2015/11/30 のログ
タマモ > 「そうじゃな、機会なんてものがいつくるかは分からぬがのぅ」
それは案外すぐに来るかもしれない、逆に永遠に来ないかもしれない。
結局は運なのだろうと思っている。
少女にしてみれば、知らぬ状態でやり合うのも実は悪くないとは思っているが、それは口にしない。
「ほほぅ…どれどれ?
………なるほど分からん」
その言葉を聞き、それは珍しいものだろうと思い取り出した鉱石を見る。
見はするのだが…魔力という存在から縁遠かった少女にとって、それはただの鉱石にしか見えなかった。
「力というならば、それはお互い様じゃろうな?
妾自身か…まぁ、確かにこの地では見られるものではないみたいじゃ、分からんでもないぞ?
興味津々といった感じじゃな、答えれるだろう事はそう多くはないじゃろうがのぅ」
ふむ、と頷き答える。
力に関しては言葉の通りだ、自身においては…種族としてのそれが強いだろう。
女としての興味はそれほど大きくないからか、解いた警戒を再び張るような真似はしていないようだ。
答えれるものだけは答えてやろう、そんな感じ。
目の前まで近付くだけの分には、何も手出しはしないだろう。
エドガー > 「なに、自分で言うのもアレだが…私は気が長い方だ。気長に待つさ。」
何時巡ってくるかも分からない機会を延々と待ち続けるというのも悪くは無いと男は思っていた。
なので、少女の言葉にも落胆するようなこともなく笑みを浮かべたままでいた。
「………なかなかどうして、皆はこの魅力を分かってくれないね。こんなにも綺麗だと言うのに。」
はっきりと分からないと口にした少女に、男は眉を顰めて困ったような顔をする。
こういう宝石や鉱石の魅力に共感してくれる知り合いが少ないと、少々寂しげに言葉を返す。
「そうだね…着ている君の魅力もあるのだろうが、その…服も中々魅力的だ。それに、その尻尾…毛並みも良いが、何より本数が多い。それじゃあ、まずタマモ君の服と種族について教えてくれないかね?」
少女の目の前まで近付けば、周りをぐるりと一周しながら姿格好をまじまじと観察する。尻尾に触れたくなったが、我慢しながら少女へと問いかけてみた。
タマモ > 「じゃろうな、なんとなくお主を見ているとそう思えるのじゃ」
そう、こういったタイプはそんなものなのだ。
魔族は確か長い時を生きる、そういう存在ならばなおさらだろう。
とはいえ、自分はそんなに気長ではない。ある意味感心したような感じだ。
「どうじゃろうな、あれじゃ…無駄に着飾ったりするような輩なんぞならば興味を示すのではないか?」
少女にはこういった宝石としての魅力自体も理解していない。
よく見る不必要に派手やかな連中を思い出しながら、ひらひらと手を振った。
「………う、うむ。
そうじゃな…服に関してはあんまし細かくいってもあれじゃ、着物とだけ言うておこう。
種族?よく勘違いされるがミレー族とやらではない、人間共には九尾の狐と呼ばれておる。
………そのまんまなどと言うでないぞ?」
こう、下手な行動をしなければ良いとは思ってはいたのだが…
身近な位置をぐるぐる回りじろじろと見られるとは思わなかった。
さすがにこれは、ちと恥ずかしいものがあるな…そんな事を考えつつ答えれる内容だったので答えてやった。
そんな気持ちに耳や尻尾は反応してしまうか、ゆらゆらと小さく揺れている。
ちなみに着物の細かな名称については、実は少女は忘れてしまっている、それだけだ。
エドガー > 「そうかね?そういうことを言われることも少ないから、中々新鮮だ。」
少女の言葉に、少し意外そうに片眉を上げる。
しかし、嫌悪などの負の感情を抱くわけでもなく逆に面白いと言いたげに返事をした。
「それもそうだろうがねぇ…無駄に着飾るだけしかできない人間に見せても、幾らで買う、としか言ってこないのだよ。」
全くもって面白くない。そう言いたげに顔を振って答える。
貴族の大多数は宝石の本来の美よりも、金に換算した数値にのみこだわっているようにしか見えなくて、男は余り好きではなかった。
貧民であっても宝石の美を感じてくれる方がマシだと考えていた。
「着物…に、九尾の狐か…ふふ、初めて知ったよ。ありがとう。 …できたら、女としての君も教えて欲しいのだがね?」
少女の返答に、丁度一周し終えて目の前に戻ってきた男が礼を言う。
ゆらゆらと揺れる耳と尻尾。やはり、作りものではないのだろうと眺めてから、笑って誘ってみた。
無論、男が女を誘うのを同じ意味での誘い。
タマモ > 「何、お主のようなタイプは見た事があるのでのぅ?
