2015/11/27 のログ
ご案内:「ング=ラネク山 ティルヒア魔法造兵廠」にリーゼロッテさんが現れました。<補足:毛先の辺りに緩やかなウェーブが入った薄茶色のロングヘア、青い丸い瞳の童顔。幼児体型に、可愛らしい軍服。>
リーゼロッテ > 戦争が始まる少し前から、魔法学校でしか作られていなかった魔法銃の量産と強化のために設けられた工場。
今のところ、魔法銃を使えるのはほんの僅か。
青田買いの様な投資は、死に物狂いというような勝利の執着が生み出した愚かさの象徴なのかもしれない。
少女は装備品のアドバイザーとして招かれ、部隊を連れてこの工場へと現れた。
工場内はまだ未稼働な領域が多く、それこそ戦争が終わるまでに稼働し切るのかすらわからない。
その異常さは内部を案内される少女も異常と分かるもので、傍を歩く参謀は涼しい顔をしているが、嫌な予感しかしていなかった。
「魔術鉱石の増幅器を…ですか?」
生まれて間もない魔法技術である魔法銃だが、その回転速度の裏側に大きな欠点もある。
強力無比な本来の魔法の高火力を実現しづらいということだ。
そもそも、それに相反するしそうで生まれた技術なので当たり前である。
学校に居た頃、成績優秀者にのみ修練を赦された応用技術。
それが魔術鉱石を使った増幅装置だ。
水鉄砲にかける水量と穴の大きさを絞れば、小さな鉄砲でも勢い良く発射できるが、加減を間違えれば鉄砲は壊れる。
人を殺す技で間違ったらどうなるか、火を見るより明らかだろう。
少女が驚愕していたのは、まだ基礎になる魔法弾しか使えない部下に、それを使わせろという無茶な司令に対して。
工場の主任は、言われたまでと淡々と説明するが、その危険性に俯いていく少女はどんどん青くなっていった。
傍らで参謀が代わりに話に耳を傾け、扱いについてをつぶさに記憶していく。
リーゼロッテ > (「私が使うならともかく、皆が使ったら…」)
学校で習った時に口酸っぱく注意されたのは、その取扱について。
銃へ掛かる負荷、コントロールの難しさ、全てに注意を傾けながら練習し、意識せずともそれが自在になるまで訓練ですら使用を禁じられるほどだ。
事故で銃が真っ二つに折れて、破片が飛び散って怪我をした友だちがいるのも記憶に新しい。
うつむき、記憶に沈んでいく少女へ主任から言葉を求められるとハッとして顔を上げる。
「え、えっと……!」
まるで聞いてなかった。
参謀がぼそっと耳元に説明を纏めて囁くと、あわあわしながら頷いている。
「はい…普通の銃は早合型の筒のタイプで大丈夫、です…。私のは、クリップ式のもので」
形状について答えれば、主任は分かったと頷いて出ていってしまう。
実際に出来上がった増幅器でも持ってくるのだろうか。
参謀は苦笑いを浮かべながら肩を叩くも、心は晴れない。
「…参謀さん、使わせないと、ダメ…なんですか?」
不安げに見上げると、彼は時間を稼ぐと答えた。
その間に早急に訓練して、事故らないようにして欲しいと。
かなり無茶な話だが、無理を通さないと大切にしてくれる兵士達が死んでしまう。
表情を引き締め、ぎゅっとスカートの裾を握る。
「…わかりました、頑張ってみます」
こくこくと頷くと、窓の向こうを見やる。
不慣れな銃を手に周囲を警備する兵士達。
比較的奥側にある陣営なので、王国軍が攻め込んでくる率は少ないが…戦いはじりじりと圧されていた。
現れませんように、今日も無事に終わりますように…。
目を閉じ、そんな願いを心の中で呟いた。
リーゼロッテ > しかし、願いは通じなかったのかもしれない。
足早に飛び込んできた兵士が、参謀へと近づいていく。
自分ではなく彼、指揮能力の高さはわかっているものの彼が高い事に間違いない。
けれど…彼ばっかり、苦労させるのは偲びない。
じぃっと様子を見ていると、参謀が振り返り、報告の内容を噛み砕いて説明していく。
「地下道なんてあるんですか…」
最前線から少し離れた森の中にある洞窟から、ここまでが自然に作られた地下水の道としてつながっているらしい。
一人ぐらいなら余裕で歩ける道もあるらしいのだが、何やら不審な物音がするそうだ。
参謀が何人か偵察におくれと言おうとしたところで、遮るように言葉を絞り出す。
