2016/09/28 のログ
■フォーク > 「騒ぎを起こすのなら、俺も負けてねえぞ。俺が港で殴られ屋をやっていたら、いろいろあって最終的に巨大帆船が一つ沈んだんだ」
いろいろの部分はかなり複雑な問題が絡んでいるので割愛する。
男は生粋の傭兵だ。トラブルがあるから飯が食える。トラブルがない所では自然と騒動を起こしてしまう体質なのだ。
お互い、自慢にならないことを自慢し合う。妙に面白くて豪放な笑い声が出た。
「隠れ家って程、立派なもんじゃないぜ。俺のねぐらさ」
ベッドで誘う少女。美少年のようにも見えるし、少女と大人の狭間にある色気が漂ってくる。
「ま、これも流れって奴だよな」
町を歩けば、こんないいこともある。男は頷きながら鎧を脱ぐ。そして粗末な上着を脱いだ。
褐色の、鍛え上げられた上半身が露になった。歴戦の傭兵らしく至る所に古傷があった。
男は水差しを片手に、少女の横たわるベッドに腰掛けた。
「よし、こい」
少女を抱き寄せようとする。
■シチュー > 「船!?船を!すごい……何それ……船に爆弾でも投げ込んだの……?というか殴られ屋っていうお仕事も激しいよ……!」
いろいろあって自然に帆船が沈む流れは普通はありえなかった。気前の良いジョークがウリな戯曲の脚本めいた彼の話に瞳輝かせる。殴られ屋、というところはなんだか納得だけいった。その名前に似合うだけ、相手の無精髭は精根たくましそうに見えたから。
「そうなんだ。でもいいなー。僕はだいたい屋根の軒下とか吹きさらしの場所で寝てるから。こういう場所が羨ましいよ」
アルコール特有の特に理由の無い多福感をそのままに、赤くなった頬のままきゃあきゃあと身体を揺すればベッドも軋ませ。無邪気な様子で相手が服を脱ぐ様子を見る。
「おおー。フォーク、むっきむきー。かっこいい傷!」
拍手をぱちぱちぱち。と。これもまた、お酒テンションがなせる業。そっと、半裸の歴戦の戦士が自分の身体を寄せるなら、にこーっと笑いながらその腕の内側に収まり。両腕を彼の太い首に絡めた。
「ふふっ。一緒に気持ちよくなろうよ。助けてくれたお礼、したげるね。……」
ケモ耳をご機嫌そうに揺らしながら。熱っぽい瞳を閉じ。そっと彼の口に己の唇を寄せる。
■フォーク > 「俺の頭が船底に穴を開けたんだ」
やはり、いろいろあったようだ。
「いつでも遊びに来ていいぜ。どうせ仕事がない時は、暇をしているんだから」
扉の鍵は閉まっているが、天窓に鍵はしていない。身軽な少女なら気軽に行き来ができるだろう。
風雨をしのぎたいなどや、暇な時に来てもらっても別に構いやしない。
それに、この部屋に貴重品などまったくないので、無くなって困るものなどない。
「お礼なんて期待していなかった……といえば、嘘になる」
少女と唇を合わせる。肉厚の舌を少女の口内に滑り込ませ、たっぷりと味わおう。
しばらく唇をむさぼり合えば、少女の衣服を脱がせていくことに。
男の股間は服の上からでも、隆起がハッキリとわかる。それほどに勃起していた。
■シチュー > 「ほんと?いいの?そんな事言っちゃうと毎週ぐらい来ちゃうけどさ。」
彼の厚意を聞けば、悪戯めいた声音が口端に乗り。相手の巨体を見上げる格好。毎週ぐらい来て何をするか、と相手に期待させるような口調もわざとらしくたててみせたり。もちろん、本音としてはいつでも部屋をあけてもらえる相手の優しさへの、嬉しさがある。
「あは。だよね……。いいよ、好きにしても。僕は何も持っていないし、お返し出来るのはこれぐらいだからさー」