なんとなくそうかと思うておるだけじゃ」
それが良い事なのか悪い事なのかは別としてな、と心の中で付け足し呟いておく。
その言葉を逆に面白げにする相手を見れば、やはり変わっておるには違いないか…ぽつりと言った。
「ふむふむ…そうか、そういうところもあるのかのぅ?
妾にもどうもいまいちああいったものは分からんのでな、何とも言えんのじゃ」
花より団子なこの少女、煌びやかな宝石や衣装より、やはり美味しい食べ物の方が…そんな感じだ。
ゆえに、きっと自分にも理解は示せない。
はふん、と溜息をつくような仕草をしつつ、それを隠すつもりもないので堂々と言ってみせる。
「いやいや、その程度ならばのぅ?
ふむ、女としての妾か………?
………はぁ!?いやいや、ちょっと待つのじゃ、出会うたばかりでそういう事を言うものではないじゃろう!?」
よいよい、と手を振ったまま答える少女。
笑顔を見せて誘いの言葉を向ける相手、その言葉の意味をよく考えずに笑顔を返す。
ん?と何か気付いた感じで頭の中で言葉を復唱する。
僅かな間、やっと気付いたのか慌てた様子でばたばたと両手を振った。
よもやそんな話が人間ならばともかく、魔族である相手から出るとは思ってなかったらしいのもある。
戦の場である緊張感も無い上に、見事に不意打ちとなったのか、その顔は赤い。
エドガー > 「おや、私のようなのが他にもいるのかね?それは是非会って話をしてみたいものだ。気が合うかもしれないよ?」
似た者同士、類は友を呼ぶ。
自分と似たようなのが居ると聞けば、その人物に興味をもったらしい男が少女へ話しかけた。
少女の呟きは聞こえたけれど良く言われることなので、笑って流していた。
「まぁ、仕方の無いことかもしれないがね。人の趣向はそれぞれだ。」
好みや価値観に口出しをしたところで、どうしようもない話だということも男は理解している。
理解しているからこそ、残念で仕方ない。そう言いたそうな、やや渋めの表情で腕組をしていた。
「あぁ、女としてのタマモ君は、どういう風に乱れるのかな…と思ってね。 ………おや、変かね?次に会えるのが何時かも分からないのだから…誘える時に誘う、というのが普通じゃないかな?」
少女がどう反応するかを窺っていた男だったが、急に顔を赤くして狼狽し始めた少女を見て小さく笑った。
少女からの言葉を聞きながらも、攻められる時に攻めると言いたげに男が言葉を続ける。
隣に立つように移動してみては、そのまま腰に手を回して抱き寄せてみようとしつつ尻尾の一本を撫でようとして
タマモ > 「まぁ、なんじゃ、似たような感じであって同じではないのじゃ。
そやつも自分の興味ある事には本当に徹底しておるからのぅ…」
思い出しているのか、少し視線を外し…深々と溜息。
言った言葉に悪いとは思ってないか、言葉を流されようと何とも思ってないような感じだ。
「うむ、結局のところはそうなってしまうな」
少女の場合は残念に思うというか、それさえもどうでもよいような感じであった。
「そういう事に関しては、人間はともかく…やはり魔族やらも変わらぬという事かのぅ…?
いや、むしろ貶めて従属させて等とそんな事を………考えてはおらぬようじゃな…
い、いや、別に変ではないのやもしれぬな?…ちょっといきなりで焦っただけじゃ」
考えてみれば魔族も人型だ、それを考えていてもおかしくはなかったではないか…なんとか頭を働かせ考えれば、少しずつ落ち着いてくるか。
まだ顔は赤いものの、こほんっと一つ咳払い。
なにやらありそうな目論見を突いてはみようと思うが…まだ読んでいるままの表層心理には、それが無い。
普通にそういった誘いをしただけだと知る。
いや、そうだとしても云々、考えているところで…腰に手が回され抱き寄せられた。
自然と身長差からか見上げるような形になる、大人しくはしているものの、尻尾を撫でる手はそのまま撫でさせた。
弱い部分は奥へと隠している、残っているのは力を象徴する為に存在するものなだけに、そういった刺激は受けないようだ。
エドガー > 「ほぅ…それは益々会って話をしてみたいものだ。君の言う人物の興味があるものを知ってみたいからね。」
少女の言葉に、益々話してみたいという欲求が高まった男は楽しげな表情を浮かべながら話す。
理解できるかは分からないが、話だけを聞くくらいだったら出来ると考えていた。
「…おや、私が魔族だと気付いていたのかね?それも、タマモ君の力なのかな?
