2015/11/02 のログ
ご案内:「平民地区・鍛冶師の店」にノキアさんが現れました。
ノキア > 王都マグメール、平民地区。
雑然としながらも、何処か活気に溢れた賑やかな区画である。
商人が客を呼び込む威勢の良い声。
子どもが元気に駆け回る笑い声。
響き渡る声が紡ぐのは、吟遊詩人が語り上げる
恐ろしい魔物の逸話や、それに挑む勇敢なる英雄たちの勲。

人が集い、故にこそ流れ響く音のうねり。
その流れを笑みを浮かべて泳ぎ渡りながら、その影……
仮面を被り、マントを背後に流したノキアは、一人歩みを進めていた

ノキア > 目指すのは、人が集う町の中心…………ではなく。
そこから離れるようにして居を構える、一軒の小さな建物であった。

石造りのその建物は、一目で分かる程に頑強な造りをしており……
来るものを迎え入れる様な温かさは全くなく、
寧ろその前に立つ者を威圧するような迫力さえ感じられた。
軒先には住人を示すような標や家紋なども刻まれておらず、
僅かに使われた跡がある入り口の扉と、
外から見える様に
……それでも、まるで鉄格子で囲われたかのような代物だが……
用意された窓から見える品物だけが、
何者かが利用している痕跡を感じさせていた。

ノキア > そこに並ぶ商品、武器や防具を
……しっかりと確認する物好きがいるのならば……
その作りが確かであり、また見事な物であることが分かるだろう。

武器として、防具としての機能を追い求めたが故の無骨さ。
それでありながら、定めた一点を目指し、ただひた向きに突き詰められた物が見せる確かな美しさと、そこに込められた熱意を感じさせる丁寧かつ繊細な仕上がり。

此れを作り上げたものは、硬い鋼にも、燃え盛る炉にも負けない
確かな熱意で以て仕事に挑んだ。
語らずとも、見る者にそう熱を感じさせる佇まいがそこにあった。

ノキア > 「…………見事だ」
思わず、といった風に言葉が零れる。

感じ入るかのように飾られた品を眺めていた目が……
不意に、ある一点で止まった。

そこにあったのは……外からは見辛いショーウィンドウの、
さらに片隅に、まるで隠す様に置いてあったのは……
小さな小さな細工物であった。

隣で威を吐く武器とは異なり、強く主張することなく、
ただ静かにそこにある。
だが……そこに施された細工は精緻かつ繊細に施され、
華美に走らないその佇まいは、野に咲く花のような、
穏やかな空気をそこに纏わせていた。

ノキア > それを静かに見つめ……小さな笑みを、口に浮かべ。
そのまま、躊躇うことなく建物の扉を開き、中に入っていく。

建物の中は、外の様子と比べても、さらに酷いものだった。
所狭しと積み上げられた武器防具の山。山。山。
何処にでも有るような代物から、何に使うのか、
そもそも使えるかすら分からない奇怪な形状の何か。

それらの間に用意されたスペースには、
これまた堂々とした作業台が鎮座し……
そこに用意された道具群には確かな整理と
手入れが施されていることから、ここの主が商売には興味が無いことが分かる。

ノキア > それらの隙間を、まるですきま風が吹き抜けるように
するすると潜り抜け……建物の奥へと通じる扉。
その前に申し訳程度に用意されたカウンターに……
そこに積み上げられた雑具の山に埋もれかけた呼鈴に手をかけた。

「店主殿。いらっしゃるか?
頼んでいた件についての連絡を受けて参った」

リンリン。

指先でつつかれた埃と油まみれの呼鈴が健気に店主を呼び。

次の瞬間、弾くような勢いで開かれた店奥の扉、その闇の中から、
鋼の輝きを放つ刃が一直線に飛び出してきた。

狙うのは目と目の間。文句なしの直撃コース。

ノキア > 完全に不意打ちで放たれた一撃。しかし
「……店主殿。挨拶はもう少し静かにすべきでしょう」
いつのまに構えられていたのか、
白い手袋に包まれた二本の指でぴたりと挟み止められていた。

