2016/10/13 のログ
砕華 > (あれから、主人がここへ尋ねてくることは、なかった。
決まってここへ来るのは、メイドのうちの誰かか、このシチュー。
主人がここへ、尋ねてくるのは、本当に極々稀な事なのだろう。

しかし、それだけの財力を持ち合わせている、という事は、雰囲気からして、上流階級なのは、間違いない。
複雑な事情のある薬を、いつも依頼されていることもあり、少しだけ職業には、興味を持っていた。
しかしそこは、商人と客という間柄、聴くことは御法度。
関係者から話をふってくることがない限り、砕華はその話を、決してしようとはしていない。)

「シチューさん、最初は誰でも、失敗すると思います。私も、今でも失敗することが、時々あります。
ですが、だからといって、次に失敗しないようにと、気負いすぎてもいけない。
シチューさんの、えっと……この国の言葉で言う、『たいみんぐ』というものが、大事なんだと思いますよ。」

(マグ・メールに来て、まだ日が浅いゆえか、この国の言葉、どこかたどたどしくなってしまう。
シュンと、落ち込んでいるシチューの前に、白く、ふわふわした丸いもの。中身に、甘く煮詰めた小豆を詰め込んで。
大玉の『オマンジュウ』を二つと、ヤカンで沸かした湯を、ポットに注いで、軽くかき混ぜる。
小さいカップを、おまんじゅうの隣に置き、ゆっくりと注ぐと、琥珀色の液体が、すぐにカップを満たす。
立ち上る湯気と、香り立つ茶葉の香りが、シチューの鼻腔を擽った。

砕華は、シチューの前に座り、羊皮紙をもう一度眺めた。
先ほどの毒草のほかに、神経に作用し、麻痺を引き起こす毒草も、記載されている。
だが、それと同時に、傷薬でも用いられる、ツツミ草や、鎮痛の効果を起こす、カジダ草の表記もあった。
薬になる草と、毒になる草が、同時に記載されているのは、少し不思議ではあった。)

(たどたどしくも、シチューは主人が薬を欲している経緯と、職業を明かしてくれた。
人々を助ける、といえば非常に格好はいい、けれどそれは、簡単なことではなかった。
薬を扱うため、衣料を少しだけでも、かじっている砕華ですら、その難しさは、容易に想像ができた。
同時に、シチューが主人に対し、敬愛の念を強く抱いていることを、とてもよく理解した。

脳に傷を受ければ、人は簡単に死んでしまう。
死ぬ、といっても、生きたまま死ぬという、ある種もっとも残酷な死に方で。
それを何とかしたい、と言う理由なら、砕華も、薬を作らないという選択肢は、もはや無かった。)

「…いえ、とてもよく理解しました。
そうですね…、ガヅマル草とシタダ草はともかく、ツツミ草とカジダ草は在庫があります。
そのほかの物をそろえて、粉末にするとして…明日の夕方には、納品できると思いますよ。」

(砕華は、羊皮紙に記載されている薬草、毒草の粉末を作成する時間、頭の中で逆算した。
採取、乾燥、製薬の過程を考えると、採取さえ出来れば、1日あれば全て揃えられると、シチューに伝えた。
にこやかに、開いているのかいないのか、分からないような視線を送って。)

シチュー > (私情と商売の間にきっちり線引をする彼女にはある種の安心感を覚えているが、ミレー族は思春期を迎えようというところ。自意識だけが過剰になっているのやも。)

「お屋敷に入ってきて一番最初に教わった事が出来なくって……。うまくいってると思ってたのにさ。……でも、えへへ。ありがと。砕華、ありがと。話したらちょっと楽になったかも。」

(たいみんぐ、の発音はまるで外来人が習ったばかりの単語を母国のイントネーションで話しているみたいで。何事も冷静に丁寧にこなす和装の店主のイメージとのギャップが生まれ、それがなんだか、言うなら可愛らしく思えた。それも手伝って、ふっと息吐くと機嫌良さげに尻尾を揺らす。――目の前におまんじゅう!それはそれはダンジョン奥深くに眠る宝物を見つけたような表情と「わああ……美味しそう!」という歓声を浮かべ。思わず涎が落ちそうになるが。……まずは、お使いである商談が先である。ケモミミをピクピクさせて我慢我慢。羊皮紙を改める彼女の前でお預け状態。――ミレーの集落から出てきてそう長く経っていない。ろくな教育も受けていない。むしろ奴隷になってからちゃんとした教育を受けているから……それに、一度逃走という粗相をした己を受け入れてくれた主人のためにも、どうにか都合をつけてもらいたくて。それに、ただのマッドサイエンティストの小間使いように思われたくなかったのだ。砕華に。)