ふふ、そうだねぇ。そういう風にタマモ君を調教してしまうのも悪くないかもしれないね。中々、魅惑的な女性だから。
だが、今は普通にタマモ君という女性を知りたいと思っているだけだよ?」
少女が既に男の正体に気付いていたことに、驚いたような表情を浮かべる。
だが、だから何か問題があるのかと言えば、はっきり言って無い。誰かに聞かれているわけでもないからだ。
抱き寄せた少女を見下ろして言葉をかけながら、尻尾を撫でる。毛並みの良さを堪能しながらも、少女の返答を待っている状態だった。
タマモ > 「むむむ…そうじゃな、それも機会があればいずれ紹介しよう、その時にでものぅ?」
難しそうな表情、それはそうだ、その人物は自分の世界の住人であってこの世界には存在しない。
自分がこうしているのならば、もしかして…と考えれば、そう言い繕っておいた。
「………あ。…うむ、まぁ、一応はのぅ?
うぐっ…わ、分かった、分かったのじゃ。その程度ならば相手をしてやるから余計な事を考えるでないぞ?」
しまった、そういえば見破っているのを言ってなかった。
そう思うもすでに遅い、問われれば、渋々といった感じに答えた。
相手の言葉に余計な事をまた言ったかもしれないと思うも、今は普通に誘っているだけで済みそうな感じだ。
それならば、と釘を刺しつつも溜息混じりに頷いた。
不満そうな表情は変わらないが…
撫でる尻尾は繊細で柔らかな感触を与える、撫でている方も気持ちよく感じるような。
さて、返事はしたものの、相手はどういった行動を取るのやら…
エドガー > 「ふふ、愉しみにしておくよ。」
その機会が何時になるのかも分からないが、其処は気長に待つことにする男。
口元に笑みを浮かべながら、少女に返事をした。
「まぁ、聞かれて困るような人間はいないようだから構わないがね。
ふふ…余計な事を考えないかどうかは、タマモ君次第かな?それじゃ、行こうか。」
余計な事を考えないかどうかは、実際その時にならないと分からないと男は口にする。
そういうことをしたくなるくらいに少女が乱れれば、変わってしまうかもしれないと言いたげな口ぶりだった。
ため息混じりに頷いた少女の尻尾の毛並みを堪能しながら、男は少女を抱いたまま歩きだす。
適当な宿を取っているから、少女と一緒に歩いていくのだった。
ご案内:「ティルヒア 都内の路地」からタマモさんが去りました。<補足:名簿参照。>
ご案内:「ティルヒア 都内の路地」からエドガーさんが去りました。<補足:黒い燕尾服、茶色の革靴、黒の杖、黒いフード付きのローブ>
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」設定自由部屋3」にアノーさんが現れました。<補足:待ち合わせ>
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」設定自由部屋3」からアノーさんが去りました。<補足:待ち合わせ>
ご案内:「◇テルヒア軍駐屯地」にアノーさんが現れました。<補足:待ち合わせ>
ご案内:「◇テルヒア軍駐屯地」にリーゼロッテさんが現れました。<補足:毛先の辺りに緩やかなウェーブが入った薄茶色のロングヘア、青い丸い瞳の童顔。幼児体型に、可愛らしい軍服。>
アノー > ング=ラネク山近郊の傭兵部隊駐屯地。先日、テルヒア軍に参加した現地傭兵達によって組織された傭兵部隊である。
その実態は分散してオリアーブ島に上陸したナナシ部隊。その数100名である。
現地雇用による傭兵部隊の連携をとるための訓練として当面オリアーブ島に駐屯する許可を得た隊長、ジャックはその駐屯地をング=ラネク山近郊の村に決めそこに滞在している。傭兵達の評判はそこそこで訓練よりも村人との交流を優先し力仕事や警邏などを主に行っていた。
今日、そこにテルヒア軍における同盟関係を結ぶために魔法銃遊撃隊の隊長と傭兵部隊隊長の会合を予定していた。
・・・・・
傭兵部隊長ジャック。
本名はアノー・ニュクスというナナシ部隊隊長の一人は村に間借りしている屋敷にいた。
