2015/12/16 のログ
ヴェルム > 「いかにも偉い人らしい言い分だね、でも僕もそんな感じでここまで着ちゃったところはあるけど」

王国軍との戦闘には全く参加せず、ノリと勢いだけでここまで来たようなものだ。
それにナルラの軍勢の戦い方は非常に多角的で効率的。
それでいてナルラ本人も強いのだ。

「神由来…やはり、というか…わかるんだ…」

油断ならない男だという認識だが、見識が深いことも付け加えるべきか。
ティルヒアが作り出したこの結界、ティルヒアのことは恐らく人間とは違う種なのだろうという憶測しかもっていなかったが、ナルラは結界を見ただけで由来を見抜いた。
どうやら状況が変わったらしい。

「ヴェルム・アーキネクト…まぁ覚えていてくれたら嬉しいけど。
ここを守るつもりはないよ、ティルヒア様はこの先にいないかもしれないし、ティルヒア様を惑わせた何かがいるかもしれないなら寧ろ喜んで先に進みたいところだけど。」

お前、といわれたので自己紹介をする。覚えてもらえるかはどうでもいいけど。
ティルヒアを惑わせた者がこの事態を引き起こした…というのはあくまでヴェルムの憶測に過ぎない。
しかしそれが正しいと思わしき事象はいくつも起きてきた。
今は確信を持っている。
だからこそ、自分よりも事態を把握しているらしいナルラにあっさりと言ってのけた、休戦という選択を。

ナルラ > 「ほう、ティルヒアの為に最後になにかできないかと考えたところか?」

自分と同じという男の言葉にナルラは問う
この男もまた、先ほどの将軍と同じ、ティルヒアに
忠義を尽くそうと考えているのだろうか。

「何、この国を調べるとありとあらゆる場所に、
そういう力が働くように仕向けられた仕掛けがあってな……
この城もまたそういう仕掛けが施さえていておかしくもなかろう」

そう言いつつ、ナルラの手にはいつの間にか槍が握られていた。
その槍を結界の周囲に、突き刺していく。
床がまるで粘土のように、槍は深く突き刺さっていって。

「ヴェルムか……まあ、真相を知るものが増えるのも悪くなかろうて」

互いに休戦の約束をすれば、ナルラは結界を崩す準備を始める。
アイオーンの結界の要となる部分に、ヤルダバオートの力を押し込んでやる
上手くいくかどうかは判らないが、ものは試しと作業を続けている

「ところでヴェルム、お前は何ができる? 上級騎士であるくらいだ、特技の1つや2つあるだろう?」

ヴェルム > 「最後にって言われると死にそうだけど、概ねそんなところかな。
もう遅いかもしれないけどさ。」

忠義を尽くすと言うときっとこそばゆく感じるだろう。
ただ一人くらい、真相を知る家臣がいてやってもいいんじゃないか、
そう思ってここに来たのだ。

「そんなものがオリアーブに…いや、寧ろそういった仕掛けはあらゆる場所に存在するのか…。というか、やたらと詳しいんだね…。」

ナルラという男、何者なのかという疑問が浮かぶ。
聞いてもまともな答えは聞けるかどうか。
そんな中ナルラが槍を使い、何かの準備を始める。
真相を知るものが増えるのも悪くない…
ナルラの言葉にほんのりとした不安を覚えてしまう。
腹の中に何を隠しているのかと。

「特技か…魔法は一通り使える、それと…魔法を斬ることができるかな。」

自分の特技ではないが、所有している剣、聖剣ミスティックの力によるもの。
魔を穢し魔を絶つ力を持った聖剣。
魔剣と呼ばれるものは数多いが、聖剣と呼ばれるものはかなり少ないと聞く。
それ故に大抵の聖剣は名が知られているものだろうか。

ナルラ > 「さて、あくまでも我の予想を含めたもの、結界が崩れるかはわからんが」

そして楔のように次々と槍を突き刺していく
もう粗方の準備は済んだというところだろうか?

