2016/10/27 のログ
■砕華 > (本来ならば、あまり動いてはいけないほどの傷だった。
医者にみてもらわなかったのは、其の時間がなかったこと、そして其の医者が、シェンヤン人だと知ると、門前払いをしたこと。
マグ・メールの人間でないと、こういう弊害は、必ず出てくるものだった。
仕方なく、自分で調合していた鎮痛剤を服用して、痛みをとっているのだが、効果があまりない。
当然だ、痛み止めはそれで眠れないときなどに、ほんの少し痛みを緩和する程度。
それで体を騙す、などということはできない。
外相をカバーするには、もっと強い薬に頼る必要がある。
勿論、腕が万全ならば作ることもできるが、いかんせん脱臼していては。
ハナビの言うとおり、砕華は鎮痛剤を使ったせいで、吐き気に苦しんでいるのだ。)
「あはは……お察しのとおりです。」
(普段なら、こんな笑いをすることはない。
苦笑のようなものを出すということは、吐き気は幾分、ましになったのだろう。
服が脱げれば、そこからあらわになるのは白い肌――の、はずだった。
今、そこにあるのは痛々しいまでに、青いあざがいくつもできた、白い肌だった。
打ちつけた際に起こった、内出血の嵐が、体の至る所にできている。
サラシを解くなら、其の裏側も同じような状態だった。
凄惨な戦闘のあとが、華奢な体の至る所に、傷跡を残していた。)
(ちくり、と針の刺さる鋭い痛みが走る。
鍼灸は、いくらか味わったことがあるため、むしろハナビの治療法は、なれたものだった。
じわり、と暖かいものが体に流れ込み、そしてそこから現れる痺れが、より一掃体を楽にしていく。
ゆっくりと、大きく息ができるようになり、先ほどまでの苦痛は、鳴りを潜め始めていた。
勿論、完治したわけではない。
鍼灸は、あくまで痛みを、少し緩和する程度のもの。
このまま、様子を見るらしい花火に、苦笑めいたものを向けながら、一言「ありがとう」とつぶやいた。)
■ハナビ > 「…」
痛々しい背中の傷跡。
打撲と内出血で綺麗な肌が濁っている。
それでもなお、綺麗なものではあるのだが。
しかしハナビは別のことにも注意を向けていた。
「血は出てない…じゃああの血はやっぱりセリオンの…」
いくら異常な強さを持つとはいえセリオンは生身の人間。そのことは以前会った時も言っていた。
だからあの出血量ではおそらく長くはない。魔法は使えないし王都内で治療したらすぐにバレるだろうから…大怪我をした本人の前で思うのは少々申し訳ないが、少し心配ではあった
「…ただセリオンより今は砕華だね。じっとしてて」
掌を当てて闘気を集中させていく。
神聖魔法のように瞬時に傷を塞ぐことは不可能。気功はあくまで回復力の促進。
傷で乱れた気の流れを外部から強引に修正し、筋肉や内臓などを強化していくのが目的だ。
強い生命力を持つ砕華なら軽い傷はすぐに治るだろう
ただ時間がかかる場所はどうしても時間かかる そこまで便利ではない。
「腕もはめ直すね 痛みは今は麻痺してるけど、落ち着くまでは無理に動かしちゃダメだよ」
骨折ならともかく脱臼なら格闘家であるハナビには簡単に直せる。治療の際激しい痛みを伴うが、痛み止めの点穴をついてるので、ゴキっという鈍い音と違和感は感じるかもしれないが、痛み自体は軽いもの。
砕華の腕を取って折れてないか確認し、関節をはめ直す。
■砕華 > 「……セリオン?」
(砕華は、ハナビがつぶやいた名前を、そのまま耳に入れた。
襲撃してきたあの女は、たしかセリオンと名乗っていた。
快楽を提示するものだったか、其のあたりはうろ覚えだが、確かそんな感じだった。
其の名前が、ハナビから出てくるのは、少し予想外だったが、少し考えれば分かる。
セリオンは、『自分が死ぬかもしれないという少女』のことを言っていた。
ハナビも、確か同じ余蘊台詞を言っていた、気がする。
つまり、ハナビとセリオンは、つながっているとみるほうが、妥当ではないだろうか、と。
何より、自分への仕打ちはどこか、復讐のような印象も受けた。
もしかして、という心構えもある。
そういえば、口止めもしていなかったな、と。)
