2015/11/16 のログ
■シド > 追いついた時の光景は、思惑の外だった。一方的に嬲りて傷めつける光景を眺め……されど然程動揺もせずにゆっくりと近づいていく。
少女の方ではなく。怯えた羊のように身を寄り添い命乞いをする無法者へと。
「――横槍で悪いんだがな。殺人は私の前でご法度だ。こいつらを痛めつけたいなら宮廷へしょっぴくんだな。王の前で裁きを下す。
これ以上の暴行は必要ない。」
後ろ目で悲痛と血に濡れた者達を一瞥――
その手に何も持たぬが代わり、葡萄色の眸が剣先のように少女を威圧する。
「遅れながら自己紹介だ。アルケイオス男爵。王都でのおイタは見逃せないんでね……ここは私の顔を立てて刃を収めてくれないか?」
優美に腕を折り曲げ慇懃な会釈を……ただ違和感あるのは足元、頭をあげて垂れた銀髪を掻き上げるや否や軸足たる左足を大きく後ろに。
何が逢っても瞬時に動けるようにと姿勢を落としていく。
■キスカ > 浮き足立って逃げる男の胴に短剣付きの鋼線が食い込む。
人外の膂力を込めて引っぱれば、胴体が真っ二つ…とまではいかずとも、その身体が宙を舞うはず。
間合いの中には動きを止めた敵が二人、すれ違いざまに喉元の点穴を打てば瞬時に無力化できる。
そこまではじき出したところで制止がかかる。葡萄色のまなざしを振り向きざまの横目で受け止めた。
「殺してないってば。しばらく食事には苦労するだろうけど」
鋼線で絡め取った男を引きずり、靴底をかけて縛めを解く。
「神さまと神聖なるノーシスの名を借りた脅迫。あと誘拐未遂も。そういうのって罪にならなかった?」
「キスカ。それが私の名前。そうだ男爵さま、か弱い小娘をよってたかっていたぶろうとした罪もプラスで」
不承不承といった様子で短剣をしまい、見知らぬ構えを胡乱な目で見つめる。
「私はこんな仕事を頼んだ人のことを知りたいだけ。それも今すぐ。男爵さまにそれができるの?」
■シド > 「聞こえなかったのか。やめろと言ったんだ。キスカ……それ以上の暴力は貴族への侮辱行為と受け取るからな。
――殺さなくても駄目だ。これ以上の暴力は私や、役人どもの目の届かないところでやれ。」
悲鳴と血が舞う暴力への抑止は言葉だけ。
されど春風めいた少女の声音に比して、低く警告告げるは厳寒を極める。
……やがて短刀をしまうには構えを正す。拳法など知りはしない。ただ姿勢を低く下肢を広げた誰でも出来る構えを。
「罪にならないとは言っていない。逆に聞くがお前は何様のつもりだキスカ。まるで自分が断罪者のような物言いだが
……それを認めてるのはお前だけか。お前の周囲だけだろう。大多数はお前に裁きをする権限など認めない。
納得しようがしまいが……彼らは俺達が根ざす国で裁かなければならない。それが社会だ。」
疑惑の眼差しに返すは真摯な眸……そして一歩、一歩あゆんでゆく。
避けなければその唇を長い指先でゆっくりと弾力に這わせようとしていく。
「こいつらの口を割ることは出来ない……だが、ここで君の好き勝手を許せば、法律も国も必要なくなる。
どんなに納得いかなくても、どんなに辛くても……人として生きるために従うためのものがある。
――他に言いたいことはあるかい。」
■キスカ > 男爵さまは理想を語る。けれど、それはまれびとの法だ。
言いかけた言葉を飲みこみ、頷きはせず。
「200年前なら頷けたかも。ほかに特には。議論とか苦手だし、そういう勉強もしてないから」
「それなら男爵さま、あの劇場を守ってみせて。男爵さまの信じる力で、おぞましい悪意と戦って―――退けてほしい」
「誰か代わりの人でもいいけど、公演が無事に終わるまでは……」
「私がこの話から手を引けば、きっと多くの血が流れる。それだけはダメ。防がないと」
唇に触れる手を拒むでもなく、ただ灰色の目に強い意志をみなぎらせて。
「男爵さま。アルケイオス。アル。約束できる?」
■シド > 「……言いたいことがあるなら言え。今日だけは特別に言葉だけならどんなものでも聞いてやるよ。」
訥々と噛みしめるような響きもつ言葉がどこから来るものか知らない。その真偽さえ確かめる術はない。
