2016/06/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴィールさんが現れました。
ヴィール > 路地の寂れた椅子に腰掛け、手にした小さな用紙を見つめている。
暫くそのままだったがやがて溜息と共に胸ポケットに仕舞い込んだ。


「……何バカなこと考えてんだか、俺」

切り捨てるような口調ではあるものの表情は晴れない。
手持ち無沙汰に、両足をぶらぶらと振り子のように揺らす。

ヴィール > くしゃくしゃ、と頭を掻きながら立ちあがる。
今日も当然、親の目を盗んで家を抜け出してきた。

「……ま。さっさと忘れちまうに限る」

小さくひとりごち、ゆっくり歩き出して路地の奥へと消えていく――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある酒場」にジブリールさんが現れました。
ジブリール > 酒場のカウンターに、いかにも場違いな娘は座っていた。
煌めく銀の髪を流した、どこか気だるげな青い瞳の少女は、頼んだ料理とミルクがやってくるのを待っている。
お代として机の上に置かれているのは、小振りな宝石が数個。
明らかに場末の酒場で出すような金額ではないそれらを無造作に放り投げながら、店主に注文をぶち込んだのがつい先程のこと。
釣りを貰うのは面倒だからと、適当に高値のものを片っ端から頼み尽くして、後は気分次第の宴会である。

「……それにしても、猥雑――と言うべきなのかしらね。冒険者に踊り子に……典型的な酒場って雰囲気が中々、ぐっとくる感じかしら」

で、ミルクはまだなの?と視線を向ける先、店主はあくせくと料理の準備中。
どうやら飲み物が来るのはまだ先な気配がして、少女は密かにため息を吐く。
退屈を潰す暇つぶし、などという都合のいいものがやってくるのを期待しながら。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある酒場」にマルティナさんが現れました。
ジブリール > ――退屈は猫を殺す、などという言葉が思い浮かぶ。
ともすればきっと自分はその少し前の猫のような状態だ。
致死量の退屈がやってくる前に、せめてミルクだけでもと思う。
懐のスクロールは大抵が熟読し尽くしたもので、新たな刺激は見込めない。
周囲も、それなりによろしく酒や料理で盛り上がっており、少女の相手をするようなものはいなかった。

「……店主、店主ー……てーんーしゅー!ミルクはまだなのかしら……!?」

呼んでも直ぐにやってこない禿頭を呼び立てる。
今この場においては、宝石を投げ込んだ少女は上客中の上客だ。
文句ありげに睨めつけてやれば、先にミルクを、と木製のコップを渡される。
これでようやく飲み物がやってきた――喉を潤しながら他を待とう。

マルティナ > 平和な酒場に半裸の女が何食わぬ顔で入ってくる。
それを見た客の反応は、酔いすぎて幻を見ているのかとしきりと瞬きをしたり、遠慮無く食い入るように見つめたり、関り合いになりたくないと視線をそらしたりと様々。

「ご依頼の品です。確認をお願いします」

背負っていた大きなリュックを降ろすと店主へ預けるが、随分と忙しそうだ。
時間も時間だし無理もないか。
急かすのも悪いので店主が対応できるまで待たせてもらう事にした。
カウンター席に腰掛けて手持ち無沙汰にしていると、あまり酒場のイメージのないいかにも魔女という出で立ちの女性が目に留まる。
自分の格好の事は完全に棚に上げてそれを物珍しそうに、横目でチラチラと見ていた。

ジブリール > ――そういえば好奇心で死ぬのが猫だったか、と黙考は続く。
世の中はかくも十全に退屈で、日々恙無く回っている。
精彩と色彩を欠いたような雰囲気は退廃的で、目の前のミルクのようにほんのり甘い。
と、不意に酒場の戸が開く音。同時に何やら一瞬の鎮まり。
珍客でもやってきたのか、と視線を流すように向ける。
そこにいたのは半裸――というか7割裸な娘だった。
静寂の原因は、周囲の皆の驚愕だったらしい。

「……ふむ、これはまたなんとも」

可愛らしい――そんな感情が胸の中に湧く。
何やら彼女は依頼を終えたらしく、その検分を待っている様子。
手持ち無沙汰に待つ彼女を見てふと思い出す。店主が忙しい原因は自分だ。
そして何より彼女は、こちらに視線を向けている。興味があるということか。
であるならば、取るべき手は一つだ。

「私が物珍しいかしら、お嬢さん?あぁ、もうすぐ私が食べきれない量の料理が届く訳だけれど、付き合う気はないかしら?」

悠然と微笑みながら、告げるのは誘い。
無論、追加の注文も含めて今夜のお代は少女持ちだ。
さて、どのような返事が帰ってくるか。それすら楽しみにしながら、ミルクを一口飲み込んだ。

