オリアーブ島の中央の巨大湖、「ヤス湖」に囲まれるように存在するオリアーブ島の都。
ティルヒアとはこの都を治める王族の名前であり、ティルヒアはオリアーブ島では「女王」と呼ばれている。
壮麗なる都であり、王国とはまた違った特色を多く備えている。どこかオリエンタルな文化の香りのする都市である。
街の中を水路が駆け巡っており、木舟で街の中を移動する者も多い。区画整理のされた文化的な都市といえる。
独自性が強く、王都の影響は少ない。ティルヒアが「女王」と呼ばれることからも、ほとんど王国とは別の国となっている。
都の住民たちが住む居住区の奥には「女王ティルヒア」の住む巨大な城がそびえており、幾つもの絢爛な尖塔が城を囲んでいる。
攻められることなどはまずないものの、ティルヒアの城の防御は非常に固く、その門を突破するのは容易ではない。
龍を象った紋章や像などが城壁や城内にいくつも存在しており、龍がこの都市や城のシンボルと言える。
王国で普通信じられている「ヤルダバオート信仰」、「ノーシス主教」が存在しない。
ティルヒアの民が信仰するのは「永遠」という名の創造神と、「女王ティルヒア」である。ミレー族への差別感情も存在しない。
「女王ティルヒア」は都市の名前にもなっているとおり、この都市が生まれた時から存在しているとされ、今まで一度も統治者が変わったことがない。
つまり、「女王ティルヒア」はこの都市ができてから生き続けていることになり、“千年の女王”と呼ばれる所以はこれである。
オリアーブ島では「女王ティルヒア」は女王であると同時に、神として信仰の対象でもあった。
「女王ティルヒア」の統治は支配的ではなく、民は女王をこの島を守る存在だと信じており、基本的に平穏な治世であった。
しかし、「ティルヒア動乱」の数年前から状況が変わる。平和裏な統治を行っていた女王が、突如暴政を行い始めたのだった。
「女王ティルヒア」のマグメール国王即位宣言以降はますますそれは強まり、軍備は急激に強化され、民への搾取が行われはじめた。
やや閉鎖的であったものの元来穏やかな性格であった民も変わり、都市の治安は悪化して犯罪行為や、女性などの弱者への陵辱も行われるようになった。
それどころか、女王の命により、この国を救う神を呼ぶためにと、性的な陵辱を伴う卑猥な儀式が都内で行われている。
神への嘆きを捧げることにより、国を救う神が降臨するのだと女王は語る。
魔族や魔物が都市の中にも現れることもあり、女王が魔族を配下として使うことも増えてきている。
民の多くは、女王の暴政を乱心と捉えて嘆いているものの、女王のいうことを信じる者も少なくない。
オリアーブ島を守るためにと兵士に志願するものは多く、女王への忠誠心なども皆高い。女王の不可思議な術により、兵士たちの身体能力は強化されている。
一種の心理的な束縛を行う魔術も使われているようだ。
ティルヒア女王の城は無事であるものの、王国軍が都市内の城門付近に攻め入ることもあり、戦闘に巻き込まれる民も出てきている。
オリアーブ島、そして「千年の女王の都ティルヒア」を治める者。千年の女王の都の名前はここから取られている。
“諸王”に連なる「王族」であるとされるものの、出自についてはほとんど不明であるといってよい。
オリアーブ島では「女王」と呼ばれており、民からの絶大な信頼と信仰を得ている。不可思議な術を使う。
都を作った神そのもの、あるいはその化身であると信じられ、これまで一度もその「女王」の座から離れたことがないといわれており、
それが事実であればかなりの年齢となる。故にこそ、“千年の女王”を呼ばれる。
容姿としては白髪の長い髪を持つ幼い少女であり、とても何百歳には見えない。
しかし、纏う気配は非常に荘厳なものであり、民が神と崇めるのも仕方がないと納得されるようなものである。
城内で執務を行うことが多いが、時折民の前に姿を現す。歴史の中で、「南海」に魔族などが現れた時は自ら剣を持って軍を率い、
勇ましく戦い、この島の守護神である「龍」を呼び出して敵を全滅させたという伝説が伝えられている。
民への愛情は非常に深く、その統治は民のことをまず第一に考えるものであった。
民については自らの「子」であると思っていたようであり、その接し方は親が子にするようなものだった。
しかし、200年前のナルラート朝以後、ティルヒアの力は徐々に弱り始めていき、「怒り」の感情を表に出すことが多くなり始めた。