『うるせえ。手前ぇこそ、あの喧しい名乗りを止めたらどうだ。
そのうち野盗に刺されて口が二つに増えちまうぞ』

また避けやがったか、と舌打ちをしながら現たのは、
髭に覆われた顔を赤く染めた、背の低い……
しかし、体を筋肉の鎧で覆った男だった

ノキア > ドワーフ。
この国においては人間として認知される種族のその男は、
作業油と焼け跡が刻み込まれた厚手の作業服を身に纏い、
どすどすと足音を立てながらカウンターに用意された椅子へと腰かけた。勿論、ノキアの椅子はない。

「溢れる紳士の魂がそうさせるのです」
『寝言は寝て言え。うちでも一回あの喧しいのをやってみろ。
次はそのドタマに槍をぶつけるからな』
「承知してますよ。故の無い迷惑は紳士の名折れ。
それに、あの名剣に類する一撃はそう何度もうけたくはありません」
『その妙な仮面で弾いておいてぬかしやがる。
次はぶち抜いてやるから覚悟しとけ』

それは困る、と苦笑するノキアの前に、ドン!! と
音を立てて大型の鉄のコップが叩きつけられる。
中身が大きく波を立てて、赤い滴がカウンターに零れて染みを作った。

中に並々と注がれていたのは、鮮やかなルビーにも似た、
見るものを引き付けてやまない紅色を宿した、澄んだ液体だった。
だが……そこから漂うむせかえる様な酒精の香りの前に、
その色彩を楽しむことが出きるものは中々居ないだろう。

ドワーフの紅酒。
伝説において酒好きと謳われる様々な怪物すら酔い潰すという一品。

何よりも酒と鉄、酒宴と鍛冶を愛するドワーフの前で、
酒を飲まずに話を通すことなど許されはしない。

ノキア > 苦笑いをひとつ。
ノキアはコップに手をかけると、ゆっくりと中身を飲み込んでいく。
舌で踊るのは確かな旨み。鼻に香るは柔らかな酒精の匂い。
しかし……腹に流し込まれたそれが伝えてくる熱さは、それらを塗りつぶしてあまりある。何度も口にすれば、只では済まないだろう。

『……で、依頼の内容だったな』
紅酒を口にしつつ、しかし平静を保つノキアの前に、
店主が店の奥から布に包まれた細長い物を取り出した。

太い指が丁寧に包みをほどくと、
中から一振りの剣……否。【元】剣が姿を現した。

ノキア > 『……残念だが……結論から言やぁ、コイツはもう戦えねぇ。
今までの負担に、最後の立ち回りが致命的だったな。
刃もそうだが、柄なんかも歪んだうえに中身がグズグズになっちまって殆ど使い物にならねえ。
使える分をかき集めて打ち直したとして……
まあ、ダガーも出来ねえだろうな』

布に包まれていたのは、破壊された剣であった。
砕け散った剣身には大小様々な傷が走り、
歪んだ柄からは装飾が剥がれ、握りの部分にも歪みがある。

「……そうですか」
今まで、苦楽を共にしてきた愛剣だ。
その分無理も無茶もしてきたし、何時かは壊れることも分かっていた。

微かな痛みを感じるが……だが、それは口にするものではない。

言葉は交わせずとも、未熟な我が身を支え本分を全うした相棒。
ならば、それを見送る己は、相棒を安心させねばなるまい。

ノキア > 「……ありがとうございます」

ノキアが頭をさげる。
そこに込められた二つの意味を黙して受けつつ、
店主が砕けた剣を丁寧に包み直していく。

『んだが……お前、この先どうするよ。
流石にゲンコツ抱えるだけじゃ立ち回りに不便だろ』
腕を組み、渋面で告げられた店主の言葉に、ノキアも頷く。

あの日、キルフリート城探索の際に遭遇したデュラハン。
剣を砕かれ、拳で撃破した相手だが……
あれをすら上回る守護者が、まだまだ居るという。
用心して手札は残していたが……同時に、慢心と油断こそが最大の敵。
万全で挑まなければ、どこで何に挑むとも無事には済まないだろう。