明るい声音で告げれば、相手と舌を絡ませる。肉厚な舌が奥にまで入り込んで、それが乱暴に動くたびに「んっ……」とかすかに身じろぎをした。――チュニックの下にブラは無く。うっすら膨らんだ胸と小さなピンクの突起。細いへそ。ショーツの下にはぷくりと膨れた色の薄い恥丘。まわりには産毛。キスだけで敏感にも感じたらしく、少しばかり湿り気を帯びている。服ごしに大きくそそり立つ相手の男性自身の様子を見れば目を丸くして、期待に目をきらきらさせる。
「すっごい……フォークの……おっき」
さわさわ。右手を差し出して服越しにそれに触れようと。
「
■フォーク > 「いいぜ、遊びにこいよ」
少女の衣服を脱がせば、まずはじっくりと生まれたままの姿を拝む。
成長しきっていない少女独特の魅力に、股間が疼いた。
少女の手が男根に触れると、それは強く反応を示す。熱くて、固い。さらに弾力がある。
「そうかい。じゃあいずれはこれ以外でお返しができる『道』を探さなきゃな」
男は享楽的な生き方をしてはいるが、生業である傭兵を続けるための鍛錬を欠かさない。
戦場で生き延びるために、血の小便がでるような苦行を積み重ね、頭が破裂しそうな程に兵法書を読み込んでいる。
それは傭兵が男にとって生きる『道』だからだ。
この町には体を売る者はたくさんいる。それは彼らにとっての『道』なので何も言わない。
しかし少女はまだ若い。まだまだ体以外を使って稼ぐ『道』はあるのだ。
「さて、よく解しておかないとな。壊れたら大変だ」
少女をベッドに横に寝かせ、覆い被さる。
太くて無骨な指で、秘所を弄る。よく馴らしておかなければ、男根が入りきらないかもしれない。
体格差があるのだから。
「準備はできたかな」
男が下履きを脱ぐ。
褐色の肌よりも黒ずんだ男根が、苦しそうに鎌首をもたげていた。
■シチュー > 彼の男根は大きくて、たくましくて。それ自体がもうひとりの彼自身みたいだった。強くて雄々しい。お酒に酔った頬が興奮に、さらに赤くなる。娼婦の真似事ならしたことがあるから、その先端、鈴口の部分を指先で探ってさりげない刺激を与え。
「……。そんな事を言ってくれる男の人って、初めてかも。」
多くの傷を刻んだ身体、その脳裏にはどんな過去があるとは知らないけれども。どういう道を選んだのかはまだ直接聞いていないけれども。人生経験の豊かな彼から自分の将来を思う一言が寄せられたら、さっきとは少し違う笑みをそっと浮かべ。
「優しいんだね。……っ。ぁう……う……んっ……」
相手の巨躯に、すっかり身体は覆われ。影絵となった彼はとても大きく見えた。その存在感もあいまって、森奥の巨人のように。太い指にそこを弄られたら、肉芽をひくつかせて腰を小さく揺らし始める。吐息が漏れはじめ、幼裂からは水音が立ち。ふわりと雌の香が広がる。
「うん。だいじょうぶ……。乱暴にしても、いいよ……」
恥ずかしげに希望を伝えながら。苦しそうな男根を心ゆくまで楽しませたいと、潤んだ瞳で頷く。
■フォーク > 「傭兵一筋に生きてきた俺が言うのもなんだがな、自分の人生なんてこんなもの……なんてのは思わない方がいい。
お前の進む先は、お前が想像している以上に広く、長く、そして輝いている」
ミレー族とは公私を含めて何度も顔を合わしている。
連中は性格の差はあるが、誰もが心の根底に諦観じみた哀しみが漂っていた。
国の制度を変えようという気持ちはさらさらないが、考え方一つで消せる哀しみもあるのではないか、と男は考える。
「優しくはないさ。本当に優しければ、こんなことはしないもんな」
少女の秘所はすっかり女としての機能を発動させていた。指がすっかりと濡れそぼっている。
男は亀頭の先端を秘所の入り口に合わせると、少女の言うように、乱雑にねじ込もうとした。
男は男でずっと女体に飢えていたのである。吸い付くような少女の肉体を全力で貪ろうとするのであった。