持ち主は戦争が始まるとさっさと逃げ出したらしい。
その屋敷の前、門の処でジャックは煙草を吸いながら件の魔法銃遊撃隊の隊長の到着を待っていた。
リーゼロッテ > 魔法造兵廠へ多くの仲間を残し、護衛程度に兵士を引き連れてやってきたのは、同じ山の付近にある駐屯地。
戦地の村をそのまま駐留地にしていると聞いていたものの、村人の気配は荒立った様子がなく、この少女はそれが普通のように感じて、相変わらずのんびりしている。
寧ろ、そばにいる参謀はそんな平和な様子の至る所へ視線を向け、用心深く歩いていた。
「……参謀さん、敵さんのところに行くわけじゃないんですから」
そんなに警戒しなくともと、苦笑いを浮かべる。
呑気な様子だが、少女も内心不安がいっぱいだった。
自分がほしいと、あからさまな言葉をあれだけぶつけられたのだから。
一応、彼にもその旨は伝えたものの、相手の男と少女の様子次第と、今は答えを出さずにいる。
彼がいる屋敷へと辿り着くと、あの夜より解けた雰囲気の少女と、対極的に怜悧な目で彼をみやり、朴念仁な青年が見えるだろう。
その後ろには兵士が10人ほど、一応の護衛である。
「こんばんわ、えっと…こっちが参謀さんです。凄く頭がいいので、難しいことは参謀さんにきいてください」
洗浄に似つかわぬ、甘ったるい声で紹介する少女。
いつもの事と表情を変えること無く、参謀は よろしく と緩やかに頭を下げる。
落ち着き払った瞳は、まるで彼を見通そうとかするように鋭くささって感じるかもしれない。
アノー > 主な産業は農耕であったが、魔導石の採掘を機に山に借りだされた者も多く、そのまま兵士となった男が多いとのこと。
そのため比較的女子供、そして老人が多い中に兵が駐屯したが風紀を乱すわけではなく、あくまで紳士的に交流を続けてきた。
無論、酒場の娼婦や村人と良い仲になる者もいたがそれは個人の裁量の範囲内でである。
ともあれ、
「ああ」
と、男はひらりと手を振ると煙草を消した。
麻の上下で簡素な服装。無精髭。冷静で、鋭利な瞳で射抜く青年に対して男は余裕をもった態度で手を上げた。
「確認したいんだが、部隊協力の話し合いだったはずだな? その実宣戦布告の話しだったか?」
おどけた調子でそう言うと男は屋敷の中へ彼らを迎え入れるだろう。
数十名はゆうに入れる食堂に通すと軽食と酒を用意させる。
「シンプルに聞こう。お前の考えを聞かせてくれ。いや、お前たちの考えを聞かせてくれ」
食堂の席につくと、少女のほうへと視線を向けて男はそう問いかける。
リーゼロッテ > 少女は 男の人が少ないような気がする という程度の感覚でしかないが、参謀は男が少ない理由に察しがついたようだが、特に何も言うことはない。
確認を求める声に、なんでしょうか? と微笑んで首を傾げる少女だが、続く言葉に苦笑いを浮かべる。
「ごめんなさい、参謀さん疑り深かったり、用心深くて…奥さん以外の女の子も怖がらせるんです」
ダメでしょう? なんて、飼い犬を叱るように呟いて振り返る。
何で自分が小娘に叱られねばならんのだと、一瞬不機嫌そうに少女を見やると、こっそりと脇腹を突っついた。
ビクッとする少女は恨めしそうな顔で参謀を見上げるが、当の本人は何食わぬ顔でさっさと建物へと入っていく。
「はんはぇ?」
この間抜けな声が出たのも、差し出された軽食を何の警戒もなく口にしたからである。
サンドイッチを咥えたまま呟く姿は、まさに子供のそれ。
ゆっくりと少女をみやり…腹ただしいほど深い溜息をついた参謀が、代わりに答える。
一つ、魔法銃そのものを渡すことが出来ない。代わりに元になった魔導武器を渡すので、そこから作って欲しいということだ。
もう一つは、少女を欲した理由を求める。
見ての通り、男を知るには知った程度の小娘をどうするつもりかと…。
まずはその二つの答えを求めるようだ。
アノー > 「さあな、怖がらせるなら俺も似たり寄ったりだ」
そう言って男は食卓に着く。
大人には酒が。子供にはジュースが並べられるだろう。