マルティナ > 「あら、ごめんなさい。そんな魔女みたいな格好の人って珍しいなと思って……」

見ていたのは思い切り気づかれていたようだった。
まあ自分もかなり目立つので相手から気づかれるのも無理も無い事だが。
何せ手足はグローブ等で覆われているものの肝心の胴体が水着以下の面積しか隠していないし、服を着ていたら普通はありえない顔と胴体だけ焼けて手足は白いという日焼けを晒している。
こんな格好を見て特別驚くでもなく対応してくれる人は稀である。
つまり貴重な普通の人付き合いのチャンスでもあるので……。

「よろしいんですか?では少しだけ……。あっ、私、マルティナ・ラーゲルフェルトといいます。一応、これでも冒険者やってます」

ジブリール > 「ふふ、正直は美徳だわ――えぇ、魔女だもの。相応の格好をしないと、それを誇れないものね」

少女の様子に気分を害する、と言った雰囲気はない。
むしろ正直な返答を気に入った感すらある。自然と表情が笑みに変わった。
それにしても奇異な姿だと思う。特にわざわざ手足を隠して日焼けしている辺り。
それ以外に偏見を持たないのは、酸いも甘いも噛み分けた程度に経験を積み重ねているからだった。
次いで彼女の名を聞くと、ふと頭の中に引っかかる。
それはとある小国の姫君の名――容姿も含めて似ている様で。
とは言え、それを話題にするのは、初対面だと不躾だろう。
もし機会があれば後日聞いてみるか、と心の片隅に留めておく。

「貨幣を持たない主義なせいで、少しの食事は一苦労ね――私はジブリール。しがない魔女で歴史家よ。とりあえず隣に来なさいな。奇特な客同士の、素敵な晩餐をしましょう?」

そっと手を差し出す。取るのなら優しく引き寄せる気で。
彼女が来てくれるのならば、店主に飲み物を急かすだろう。
なんなりと、好きな物を飲ませてやれと、にこやかに。

マルティナ > 魔女っぽいと思っていたが実際に魔女だったようだ。
人を見かけで判断してはいけないとはよく言うが今回は見かけ通りだったようである。

「ジブリールさんですか。ふふっ、よろしくお願いします」

手を差し出されるとそのまま素直に招かれる。

「今まで魔女の知り合いはいなかったもので、何か失礼があったら注意してくださいね?」

魔女の事は噂では耳にするものの、実態となると直接縁がない事もありよく知らない。
独特のルールがあったり名前や正体を秘匿している、という噂もあったがジブリールの場合名前も魔女である事も隠していない様子なので、まあ噂などそんなものという事か。
友好的な笑顔を見せながら、彼女の近くと移動する。

ジブリール > 奇異な所を意識から外せば、随分と愛らしい娘だと思う。
所作の所々に現れる、無意識の品の良さを楽しみながら、招きに応じる彼女を座らせた。
これなら膝の上に乗せても良かったか、などとは思うが、それは幼子に対する扱い。
友人になるべき彼女に向けるものでもないだろう。
これで猫は楽しみを得て延命したが、さてさて。

「えぇ、よろしく――ふふ、大丈夫、普通の人を相手にする時と同じで構わないわよ?」

魔女とは言え、俗世を好んでいるから普通の人として扱われたほうが好ましい。
対等な関係である方が、何かと気を使わなくて済むのだ。
しかし、興味はそれと別に鎌首をもたげるものだから。

「……それにしても、冒険者ねぇ。今日の成果は良かったの?あ、好きに飲んで食べてね?先払いしてあるから」

首を傾げながらミルクをもう一口。カップの半分ほどが無くなった頃合いだ。
このミルクがなくなるまでは、問いの応酬が続くのだろう。
一つ尋ねる代わりに一つ聞いてもらう、そんな自己紹介のステップ。
それが、今の少女には心地よかった。

マルティナ > 「そうなんですか?噂で言われている程怖いものじゃないんですね」

やはり噂は所詮噂ということか。
普通にすればいいというのであれば気楽なものだ。

「ええ、結構私向きの仕事でしたし自信ありですよ。それにしてもジブリールさん随分気前がいいですねえ……」

懐具合がいい加減ピンチになってきたので仕事を探して駆けずり回っていた自分と比べて、彼女は見知らぬ人間を宴会に誘う程度には余裕があるようだ。
魔女が儲かるのか、色々な意味で気になるが直接的に聞くのは流石に不躾すぎるか。