「痛かったら……言えよ?」
少女と繋がったまま、抱き上げて、より深く濃厚な肉の交わりを行わんとして。
■シチュー > 「とてもそんな風には思えないよ。毎日、誰の助けも借りられないで盗人とか、男の人に誘いかけないとお腹がすいて死んでしまうから。……でも、フォークがそう言うなら、その言葉は覚えてみるよ。」
きっと彼が顔を合わせたであろうミレー族が1人と言わず口にしたような現実をぽつりと言う。しかし、道具扱いやトイレ扱い以外の道を教えてくれるなんて機会はずっと無かったゆえ。傭兵団の長の台詞は胸に響いた。
「優しくない人は、そんな事言わないもん」
ゆるりと首を振って笑いかけ。……彼にいじられてしまった秘所からは粘り気の薄い、女の汁が溢れて彼の指先とベッドを湿らせる。
「入ってくっ……僕のおなかいっぱいっ……う……く……あ……あああっ!」
亀頭が割れ目をくすぐるたびに、その先を期待するように身体が熱くなる。じんわりとお腹の奥から来る衝動に肉芽が充血しはじめ。相手の巨根が強く押し込められ、初々しさと硬さを保ったままのミレー族の子宮の形がぐにゃりと変わった。不釣り合いなサイズ故に媚肉はつよくつよく、相手の男性自身にしゃぶりつく。
「ふぁ……はぁ……うん。ちゃんと言うからっ……」
肩を軽く上下させながら、おねだりをするみたいに。上ずった声を漏らし。抱き上げられる体勢にうつる間にも、相手の男根の形に膨らむ下腹部の疼きに腿をひきつらせる。
■フォーク > 「あくまで俺の勘によるものだけどな。でも俺の勘はただの経験じゃなく、知識に基づいている。覚えていて損は無い」
にこりと微笑む。いささか、いかつい笑顔になったか。
「……さすがに」
少女の肉が、男の肉を激しく求めてきた。
肉欲が強いのはお互い様だが、少女は寂しさを覚えているのだろうか。離さないようにしっかりと男根を締め付けていく。
ならば、こちらも遠慮はしない。
小柄な少女の尻を抱えれば、ベッドから降りた。
そうすれば、少女の重みでさらに結合は深くなる。いわゆる駅弁スタイルに移行したのだ。
柔らかな尻を捻らせると、男根は膣内で強く捻れて、肉の壁を強烈に擦りあげる。
濡れた肉がぶつかり合う音が、小さな部屋に響いた。
隣の部屋に聞こえるかもしれないが、そんなことを気にする性格ではない。
今はただ、少女の体内にたっぷりと精を吐き出したくてたまらないのだ。
男にとっても久方ぶりの女体。しかもかなり上質の女体だ。心臓の鼓動がさらに高まる。
いつしか、男の絶頂が近づいてきた。
「……出るぞ」
少女の耳元で低く囁く。
そして、少女の中にしたたかに精を打ち放たんとするのであった。
■シチュー > 「んっ……あっ」
大きさに驚いただけではなく。自分が求めた彼自身だ。最初にぶつかった時、そのまま取り押さえられたらミレー族は捕まり、傭兵は謝礼を受け取るという選択肢もあっただろう。でも、それをしなかった相手をたくさん温めておきたかった。お酒の勢いは、もしかしたら口実だったのかもしれない。乳幼児が母の乳房を吸うように。彼の肉棒をひだひだのひとつひとつで舐めとっていく。接合部からは後から後から愛液が泉のように広がっていき、彼と自分の腿の付け根を悩ましげに濡らしていく。ひとりぼっちの物寂しさへの、涙にも似て。
お尻を抱えられてベッドから降りれば、少し不安げな表情で相手を見上げるが。体位が変わればさらに深く深く、自分自身の真ん中にまで相手の男根を差し込まれてしまったかのように。潤む瞳を見開いて声を上げた。
「あああああっ!……にゃあっ!……にー!いぃー!」