「まあ、様々な文献には目を通しているからな……人の上に立とうという者は色々と知って置かなければならん。」

そう言って今度は懐から銃を取り出す、小さなフリントフロック式の銃を

「ほう、なら安心だな……魔法の衝撃波がくるぞ、斬って身を守るが良い」

そして銃から放たれる魔法の弾丸、その突き刺した槍に命中すれば、次々と誘爆をはじめる。
強力な魔力が流し込まれ、アイオーンの力をヤルダバオートの力で覆い、包み込んでいくように力が反転しはじめるだろうか

ヴェルム > 「少なくとも、今は王子が頼りですよ。」

からかい混じりの敬語で言ってのけ、ナルラの作業を見守る。
実際頼りなのは確かである。

「なるほどね、王を目指す連中の中でダントツなのがわかるよ。」

権威に胡坐をかくものがほとんどの中、素直な気持ちで賞賛できる。
とりわけ自分には、こういった知識は皆無が故。

「え、あぁ…わかった。」

ナルラが銃を取り出し、結界を解除するための仕上げを行おうとするならば、
聖剣を自らの前に持ち、集中する。
ナルラの銃から放たれた魔法の弾が槍に当たり、誘爆して魔力が結界へと流し込まれていく様は、ある種幻想的な光景でもある。

ナルラ > 「そう褒めても何もでんぞ」

そう言いつつも、ナルラは口元を嬉しそうに歪める。
何だかんだで、賞賛の言葉には弱い
フォンローク家の三男に『殿下』と呼ばれ、気をよくし
新素材の武具を送るほどだったりもする。

「ふむ、もう数発撃ちこめばいけそうか? 次のも防げよ」
そう言って次々魔法弾を撃ちこんでいく。

ヴェルム > 「それは残念。」

わかりやすく笑ってみせる。
そして後ろからでもナルラがなんとなく笑ったのが見て取れた。
本来は敵味方のはずだが、ヴェルムにはナルラを恨む理由は無い。
歪められたティルヒア兵たちを解放してくれたのだ、寧ろ感謝しかない。
たとえナルラがどう思っていようと。

「わかった…!」

次々と撃ち込まれる魔法弾、そして逸れに伴う魔力の衝撃。
それを剣で切り裂き身を守りながら、ナルラを見守る。

ナルラ > 己の身は、銃で魔法障壁を作り護っている、ヴェルムが無事己の身を守ったことを見届ければ

「さあ、行くぞ……鬼が出るか蛇が出るか、この階段の先で待っているだろう」

キラキラとガラス細工のように中に散る魔力の結晶
結界が砕けたのを示すソレが宙に散る様子を見とれる暇もなく
階段をかけあがっていく

その先で二人が何に遭遇したかは、また別のお話で

ヴェルム > 正直なところ驚いた、ティルヒアが施した結界を僅かな時間で砕いたのだ。
もちろんそうするつもりで協力したのだが、いざ進む道が開かれれば息を飲む。

「…そうだね、真実を知るために…」

階段を駆け上るナルラに遅れ、その後を追う。
出会ったばかりの、立場の全く違う二人がその先へ進んでいく。
どうなるかは誰にもわからなかった。

ご案内:「◇ティルヒア城内・結界手前エリア」からナルラさんが去りました。<補足:銀髪・褐色肌/身なりの良い礼服>
ご案内:「◇ティルヒア城内・結界手前エリア」からヴェルムさんが去りました。<補足:黒髪短髪/ティルヒア上級騎士鎧/ティルヒア紋章入り外套/聖剣持ち>
ご案内:「ティルヒア城内・上層部に続く唯一の廊下」に魔王アスタルテさんが現れました。<補足:外見10歳、身長130cm。黒いワンピースを着て、悪魔の翼を生やす魔王。>
魔王アスタルテ > (ティルヒア城最奥に繋がる廊下。
 抜け道を通ろうと、この廊下は通らねばならないだろう。
 アスタルテは、壁に背を預けて目を閉じている。

 既に四天王や配下の高位魔族は、この“千年の女王の都”を脱している。
 だが魔王アスタルテだけは、同じ時代を共に生きた“強敵(とも)”たる神龍ティルヒアの運命を最後まで見届けるため、この場所に残っていた)
「ヤルダバオート。
 これから待ちうけるであろう結末は、
 君が思い描くシナリオ通りなのかな?」
(アスタルテは瞳を空けて、無表情で天上を仰いだ。
 どこか憂鬱そうな、そんな表情にも見える)