それでも纏う雰囲気を変える少女の想いは本当だろう。聞きゆく内に腕組みて睥睨していた葡萄色も爪先に落としていく。
「凄い交換条件だな……もし、ここまで予測して今までの言動と行動を考えていたなら、大したものだ。」
指先が羽毛めいた柔らかさでそぅと、語り終えた唇を撫で終える。
全くもって動じぬ灰色に、擽ったいような苦しいような、それでいて何かを懐かしむような笑みを浮かべた青年は――。
「約束は……出来ないな。私の領地ならともかく、王のお膝元で法令を妨げるほどの権力はないよ。
――と、私も子供の頃、貴族に爪弾きにされたことがあったっけ。」
語り終えるや否やその腰元に腕を回して抱き寄せようと。灰色の暈に青年の微笑みが焼き付くかの距離にて語る。
言葉は呼気と唇に熱触れるだろう。
「だから約束してやる。その公演だけは横槍が入らないように役人どもへ媚薬を利かせてやるよ。
だが、この代価は重いぞ?果たしてお前に払えるかな?」
キスカ――と名を紡ぐ言葉は至近の距離で囁く相手の名。呼気が唇に触れさせる。
後頭部に手を添えられるのを合図に、眸は閉じて唇を重ねようと――最も、機敏な少女が抵抗しないならば、の話だが。
■キスカ > りんごの人……ではなく男爵さまが迫る。胸に手をついて首を振った。
「だめだめ、それじゃ足りないんだってば! 無いよりはましだけどさ」
「私の敵はいつも……何ていうか、行動力がありすぎる人たちだから」
「まだ根拠はないけれど、ノーシス主教の原理主義者か《王党派》が動き出してるかもしれない」
《王党派》。今日の王すら偽りの簒奪者とみなす、王国で最も危険な秘密結社のひとつ。
狂王ナルラートを半神半人の絶対君主と崇め、ナルラート王の再臨と統治を宿命として待ち望む人々。
ミレーを獣同然の奴隷とさだめた王の遺産を否定するような劇を許すはずがない。
「私に手を引かせる対価のこと? それなら、もしも誰かが傷ついたら殺しにいくから、そのつもりで」
年齢不詳の怜悧な容貌が口付けを求める。二つ目のりんごでそれを遮った。
「今日はこれで我慢して。うまくいったらお礼はする。会いにいくから」
■シド > 「説明、少ないなぁ……お前は背景を知ってるだろうが私は知らないんだよ……全くもって何が足りないか分からん。
が公演は無事終わらせてやる。それだけは約束する。」
裏稼業の人間ではない。王党派も、それに属する人々も……その闇紛れた背景など知らぬのに。
次々と語る少女に口付けしようとしていた顔――決して怜悧にでも獲物を品定めするともしてない笑みを――を自ずから離してしまう。
押し付けられた林檎を手に取り茫洋と眺める内に、やがて青年の家臣が来る。すわ何事かと慌てる彼らに事情を説明して。
手際よくならず者を捕縛して連れてっていく。
「それもあるけれど。あまりにでかすぎる依頼のお釣りが欲しかっただけだ……腕が立つ用心棒も欲しくてな。
が、交渉は不成立だな。せいぜいお前さんに殺されないように頑張るよ……。
こいつらを騎士団に手渡してくる。ただの暴行未遂ではなく何かの組織に関与してるとしっかり伝えるから。
それで溜飲を下げてくれ。」
語り終えれば銀の髪波を靡かせて去っていった。
ご案内:「平民地区商店街」からシドさんが去りました。
■キスカ > 「えっと…舞台が危ない人たちに狙われてて、候補は今のふたつくらい」
「公演を止められない以上は対決するしかないかなっていう。そんな感じで」
「神聖都市の原理主義者と《王党派》のことは、その筋のひとに聞いてもらえば」
男爵さまと私は住んでる世界が違うのだ。今さらながらに思い知りつつ、その答えは頼もしくもあり。
やがて人が来た。ならず者たちが連れてかれていく。
「気持ちはわかるけど、報酬の先払いは私のポリシーに反するんだ」
「りんごあげるから。ね、りんごだよりんご! おいしかったじゃんさー?」
「そういう訳で、今日のところはこれで」
大人の対応ににべもなく頷く。男爵さまは男爵さまなりに折り合いをつけてくれたらしい。
長髪の貴人はあっさりと去っていった。