突き上げられ、そのたび尻たぶが波打つほど揺れる。ミレー族の姿としての本能に戻ってしまったのか、ケモノのような嬌声を響かせてしまう。恥ずかしさに耳まで真っ赤になりながら、下半身を襲う、ずん、ずんと響く快感の波に指先が震える。その震えをおさえようと両腕をフォークの首に再び、こんどは強く回す。相手の胸にしがみつく事で己の薄い胸の、すでに硬く尖った胸先を押し当てる格好となり。絡ませた両足もたくましい腰を片時も離そうとはしない。
「にゃっ!ああっ…あっ……うんっ……いいよっ……んっ……ぜんぶ……ちょうだい……にゃあああああああっ!!」
声も絶え絶えに答えを返せば、もう自分の中でも絶頂が近い事は、彼にくいこみそうなほどの両手の指で相手も知るだろう。そして、ミレー族を味わう肉棒にも。ぎゅうううううっ、と膣内は縮まり。相手の欲望を最後の1滴まで満足させようとねだった。
■フォーク > (女の体というのは、不思議なものだな)
男は女を抱くと、いつもそう思う。
体格は圧倒的にこちらが上なのだが、行為をしていく内に、相手に全力で甘えてしまっている。
男根を挿入しているということは、逆に言えば相手に握られているのと同義だ。
だから、男は女には勝てないのだろうなと考える。
「……ん」
低いうめき声が漏れた。
脳の随から大量の快楽が生まれる。
同時に、あふれんばかりの精を少女に叩きつけた。
それほど、出していなかったのである。
射精を終えてからも、少女の肉からは離れようともせず、結合のままベッドに腰掛けた。
「いろいろあるだろうが、今日は一日、俺に付き合え」
むふぅ、と鼻息荒く頼むのであった。
そしてそのまま二回戦、三回戦と挑むことになるのである。
こんな出会いがあっても、いい。
■シチュー > 行為の事を女は男を捕らえる、なんて表現をする書道家もいるほどに。しがみついているのに、もしかしたらしがみつかれているのかもしれない。けれどミレー族にとっては、あくまでも。彼の手のうちで身を縮めているつもりで。
「……!!……!」
その瞬間、口から声にならない声を叫び。幾度も幾度も収縮を繰り返して白濁を飲み干していく。身体じゅう、熱をもったまま大きく肩を上下させ。泣きそうな瞳で相手にしがみついたまま。ベッドに戻っての一言に。言葉の前に、首を伸ばしてキスをする。
「うん……。今日はずっとここにいる。」
少なくとも、今日は。願うなら、またいつでも。
口づけを終えたらにっこり笑って。2人はお互いの身体を沈めていく。出会いは唐突だったけれど、楽しい一夜が朝まで続いていく――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフォークさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に砕華さんが現れました。
■砕華 > (王都とよばれる都、マグ・メール。
何人もの人間が行きかい、その中には神獣族の姿もチラホラと見受けられる。
忙しなく歩く人々の姿は老若男女問わず、どこかよそよそしい雰囲気を感じていた。
馬車から見る景色も、祖国に比べたらなんだかよどんでいるように見える。
キモノと自身が呼んでいる民族衣装に身を包み、背中には長刀を一本背負って。
手には大きな大きな布の塊を抱え込み、馬車の後方で流れていく景色を、開いているのかいないのか。
狐のような細目で見る、若そうな女はぼそりと一つ、誰にも聞こえないような声で呟いた)
「なるほど、ここがマグ・メールなのね……。
やはり遠い……いえ、組合から提示された道筋がおかしいというべきなのかしら…。」
(人が聞いたら、何のことはない、ただの独り言だ。
しかし、その言葉を呟いた女としては、その独り言は誰に言うでもない、ただの愚痴である。