「あ、あのっ! 私がいってきます…」
意気込んだ様子に兵士と参謀が驚くも、ダメだと慌て始める。
しかし、ここばかりは退けない。
少女は目をつぶって頭を振ると、二人へ確たる意志を持った目で見つめた。
「ここで一人で戦うなら強いのは…私ですから、それに、皆さんはお疲れでしょうし」
毎日戦いの日々、自分と違って毎日走り回る彼らの疲労もかなりのものだろう。
少しでも自分でできることと、意気込み強く言い切れば、足早に説明のあった地下道の入口へ走っていく。
ため息を付いた参謀が後を追いかけると、鉄のドアになった入口の前で少女を引き止める。
「……はい、無理は絶対しません、大丈夫です」
敵を見たら直ぐ逃げろ、危なくても直ぐ逃げろ、何かあったら直ぐ戻れ。
それを約束させると参謀は鉄のドアを開く。
腰元にランタンをぶら下げ、少女はドアの向こうへと足を踏み入れた。
階段を下り、暗闇にランタンの明かりが広がる。
水路の道はところどころ魔法によって灯された明かりがあるものの、薄暗く、何がいるか分かったものではない。
リーゼロッテ > 造幣所の地下水路、自然にできた洞窟を一人進む。
水の流れる音と自分の足音だけが響く。
何かが辺に反響して聞こえてしまっただけではないだろうか?
そう思いつつも、心には不安ばかりつのって、ライフルを握る手に力が入ってしまう。
緊張に包まれた不安な表情、凡そ探りに来た兵士というよりは、お化けでもみた子供の様な歩き方。
不意に、首筋に掛かる冷たい何かに背筋をそらす。
「ひゃぁっ!?」
ばっと振り返るも、そこには何もない。
今度は頬に冷気が垂れる。
ビクッと跳ねながら壁に背を預けると、その正体が目の前で滴り落ちた。
天井を見上げれば氷柱のような鍾乳石が伸びており、そこから水が滴り落ちたようだ。
「びっくりさせないでください……」
深くため息を付いて、ひと安心するも…まだ何も居ないとは限ったわけではない。
再び奥へ奥へと進む、水面の上に、おっかなびっくりあるく少女の影がゆらゆらと揺れていた。
ご案内:「ング=ラネク山 ティルヒア魔法造兵廠」にアノーさんが現れました。<補足:革鎧にロングソード。カンテラ。王都よりテルヒア軍へ間諜として送り込まれた傭兵。>
アノー > (貴方が歩く洞窟の奥。ちらりちらりと火の揺らめきが見えてくるだろう。 ちょうど洞窟の先はカーブしており貴方からはその姿が見えないだろうが、少しだけ光の下に追いつけばカンテラを持った男が一人洞窟内を歩いているのが見えるだろう。腰にあるのはロングソードだが、それは鞘に収まっている。 男は防水加工をされた羊皮紙に何かを書き込みながら歩いている。どうやらマッピングを行っているようだ。)
(兼ねてより魔導技術や魔石の採掘などがこの戦争の行く末を左右すると考えていた男はその調査に入っていたのだ。さて、貴方がこっそりと様子を窺うだけならば男は気づかないだろう。だが、近づきすぎれば男に気づかれることだろう。つまり、「男が洞窟の調査をしていた」とだけ報告する分には少しだけ様子を見て引き返せば可能だということだ。)
リーゼロッテ > 「……?」
洞窟の奥に見える自分以外の赤い光。それに気づくと少女は静かにしゃがみこんだ。
丁度ケープの下にランタンを隠すようにして明かりを遮ると、静かに男の様子をうかがう。
一人でこんなところを彷徨いて、更に何やら羊皮紙に書き込んでいる。
天然なところがある少女でも、彼が敵か、あるいはそれに準じる何かであることぐらいは理解できた。
(「敵、敵さん…ですよね」)
予想より早く1対1という状態が生まれてしまう。
どうしよう、すぐに戻ろうかと思うも、彼は気づいている様子はない。
何か決定的な証拠みたいなこと言わないかな?とか、何処と無く軽い言葉が脳内に浮かぶ。
でも幼い顔は真剣そのもので、ポケットからハンカチを取り出すと銃口にそれを被せる。
魔法を仕込んでしまうと光でバレてしまうが、魔法陣を広げて準備した際、こうやって布で遮れば見つかりづらく、撃つときに邪魔にならないと、学校で習った通りの技術を駆使する。
いつでも撃てるように準備だけしておくと、どうやらもう少し様子を見ているようだ。