魔王アスタルテ > (この廊下を過ぎ去った“勇者”は二人。
 一人は、ティルヒア軍上級騎士 ヴェルム・アーキネクト。
 そしてもう一人は、マグメール国の王子ナルラ・ホーティ・カルネテル。
 ナルラは、ティルヒア軍最後の将を撃ち破り、そしてこの先に進んだ。
 もう既に、ティルヒア軍に戦力はない。勝敗は決したのだ。
 ナルラが通り過ぎる時、アスタルテの小さな身体は偶然大きな瓦礫に隠れている形となっていたのだが、彼がアスタルテに気付いたかどうかは定かではない。
 この廊下から結界が張られているフロアまで、ヴェルムとナルラを除けば誰もいない。
 いや、既にその結界は破られている。
 結界の先に恐れずに突き進む彼等は紛れもなく勇敢な者、“勇者”。
 この場においては、アスタルテはそう定義した。
 それはアスタルテにとって、最大級とも言える賛美である。

 アスタルテは天上を仰いだまま呟く)
「ティルヒア陣営のヴェルムと王国陣営のナルラ。
 奇しくも二人の“勇者”は、この先で邂逅を果たし、そして結界を破ってその先に進んだ。
 果たして、彼等“勇者”に待ちうける運命はどんなものかな」
(アイオーンの力が反転し、強力な結界が破られた事を魔王アスタルテは感じ取っていた。
 そして二人の“勇者”は、その先へと進んだのだろう……)

魔王アスタルテ > (アスタルテは強大な“魔王”であるが、“勇者”ではない。
 “魔王”は、“勇者(ヒーロー)”になり得ない。
 故に、結界が解除されたとしてもアスタルテはこの先には進まない。
 ただ、最も近いこの場所で、この先に進む“勇者”達を、ヤルダバオートを、そして神龍ティルヒアを見届ける。

 どのような結末が訪れるか、それは誰にも分からない。
 アスタルテは再び瞳を閉じる)
「これから待ちうける二人の“勇者”の運命が、どうか過酷なものではありませんように……」
(アスタルテは魔王の身でありながら、二人の“勇者”の無事を静かに祈るのであった)

ご案内:「ティルヒア城内・上層部に続く唯一の廊下」から魔王アスタルテさんが去りました。<補足:外見10歳、身長130cm。黒いワンピースを着て、悪魔の翼を生やす魔王。>
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」設定自由部屋3」に魔王アスタルテさんが現れました。<補足:外見10歳、身長130cm。黒いワンピースを着て、悪魔の翼を生やす魔王。>
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」設定自由部屋3」から魔王アスタルテさんが去りました。<補足:外見10歳、身長130cm。黒いワンピースを着て、悪魔の翼を生やす魔王。>
ご案内:「南部街道」にダンテさんが現れました。<補足:黒の短髪、黒の瞳。ぱっちり眼に長い睫毛。童顔気味。>
ダンテ > 太陽が天頂に至る時間。
王都とオリアーブ島をつなぐ街道の一つを進む、比較的大所帯の一団があった。
武装した者もいないではないが、殆どは非武装の非戦闘員で構成された一団。さらに言えば、それらはほぼ女子供ばかりである。
荷車や馬、驢馬、荷馬車の姿も見受けられ、それらがどう見ても難民の一団である事は明らかであった。
ティルヒアを追われた非戦闘員達である。
ティルヒアが戦地となる前に都を抜け、周辺の町や村に身を置いていた者達が、王都方面へ向けて移動しているのだ。
王都方面も決して治安が良いとは言えないまでも、それでも今のこのオリアーブ周辺南部地方よりはマシと判断した者達である。

「長閑だなー……。」

そんな一団の中に、少年はいた。
荷馬車の幌の上に胡坐をかいて周囲を見回しながら、嘯く。
見晴らしのいい草原地帯には、今のところ魔物の姿もない。
これまでの道中で数度の魔物との接敵はあったが、野盗山賊の類などとは未だ遭遇していない。天気もよく、実際随分と長閑だ。
王都へと、陸路で戻るか海路で戻るか悩んでいるところで出くわしたこの一団の護衛という依頼を、安く引き受けたのは早朝の事である。