そして、「ティルヒア動乱」の数年前から暴政を行うようになり、マグメール国王への即位宣言を行った後は、よりそれは苛烈になった。
《存在しない神》の言葉を聞いたとし、邪悪なる神ヤルダバオートの影響下にある王国を解放することを目的としている。
《存在しない神》とは、すでにこの地には存在しない神ということである。
その神を呼ぶには多くの嘆きが必要であるとし、都内での女性や弱い立場の民への陵辱の儀式を命じ続けている。
ヤルダバオートやナルラート王への強い憎しみと怒りを燃やしている。
その正体
※この情報は普通の王国民などでは知り得ないものになります。
古くからティルヒアを知っている者であるならば、この情報について知っていることもあるでしょう。
しかし、それを王国軍側に言いふらしたりするというような行為はご遠慮いただければと思います。
その正体はオリアーブ島を守護する偉大なる精霊ティルヒアであり、“龍”。
真の姿はオリエンタルな雰囲気を持つ巨大な白い龍である。
《真なる神》アイオーンによって生み出された諸神の一柱であり、アイオーンよりオリアーブ島を護ることを命じられている。
王国神話には残されていないものの、世界の草昧の時にヤルダバオートや魔族たちと戦い、勝利した神話も存在する。
元々はヤス湖に住むものだが、自分が生み出したオリアーブ島の民を守り、育て、発展させていくために人の姿となって都を治めている。
アイオーンの庇護を受けており、その力はとても強い。魔族や魔物を寄せ付けない結界を島に張っていたのもティルヒアである。
しかし、アイオーンが王国の地から去り、ナルラート王によりヤルダバオート信仰がもたらされたことによってその力は衰え始める。
ヤルダバオートの力により穢されていく王国の姿を見て、その魂魄は怒りに燃え上がり、猛り狂い始めた。
いずれヤルダバオートを斃すためにと弱った力を蓄えようとして、愛していた民から力の搾取を行うようになる。
すでにティルヒアも、ヤルダバオートの影響により狂い始めていた。
その力の衰えにより、島を守っていた結界も消してしまう結果となる。
そして、「ティルヒア動乱」の直前、ナルラート王とよく似た容姿を持つ“ヤルダバオートの化身”がティルヒアの前に姿を現す。
ング=ラネク山の山頂付近で、龍の姿となったティルヒアは“ヤルダバオートの化身”と戦い、敗北し、身も心も陵辱された。
その偉大にして清らかであった魂魄をも穢され、ティルヒアは完全に正常な思考を失うこととなった。
“ヤルダバオートの化身”の言葉を《存在しない神(アイオーン)》の言葉と信じるようになり、ついに“悪神ヤルダバオート”の影響から王国を解放するためとして、
自ら王国の王と即位することを宣言し、ヤルダバオートの化身から悪逆の源と教えこまれた王都を滅ぼし、解放するために王国へと宣戦布告を行った。
しかしそれは、王国を更に混乱させ、混沌に導こうとする“ヤルダバオートの化身”の策略であった。狂ったティルヒアには最早それに気づくことはできなかった。
受けた陵辱などにより力の殆どを失ったティルヒアは龍の姿で戦うことができないため、自らの都の軍に王都へ攻め上ることを命じているのである。
王都を滅ぼし、国を解放し、数多の嘆きを捧げれば、それを《存在しない神》が聞き届けて再びこの国に現れるということを“ヤルダバオートの化身”に教えられている。
それを信じてティルヒアは戦っている。
本来敵対すべき存在である魔族を側に置いたり、自らの軍に引き入れているのは“ヤルダバオートの化身”によって狂わされ、魔族が《存在しない神》の側の存在だと考えているため。
即位後に行っている民への陵辱の儀式などもこの影響である。
ただし、認識が歪められているだけで、ヤルダバオートへの敵愾心はそのままであるため、魔族であってもヤルダバオートを賛美するようなことを公言する場合は、ティルヒアに敵と認識されるだろう。
力を失っているとはいえ、アイオーンの加護を受けたティルヒアの力は未だにオリアーブ島に及んでいる。それは魔族らにも影響をあたえるだろう。
魔族としてもティルヒアに味方をして王国を混乱に導こうとするか、アイオーンの生み出した神の一柱を滅ぼそうとするか、考えの別れるところであろう。
ティルヒアには昔からの配下も存在し、それらはティルヒアを正常に戻そうとしているものの、大きな効果は上げられていない。
その配下も多くは人ではない精霊のような存在である。