アノー > (カンテラの明かりはゆらゆらと揺れている。男は少女の姿に気づいた様子は無く、羊皮紙に丁寧に黒炭でなにやら書き込んでいく。 徐に懐から取り出した煙草に火を点けるとゆっくりと吸い始める。)
「ふー・・・」
(やや疲れたように息を吐くと首の骨をぼきぼきと鳴らす。見た目からして装備品は普及品で統一されており、手にしているロングソードまでも特殊な軍隊が使うものではない。そんじょそこらの戦場で拾ってきたものを見た目を磨いてはい新品、と店で掴まされたようなものだ。革鎧に関しても言わずもがなで身なりから推し量ることは難しいだろう)
「さて、こんなものか・・・」
(男はそう呟いて懐に羊皮紙をしまいこむと煙草を一服。紫煙を吐き出しながら、自嘲気味に呟きつつ歩き出した。どうやら貴方の方向へと歩き出したようだ。)
「・・・で。出口はどっちだ」
リーゼロッテ > (「やっぱりなにか調べてますね…怪しい、怪しいです」)
むむっと幼い顔で訝しげな表情を浮かべるが、あまり締りがない。
味方ならこんなコソコソした調査もしないし、何よりこちらにも勘違いされないように一言いうだろう。
格好はありふれたもので纏められている辺り、一般兵とかと呼ばれる人かな?なんて思うも、軍属なりたての少女には詳しいことがわからない。
つぶやき、こちらへと歩いてくるのが聞こえると、ビクッと体を跳ねらせ驚いてしまう。
せめて奥に帰ってよ! なんて思ったとかなんだとか。
泣きそうな顔をしながら、学校で習った事、使った魔法を思い起こす。
とにかく逃げる、逃げれるように足止めしないといけない。
準備していた魔法をキャンセルして、銃口からハンカチを取り除くと、四つん這いでコソコソと下がっていく。
カーブを戻りながら素早く天井を狙うと鍾乳石の裏に緑色の魔弾を撃ち込んだ。
カーブの裏、光が漏れることはないはずと。
撃ち込んだのは、女神の瞬きと呼ばれる魔法だ。
近づけば頭をバクリと捕まえようとする巨大ハエトリグサが襲いかかる、名前とは似つかわしくないトラップだ。
棘状の繊毛が女神のまつ毛っぽいからって、学校で習った時は思わず笑ってしまったけれど。
何はともあれ、仕掛けながら更にジリジリと下がる。
もう一度銃口にハンカチをかぶせ、茶色い魔法陣を準備しつつ、逃げの陣を敷いていく。
アノー > 「まったく、テルヒア軍に雇われたが拠点防衛のアドバイザーという立場になったはいいが何年前の地図だこれは」
(そう、男の現在の立場は「戦時拠点防衛の助言者」という位置づけになる。これは傭兵としての戦歴からの結果だが、ナナシ部隊で偽造された経歴でもある。もっとも、そこまで大差ない経歴ではあるが。名前がアノーではなくジャックということぐらいか。元々魔導石の確保こそが首都攻略より最重要と踏んでいた為、このような経歴を使ってテルヒア軍に潜入している。もっとも、このング=ラネク山の鍾乳洞や数多の洞窟はかつてとある大戦にて使われた天然要塞こと「イオウジーマ」の戦略がそのまま使えると踏んでいる為、戦略的防衛のためにここが重要かつ地図作成こそが攻略と防衛に重要と認識している。さて、)
「・・・・」
(さて、未だに貴方の存在に気づかない男は其方へと向かって歩く。ハエトリ草のトラップまであと数十歩、数歩、三歩、一歩。)
(刹那、緑色の魔法が発動した瞬間男は驚いたのが先か条件反射が先か。カンテラを放り出し背後へと跳躍し身を伏せてそのハエトリグサの正体を確かめるだろう。)
「モンスターか!?」
(という、驚きの声と共に)
リーゼロッテ > (「え、えっと敵?味方…?えっと、えっと」)
敵とも味方とも取れる言葉が少女を惑わせる。
その間にも、彼はこちらへと近づいてきていた。
どうしよう、幸いにも仕掛けた魔法弾は殺傷能力の低いものだ。
ハエトリグサの内側は棘が生えそろっているわけではなく、内側の粘液と挟みこむ力で動きを封じるためのもの。
考えているうちに魔法弾が発動すると、唐突に急成長して飛び出したハエトリグサは、一番近い彼の頭を挟み込もうとするも空振る。
うねりうねりと待機するハエトリグサは、一目見ただけでは草系のモンスターのようにも見えるだろう。
どうしよう、参謀さんならどうするだろう?