本来は海路であっさりと、この地に着く手はずだった。
しかし、組合から出された旅路は陸路、それも馬車を乗り継ぎ乗り継ぎ、わざわざ遠回りをして。
何の意図があったのか、と砕華(ソイファ)は考えた。馬車に揺られながら、幾日も。
しかし、その答えはひとつしか思い浮かばなかった。――――節約、である。
なんともけち臭い組合だと罵ろうかとも思ったが、肝心の相手が目の前にいないのでは、話にならない。
だから女は、せめて誰にも聞こえない、誰かにいう事もない愚痴として、虚空に吐き出した。)
■砕華 > (節約したい気持ちはわからなくはない。しかし、旅費を削るのはいかがなものかと思う。
これから、マグ・メールで薬屋を経営しようとしているのだから、その建前金くらい用意してもいいものだ。
しかし、出立する前に組合から出されたのは、使っていた薬剤道具一式程度と、この金のかからない陸路だけ。
その他、身の回りのものを持ち出すための道具を用意してくれるわけでもなければ、出店のための費用すらもない。
完全にはじめから、何もかも自分でやれといっているような送り出しに、砕華は深い深いため息をついた。)
「しばらくは露店で頑張るしかないね…、とっても可哀想な私…。」
(幸い、知り合いの話では、このマグ・メールでは薬はよく売れるらしい。
風邪薬から傷薬、はたまた栄養剤から胃薬、勢力増強剤まで幅広く、庶民にも上流階級にも。
かかえている大きな布の塊を、よっこいしょと抱え直してもう一度、馬車の後ろで流れていく景色を眺めた。
石畳の道など、祖国では見たことなどなかったから、少しは珍しかった。
その石畳の上を歩いている、庶民の姿は砕華とはかけ離れているのを見ると、ああ、異国なんだなとしみじみ感じてしまう。
そして、自分の服装をみる。
目立つどころではすまない服装、道を歩くだけでも声をかけられそうだ、主に珍しさから。
更に、背中に背負っている長刀も、かなり異質な雰囲気を出している。
馬車から降りたとたんから向けられる、好奇な目を覚悟しながら、馬車の停留所に止まるまで、しばらく顔を伏せた。)
「…………………眠い。」
(ここ数日間、馬車に揺られっぱなしだった。更に、馬車が止まった場所での野営でも満足に眠れるはずもない。
毎日、狼や獣の声に悩まされて、すっかりと寝不足に陥っていた。その証拠に、眼の下には大きなクマが出来ている。)
■砕華 > (まず最優先にするべきことは、宿の確保だと動かない頭で考える。
安宿なら、何とか素泊まりくらいは出来る金は確保してあるし、万が一の場合は身につけているものを質に出す。
眠気眼で、知らない異国を歩き回れるほどの度胸は、砕華には備わっていなかった。
必要とあればするかもしれない、しかし、その必要なときは絶対に今ではない。
眠い眠いとぼやく頭でも、それくらいのことは、はっきりとわかってくれるらしかった。)
「……………………すぅ…。」
(街に入ってどれくらい馬車で揺られていたのだろうか、いつしか砕華からは安らかな寝息が聞こえていた。
かくん、かくんと舟をこぎ、それでも大事そうに抱えている荷物は離さない。
離さない、というよりも、枕代わりにして眠っているというほうが、正しいかもしれない。
ガタン!と大きく馬車が揺れて、うっすらと眼を明けても、そのまま頭が荷物の中に沈む。
それを繰り返しながら、ようやく馬車が目的の停留所についたときには、砕華は完全に横になっていた。
安らかな寝息に、安らかな寝顔。思わず、ごくりと起こしに来た御者の生唾を飲み込む音が、既に誰もいない馬車の中に響いた。)
『……もしもし、お客さん。終着点ですよ。』
