2016/09/01 のログ
ご案内:「マグメール 平民地区」にエミリアさんが現れました。
エミリア > 「――――――え?」

先輩修道女に押しつけられたお遣いを済ませ、夕食までに戻ろうと、
買い物客で賑わう商店街を足早に抜けようとしていたところ。

突然、大きな掌で二の腕を掴まれた。
小柄な体躯は勢いのままにバランスを崩し、腕を掴んだ誰かの懐へ、
無理矢理引き寄せられてしまう。

「な、……なん、ですか、……あの、――――え、」

己のことを、泥棒、と決めつける語調、見上げる巨躯に見合う野太い声、
睨み下ろしてくる強面、どこかの店の用心棒だろうか。
早くも涙目になりながら、己は慌てて左右に首を振る。

「そ、……ちが、違い、ます、わたし……わたし、なにも、」

盗ってません、と主張したかったけれど、男が畳みかけるように。
このまま兵隊に突き出してやる、とか、恐ろしく低い声で。
必死に腕を振り解こうと暴れるうち、ヴェールが頭から滑り落ちる。

―――ひょこり、現れる兎の垂れ耳に。

男の目の色が、より不吉な方向に変わった気がした。
焦って周囲を見回せば、周りに居る男たちの誰もが、同じ目でこちらを見ている―――ような。

ご案内:「マグメール 平民地区」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > (夕暮れ時となれば、夕食の材料などを求める人でそれなりとにぎわっている頃だろう。
この男も似たようなモノで、散歩がてらと適当に物色し、冷やかしながら歩きまわっていた訳である、が)

……ん?

(その日常にはそぐわない、何とも剣呑な雰囲気と、人々が漏らす騒ぎの声。
盗みや喧嘩、とはまた雰囲気も違う。
さて、一体何が起こったのかと、半ば好奇心も相まって其方の方向へと緩い足取りで歩いていく訳、であるが)

おやま、ありゃまた古典的な……

(そして、事件のやり取りを一見するに、内容を察すれば喉元を小さな笑みで鳴らした。
盗みの容疑を掛けて脅し、本人に弱みを握らせた所で、後は――といった感じだろう。
特に、ミレーだと言うのが更に不味い。
味方をする人間は余程の正義漢でなければあり得ないだろうし、捕まえている男も相当に強面だ
一息と吐いた後に懐から伊達眼鏡を取り出すと、顔に掛け)

おやおや、申し訳ない。
私の所の修道女が、とんだ失礼を働いてしまった様で。
誠に申し訳ありません。

(丁寧な言葉遣い、落ち着いた声音。
そういう演技をしながら、捕まる少女と、捕まえている男へと近づいていく一人。
勿論、自分の事であるが)

こうしましょう、私が彼女の代わりにお金を払いますので。
今回につきましては穏便に、とさせていただけないでしょうか。

(なるべく刺激しない言葉を告げながら、右手を伸ばし。
それを男の肩に載せるように……更に言えば、首筋に軽く触れるように、近づけてゆく)

…………勿論、御代は貴方の命で、という事になりますけど、ね。
おっと、兵は勘弁していただきましょう……貴方を始末する方法なんて、幾らでもありますので。

(声を一層と小さく落とせば、その男だけに聞こえる、脅しのセリフ。
右手の袖から掌で隠すように伸びたナイフは、男の首筋へと微かに触れて狙う事になるだろう)

エミリア > ミレーだということが知られれば、ひどい目に遭う。
それは理解していたからこそ、普段は必死で隠していたけれど。
一度晒されてしまえば、長くて真っ白い垂れ耳はいかにも目立つし、
怯えているからなおのこと、ふるふると揺れてひと目を引く。

身を捩ってみれば、逃げる気か、と怒鳴られ、別の男の手が伸びてきて、
わざとのようにお尻を撫でてから、なにかの包みを掌に乗せて見せつけてくる。
それ、が己の盗んだものだ、と言い立てられたが、もちろん己に見覚えは無く。

「わたし、知りません、そんな、……だって、わたし、――――」

どうしよう、どうしたら。
おどおどと蒼ざめる己の耳に、別の男の声が聞こえた。

たぶん、知らないひとだ、と、思う。
でも、助けて貰えるのなら―――多少の嘘を吐いてでも、その手に縋りつくべきか。

のろのろと思考を巡らせているうち、不意に己を捕えていた手から力が抜ける。
振り仰いだ強面の顔は、なぜだかひどく強張って、
―――なんだろう、くぐもった声でもごもごと、次は無いぞ、とか何とか。
眼鏡をかけた男の人の手から、首筋辺りを庇うように押さえて、
―――どたどたと、いっそ滑稽なほどの素早さで逃げて行く。

あとに残された己は、ただ、呆然とするばかり。
足許に落ちたヴェールを拾うのも忘れて、怖いひとたちが走り去っていった方を
見つめながら、ぽつりとひとこと。

「……いっ、ちゃった……」

アシュトン > 次、ですか。
其方も明らかにされると困る事があるのでは?
次が無い事を、心から神に祈っていますよ。

(ここから騒ぎに持っていかれると面倒だったが、体の割にキモの小さい男だったようだ。
周囲に見えないようにナイフを仕舞いなおせば、緩くと息を吐き出して。
そののちに、小動物の如くおびえていた少女へと視線を向ければ、軽くと口の端を上げる)

こんな時間の平民区だってのに、随分と大胆な事する奴らもいたモンだね。
ああいうのは、『盗んだ』という罪をなすりつけて、弱みを握った所で――ってのが狙いでね。
君が気弱そうでやりやすかったってのも大きいだろうが、気を付ける事だ。

(口調を元へと戻せば、喉で鳴らすのは小さな笑い声。
身を屈めてヴェールを拾い上げれば、彼女の頭の上にへと、ポトンと落としてやって)

事は収まったが、これ以上妙な騒ぎになっても困るからな。
とりあえず場所を移動しようか。
歩けるよな?

(首をかしげた後、彼女の手を握るように片手を伸ばして。
手を取る事が出来れば、軽く彼女の手を引いて歩いていく事としようか――夕暮れ時でも人通りのない、裏の路地に向かって、だが)