「ほんと!ほんと!?良かった!――それじゃあ、その通りでよろしくお願い。支払いは、約束手形を渡しておくね。明日の夕方にお屋敷の人がお金持ってくるから、品物と交換だよ。」

(無理を言うお願いでもあったのだろうに、頭の中で素早く計算を済ませた相手に向かって。腰を浮かせて喜んだ。そのあと、ほっと胸をなでおろしたように椅子へ腰をかけて。はっ、と気づいた香り立つ茶葉の香り。伺うように、彼女の優しげな瞳を見上げる)

「商談成立で……いいかな?いいかな?頂きますしていい?」

砕華 > (商談の際に、ヤキモキする様な眼で、砕華を見ていたシチュー。
それがおかしくて、可愛くて。そのときはついつい、袖で口を隠して、肩を震わせていた。)

「そういうときは、上手に出来てるか、他の人に聴いてみると、いいと思いますよ。
自分では解らないことも、他の人なら、解るかも知れませんから。」

(砕華はあくまで、経験談で語っていた。
失敗をしてしまったとき、上手くできているかわからなかったとき。
そのときにはいつも、老師が厳しく、時に優しく、教えてくれた。

シチューにも、そんな存在がいるはず。
その人に教えを請い、一歩ずつ、進んでいけばいい。
開いているのかいないのか、よく分からない細目の向こう側に、優しい光が見えた。)

(マッドサイエンティスト、ひいては悪徳薬剤師。
そのようなイメージを、砕華はシチューの主人に対して、そんなイメージを植え付けられていた。
職業は聴かなかった、だがそれは、個人の勝手な妄想で、人物像を描かせる。
無理を言われているという、自覚は無かった。
しかし、頼まれる薬草や薬は、どれも一般人では、入手が困難なものばかり。
砕華ですら、扱うことは少ないものもあった。
それを頼んでくる、上流階級。まことに勝手ながら、国崩しを企んでいるのでは、と勘繰ってしまったこともある。
やはり、個人の情報はある程度、耳に入れておかなければいけない。
砕華は、腰を浮かせて喜び、安心したように椅子に座りなおすシチューに、気づかれないように、苦笑で顔をゆがめた。)

「はい、商談成立です。…約束手形のほうには、金額を書いておけばいいのでしょうか?」

(全ての約束を揃えると、金額にして、金300といったところだろうか。
ツツミ草や、カジダ草は、現在裏庭で育成している途中なので、在庫には事欠かない。
だが、ガヅマル草とシタダ草は、普段扱わない毒草であり、必要なときにだけ、山へと採りに行く。
だから、明日は一日、店を開けることになるので、その手間賃を考慮し、少し高く設定していた。

砕華の一言が、シチューの「待て」を解除する。
おまんじゅうが二つ、早く食べろとでも言わんばかりに、シチューの食欲をそそった。
その傍らに、湯気の立つ薫り高いお茶を、そっと指先で押して、シチューに差し出す。)

シチュー > 「うん、次からそうしてみるね。――もしかしたら、メイド長も聞いて欲しかったのかも。僕、うまくいってるって勘違いしてそっけなくしてたかも……。」

(開いているのかどうかわからない、と他の人は評価するのかもしれないけれども。自分にとって彼女の瞳はいつだって優しげな色を浮かべているように見える。きっと、相手に厳しく優しく愛情をもって教えてくれた老師が、かつて彼女に浮かべたような優しげな色だ。)

(奴隷を連れる貴族が研究魔術なんて、おそらくは彼女のイメージも無理は無い。誤解されたままでもおそらくはビジネスライク的に不都合は無かっただろう。冷徹な取引に徹するなら。相手は帝国への脅威を推し量ろうとする意味で個人的な情報を耳に入れようと思っているのかもしれないけれども。今回は、取引の都合上仕方がない話題だったけれども。ミレー族個人としては……ただ単に、彼女と親しくありたいと思う側面のほうが強かった。そんな思いも、裏の顔を持つ相手にとっては苦笑に付されてしまうかもしれない。)

「うん!――好きなだけかいちゃっていいよ!僕のご主人さま、とってもお金持ってるから」

(メイド長が横にいたら怒られるよな事を、なぜかテンション高く告げて。懐からこそこそと革をなめした上質の紙を取り出した。貴族の家の紋入りの署名が入って、納金を保証するもの。不渡り発生率ゼロのしるしだ。)

「わーい!いただきます!……あむっ……はぐっ――んー!んー!甘いよ!おいし!……幸せ……!」

(ハッハッハッ、と犬が涎垂らして尻尾振ってるかのようにマテをしていたミレー族。白い皮にむしゃぶりつき、小豆を頬張り。むにー、と満足げに口端緩ませ、ついでに目尻を緩ませた。お茶を飲み。薬の専門家らしく、上質な茶葉によって溶け出した旨味が喉を潤してはただ幸せそうにケモミミを寝かし)