「まれびとに借りを作っちゃったかなー…さて、気を取り直して。別の手がかり、探しにいきますか!」
ご案内:「平民地区商店街」からキスカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシオンさんが現れました。
■シオン > (平民地区にあるどこにでもあるような宿屋と酒場が一緒になっている店の酒場で食事を取っていた。
周りでいろいろと騒いでいる人がいるがそれほどその空気は嫌いではない。
でも、知らない人の話に混ざる気はなく、もくもくと食事をしていく。
料金が安い割には量と味は満足できるものだった)
「うん、ここも今度から行きつけにしようかな?」
(食事を続けていれば、酔っ払いが絡んできたのでそちらへと視線を向ければ、やはり知らない人だった)
「何のようですか、食事中です」
(仕事の依頼の可能性も一応あったので、一度食事の手は止めたが
「嬢ちゃん、一緒に飲もうぜ」
その言葉で、人前で無ければ殴りたくなった…人の気にしている事に触れたのだから…)
「僕は男です、他を当たって下さい」
(少しだけイラついた声でそれだけ言えば、食事に戻る。
少しまだ声をかけられたが、完全に無視していれば少し自分から離れていった。
落ち着いて食事ぐらい食べさせてほしいものだと、軽く溜息をついた。
一人でいることが原因なのかもしれないが…)
■シオン > (食事が終われば、飲み物を頼んでしばし食事休みを取る。
先ほどの酔っ払いとのやり取りを知っているのか、他に話しかけてくる相手も居なかった。
少し邪険にしすぎたかなとは思うが、相手が悪かったのだからこっちが態度を改める必要は無いだろう。
相手が酔っ払いでも女性とかだったら、もう少し穏便な態度で相手をしただろう。
それにしても本当に賑やかだ。
店の隅に置かれたリュートを見つけて、店の主人に否定以下を聞いて了解ととれば、リュートの置いてあったすぐ近くの席に座り音を確かめる)
「音はしっかりしてる…もったいないな、誰も弾かないなんて…」
(軽く一曲とある男の英雄譚などを奏でる。
誰に習ったわけでも無いが、いろんな仕事をしてるうちに自然といくつかの楽器を弾けるようになっていた。
リュートもそのうちの一つだった)
■シオン > (一曲弾き終えれば、コインが何枚か飛んできた。
どうやらおひねりのようで、次の曲のリクエストなども飛んできた。
店の主人にお皿を一枚借りて、そこに飛んできたコインを集めて入れる…つまりおひねりならここにという意思表示。
いくつか飛んできたリクエストを思い出していく。
店の雰囲気から考えれば、これがいいだろう。
次の奏でるのは冒険者と踊り子の恋の歌…あまりこういう系統の歌は歌っていて恥ずかしくなり部分があるので、得意ではないがリクエストはリクエスト。
仕事であると思えば、どうにかなる。
本当ならしっかりとした歌い手など居てくれればいいのだが、今の居る客にそういった人はいなさそうだった)
■シオン > (リクエストを受け続けて何曲か歌えばすでに疲れてしまい、今日はこれまでとリュートを置いて、座っていたすぐそばのテーブルに突っ伏しながら、コインを数えていく)
「もしかして、これでも食べていけるんじゃないだろうか」
(初めての店で珍しいというのもあるだろうがそこそこの稼ぎだった。
何より暇つぶして弾き始めたのに、お金になるのはかなり幸運だった。
そうしていると店の主人が飲み物を持ってきてくれて、頼んでないと言えばおごりだったらしい)
「たまには弾きに来てもいいかな…歌い手が居ると助かるんだけど…」
(暇つぶしのこんなことに付き合ってくれる人は心当たりは無かった。
知り合いに頼んで一緒に来ることは了承してくれるかもしれないが、歌うとなると無理そうな気がした)
■シオン > (コインを数え終え、出された飲み物をしっかりと胃に収めてここでは疲れが取れない。
席を立ち上がり、店の主人に皿とコップ返して店を後にして家路に着こう)
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシオンさんが去りました。