(意を決して、御者が砕華の肩を揺さぶった。
「んんぅ……」と、少し呻いた後に砕華が目を覚まし、眼を擦って、そのまま大きなあくびを一回。
ぼんやりとした、開いているのか解らないほどの細目で御者を見つめるその顔。少しだけ、乱れている黒髪。)
「……ああ、着いたんですか…。ご苦労様でした…。」
(少しずつ、意識がはっきりとしてきたのか、両手で荷物を抱えて、馬車から降りていく。
出立したときは、まだ朝日も昇っていなかったのに、既にその朝日も夕暮れに変わっていた。)
■砕華 > (馬車から降りて、すぐに眼に入ったのは、祖国とは違う建物のつくりだった。
少し地面を掘り下げて、そこに漆喰で積み立てた壁を置き、最後に瓦葺の屋根を敷く。
そんな、簡素なつくりであった祖国の家作りとは違い、煉瓦を積み立てて造られた家に、砕華はまず度肝を抜かれた。
それこそ、馬車の中で、ずっと燻っていた眠気が吹き飛んでしまうほどには。)
「あらぁ……国が違えば文化も違う、そんなことは知っているつもりだったけれど…これは。」
(石造りの家なんか、生まれて24年、見たこともなかった。
少し歩くだけで、かつんかつんと、地面が砂利とは違った音を立てることも、斬新だった。
始めてきた異国の地、見たこともない家作り、見慣れた風景とはまったく異なる場所。
それが余計に、砕華の心を奮い立たせていた。
背筋が、悪寒とは違うもので、ゾクゾクと震える。
自然と顔がにやけて、これから始まる新しい国での、新しい生活に、心が躍る。
寝る場所を探すことも忘れて、足を弾ませて、スキップをしながら石畳を慣らして歩く。
ただ、足音が違うというだけで、歩くという行為がそれ以上ないくらいに、楽しいものに変わっていた。)
「あっ、いけない……遊びに来たんじゃないんだから。
えーっと……最初に何をするべきだったんだっけ…。」
(観光に来ただけなら、このままどこまでも、それこそ街を端から端までスキップをしながら、歩いたかもしれない。
だけども、マグ・メールには遊びに来たわけじゃない、商売をしに来たんだから、喜んでばかりもいられない。
祖国で、共に薬屋を営んでいた老人から、どうすればいいかを事細かに記されたメモを、大きな塊の中から取り出して、じっくりと見る)
■砕華 > (メモには、こう書かれていた。”まず、商人ギルドという場所を尋ねろ”。
そして、続いてこう書かれていた。”今まで教えてきたことを、遺憾なく発揮せよ”。
前者のことは、アドバイスだけれど、後者はそれというよりも、気心のようなものだった。
今までやってきたことを、そのままやればいい。旅立つときに、老人から教えてもらった言葉だ。
砕華は、そのメモを見るなり、にやけていた顔を引き締めて、そしてふっと微笑んだ。
立ち止まってしまい、通行人の邪魔になっているが、そんなことを気遣う余裕は、今はない。)
「老師…、ありがとうございます。このソイファ、見事成就して見せます。」
(ここにはいないはずなのに、目の前にいるような気がした。それが、とても心強かった。
このメモは、店を開いたとしても、大事に大事にとっておこう、砕華はそう、心に決めた。
再び、かつんかつんと、石畳を踏みしめながら歩くその足は、さっきよりも軽やかに。)
「さて、それじゃあまずは、商人ギルドというところを、目指せばいいね。
ここに登録すれば、ちゃんとお店が開けるみたいだし。」
(目指すは、マグ・メールの商人組合。こっちではギルドというか。
そこへ向けて、砕華は新しい生活の第一歩を、踏み出すのだった。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から砕華さんが去りました。