れても、ある程度のシェアを押さえておき、
その真似をしようとする連中からライセンス料を取らねばならんからな」
そう正直に答える、コレの模倣品を作った所で、そこから更に金を取る仕組みまですでに構築しているということも明かしておく。
「あと冒険者や旅行者は、生存率を上げる情報というのは素早く回っていく
恐らく今日購入した斧たちで、旅行や冒険の先でこの缶詰を使うだろう
そしてソレを見たものが興味を引く、そういったコミュニティー情報も狙っているんだよ」
■リコシェ > 「ん、それは魅力的ですね」
新しいもの大好き。
胸中でそんなことを呟きながらグラスを傾ける。
「そういえば奇跡的な生還を果たした方が新しい技術を持ち帰ったとかいうお話がありましたけれど…
その類の話って事ですか。なるほどなるほど。」
この稼業情報が命。
つまりこれは切欠をどこか別の誰かに依存した話ということ。
それをあえてこちらに公開するということは矢面には立ちたくないけれど
流通はさせたいということ…ならこちらの提案は渡りに船だったかもしれない。
代理販売する商人が矢面に立ってくれるのだから。
問題になれば正面だって販売していたわけではないのだから頼まれて仕方がなくと言い訳もたつ。
「確かに保存がきく食べ物って大事ですよね。
何より士気にかかわりますし。今の携帯食料ってなんだかこうぼそぼそしてて美味しくないですもん」
だから持って帰りもしないのだけれど。
携帯食料に価値が出るならば憲兵などの装備品に価値あるものが増えるとも言えるのだから
表裏どちらでもこれは文字通り”美味しい”お話。
「なら新しいかん・・ずめ?が出来たら私に渡すのもその一環…と」
給料ついでにアピールできるのだから悪くない対応。
お偉いさんは人の足を引っ張る以外頭が回らないと思っていたけれど
この人はそうではないらしい。心底楽しそうな笑みを浮かべる。
頭の中のメモ帳にしっかりと記入。遊び相手は賢い人が好き。
「あ、強いて言うなら若干鉄っぽい味が残る気がするのですけれど…それは対策等取られているんですか?」
しばらく無難な商談に花を咲かせた。
■ナルラ > 「まあ技術の出処は想像通りかもしれない……まあ、その方面の話しがもう出回ってるのか」
そう言いながら目を細め何か思うところがあるらしい。
「そうだな、食事問題は重要だ……料理に自信のある従騎士や料理番のいる部隊であれば問題はないのだが
誰もが皆そういう環境にいるわけではないからな」
誰でも気軽に旨いものを、恒久的な世界平和に必要なものの一つである
まあ、そういう世界平和は今のこの世界の現状から、荒唐無稽なものではあるが
「話の理解が良い頭のいい女は好きだぞ、その問題点に気づくのも実に良い」
そう言って、懐から一つの缶詰を取り出す。
「先ほどの料理はどれも味付けが濃いのは、まさにその欠点である鉄の味をごまかすためだ」
そのまま缶を開ければ、中には白い紙で包まれたレバーパテが現れる
「この缶詰は個人的に作った試作品でな、中には肥大したガチョウのレバーのパテが入ってる
この食材には鉄の匂いが大敵でな、なんとかできないかとした工夫がこの紙だ」
そして紙包みを開き、パテをパンに乗せて彼女に差し出す
「ただ問題は、ニオイ移りを防止するこの紙を使うとコストが掛かりすぎる
高級食材の缶詰を作るならいいかもしれんが、現在普及させるにはまだ時期尚早だ」
質問に関して答えることは答える、だがその欠陥も包み隠さず話す
そういう欠点を指摘されるのはありがたいのだ、商品の改良に必要な率直な意見はある意味財産なのだから
■リコシェ > 「本当はそれが目的で軍に内密にするために行方不明を装った、一部貴族の暴利行為だー!
…なんて声高に叫んでらっしゃる元気な声が場外にまで聞こえてきたもので」
ケロッと返す。
王家はもはや一枚岩どころか子供向けの切り絵並みのバラバラ具合。
モザイク画職人だってつなぎ合わせるのに苦労しそうな現状だというのは国内外で有名な”噂話”。
「給仕隊を編成しても安全面やコストが見合っているとは言えませんし、そう考えると革命的です」
しげしげとカン…鍋の代わりにすらなりそうな鉄製の容器を眺める。
実際これが普及すれば食糧事情が革命的に変わるのは間違いないのだから。
「あ、いただきまーす」
とろっとして鼻に抜ける素材の味がパンと実に相性がいい。
確かにこれに鉄の味が混ざってしまったら台無し。一気に雰囲気が壊れてしまう。
「なるほど、その需要が出てくるまでは暫く伏せておくと…
それから高級品と銘打って販売してしまえばコストの問題も解決しますね」
人格、目的のよきにしろ悪きにしろ頭の良い人の場所にお金や富は集まるべきだと彼女は考えている。
特に国を経営するような相手ならなおさら人格よりも能力を問われることが多い。
そういう意味では自身を賢く賢明な商人と思っていたり、理想論だけを盾に無茶を主張する貴族(無能)より
こういった実利優先の人物のほうが好意的だった。
無能相手ではこういう商品を見せてもその利点に気が付くこともできないだろうから…遊び相手にもならない。
「やっぱり問題はそれをどうやって準装備品レベルまで
価値を上げるか…ですね…」
だからこそ率直に質問を重ねていく。
それに相手が誠実に答えてくれる以上、数時間もすれば疑問も大方解消できるだろう。
■ナルラ > 「留守の間に第7師団を潰そうとしたり予算を取り上げてた連中がよく言うな」
そう言いながら苦笑を浮かべる、たぶん噂の出処の候補が何人か思い浮かぶ