「………んっ!」
(体の中で、『ガゴンッ』という音が響く。
重かった肩が、突然何か、つっかえが取れたかのように軽くなり、痛みが引いていく。
痛みは、もともと鎮痛剤も使っていたおかげで、そこまで感じることはなかった。
しかし、医療をかじっている砕華、無理をしないほうがいいというのは、重々承知している。
綺麗に、外されていた肩は、格闘家であるハナビには、たやすく直せる代物だったのだろう。)
「…ハナビさん、少し聞きたいことが……。
『あの薬』のことなんですけど、もしかして…誰かに話されました?」
(あえて、名前を出すことはなかった。
そもそも、ハナビがこんなにも、普通に話せていることが、少し不思議だった。
後遺症で、酷い頭痛に襲われているはずなのに。)
■ハナビ > 上手く関節が入ったようだ。
確かな感触が腕に残り、後は癖がつかないように包帯で固定すれば少しずつ動かしても大丈夫だろう。
「え、あ、えーっと…うん 話した…」
もしかしなくてもこの惨状の責任は自分にあるのでは?と冷や汗が溢れる。
確かにセリオンと戦った後、妖狐の覚醒について聞かれた時にテンジクがトリガーの一つになってることを伝えた気がする。
ただ砕華のことは話してないので裏のルートを使っておそらく調べたのだろう。
「…ごめん セリオンとは知り合いなんだ。といっても2度戦っただけだけどね。僕の妖狐の姿を見て、酷い姿になったって言ってた」
自分にとってはどちらも大切な繋がりであり両方の肩を持つことしかできない。
妖狐と知りつつも普通に会話してくれる相手は貴重であり、大切なもので。
だから今は治療の手を止めて手を僅かに震わせていた。
怒られる、だけならまだしも憎悪を向けられたら…と思うとまともに顔をあげれなかった。
そして、三尾に覚醒した段階で薬の効果を全て飲み込んだのだろう。最初の数日は溢れる力と暴れまわる薬の副作用で苦しんだが、元々体液を全て媚薬に変えられて常にイキ続ける呪い まで受けてた身。
幸せに対する渇望こそあれど副作用に酷く魘されるほどではなかった。勿論あれば欲しいという願望はあるのだが。
■砕華 > (ハナビの答えで、ひとつの仮説が生まれた。
まず、テンジクの話を聞き、ハナビが妖狐の力を得たため、それが超人的な力を得る薬だ、と勘違いした。
しかし、裏のルートを調べると、そうではなく強力な媚薬と、強い依存性を持つもの、だと知った。
だからこそ、セリオンの興味を引き、なにが何でも手に入れようとした。
そんなところだろう、もっとも其のせいで、襲われたのはたまった物ではない。
裏のルートというのが、どこまでのものかは分からないが、シェンヤンにしか出回っていないような情報があるのだ。
今度は、もう少し注意をしなければ、鳴らないかもしれない。)
「そうですか、ならば今度、彼女に会ったときに伝えてください。
次は片腕だけでは済まさない、金5000を積んで、待っておけと。」
(今度会うときは、本気で相手にするつもりだった。
ハナビの気持ちは、分からなくはないし、ハナビを恨むことは、お門違いというものだ。
彼女は、セリオンではないのだから。
治療の手が止まっている、其のさなかに、くすとあの笑みがこぼれた。)
「私は、酷い姿だとは、思いませんでしたけれどね。
商売人として、あまり個人に肩入れするのは好ましくないのですが…。」
(素直に、普通だと思った。
あふれる力だとか、そんなものは別に気にする必要はない。
それ全部ひっくるめて、ハナビなんだから、気にすることはないのでは、と。)
「ハナビさんは、言いましたね。自分が自分でなくなり、消えていくのが怖い、と。
私はあの後、しばし考えましたが…ハナビさんは、決して消えたりしないのでは、と。
あなたの中にいる、もう一人のハナビさんのような存在、それを認めて、共存することができれば。
あなたは、消えることなく、”ハナビ”として生きられるのではないですか?」
(魔法だとか、そんなものはよく分からない。
薬屋としての砕華は、ハナビが悩んでいる其の問題は、実はたいしたものではないのでは、と。
そう、思うのだ。