頭の良さそうな参謀なら、きっと彼に揺さぶりをかける筈。
ふと前に読んだ小説のフレーズが浮かぶ、そう、カマをかけるってあったなって。
そんなことしている場合なのか、それより逃げたほうがいいんじゃないか?
……少しはみんなの役に立ちたい、その気持ちが天秤を傾けると、少女は彼の前に飛び出し、魔法弾を自分の前方の地面に撃ちこむ。
硬岩の守壁、岩の壁を作る魔法だが、この通路なら通せんぼになるはず。
彼が近づけば飛び出すように仕掛けて終えると、すぐさま銃口を彼へ向ける。
「ぁ、ぁ、あな、貴方の目論見なんて、全てお見通しです…っ! これ以上、悪いことするなら…う、撃っちゃいますから、ねっ!」
まるで締りがない。
上ずった声を張り上げるも、音が崩れて素っ頓狂だし、ストックをしっかり肩に当てているのが幸いして、銃口こそ彼へまっすぐ向いているが、カタカタ震えている音が聞こえるだろう。
緊張、不安、恐怖、負の感情が入り混じった自身のない顔で彼を睨む顔すら怖さがない。
ランタンがケープから介抱され、暖かな光が大きく青い目が特徴な、子供っぽい顔を闇に映し出すだろう。
アノー > 「・・・・・おい、その近くにモンスターが! ・・・・」
と、言った辺りで男は察した。
服装からしてテルヒア軍だということはわかる。いや、これで王国軍なら王国軍と分かる軍服を着て敵地に潜入するとかアホだろ、と思う。
この場において多少デザインが違ったとしてもテルヒア軍以外の人間が軍服を身に纏うわけがない。
見た目は子供か。もっともそれとてエルフや昨今噂の魔族ならば年齢と外見が一致しないこともありえるが。
いや、そうか。ふむ、と男は考えを一巡巡らせた後、
「俺は怪しいやつじゃない。それよりお前こそ何者だ! 今の草系モンスターを召還した魔法! あれはどうみても――」
一息
「パックンフラワーだろ! かつてキノコ王国の姫を浚い赤き配管工の勇者に倒されるまで悪行の限りを尽くしたといわれる亀魔王の配下! それを召還するとは貴様――魔族だな! 聖なるテルヒアに魔族が忍び込んでいるという噂は本当だったのか! 貴様らこそ我らがテルヒアをこれ以上汚すのをやめろ!」
一個として?がないのは自分が自分で「それはないよなー」って思っているからだ。
とはいえ、銃口を突きつけられている以上両手を挙げて口だけ動かしつつ其方へと近づこうか。
「見たところ、口径は7.62mm式のライフルだな。長さは1mといったところか? その大きさだと重さは4kgを超えるだろう。銃身の長さからして射程距離は400mと少し。この距離なら間違いなく当たるだろう。先ほどの魔法を見る限り、重くなりそうな部分は省いていると見たが? だが、それだとしてもお前――新米だろ。魔族の新米。銃剣に錆びも汚れが落ちにくい柄部分に血も見えない。そして、」
もし、貴方が許すなら岩の壁の前まで近づこうか。
壁の高さはどれほどだろうか。とはいえ、至近距離まで近づいてしまえばこちらの格闘術圏内である。
「安全装置が掛かったままだぞ、新米」
失笑を込めてホラ吹いた。
リーゼロッテ > さぁ、これでぼろを出すがいい、何かそれらしいことをいうのだ。
なんて心の中で思えるほど余裕はない。
落ち着き払った彼の様子を見やり、やはり敵さんなのかと緊張した面付きでぎゅっとグリップを握りしめる。
「……ぇ、えっと…?」
全く聞いたことのない話が飛び出してきた。
ハエトリグサ…しらないのかな? とキョトンとしつつも近づこうとする彼へ銃口を向け続ける。
「こ、来ないでくださいっ! う、撃っちゃいますよ!」