ご案内:「南部街道」に魔王アスモデウスさんが現れました。<補足:外見18歳/170cm/両性体/巨乳/ピンク髪ロング、紅眼、褐色肌/深紅の衣装、布靴>
魔王アスモデウス > 草原地帯を過ぎっていく難民の一団を、狙う者があった。
それは薄紅の髪を靡かせる女の姿をしており、その背後には自らの眷属たる淫魔たちを従えている。
ティルヒアの落日から逃れる女子供を狙って食事にしようと、色欲の魔王は自ら街道へと出向いていた。

「あはぁ、やっぱり来てよかったねぇ。美味しそう」

紅を差したような唇に弧を描き、誰にともなく呟いた。
濃い魔族の気配を隠そうともしないのは、いるかもしれない護衛を、先にいただくための餌であるかもしれず。
無力な子羊の群れを眺めて、舌なめずりを一つする。

ダンテ > 幌の上から、ちらりと下を見やる。
こちらを見上げる一人の少女と目が合う。少女、というか、まだ幼女という歳かも知れない。
笑顔でこちらに手を振って来る彼女に、愛想笑いで手を振り返す。
本当に長閑である。
本当に、のど

「―――ッ!?」

背筋に一気に鳥肌が立つ。
大慌てで視線を、それらの気配の方へと向けた。
果たしてそれは、そこにあった。
突如としてそこに現れた一団。
厭という程に、憶えのある一団だ。

「……最っ悪だぁ……。」

顔色は真青。
変な汗が全身から噴き出る。
明らかにこちらを意識するその一団を無視して通過する事は……、まぁ十中八九不可能であろう。
隠れてやり過ごす……事もきっとできない。
少年はのろのろと、僅かに震えながら幌の上に立ち上がって、カラカラの喉に僅かな唾液を滑らせつつ、片手に持ったショートソードを掲げて振って見せる。
彼女が、己の存在に気付くように。

魔王アスモデウス > 悠々と、難民の一団の進路塞ごうと歩みだしたところで、荷馬車の幌の上に立つ人影を目に留める。
手にしたショートソードを振る、その姿は。その顔は。よく、見覚えのあるもので。
女は、満面の喜色を浮かべた。

「……あっはぁ……。ちょっと待機ねぇ」

配下をしばし控えさせて、女は転移の魔法を操る。
目的の場所は、可愛いかわいい養い子の傍らへ。
空間を割って幌の上にふわりと姿を現せば、愛しい少年を掻き抱こうと両腕を広げて抱きつきにかかる。

ダンテ > 突如立ち上がって剣を振り始めた少年に訝し気に視線を送る者達もいるが、ぶっちゃけ気にしていられない。
さて、これで突如としてあれが雪崩れ込んでくるという事もないとは思うが。

「って、はっやいよっ!?」

転移の気配を感じた瞬間、褐色の女が飛び掛かって来た。
受け止めるようにしながら、小器用に幌の上へと転がる。
寝そべった状態で、抱きすくめられるような形である。
さすがに周囲が、ざわりと騒めいた。

「ととととととっ、とりあえず離れよう!かーさんっ!」

叫ぶ。まず必要なのは話し合いである。
騒めく周囲にようやく一瞥をやって、とりあえず片手で制するようなジェスチャーを彼らに送る。
無駄である事はわかっているが、かーさん、という叫びを聞いたものには知り合いであるとは知れるだろう。
幸い、魔力感知だとか魔族看破だとかそんな技能を持った者はこの一団にはいない。

魔王アスモデウス > 転移して、すぐに両腕で愛し子を抱きしめることに成功する。
二人共に幌の上へと寝そべって、一体何時ぶりかの、久しぶりの息子の匂いを胸に吸い込む。
周囲の視線もざわめきも、知ったことではない。