ノキア > 「新しい刃は頼めませんか?」
『ドワーフが刃を打てないわけねえだろ。
だがな……刃は打てても、材料がなけりゃどうしようもねえ』
問に、渋い顔をして店主が首を振った。
店内に並ぶ様々な武器。きらめく刃の数々。
だが……それを造る鋼では足りないと、そう告げた。

『鍛えた鋼は、たとえ砕けても嘘はつかねえ。
あいつは、生半可なモンじゃ直ぐ同じ事になるって教えてくれたよ』

何よりも鋼と武器に通じ、そして誠実である店主の言葉だ。
それは確かなものなのだろうが……同時に、1つの問題を提起していた。

「……問題は、どうやって手に入れるかですか」
それでなくとも、昨今は物騒な情勢となっている。
良質な装備の素材となるものなど、そう簡単には手に入らないだろう。

ノキア > 『まあ、手がない訳じゃねえが……』

そう言うと、店主はカウンターの上に一枚の大きな羊皮紙を広げた。
所々に……否、かなり破損が目立つが……
それは、この周辺の地理について、
極めて大雑把かついい加減に書いた地図であった。

『一つは、手前が前に行ったキルフリート城。
あそこの宝物庫には宝がたくさんあんだろ?
だったら、使えるもんがあるかもしれねえ』
太い指が、いい加減な地図の空白、その適当な一角を示す。
何処にあるかも分からないのだ。位置はなんでも良いのだろう。

『もう一つは……九頭竜山だな。あそこは温泉もあるが、鉱石も掘れる。
妥当な線ではあるんだが…………最近、あの辺に竜が住み着いたって噂がある。
鉱石やら何やらが集められてたら、簡単にはいかねえだろうな』
続いて、太い指が地図の……恐らくは山を指し示す。
竜が住み着いているかもしれないとなれば、成る程危険には違いない。

どちらを選んでも危険な道。
だが、示された確かな道にノキアは笑みを浮かべる。

ノキア > 「助言に感謝します、店主殿。
道があるなら、そこを進むに迷いはないですよ」
『感謝するなら、俺の息子達の中から一振り持ってけ。
でもって斬り潰して宣伝してきやがれ』
その言葉に、ノキアが苦笑する。

人付き合いこそ多少悪いが、仕事に誠実で熱意があり、
さらに技術も優れた職人である店主。
彼が、なぜ街の片隅に、隠れ潜む様にして店を……
それと分かりにくく構えているのか。
それは、ひとえに彼の目標、その夢に原因があった。

人だけでなく、魔族やあらゆる種族が認め、それに通用する
魔法の武器すら越える最高の武器を打ち上げる。

その目標を成し遂げる為に……彼は人間が使うのを想定していない、
言うなれば魔族が使うことを前提とした武器をすら作り上げている。
そんな物を魔族と争う人間の国で作っていることがばれれば……
まあ、ろくなことにはならないだろう。
もっとも……そんな種族を問題視しない彼だからこそ、
一見すれば風体が怪しくもあるノキアと平然と友人関係にあるわけだが。

『次は魔王やドラゴンでも参った!! って言うヤツを用意してやるぜ?』
「それは頼もしい。だが、店内はきちんと片付けねば、客も中々こないだろう」
『ハン、どうせ来るのは探検家気取りのませガキくらいだよ。
来たところで、鉄と日にビビる様な腰抜けには、俺の息子達は扱えねえさ』
二人の視線が、店内と入り口に向けられる。
成る程、確かに中々客は来そうにないが……

ご案内:「平民地区・鍛冶師の店」にエーヴさんが現れました。
エーヴ > (冒険者や探検者気取りのガキは来なかっただろう。
 なぜなら人物はガキはガキでも盗賊だったからだ。
 盗賊稼業は傭兵以上に気を使うものだ。華麗に盗みだすことを考え出すのであれば、
 殺傷はほどほどに、証拠は少なく、影の中を歩む影にならなくては。
 カラクリ仕掛けやより強力なエンチャントを施せる鍛冶屋となれば数が限られてくる。
 ――腕の良いドワーフの鍛冶屋がいると聞いて人物の足が向かったのも当然だったろう。
 が、入ろうと扉の前でウロウロしていた。
 中では楽しそうに会話する男二人の気配があった。
 盗賊稼業の職業病とでも言おうか、人と顔を合わせることでさえ気を使ってしまうのだった。