ハナビは、決して死んだりしないのでは、と。)
■ハナビ > 「ごめんね…伝えておくよ」
最もあの女が素直にやられるとは思えない きっと今度も死闘になるんだろう、と心の中をよぎった。
しかし自分の知る限り、自分と砕華の二人に実質負けたことになる、あのセリオンがこのまま回復して終わり、ということはまずないな、という確信めいた不安も感じていた。
「もう一人のボク、かぁ…セリオンは妖狐になる前のボクを知ってるからそう言ってくれたのかもしれないね」
わからない。なぜなら記憶が曖昧だからだ。穴の空いたチーズのように部分部分の記憶が飛んでいる。
これが力の副作用なのか精神の分裂なのかは本人にすらわからないが、少なくとも砕華の言葉で安心感を得られた。
「ありがとう。もう一人のボク…実感したことはあまりないけどもう少し意識してみる」
治療の手を再開し、ゆっくりと気功を送りながら、窓の外を見る
気づけば大分日も傾いてきた
「砕華、そろそろ一度休もう? 寝れるくらいには痛みも引いてきたと思うから」
実際は麻酔針による入眠のようなものだが、ひとまず激痛で眠れないという域は脱しただろう
ハナビはそのまま鍼の加減をみたり急変しないか、じっとそばにいた
「…早く治るといいね ご主人様」
小さく笑いかけると、冷えないように下半身に布団をかけて、見守るのであった
■砕華 > (死闘、というものでもなかった。
ただ、実際に本気でやりあったら、死闘になるのは間違いない、と砕華も自覚していた。
彼女は強い、薬師である砕華でも、恐怖を感じられるほどに。
できれば会いたくないけれど、弁償させるまで砕華の気が、収まるはずもない。
だからこそ、次に会ったときには、本当の殺し合いになるかもしれない。)
「結果がどうであれ、薬が必要になったら、私のところに来てください。
特別価格で、ハナビさんに売ってあげますよ」
(あくまで、ハナビとは客の関係。
だけど、それ以上の何かを得られるなら、もしかしたら。
しかし、今はそんなことを考えるつもりは、まったくなかった。
ハナビがどうしたいのかを、砕華がとやかく言うつもりは、まったくないからだ。
したいように、やりたいように。
薬を作るうえでも、店をするときでも、砕華ハイツも、自分がしたいようにしか、動かないのだから。)
「…そうですね……今日は、ゆっくり休むことができそうです」
(昨日は、痛みで眠ることすらできなかった。
だけど、今ならば其の痛みもないし、眠気も十分襲ってきている。
そのまま、目を閉じれば夢の中へと、いざなわれていくことに、抵抗などするはずもない。
其の一瞬前に、ハナビの言葉が聞こえる。
其の言葉は、自分に向けられているものだが、笑みを浮かべることもなく。
まるで、死んだように。
砕華は安らかな寝息を立てて、翌日の夕方ごろまで、目覚めることはなかった。)
ご案内:「平民地区」からハナビさんが去りました。
ご案内:「平民地区」から砕華さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にソル・グラディウスさんが現れました。
■ソル・グラディウス > 太陽が沈み、街灯が暗闇を照らし始める時刻。
まだ騒がしい通りに人混みに紛れて一人の青年が歩いていた。
「ふっふふ~んふっふ~んふふんふんふ~ん♪」
鼻歌を歌いながら、ご機嫌な様子でフラフラと歩く黒づくめの男性。
その手には酒のボトルを持っており、顔もわずかに赤くなっていた。
フラフラと覚束ない足取りだが、不思議と人とはぶつからず、器用に避けて通りを歩いていく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシンシアさんが現れました。
■シンシア > いつもより早い時間の帰り道
人の行き交うなかをフラフラ器用に歩く黒い人影
なんだか見覚えのあるシルエットに
彼より後方で気ふけば、なにか企むように笑が浮かぶ
足音を立てないように早足で近づいて
その腰あたりに…両手でつかもうと手を伸ばして
「おにーちゃん、フラフラ歩いてどーしたの?」
