2015/11/16 のログ
ご案内:「街路」にアルマゲストさんが現れました。<補足:身長190cm/長身痩躯/腰まで伸びた黒髪/灰黒色の軍服めいた衣服、白い手袋/片手に赤黒い表紙の書物>
アルマゲスト > まるで病んだ男性の横顔のように頼りない月明かりに浮かび上がるその場所。
アルフリークの主戦場より北。堅実なる街フラ=ニスへと伸びる一本の道。
連絡路として用意されたのだが、フラ=ニスの称号が意味を亡くすと同時に忘れられた道のひとつ。
小高い山の間を抜けるその道はとりあえず舗装はされているが、今となっては通るものはほとんどいない。
時折、旅人や、魔族などが迷い込んで通って行く道だ。
つまるところ、今のこの状況では密偵や伝令が通るのにうってつけ、の道の一本である。
「―――と、読んで来てみたのだが、存外、簡単に見つかったものだな。」
例えば、そう滑らかな声で紡ぐ彼の前に倒れている、黒尽くめの男のように。
二人の“出会い”はほんの数分前、馬で奔る男の前に、突然、虚空より歩み出た彼。
「こんばんは――」なんて淡い挨拶に言葉を返す余裕は無かっただろう。
―――現れると同時に、乗っていた馬が半分、消し飛んだのだから。
当然の帰結として、落馬して、地面に落ちて、気絶する。そして現在に至る、という訳だ。
「さて、君はどちら側かな?まあ、どちらにしても構わない。
できれば、なるべく詳しい情報を教えてくれるとよいのだけれども。」
滑らかな言葉が、気絶した男に触れる。当然、返答は無い。
密書の類などは持っていなかった。所属を示すものも、身分を示すものも。
恐らくは伝令か。あるいは書物にできないようなものを記憶している相手か。
そんな相手に紫の瞳を向けながら、ゆるりと、手を伸ばす。
頭を細い手指が掴めばそのまま、自分より幾分背の低いその姿を、持ち上げる。
「では、申し訳ないが、運が悪かったと思ってくれ給え。」
そう、ささやかに滑らかな言葉が紡ぎだした。
アルマゲスト > 月明かりに浮かび上がる姿。片手で自分よりも体重が重そうな男を吊り下げる彼。
その傍らには、まるでコルクでも抜いたように滑らかに上半分が消し飛んだ馬の死骸。
柔らかく夜気に紛れるその血と臓物の香りの中に、仄かに、音が響く。
パラパラと古紙がめくれるような音。男の空いた掌の上で赤黒い表紙が開いて一人でにめくれていく音。
彼の目線はそこにはない。掲げるようにもった男へと緩やかに向けられて。
「では、はじめようか。」
そして、まるで、日課を口にするように言葉が紡ぎだされたその瞬間―――。
ギシリ、と男の頭蓋が軋む。さして力を込めたとも思えない細い指先が髪に、皮膚に食い込んで
ビクビクと、男の全身が痙攣しはじめる。目を覚ました訳ではない。
まるで身体の部位が反乱を起こしたような出鱈目な動き。手足が、指が踊るように暴れ
その耳や、口や、閉じたままの瞼からまるで溢れるように鮮血が零れ落ちていく。
―――記憶を、思考を無理矢理に盗み取る。
それがそういう術だと、見るものが見れば知れるだろう。
脳髄の中を無理矢理かき回し、そこにある情報という情報を根刮ぎ奪い取る。
術を施されたものがどうなるか。
その結果は、彼の腕の中で壊れたマリオネットのような踊りを踊る男を見ればわかるだろう。
それを見ながら、彼は微笑った。左右対称に整えられた顔。
両方の瞳が同じように細まって、唇の両端が正確に同じ角度で釣り上がる。
それは、まるでそうあるように作られた正確無比な微笑。
アルマゲスト > 流れ込んでくる記憶。情報。それはただの情報ではない。
男が誰であるかということから。どこの所属で、どんな情報を持っているか。
その人生そのものと言える記憶。まるで水でも飲むようにそれを奪い取って飲み干して。
そして―――。
「ああ。もう十分だ。
どうもありがとう。―――君。」
そう告げて、軽く片手で捨てる。馬の死骸の上に、ぐちゃ、と落ちる男。
指の痕をありありと刻んだその姿に、もう息が無いのは誰が見てもわかるだろう。
指先を、緩やかに一本ずつ開いては閉じる。
「――なるほど。いや、成る程。
これは幾分以上の戦争に発展しそうだ。面白い。」
笑み載せた侭の唇。
緩やかに蒼く変わった瞳を一度閉じながら、まるで詠うように言葉が紡がれる。
それと共に胸元から取り出すのは黒革のシガレットケース。
片手で器用に一本、黒く細長い紙巻煙草を取り出せば、銜える。
仄かに灯る焔。じわりと、赤く、程なく濃い紫煙の香りが交じるだろう。
尤も、それよりも濃い血臭の方が遥かに勝るだろうけれども。