 リンリン鳴り響く呼び鈴。扉を潜りフードを深く被った人物が入店し。)

 「失敬。まだお店はやってるかな?」

 (ハスキーボイスがお伺いを立てた。
  人物二人を交互に見回して、ドワーフらしき人物のところで目線が止まった。
  しかし先客が居るようだった。どう切り出したものかと悩むも、腹をくくってカウンターへ。)

 「今ある品をみせて欲しい」

 (相手の技量がどの程度のものかを測るべく品物を見せろと口にする。
  欲するのは大剣でも槍でもない。隠し持てるいわゆる暗器の類だ。
  軍隊で担われるような武器しか作れないのならば用事はないのだった。
  ちらり。傍らの紳士へと視線が一瞥。フードの奥で瞳がぱちくりした。)

 「邪魔だったかな?」

ノキア > 鳴る筈のない呼鈴が鳴らされる。
そのことに僅に目を見開き……
『あん? ……名乗りもしねえで物を見せろたあ、中々言うじゃねえか』
その珍しい来客に対して、しかし店主は挨拶もせず。
獰猛な笑みを浮かべると、そのまま店の奥へと引っ込んでいく。
椅子を勧めもしなければ、用件について聞きもしない。
全うなもてなしをするつもりはさらさら無いようだ。

「いや、構わないよ。私の用は済んだところだからね」
フードの奥から見える視線に向けて応えつつ、僅に風体を観察する。
足の運び、立ち振舞い、そして重心の運びかたからして、
何らかの技術を修めているのは確かだろう……
(だが、詮索するは非礼というもの)
紳士たるもの、隣人の尊厳を無為に侵すは恥と心得よ。

「……この店には、武器を探しに?」
店の奥から響く物を探す音に耳を傾けながら、
穏やかな笑みを浮かべる

エーヴ > (退散していってしまう店主。
 名乗ったところで気に入られたかはわからないが、
 頑固者の思考と言うものは大抵似通っているもの。
 人物の経験上、少なくとも三回はこなければまともに相手さえしてくれない。
 ため息を吐くとやれやれと首を振る。
 こちら側を観察する男へと視線を傾ける。風貌と言い雰囲気と言い、どこかの貴族崩れを思わせる。
 実際のところ貴族なのかもしれないが。
 得体の知れない男であると思いつつも、
 人物は店内をぐるりと見回した)

「武器というかな、道具というか。なんにせよ僕の用件は済まずに終わったと言うこと。
 あの店主を口説き落とすいいネタがあればよかったんだけれどね、
 あいにく金貨を口に詰め込んでやれるほど金持ちじゃない」

 (けらけらと笑うと、笑い声を止める。)

「買い物かなにか?」

ノキア > 「成る程。だが、用件についてはそうでもないだろうね」
付き合いが長いから分かる。
店主は確かに頑固者であるが……同時に、負けん気が強い。
自分を試すような事を言った来客に対して、
その見立てに応え、唸らせる品を探しに行ったのだろう。
「彼は金貨よりも酒精やそれに合う食品を好む。
一度晩餐を共にすれば、良い友になれるかもしれないな。
ただし、酒を飲むには気を付けないといけないが」
一つ注意をして、軽くマントを鳴らす。
何をしに来たのか。ノキアが応えようとした所で

『おら、持ってきたぞ。手こずらせやがる』
そう言って、戻ってきた店主が一振りのナイフをカウンターに乗せた。
影の様に黒い刀身はしかし光を照り返すことなく、
まるで暗がりがわだかまり、固まったかのように佇んでいる。
全体としてはやや小ぶりながら、握りの前面には手を保護するとともに、
殴打にも用いることが可能なナックルガードが設けられ、
また本体にはワイヤーを通すことが可能な孔が開けられていた。
『……コイツなら、手前の手に馴染むだろうよ』

エーヴ > 「知ってるよ。ドワーフはそりゃあ酒に強い。
 数杯で意識朦朧とするような奴じゃ相手にならんと。
 僕が酒にそりゃあ強いことを知ってる人は積極的に酔わせに来たもんだよ」