この事に関しては妙な詮索はいらんだろうと判断する。
「まあ、そういう給仕部隊にも必要になるかもな、輸送する食料の劣化は待ってくれないからな」
そう言いながら自分のレバーパテの乗ったパンにかぶりつく
「物事には段階があるからな……あと魚卵とかも難しいが挑戦して見る価値はあるので試行錯誤の途中だよ。
ところでこのレバーパテ、貴女……ああ、名前は何だったか
ところでいくらまで出せる?」
そういえば相手の名を聞いていない、それとこの缶詰の価格はいくらかと問いてみる
彼女の解答が現在のコストとのバランスが良ければすぐに商品化は早いかもしれない。
「まあ、コレばっかりはどこまで普及できるか見守るしかないな
一応第7師団長の持ち込んだものだ、一部の部隊では実戦で使われるだろう
あ、あと利点の一つで瓶詰めと違って壊れにくいってのもあるな」
意見交換するうちに、相手は疑問が、こちらは改良点が見えてくる
実に有意義な時間である
しばらくすれば、店主が追加注文の話を持ちかけてくる、今日用意していた分は完売したそうだ。
「まあ、明日には使いの者に今日と同じだけ持ってこさせる、安心して商売に励め」
そう言って店主はホクホク顔で、さらに酒をサービスしてくれるようだ。
■リコシェ > 「どの世界にも足を引っ張ることが生き甲斐な人物というのはいるものです。
その為に自身の手から価値あるものが零れているのに気が付かないのは此方としては有難いですけれど」
笑顔で毒のある言葉を交える。
情報の価値を知らない愚か者は直ぐにそれを差し出してくれる分相手をするのは楽だけれど
どうしてもその愚かさに苦笑してしまう。
「その前に安心して食事ができる環境を整えないといけませんね。
安心して食事をしたら毒が盛られていたなんて冗談にもなりませんもの」
本当に冗談抜きでそれが起こりうるのが現状なのだから。
「あ、申し遅れました。
わたしはリコシェ…です」
あえてさらっと名前を流す。とはいえこれからしばらく付き合いがあるかもしれないのだから
あまり不信感は与えたくない。
なので続く質問には真摯に答えてみる。
「これに関しては…そうですね。
先ほどの一般向けのものが恐らく冒険者等や保存をメインに…50~100前後に落ち着くでしょうから…
大まかに見積もって200ゴルド程度であればその分客層は広くとれるかもしれません。
こういったものは高級品ですし、少し背伸びすれば買える…程度であれば庶民も特別な時に選択肢として考えてくれるでしょう。
このお手軽さは高級志向、貴族向けと割り切ってしまうのは少し惜しいので…。
薄利多売になりますけど、普及を望むという点では目的に一致すると思います」
少し考え込んでから答えを返す。
物の価値というのは選定において重要な意味を持つ。
何を入手し、何を残すかという判断を短い時間で迫られる以上それが出来るか出来ないかは生死すら分けるのだから。
それに照らし合わせながら少し厳しめで感想を伝えてみる。
とはいえ少しそちらに集中するあまり無意識にグラスを重ねてしまうのはご愛嬌。
有意義な時間というのはお酒のつまみには上質すぎる。
「…あれ?」
気が付くと嬉しそうな店長が二人見える。
この人双子だったっけ?ゆらゆらと揺れる視界でぼんやりとそんなことを考えてみたり
■ナルラ > 「世の中が、そんなふうに頭の回るやつばかりだといいのだがな」
そう言いつつこの男自身も思うことはあるのか、貴族連中への悪態をつく
「まあ、貴族連中にコレが売れてるんだ……私の魔道具の中で一番よく売れている《毒味食器》だな
フォーク、スプーンで1セット2500ゴルドだが、毒のある食品に触れると警告をしてくれる」
そう安全を提供できるなら、それに対して金を払うものもいる
それをわかっているからこそ、それもまた商売になるのだ。
「ああ、リコシェだな……そうか、200ゴルドか
今の所だと200ゴルドでは正直赤字の商品だな、やはりもう少し普及するまでコレは商品としては封印かな」
美味いんだがなと開いた試作品の缶を見る、今の現状だとこの缶詰は
彼女の提案した価格の倍かかるのである。
ある程度まとまった注文があれば、彼女の言う価格にまで抑えられるのだろうけど
「ん? リコシェ大丈夫か?」
顔を覗き込めばリコシェの瞳が虚ろだ、どうやら飲み過ぎのようである
「店主、部屋一つ頼めるか?」
そう店主から二階の部屋の鍵を与れば、彼女に肩を貸しながらそのまま二階の部屋へと連行する
とりあえず、酒が抜けるまで介抱しておこうか。
用意された部屋に到着すれば、そのまま彼女をベッドにでも寝かせよう
まあ、その際彼女の身体に色々触れるかもしれないが、多少わざとだが不可抗力に違いない。
■リコシェ > 「ふきゅー…すれば、じゅよー…も…
だから、まずふきゅーするまで…まつしか…
あははー、てんちょ…が、すごい勢いで反復横跳びしてるぅ…
よーぃ…ドーン」
若干舌足らずになりながら続けるも
ゆらゆらと揺れる視界が面白くなっている辺り完全に出来上がっている。
運ばれる最中も若干意味不明な言葉が口からこぼれ続けるだろう。
今は酔っているとみて取られるからまだしも、彼女の普段はこちらのほうが近いと知られたら
驚かれるだろうか?
「ん……」
寝かされるままベッドに横に。
あちこち触れるたびに甘さすら感じ取れるこうな声で身をくねらせるものの
あまり嫌がっているという様子はなくむしろくすぐったげにしながら遊んでいる…という雰囲気。
酔いに支配されながらもその瞳の奥に面白がっているような光を浮かべていた。