「わかった。こっちの技師は明日到着予定だ。現物が無い以上、当初の改良の工程はずれこむことを了承してくれ。それとリーゼロッテを欲した理由か・・・」
男はどうしたものか、と顎に手をやって無精髭を撫でた。
ぞりぞり、という小さな音を3度鳴らしたところで、
「若い頃に亡くした妻に似てるっていう話じゃ納得できないか?」
と、片眉をあげてこの男の精一杯の冗談めかした顔で言った。
リーゼロッテ > 「――っ な、何でそんな顔するんですかっ」
そりゃ、素直に手を付けすぎだろう と、傍に居た兵士がさも当たり前のように突っ込んだ。
そうなの? と首を傾げる少女に、周りの兵士がそうだと一同に頷くと……恥ずかしくなってきたのか、真っ赤になって俯いた。
そんな日常茶飯事の光景には目もくれず、アノーの言葉にそれは仕方無い事としてて参謀が頷いていた。
何で魔法銃本体を渡さないのだろうか? なんて少女は相変わらず分かっていない。
機構が知られれば、そこから元の術を独自に解析される可能性があるとすれば…用心に越したことはない。
参謀はその辺も理解した上で、最善の手を選んだのだろう。
そしてもう一つの問いに、冗談めかした言葉に参謀が流石に冗談と思ったらしく、小さく笑うのだが。
……隣りにいた少女は、今度にジュースでむせていた。
「こほっ、げほっ…!? わ、私に似て…ってその」
もういい黙れと、参謀が無表情のまま少女の額に渾身のデコピンを叩き込む。
ぴぃっと悲鳴を上げる少女は、額に両手を当てて痛みに小さく震えている。
そして、改めて参謀が問うだろう。
王国の人間がそうまでして彼女を欲するのは、体目当てではないのだろう?と。
アノー > 「毒なんか入ってないさ」
そういって男は時分からサンドイッチを取り一口食べて他の兵士にも勧める。
しかしまあ、少女の様子を見るとますます思う。
兵士にはもったいない、と。無論、兵士という職業に憧れや憧憬を抱くものをとやかく言う気はない。
だが、この少女は本当に兵士になりたかったのか?
学術と魔術を学び、普通の生活に未練があるのではないか?
それらの言葉を内の中に溜め込み消化した後で、男は口を開いた。
「すべからく、皆元王国国民だ」
お茶を濁すようにはぐらかす。
王国の人間だと認めたわけではない。
「俺は俺の出来る範囲のことをやる。子供が戦場の修羅場を潜るには早すぎる。女の捕虜がどんな道をたどるかなんぞ、わかりきってるだろ」
慰み者か奴隷落ちか。
それらの末路は参謀とてよく知っていることだろう。
「で、俺が王国の人間だったら何か期待してたのか?」
男は笑いながら煙草に火を点けた。
リーゼロッテ > 証明に口にしてみせるアノーの様子をみやり、参謀もそんなつまらないことはしないだろうと思えば、そこは疑らなくていいと兵士達へ告げる。
「ほら、やっぱり! こんなところで変なのが――」
そういうことじゃないと 参謀によって、再び脇腹に軽い貫手を打ち込まれる少女。
私の何が悪いのやらと、前のめりになる少女に参謀からは溜息しか溢れない。
「ぇ、えぇっ!? じゃ、じゃあジャックさん達って、て、て敵さ」
べしっと少女の唇に手を当てて、言葉を遮りながら参謀は彼の言葉に耳を傾ける。
勿論、捕まった場合どうなるかなんてわかっていると彼も答えるだろう。
しかし、戦いに赴いて綺麗な体で帰るかどうかの賭けと、金の為に毎夜男に抱かれるかの二択しかないだろうと、少女の現実を告げる。
こんな天真爛漫な少女が大金を稼ぐなら、それこそ金持ちのおもちゃになるぐらいしかない。
目的は満たせても、心はずたずたになっていることだろう。
続く言葉には、参謀は違うと頭を振った。
寧ろ、そちらがそうするつもりだったのではないかと。
少女から魔法銃の全てを知り尽くし、少女を壊す。
そうすれば、最適なノウハウを独り占めできる。
最悪な場合の答えを告げて、参謀は彼をじっと眺めて様子を見ていた。
アノー > 「すでにリーゼロッテはズタボロな気がするがな」