(肩をすかしてみせる。他でもない自分のことを示すかのように。
 消えていった店主の潜った扉をもの欲しそうに見つめて待ってみる。
 もし本当に厄介払いしたいならば襟首掴んで店の外に放り出せばいいからだ。
 ややって、店主がナイフを手に持ってきた。
 闇に溶けるような黒いツヤ消しの一品。殴打に最適な構造を維持しつつ、おあつらえ向きな穴まで設けられていた。
 潜入の際に身を守ると同時にワイヤーで建物を伝うことも可能だろう。
 ふむんと喉を鳴らすと手に取ってみて、クルリと指先を滑らせて見る。
 どちらかと言えば女性用に調整されているようで、重量が軽く重心が手前に寄っている。
 満足したのか懐から通貨を取り出して、大まかな目安の金額を差し出そう)

「今はコレしかない。ツケにはできないんだろう? 出世払いじゃダメかな?」

(などと嘯く盗賊風情。
 提示した金額はたいしたものではなく、足りるかは分からない。)

ノキア > 「酒は飲むとも飲まれてはならない。
宴の席でなくとも、周りも気を付けるべきだが……
非礼なる真似には、対処が難しいものだ」
酒の楽しみかたはそれぞれだが、
それにかこつけて不逞を働くものも少なくない。
それを如何に場の空気を変えずに受け流すかは、なるほど困難であろう。

『ふん。良いだろう。だが、二つ約束を守りやがれよ。
一つは、使う以上はしっかり仕事して、そいつをしっかり働かせること。
もう一つは、七日経ったら一度来やがれ。手に合わせて調整しないといけねえからな』
差し出された金額を全額突き返しながら、店主が腕を組む。
『そいつを使ってヘマをしたら承知しねえぞ』

エーヴ > 「……ン。まァ、言うけどね、たまには呑まれるのも悪くないもんだよ。
 ぶれいこーぶれいこー」

(などといいつつもナイフを手の中で弄んでいる。指にかけてくるくると回して見せたり、
 腰のベルトにねじ込んだり。
 手癖の悪い盗賊である。うっかりと手が〝滑る〟かもしれない。
 だが店主は条件付で飲んでくれたのだ。
 ぱちぱちと拍手を返してすかさず腰にねじ込んでおく。)

「ありがとうございます。約束は守るよ。
 守れなかったら土の中かどっかの檻の中で首輪してるから。
 そんときはこの紳士に救助依頼しとく。
 僕を助けてね。無償で」

(店主に向かって大仰にスカートを引く古風なジェスチャーで一礼を。スカートなど履いていないが。
 傍らの男にフードから覗く口元で笑いかけて。
 嘘のような本気のような物言い。)

ノキア > 「楽しみに収まる程度にしたまえよ?
酒精の共になる物があれば悪酔いはしづらいのだが」
苦笑しながら、その様子を眺める。
鮮やかな手さばきは、先程の僅かな見立てを確かな物と感じさせるが……だが、何もしないのであれば言うことではない。

『土まんじゅうには請求が出来ねえよ。
檻の中については、全うな理由で捕まってるなら
素直にけじめを払っとけ』
社会的には、かなり怪しいことをしている店主が言えたことではないが……
「紳士たるもの、差し出された手に刃を握らせるなかれ。
客人が平穏無事であることが最善だが、もしもがあっても、
助けの手に金銭を要求することはないとも」
問いかけにノキアは笑みを浮かべ、
礼に対して店主は小さく鼻を鳴らす。

『さ、そろそろ店じまいだ。手前らとっとと帰りやがれ』
そう言って手を振ると、ガタガタと音を立てて店の……
殆ど武器庫と言えるそこを乱雑に片付け始めた

エーヴ > (盗賊ではあっても強盗の類ではない。
 誇りや規範を元に行動するものとして強引にナイフを奪うことは無いのだ。
 つき返された硬貨を懐にねじ込むとナイフもベルトに差し込んでおく。
 ナイフの完成度は高い。故郷の鍛冶屋にも匹敵する完成度であるが、
 一体全体このドワーフがなぜこんな武器を打つ必要があったのかという一抹の謎が残る。
 盗賊と言うよりも背後から刃を突き刺す類の職業にうってつけのつくりに思えたからだ。
 後ろめたさならば店主以上の生業をしている人物はそれ以上の思考を止めた。)