砕華 > 「それは、どうでしょうか?
もしかしたら、シチューさんが、あまりに嬉しそうに、できた、と誇らしく言うから、言う機会を逃してしまっているのかも。」

(砕華はその、シチューの感じているような、優しい瞳でもって、諭していく。
それがもし、メイド長の望みであれば、砕華もにこやかに、「よかったですね」と、彼女を嗜めるだろう。
かつて、老師がそうしてくれたように、砕華もまた、シチューの頭をそっと撫でた。)

(――――邪悪なことを言うならば、砕華は、シチューを利用することも出来る。
彼女と、親しくなることによって、貴族の力を調査し、それを帝国に送り、戦時に有利に働かせることも出来る。
だが、あくまで砕華は、今はただの薬屋として、接している。

そもそも、裏の顔の砕華――区別をつけるために、あえて『ソイファ』と銘打とう。
ソイファは、帝国の依頼によって、スパイ活動を請け負う”こともある”。
しかし、その瞳の奥にある本当の色、冷たい殺意が向けられるのは、依頼を受けた際のみ。
普段、開いているのかわからないような、細眼の奥に隠している殺意は、決して薬屋の”砕華”のときは、表には出ない。
親しくなりたいと、通いつめている神獣族のシチューに向けられることは、おそらくはないだろう。
そう――――ないのだ。)

「好きなだけ…とはすこし、強欲が過ぎますね…。
うふふ、じゃあ”シチューさんを1週間貸してください”、とでも書いておきましょうか。」

(商談が成立してしまえば、その話はもう、終わった話として語られることは無い。
にこやかに、シチューに向けて、そんな冗談を交しながら、筆と墨を取り出した。
墨を磨り、受け取った、上質な皮なめしの紙の上に、薬代として”300G”と書き込み、袖の中にそっとしまう。

明日、金銭を持ち、薬草の粉末を受け取りに来た物に、この紙を見せれば、金銭を受け取れる。
数回、取引として繰り返した作業を、また明日も繰り返すだけ。
それなのに、砕華の心は、いつものように、どこか弾んでいるようだった。)

「祖国の両親から、送られてきたんです。…甘くて美味しいので、ついつい作りすぎてしまって…。
あまり物が、食べられないので、最近はお隣さんにも、おすそ分けしてるんです。
ああ、でもお茶だけは、いつも私と商談相手にしか、出さないんですよ。」

(おいしい、おいしいと幸せそうに食べてくれるシチューを見てると、砕華も嬉しそうに笑う。
袖で口を隠し、すこしだけ肩を震わせ、そしてカップに、新しくお茶を注ぐ。
温かいそのお茶は芯まで、体を温めてくれる。少し苦味があるが、逸れに負けないくらい、優しい甘味のあるお茶だった。)

シチュー > 「どうかな。そうかな……。僕のメイド長はさ、すっごく無口なんだ。必要な事以外は何も喋らないよ。だから冷たい人かと思うでしょう?でも違うんだよ。下手したらすごい怒る分、上手くしたらすごく褒めてくれるんだ。……でも、やっぱり何も喋らない人だからさ。名前も知らないんだ。」

(細くしなやかな、緑とおくすりの良い香りがする指が自分の黒髪を撫で、それは嬉しそうに瞳を細くしてケモミミをぴこんぴこん揺らし。聞かれてもいないのに、自分の上司たる人物の自慢を始めてしまう。幼げゆえに、貴族の情報の一部をだだ漏れさせている事に気づかない。――そして、もしかしたら自分が利用されて主を巻き込んでしまうかもしれない、そんな危うげな関係を相手と持ってしまう危険にもやはり気づいていない。今のところはその可能性は低いと思われるが。それをミレー族が知ればどれほどショックだろう。)

(ソイファの長刀の腕についても、まだ知る由もなかった。ミレー族が知るのは温和な、深い知識を持つ和装のお姉さんという象だけ。それは確かに彼女の1面だけ、砕華だけ知っている状態だけれど、シチューにとっては十分だった。ソイファとしての面は、出来たら知らないままが良い。その関係のほうが好きだった。)

「えー?あはは!それじゃ一週間ここに住み込みだね!砕華のおしごと、いっぱい手伝うよ。夜も一緒におやすみする!」

(軽口に声音を高くすると、同じ口調で冗談みたいにして返したが、叶うといいなという希望も含んでいる。金銭も含む取引がひとまず終わったら、メイドらしくきちんと椅子に座り直して膝の上に手を置いて頭を下げる。そういう躾を受けていた。)