「えぇー? やぁだ。久しぶりぃ、ダぁンテぇ」

叫び虚しく、提案をあっさり却下してごろごろと懐くように少年の頬に擦り寄る。
話し合いに応じるつもりはあるはずだが、態度を改めるつもりはない様子で。

ダンテ > べしべしべしべし。
関節技決められた格闘家よろしく、彼女の背中をタップ。
当然、聞き入れられないのであろうが。

「だぁぁっ、とりあえず離れて!離れてって!」

久しぶり。
まぁ、まだ家出開始から一か月そこそこしか経っていないのであるけれども、確かにこれまで過ごした時間を考えればそうなのかも知れない。
相変わらず周囲に無駄な努力的なジェスチャーをしながら、彼女の肩を軽く引き剥がすように力を入れる。
強引に引き剥がす意図というより、離れてほしいという意思表示的なものである。

「と、とにかく、座ろう!な?座って話そう!」

必死の交渉。

魔王アスモデウス > 多少豊かな胸を押し付ける以外には苦しくなるほどの力加減ではないはずだが。
少年が必死に背中を叩いてくる。
ほんの一ヶ月かそこらだが、以前はよくされた仕草に久しぶり、という感覚が強くなる。
短い黒髪をぎゅ、と鷲掴みするように抱きしめて。

「だってぇ、ダンテ。ダンテぇ、いなくなって寂しかったんだよぉ?」

肩を引き剥がすような動き、力尽くで離そうとするのではないそれに渋々抱擁を解いて身体を起こす。
幌の上、足を崩して横座りの体勢となって。

「もぅ、しょうがないなぁ……」

義母の優しさで交渉に応じた。が、その距離はべったりとしなだれかかるようなものにするつもりで。

ダンテ > ようやく彼女が離れてくれた。
大きく一息をついて、自分も幌の上で身を起こして胡坐をかく。
周囲に視線をやって、『すんません、知り合いの同業者ッス』とか言って無理くり誤魔化し、彼女と向き合い直す。
否、そうしようとするのだが、しなだれかかるような姿勢では向き合うというのは難しい。
抱き合っているよりは随分マシであるし、ひとまずその体勢で行くこととする。

「あー……、うん、ありがとう。で、えーっと……、」

思い切り眼を泳がせながら、背中に汗をぐっしょりとかいて言葉を探す。
大丈夫。
彼女が怒っている様子はない。
大丈夫。
とにかく、何と言ったものか。
先日の姉弟子や、姉と慕う魔王との邂逅の事を思い出しながら、ちらちらと彷徨う視線を時折彼女へと向ける。

「きょ、今日はまた……、何で軍勢のみんななんか連れてここへ?」

家出の事には触れないスタンスでいくことにした。
視線を、遠くに気配を感じる軍勢の方へと向けての問い。

魔王アスモデウス > 胡座をかいた少年の膝の上に片手を添えて、ぴっとりと寄り添う。
多少無理のある誤魔化しを行っている愛し子の苦労など知る由もなく。
今のところは、再会に上機嫌で目を合わせようと彼の顔を覗き込み。

「たまにはみんなと一緒に遊ぼうと思ってぇ……」

質問には答えてやる。
が、泳ぐ視線と時折目が合えば、じっと見つめる。
笑みが深まり、声音も弾ませて。

「ダンテも一緒に遊ぼぅ?」

今のところは、家出については触れず、誘いかける。
遊び。その言葉が指し示すのは、狂宴。
無邪気に悪意ではなく、色欲に溺れようと。
以前のようにと誘いかけた。

ダンテ > 伝わって来るあたたかな温もり。
柔らかな肌の感触。
どれも馴染み深いものだ。
養母、かあさんと呼び、しかし幾度も肌を交えた相手である。
目が合うと、決してなれる事ない魔性の誘惑が己を包んでくる。
そんな中で、己の問いかけへと正直に答える彼女の言葉を聞く。
ああやっぱりね、と、そんな感想が胸中に浮かぶ。

「あー……やっぱ、そういう事……。」

運が悪かったなぁ、この人たち。
思わず浮かぶそんな感想。
或いは、無上の快楽を約束されているのだから、運が良かったのかも知れないのだけれども。

「いや、俺は……やんない。」

そしてその誘いには、首を横に振った。
視線を幌の下へ。
先ほど手を振り合った幼女とまた目が合う。
養母と話している己を気にしていたのだろう。ちらちらと傍らの養母を気にしながらも、また手を振って来たので振り返し。
そして、養母に視線をやった。