なんだかさっきから手痛いツッコミをもらってる姿しか見ていない。
参謀の言葉を聴き終えてから1拍。男は紫煙をくゆらせてから言う。
「まず、俺が王国の人間だと仮定して話そう。仮の話しだ」
そう言って男は部下の男に手を振る。
部下の男は軽く頷き退室すると部屋の周りから一層人の気配が遠のいたのに参謀は気づくだろうか。
先ほど料理を持ってきた使用人からなにまで姿を消したのだ。
「戦場はくそったれだ」
男はそう言って煙草の灰を灰皿に落とした。
「罪もない子供や村人を殺さなきゃいけない。そこに大義名分があれば毒だろうと大砲だろうとお構い無しだ。俺ら傭兵や兵士が死ぬのはいい。どうせ大儀や栄光だとか金とか戦場のテンションを求めてやってくるロクデナシの集まりだ」
ジジジ、と煙草が焼ける音がする。
「だがそこのガキはなんだ。戦場も知らない子供が何を粋がった所で子供だ。自分だけは大丈夫とか思ってやがる。超えられない壁は無いとか信じている。なにより――此処は」
男は手のひらを静かにテーブルに置いた。
此処。屋敷。オリアーブ。テルヒア。王国。戦場。バトルフィールド。
「俺達の仕事場だ。神聖な仕事場だ。子供が荒らしていいところじゃない」
そういって男は静かに煙草を灰皿に押し付けて消した。
「――王国の人間だとして。王国が勝つと信じ込んでるとして。俺が知っている男ならこうするだろう。『このガキは俺が戦場で捕虜とした貴重な情報源ですでに尋問を行っている。俺の許可無く他の兵が尋問、拷問、詰問することは許可しない。戦後このガキの所有権及び後見は俺が担う』。ってな」
リーゼロッテ > そうです、もっといってやってくださいとモガモガいっているが、こういう時だけは強きだなと参謀が少女を見やる。
何やら彼の手振りで人間が遠ざかっていくのが、参謀には分かった。
勿論、そこでもがいている少女はそれどころではないので気づいていない。
肥溜めの様な地獄、人を人と思わない狂気、欲望に死する場所。
そんなことは参謀も知っていることだ。
ガキ呼ばわれされる少女も、流石に自分のことだと分かったようだが、反論が許されない。
未だに参謀の掌が口を塞いでいるからだ。
ここで少女が余計なことを言って、拗れたら困ると参謀は冷静に事にあたっていた。
最後に紡いだ言葉は、遠回しながら少女を庇おうというものに感じると、参謀はなるほどとつぶやく。
この男は少女を戦わせたくないのだと、その意図を察すると同時に、もう一つ問いかける。
つまり、女としてよこせというのではなく、引き受けさせろといいたいのかと。
お荷物扱いになっている少女は、その言葉に訝しげに二人を見やる。
大人二人の会話についていけない、まさに子供の様子であだ。
アノー > 「・・・・引き受けさせろ、か」
男は渇いた喉を潤すように水を一口飲むと、
「『どっちもだ』」
と、言い放った。
「言ったろ。亡くした妻に似てんだ。子供だから助ける? 肩入れする? 冗談言うな。主義の問題だ。それを部隊に徹底させるわけ無いだろ。敵に子供がいたら撃たずに味方に撃たれろと言う気はない。敵が子供でも俺達は撃つ。泣く泣く撃って戦後酒と女を抱いて吐瀉物と一緒に吐いて嫌な記憶として溝に捨てる。敵だったら俺達は容赦しない。あっちはもっと容赦しない」
男はそう言って窓の外を指差した。
否、方角か。王国の方角。
「そいつに肩入れするのは俺の気まぐれだ。女としても寄越せと言うし、気に入ったからはべらせたと王国にも言うだろう。結果として、魔術部隊の身柄は捕虜よりずっとマシになるってだけの話しだ」
一息。
「ま、全て仮定の話しだがな。俺が王国の人間だったらの話しだ。さて、シンプルにいこう。お前たちの返答は?」
リーゼロッテ > 死んだ妻ににているから、そして子供だからと、両方の理由に少女も静かになっていく。
撃ちたくもない相手を撃てる人の整理の付け方、少女が自然としてしまったことと同じ所が一つだけあった。
戻してしまったこと、嫌な記憶とともにぶちまけてしまった苦しさ。
誰も根っこは同じで、変わらないのかもしれないなんて、少女は悲しげに笑う。