 「仮に衛兵に捕まってても助けに来るというならやめたほうがいいかもね。
  お邪魔虫は退散しますよーっと」

(店主が店じまいを始める。
 とことこと扉のほうに歩いてくると、男に向かって首を傾げて。)

 「いい店知ってたら紹介してよ。久々に楽しみに収まる範囲で飲むからさ」

(いい獲物を手に入れられて人物は上機嫌だった。
 紳士姿がやってくるのを待って扉を押さえている)
 

ノキア > 「その場合は、罪は償うべきだな。
為したことには応じて責任が伴う。
払うべきときには、払わないといけないだろう」
苦笑しながら扉をくぐる。

外に出たところで、扉を押さえてくれたことに礼を告げてから
ふむ、と腕を組む。
「馴染みというわけではないが、大通りの先にある店には、
良い銘柄の品が揃えられている。
店の空気も落ち着いているから、静かに酒精を嗜むには最適だろう」
そして簡単に店の特徴を告げると、
堂に入った、丁寧な仕草で礼をするだろう。

「では、私もここまでだ。
願わくば、再会が平穏なることを。レディ」

そう告げて、マントを大きくはためかせると……
次の瞬間、その姿がその場からかき消えているだろう。
まるで、幻のように

エーヴ > (盗賊の代償など決まっている。
 縛り首か磔か奴隷として売買されるかである。特に荒れているこの時代。女と分かるや否や売り飛ばされるだろうか。
 それでもマシだと人物は思うのだ。
 故郷の法律では問答無用で死刑だったから。
 綺麗な一礼を前に、こちらは先ほどとは違う胸に手を当てて腰をかがめる一礼を返しておく。)

 「あちゃーバレちゃってたか。誤魔化せないもんだねえ。
  さよならジェントルマン。平穏でありますように」

(手を合わせて祈る仕草。
 紳士は光が痕跡さえ残さぬうちに消えうせるようにいなくなっていた。
 人物――少女はなぜばれたのかを考えつつ教えられた方角へと歩み始め――店を後にした)

ご案内:「平民地区・鍛冶師の店」からノキアさんが去りました。
ご案内:「平民地区・鍛冶師の店」からエーヴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルーキさんが現れました。
ルーキ > 「―――さて」

困った、と溜息を吐く。
急に襲い掛かってきた暴漢を締め上げて気絶させたは良いものの。
その場に伸びている男を見下ろし、辺りを見渡した。

並ぶ酒場は軒並み、休業中なのか営業していないのか明かりも見えない。
だからこそ男も、この場所を選んだのだろうが。
このまま放置していけば済む話なのだ―――

「……ま。殺す理由も無いしな」

そもそも今日は剣を持ち歩いてはいなかった。
その気になれば隠し刃こそ出せるものの、面倒臭い。
疲弊した身体を一先ず休ませんと傍らに無造作に置かれた木箱に腰掛ける。

ルーキ > 腕を、肩を軽く揉む。
夜の月明かりの下であれば、辺りの様相は少し心許ない。

―――ふと、扉の開く鈍い音が響いた。
酒場の裏口から何者かが出てくるのが見える。

「―――おっとと」

男を軽々と掴み上げ、人一人入るのがやっとな程の路地に押し込む。
姿を現した老婆は、此方を不審げに見遣った後大通りの方へ歩いていった。
一息。

ルーキ > 「……怪しまれたか」

気にすることもないのだが。
未だ気を失ったままの男を一瞥する。

「―――ま、いい。どうせ誰かが見つけてくれるだろ」

もう一度腕に触れて何の傷も無いことを確かめると、緩々と歩き出す。
隠し刃の一本を抜き出し、指先で軽く弄んだ。

路地は思いの外長い。
立ち並ぶ店を興味深そうに眺めながら。

ルーキ > 「……っと」

そうこうしている内に、広場へと出る。
夜ゆえ辺りは閑散としていたが。

こうなれば早めに帰ってしまうのが吉だ。

そう考えれば踵を返し、己が住処へと一直線に―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルーキさんが去りました。