「へええー。砕華のお父さんお母さんって優しいんだね。砕華の国ってどんな場所なのかな。――おすそ分けしてるんだ。じゃあこのあたりのお隣さんはみんな幸せだね!僕と一緒!」

(新しいお茶が注がれたら、そっと香りを鼻先を揺らして楽しむのだ。彼女の商談相手にのみ許された、特別なお茶なのだから。厳しさとほの甘さの混じった、淹れてくれた店主のようなお茶をそっと口づけして。)

「ふあ……おなかがあったまって少し眠くなってきたかも……そろそろ、お屋敷に戻らなきゃ。」

(お腹が膨れたら眠くなるような。正直な身体をしているミレー族は夢見心地で小さく欠伸を漏らし。――おまんじゅうとお茶のお礼を丁寧に告げてから、1階に戻ろうとする。別れ際に笑顔で「また来るから!」と告げれば屋敷への夕日の暮れる帰路へつき――)

砕華 > 「そうですか、では、まず名前を知るところから、初めてはどうでしょうか?
冷たい人では、無いみたいですし、名前を教えてもらって、いろいろと教わるといいでしょう。」

(砕華の手は、それはきっと、薬草の臭いが、こびり付いている事だろう。
店番をしているときも、寝るまでの間も、いつも薬を磨っている故に、その手にはいくつ物、薬草のにおいが染み付いてる。
その臭いが、嫌いだというものもいれば、好きだというものもいる。
シチューは、後者であるらしい。撫でれば撫でるほど、嬉しそうに耳が動く。
まだなにも、世間の闇の部分を知らない、そんなお子様のようなシチュー。
ソイファはともかく、砕華はそんな良好な関係を、続けたいと願うのもまた、事実であった。
依頼がない以上、貴族と一戦交えることも、彼女との関係を、壊すことも無い。
薄い氷の膜のような、危うげな関係だが、それが長く続くという事は、彼女との関係も、主との関係も。
全て、砕華の一面だけで、事足りる関係だった。)

「うふふ、もしかしたら、シチューさんをそのまま、引き取ってしまうかも知れませんよ?」

(冗談が、まるで冗談のような希望で、帰ってくる。
金銭を含め、全ての商談が終えれば、子供らしからぬ、恭しい例を一つ、シチューは行った。
逸れにつられ、砕華も一礼を返し、お茶が出きってしまったポットを、流し台へとしまった。
中に残っている茶葉を取り出し、それを三脚台の上に乗せた、皿の上へと落とす。
乾燥させ、これを固めて燃やすと、お茶の香りを楽しめる、お香としても使える。
睡眠時に炊いて置くと、本当にぐっすりと眠れる。砕華が、あまり疲れを見せない理由が、これだった。)

(口付けし、少しずつ口に含んで、お茶を楽しむ。
それもまた、しつけられたものならば、シチューは本当に、よく躾られている。
おまんじゅうも、食べきってしまえば、その跡にやってくる睡魔にも、彼女は順応に従った。
くす、と袖で口を隠し、笑みを浮かべると、ゆっくり立ち上がる。
商談も住み、雑談も終われば、彼女は屋敷へと帰っていくのだろう。
砕華も、夕方が過ぎれば、店仕舞いを始めなければならない。)

「ええ、またお越しください。次も何か、甘いものを用意しておきますね。」

(笑顔で、手を振りながら夕暮れに消えていく、神獣族を見送り。
砕華は、店先に吊るしてある暖簾を外し、ゆっくりと、その扉を閉めていった。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から砕華さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にネネさんが現れました。
ネネ > 陽が落ちて、街灯のあかりが灯る通り。
街灯の下に置かれたベンチに腰を下ろし
脚を揺らしながら、通りを歩いていく人を眺めてる

時々、歩く人と目があうけど声をかけられることなく

頭上の月や、足元のレンガとかに視線をむける
昼間よりも人気の減ってる通り、店じまいをしてる場所もあったり
まだ明かりのついてるお店もあったり

ネネ > ベンチから立ち上がり、思い出したように
まだ明かりの灯る店先を見て歩く

「服…って、どんなのが普通なんだろう」

言葉も服も存在も変だと、特別と言われたことを思い出し
街に売られてる服なら、普通だろうか

ガラスの中のマネキンが身につけてるものや、ハンガーにかけられただけのもの
いくつかを眺めながら歩いてて

ネネ > 時間的にも夜になってるからか
開いてるお店も限られてくる

下着でも機能性よりも色気を全面に出したようなものも
堂々と置かれてる、さすがに…足早にその前は通りすぎる

小柄な娘が、夜に1人で歩いてるのを不思議がり
声をかけてくれる人もいたけど
いきなり見ず知らずの人が、近づいてきたり、声をかけてくると
誤魔化しつつ、お店の明かりの前からは小走りに避けていく

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からネネさんが去りました。