なにやら近づいたときに聞こえた鼻歌、ご機嫌なのか酔ってるのか
だから、ちょっとふざけながら声をかけてみた
■ソル・グラディウス > 「ん~~?」
フラフラと歩いていて、ベンチにでも寄ろうかと思っていたとき
後ろから腰を両手で掴まれ、声を掛けられた。
そちらを振り向けば、酒のせいで赤くなった顔で声の主を見据える。
「おぉ~~シンシアちゃん!元気ぃ~?」
そちらを振り返り、驚いた様子でブロンドの彼女を視認する。
揶揄うように使われた呼称を気にした様子はなく、むしろ受け入れた様子でそう返す。
彼女の方を振り返れば抱き着いてやろうと背に手を伸ばす。
大きく、温かい体が彼女を包もうとするが口元はやはり酒臭い。
また、抱き着くついでに頭を撫でようと頭へ手を伸ばした。
■シンシア > 「……うあ、すごいお酒の匂い」
話すだけで臭う、眉をよせるけど本気で嫌がってるつもりはなく
振り返ってきたと思えば抱きつかれる
身長差で支えきれるか不安なりながらも倒れないように
支えるように抱きつかれて
「ちょっと…重い……なんで、こんな酔っ払い?大丈夫?」
頭を撫でられる、やや羽交い締めみたいになりながらも抵抗しきれず、されるがままに
■ソル・グラディウス > 「うあとは何だうあとは!お酒を飲むとこーゆう匂いになっちゃうんだよぉ…」
半ば支えるようにしている彼女から離れればそう返す。
真っ赤な顔で彼女を指さすその男性は、彼女が実の兄のように尊敬していた人物とは正反対な雰囲気を醸し出しているだろう。
子供っぽい口調でそう告げた後、自分の息の匂いを確認する。
「…たまに、思いっきり酔っ払いたい時があるんだよ。大丈夫。面倒ごとには巻き込まれねぇさ」
そう言いつつ、またボトルを一口飲めばベンチを目指す。
そこで話をしようと彼女の手を引こうとする。
■シンシア > 「ベンチでいいの?どこか休めるとこいく?…きゃぁ」
ベンチへと脚を進める、手を引かれてバランスを崩しその距離が近い位置で座ることに
「なにか嫌なことでもあった?やけ酒?」
兄のはずが、その面影もなくショックよりも心配するように隣から覗き込むように伺い
外気に冷えてる手で彼の頬、額に触れようと伸ばして
■ソル・グラディウス > 「ベンチでいいの、ベンチでさぁ~」
背もたれに寄りかかり、赤い顔を彼女へ向けそう返す。
酒瓶を持ち上げ、「飲む?」と一言掛けてみる。
「いや、むしろ祝い酒だな。…最近、嫌な事があったんだがそれの解決の目途が立ったのよ」
心配そうに覗き込む彼女へそう返して、また一口、酒を口に含ませる。
冷えている手は彼の頬に当たれば、その温かさで冷たさを遠ざけるだろう。
意外そうにその行為を見たが、次の瞬間、彼女の手を取って自分の大きな手でそれを温めようとする。
大きく、厚い手が彼女の手を繫ぎ、その温かい体温で包む込む。
■シンシア > 「祝い酒?…いいことがあったなら、よかった」
嬉しくて酔ってるのなら、まあいいか、と自己納得
手に触れたはずの頬の暖かさ、手を繋がれて包まれるように握られて
引くに引けず…
飲む?との言葉に祝い酒と聞けば、付き合う程度に「1口だけ」と返すけど
ここにグラスはなく、どう飲もうかと…
「酔ってるから?こんなに手が暖かいの…」
■ソル・グラディウス > 「いやいや、いい事はこれから起こるんだよ。ほら、果報は寝て待てって奴?」
人差し指を立て、そう返す。
いい事がこれから起こるので、その祝い酒を飲んでいるという奇妙な状況。
酔いのせいか後半のことわざの意味も全く違うものとなっていた。
「…んなもん、グイッと直接のんじゃえよぉ」
1口だけと返したものの、どのように飲もうか考えている彼女へそう言いつつ、ボトルを渡す。
今更、間接キスごときで恥ずかしがることはないと言いながら背中を擦る。
しかし。水割りも何もしてない酒であるため、彼女にとってはとても強く感じられるだろう。
「多分、それもあるけど…恐らく、剣の恩恵だな」
暖かい掌の正体を告げる。
剣の恩恵のお陰で体は常に一定以上の体温を保っており、極寒の雪山に放り出されたとしても風邪すら引かないらしい。