魔王アスモデウス > 幼い頃から身体に馴染むほどに重ねた肌。体温。匂い。
養い子のそれら全てが愛おしい。
黒い、深い瞳と紅眼が重なる。
自身の手で理想の雄へと育て上げた少年を前に、じくりと下腹が疼いた。
しかし、

「……え? なんでぇ」

誘い拒否した少年に、きょとんと首を傾げる。
心底不思議そうに。断られるとは思っていなかった、とばかり。
そうして逸れた視線を追うと、愛くるしい幼女の姿。
再び自身へと目を向けてくれば、悪意なく微笑み。

「ちゃぁんとみんな、キモチヨク、してあげるよぉ?」

だからいいでしょう、とでも言いたげな口調。
みんな、と言うからには本当に全員を餌食にするつもりでいた。
年端もいかない幼女さえ。

ダンテ > かえってくる答えに、ひょいと肩を竦める。

「いやうん、わかってるけどさ。」

理解している。
この場で彼女とその軍勢との饗宴に巻き込まれた人々は、老若男女問わず、それはもう気持ちよくなれる事だろう。
それこそ幼女であってもだ。
それ自体を悪いと思うような精神性は、この少年にもない。
健全ではないだろう、という理解はあるが、その程度だ。
もう一度、首を左右へと振った。

「でも、俺はいいや。気分じゃない。」

苦笑を浮かべて、再度断りの言葉を返す。
少年の快楽に対する価値観や精神性は、きわめてこの養母に近いものだ。だから、否定もしないし、止める事も基本的にはない。
だが、近くはあっても、同じではない。
他者との関係の総てが性接触に帰結する彼女と、決してそうはなりきれなかった人間の少年との明確な違いだ。
修行だとか何だとか様々な名目で、彼女に言われるがままに女を抱いてきた頃には、さして意味を持つ事はない違いではあったが。

魔王アスモデウス > 少年はよく理解していた。
色欲の魔王の思考を、行動を。
それを咎めない程度には。

「……なんでぇ」

気分じゃない、なんて信じられなくて呟いた。
彼を仕込んだのは自身なのだから、その性欲を知っている。
常に持て余し気味のそれを、何故発散しようとしないのかが理解できない。

「じゃあ、かあさんと遊ぶ?」

いっそ気遣うように問うた。
膝に置いた手。太腿をそろりと撫ぜて、股座へと滑らせていく。
場所も何も、気にするような神経の持ち合わせはなく。

ダンテ > 彼女の手が股座に延びて来る。
返って来る言葉も、その態度も、相変わらずである。

「だぁぁっ、ストップストップ!流石に場所選ぼう!」

しかし、当然この場で彼女とおっぱじめる気もない。
彼女の手首を掴んでその手を止める。
どうせ始まってしまえば、『ラブホテル』に引きずり込まれるのは見えているのだから、関係ないかも知れないが。

「まぁ俺は気にせずに、死なない程度に、遊んであげてよ。」

周囲の者達へ一瞥を向けてから、そんな言葉を返した。
まさか、吸い殺す事もあるまい。
彼女らに遭遇するなど、殆ど天災のようなものなのだから、それは諦めてもらう他なかろう、と。

魔王アスモデウス > 場所を気にするような常識は、教えた覚えはないが、いつの間にか身につけていたもの。
手首を掴まれ、阻まれる。
どうせ自身の能力発動してしまえば関係ないだろうに、おかしく思う。
気にせずに。それは無理な話だ。
かわいい愛しい養い子が、久しぶりに眼前にいるのに。

「遊んであげて、って……他人事みたぁい」

心中に浮かんだのは不満。義理とはいえ親子で、親しすぎるほどに睦みあった間にあって。
まるで自分は関わりないとでも言うようではないか。
そんな不満が、表情から笑みを消した。