そして最後の言葉に、参謀は答えた。
預けることは出来ない、それは確実とまでは言わないが、安全であろう場所の確保には成功したからだと。
だから、それ以外の埋め合わせであれば可能な限りに応えると告げたのだ。
おそらく、少女を失えば、彼女を拠り所にしてまとまっていた部隊は崩れ落ちるだろう。
奇しくも、この天真爛漫な娘が部隊の楔になっているのだ。
「――あの、場所の確保って。そもそも私をその…」
そういう意味もあるかもしれないが、そればかりではないのだろうと参謀が少女にボソリとつぶやくと、ぽんと赤くなり。
「ぇ、えぇっ!? そ、そうなんです…か?」
じゃあ今日の覚悟は何だったのだろうかと、慌てながらもアノーへ視線を向けるだろう。
アノー > 男は黙って参謀の話を聞いた。
ふむ、と軽く唸って背もたれに背中を預ける。
「つまり、魔術部隊はこう言うわけだ。『魔道具の基礎は教えてやる。だが、隊長の身柄を渡す気も無ければ試作品も渡せない』」
頭をぽり、とアノーは掻き言った。
「ならば折衷案と行こうか。内部協力者として同調していただきたい。『安全な場所』といったが、それはどういう意味での安全な場所だ? 敵は誰だ? 王国か? それともテルヒアか? 俺達か?」
少女のほうを見やり、男は小さく笑った。
「俺達は傭兵だ。報酬があれば働くし必要とあれば剣を取る。――さて、商談の整理といこうか。
お前たちがこれからすること。俺達に頼むこと。そして『埋め合わせ』の内容を聞こう」
リーゼロッテ > 何でダメなのだろうかと、参謀を見上げる少女。
参謀はこの戦いが始まり、ここへ配属され、少女と兵士達を見ながら一つの考えをまとめていた。
そしてそれは実現する手前まで迫っている、しかし、実現までに自分達が持つかどうかは別だ。
その合間を埋めてくれるだろう彼らに、差し出せるカードが少なくなっているのを知るのは、参謀だけのこと。
引受先の条件は3つ、一つは少女を引受先の所属にすること、もう一つは魔法銃の技術の応用は漏らしてはならない、最後は大きな土産を持ち帰らないといけない。
その三つを伝えると、引受先についてはこう答える。
今はどこでもない、今後何処になるかは引受先が決めると。
そこを隠すのも、引き受けの条件なのだろう。
「――そんな話、初めて聞きました」
それもそのはず、話せば迂闊な少女が何をしでかすか分からないと、すっぱりと言い捨てる。
迂闊な行動が多い少女としては、反論ができず、うぐっと痛そうな声を上げてはねていた。
そして商談はこう告げる、オーダーは彼らの技術士に安定した火力が出せる魔法の銃を作ってもらうこと。
こちらが提供するものとして、一枚の紙を差し出す。
戦争が始まるまでに採掘が終わった魔導鉱石の産出量が記載されたものだ。
売ればかなりの大金になるであろう、転用すれば装備の増強も十分に行える量。
それを提供すると、参謀は交換条件を告げた。
アノー > 「・・・・ふむ」
どうやら、すでに参謀のほうで部隊の行く末や少女の未来を見通しているようだ。
否、すでに話を決めておりそこに向けて動き出している。
「つまり、こっちは技術提供を行う代わりに魔導鉱石を手に入れられるわけだ」
魔導鉱石それ自体は貴重なもので、この戦争において原因の大きな理由となっているとアノーは見ている。
しかし、どう考えても相手にとって旨みが多い話。なにせ『戦争に勝ってしまえば此処を陥落した報酬として魔導鉱石が手に入る確率が高い』からだ。
「悪いが、それだけじゃ此方は受けれないな」
すでに王国側の間諜であることを気づかれている以上、帰したくないのが本音である。
ジョン・ドゥならば『喋れなくするべき』と言うだろう。戦時行方不明者は枚挙に暇が無い。
「テルヒア軍の内部情報。所属魔族や所属軍の大まかな規模を知りたい。随時情報の提供を希望する」
対して、
「此方が提示するのは『残された者の亡命』だ。
お前の話から察するに、部隊全員をその組織とやらに移すわけではないのだろう?