ダンテ > 他人事と言われると、実際その通りなのだろうな、と漠然と考えた。
彼女がこれからやろうとしている事に、己は混ざる気はないのだから。
強いて言えば、この一団の護衛を仕事として引き受けた以上、むしろ彼女を止めるべき立場として、他人事的な今の態度は咎められるべきなのかも知れないが。

「いやまぁ、俺は混ざんないんだし、当事者って事は……かあさん?」

周囲から視線を彼女に戻し。
言葉を返していたのだが、ふと、彼女の表情に気付く。
笑っていない。
これがどれ程珍しい事であるのか、少年はよくよく知っていて。
そこでようやく自分が、地雷原を突っ走っていた事に気付いた。
ぶわ、と引きかけていた汗が背中からあふれ始める。
そうだ。無意識に眼をそらしていたが、そもそも家出中の自分の主張と、彼女の主張は根本的に相容れない。
普通に喋っていれば、直接その話題に触れずともどこかで破綻するのは眼に見えていたのだ。

「あ、え、えーっと……ま、まぁ、お、……落ち着いて?」

安直極まりない宥め文句が口から出る。

魔王アスモデウス > 少年の言う通り、当事者にならないという意味で、他人事なのだろう。
だが、そもそもそれが気に入らないのだ。
自身の可愛い養い子が、色欲の求めに応えないこと自体が。

「……なんで」

常ならば語尾を甘く伸ばす口調すら薄れて、珍しくも笑みの消えた顔。
これまでの、つまりは家出していたそのことを、水に流してやろうと思っていたものを。
まるで考えていないかのように、我を通そうとする少年に対して、不満はどんどん膨らんで。
宥める言葉の甲斐もなく、不満はぽろぽろと溢れ出す。

「なんで……帰ってこないの。許してあげようと思ってたのに……」

直球で、核心に触れた。触れてしまった。

ダンテ > もはや手遅れである事は明らかであった。
彼女の顔に笑みが戻る事はなく、続けて紡がれる言葉や声は普段の甘ったるさを湛えたものとは違うもの。
『色欲』と人間から呼ばれた魔王の声とは、思えぬもの。
背中だけではない。こめかみにも汗が浮かび出す。

「あ、えーっと……っ、……、」

言葉が詰まる。
姉弟子から伝わっているのかいないのか、「もう戻らない」と明確に口にした一件が脳裏をよぎる。

「―――っ、俺は……、もう、帰る気はないんだ。」

それでも、言わねばならない。
それが決定的な一言であると理解した上で、それでも言わなければならない。

魔王アスモデウス > まだ、今ならまだ、謝罪一つで笑い話にできた。
息子のちょっとしたやんちゃを許してやるくらい、母親ぶることが。
少年の一言でできたはずだった。
だが、それは叶わなかった。

「……ほん、き?」

決別を意図する言葉に、その決意を問い返した。
ふる、と肩が震える。
それを聞いてしまえば、自身が何をしてしまうか、薄らと想像できていて。
それでも聞かずにいられなかった。

「本気で、かあさんから離れるつもり、なの?」

その問いかけには、懇願の色が混じっていた。
嘘だと言って欲しかった。
――叶わないと察していながらも。

ダンテ > 養母の事が嫌いかと問われれば、答えはNOだ。
ロクでもない母親であったし、ロクでもない人生経験ばかりつまされたが、それでも母親だ。
育ててもらった恩はある。五体満足で健康に生きているのは、間違いなく彼女のお陰なのだ。
それでも。

「……かーさんは、かーさんだ。だけど、もうあそこに戻るツモリはない。」

それでも、この養母の元にはいられない。
だから戻らない。あそこにも、そして、そこにも。
声が震えなかったのは、我ながら上出来であると思えた。
しっかりと彼女を見返しながら、からからの喉から絞り出した言葉。
明日の朝陽は拝めぬものと、その程度の覚悟の上で口にする。

魔王アスモデウス > (継続)
ご案内:「南部街道」から魔王アスモデウスさんが去りました。<補足:外見18歳/170cm/両性体/巨乳/ピンク髪ロング、紅眼、褐色肌/深紅の衣装、布靴>
ご案内:「南部街道」からダンテさんが去りました。<補足:黒の短髪、黒の瞳。ぱっちり眼に長い睫毛。童顔気味。>