少なくとも――奥方と一緒にお前も組織に引受けられるわけでもないと見たが?」
残されるものがいるのではない?
例えば、後ろの警護10名は全員そのことを知っているのか?
残されることを知ってテルヒアに密告するものだってでるかもしれない。
「リーゼロッテ」
男はそう言って、少女のほうを見るだろう。
「お前はどう思う?」
リーゼロッテ > そういうことだと頷く。
だが、それだけでは引き受けられないというなら、何を求めるのやらと参謀は続く言葉を待つ。
所謂スパイ行為を求められるわけだが、少女はその中の一つに目を丸くしていた。
魔族、それが自陣にいるということだ。
特に毛嫌いするわけではないが、魔族がいることは良くないことの前触れにも感じて、参謀へと視線を投げかける。
そして、続くのは兵士達の亡命。
自分達は取り残されるのかと、兵士達が若干動揺する中、参謀はうつむく。
「わ、私は…私だけが逃げ――」
困惑する少女は、仲間を置いていくつもりなんてない。
だが、参謀の好意を無下にも出来ず…引き受けるしかないのではと、言葉を紡ごうとした瞬間、再び参謀が口を塞いできたのだ。
顔を上げた参謀は、何故かにやりと笑った。
そうだろう、そう思うだろうと。
答えた、兵士達も、自分達も引き受けてもらえる。
誰一人残す気はないと。
ハッタリをするには無謀な内容だが、参謀は揺るぎない自身を笑みに含めていた。
アノー > 「だろうな、私だけが逃げる気はない、と言うだろう。お前は戦場を知らないからな。簡単にそんな言葉が出る」
そして、続く参謀の言葉。
「つまり、その組織ってのは全員を受け入れると? テルヒア首都にいるだろう兵の家族、参謀の家族全てを受け入れると?」
そこから推察する組織の規模は相当でかい。
それは1組織といえるのか? 国ではないのか? 今このテルヒアにいる組織の中で外部と通じ、兵達の家族もろとも受け入れられる場所――
「お前――」
やおら、無精髭の男の瞳に剣呑な色を宿した。
つまり――臨戦態勢。剣に手が伸びる。
「その話が本当なら、500人規模をすべて引き受け、家族まで受け入れる組織となったら領邦しかない」
この男にとって、そのハッタリは。
「お前、魔族に寝返る気か?」
当然の帰結として。
テルヒアと親しい間柄に現在有り、500名――兵士の家族を含めれば1000の可能性だってある――を受け入れる場所としてそこしか思いつかない。
ちなみに、アノー・ニュクスの算段ではフォンローク家における工芸職人の亡命に紛れ込ませる予定であったわけだが。
リーゼロッテ > 家族という点には苦笑いをこぼす参謀、そして兵士達の表情も曇る。
ここにいる兵士達は家族という依代を失っているものが多い。
だから、そこで話についていけない少女をシンボルとしてまとまっていくのだ。
家族は少ないが、それも含むだろうと参謀は答える。
ともすれば、それはかなりの領地となるだろう。
彼が剣に手を伸ばした途端、兵士達も同時にライフルを握る。
この距離で射撃せずとも、銃剣で突き刺すことぐらい出来るはずだ。
険悪な雰囲気の中、魔族の配下になるのかと問われれば、頭を振った。
それでは、自分達が危なっかしすぎて休まらないと。
「ぇ、ちょ…ぁ、あの!」
これは危ういと思った少女が慌てふためきながら立ち上がると、収めてといいたげに掌を向けていく。
「参謀さんがいったってことは…き、きっとジャックさんには害がないってことなんじゃないでしょうか…ね? ね?」
こんなことになる話なら、頭の良い参謀のことだから伏せたことだろう。
けれど語ったならば、それは害にならないから買ったに違いない。
少女は参謀との付き合いからそんな答えを導き出すと、泣きそうな顔で兵士と彼を交互にみやり、訴えかける。