岩の弾ではなく、魔法弾だが手傷ぐらいは追わせることはできよう。
トリガーに指をかけると、再び聞き覚えのない単語が並んでいく。
射程は予想より長いか少し短いかぐらいだろう、この人は何を言っているんだろう?と思えば、余計に不思議に思えば訝しげな表情に変わってしまう。
発動範囲に近づいた瞬間、投石器の縄を切ったかのような俊敏な速度で岩の壁が生まれた。
高さは180cm程、横幅は通路を覆えるほど。
岩が生まれると同時に、体に覚えた感覚で咄嗟に飛び退くも…最後の言葉は余計だっただろう。
少女の顔が一気に引き締まった。
「この銃には安全装置なんてものはないですっ、それに…ここにいてこの銃を知らないなんて、貴方、やっぱり敵さんですっ!!」
ここは魔法銃の造兵廠の地下だ、少なからず味方であれば魔法銃について多少なり見聞きはしているはずだ。
魔法弾を見ても魔族といい、火薬銃の話と聞き覚えのない単語。
こちらを知らぬ存在、つまり敵だと少女は断定するときびすを返して逃げ出そうと走りだす。
アノー > 冗談が通じないタイプ。優等生タイプだな。それに――実戦も経験が少ないか。
「おいおい、冗談の通じない奴だな。読んだことないか? 昔絵本であったんだが。まあいい。」
来ないでください、と言われれば男は立ち止まった。
そして、視界に現れる岩の壁にほぅと息を吐いた。
「なるほど、魔法として射出する道具なわけか。つまり杖のでかいバージョンだな。魔法の精度も威力も高いがそれだけに扱うのは難しいだろう」
感心したように言った後、男は笑った。
「なるほど、なら安全装置も無いな。って、おいおい。テルヒア軍ってのはそんなに排他的な国だったか? 俺は傭兵だ。傭兵部隊の隊長と拠点防衛のアドバイザーを兼任している。悪いが火薬式の銃のほうが一般的でな、そんなマイナーな魔法銃なんて代物は噂でぐらいしかしらん。戦場で使えるのは個人が使える兵器よりも大勢が使える兵器だ。必要なら身分証明証もある」
とはいえ、そこまで言っても貴方が走り出したのでは追いつけない。
なぜなら――目の前に壁があるし。180cmの壁を素手で登りきるのに時間は掛かるし、その間に逃げ切ることは可能だろう。
横が1ターンで覆われてしまっているなら壁が生まれる前に此方が突撃することもできない。
リーゼロッテ > 「…こんな、武器を向けられている状態で冗談なんて」
よく言えるものだと思ってしまう。
彼の感じた通り、経験も少ないし真面目なタイプ。
むぅと少しだけ不機嫌そうな顔を見せるも、子供っぽい顔では迫力はない。
魔法銃としてのそれらしい見解には、近いような遠いようななんて思うも、近づいた瞬間に一気に逃げ出す。
振り返ったら殺されるかも…!なんて、恐怖すら感じているのだから、余裕なんて何一つない。
しかし、味方だと言い張る彼の声に、ぎゅっとブレーキをかけると、そろりと振り返る。
壁を解かせる嘘かもしれない、なんてまだ疑っている。
足音が止まったので、逃げようとするのを辞めたのは分かるはず。
念の為と壁の裏側でケープを脱ぐと、裏返して地面に広げ、内側に向けて魔法弾を撃ち込む。
薔薇蔦の鎖、もし彼が悪いことをしようとしたら、この茨の鎖で捕まえれば大丈夫と、一人な分、臆病なほどに準備をするとケープを肩に戻す。
緑色の光は、気をつけないと気づかない筈…そう思いながら壁へ近づけば、防壁を解除していく。
「う、嘘だったら…参謀さんがイジメ倒しますからね…!」
きっと涼やかな顔で酷い拷問をするだろう。
我儘をいったときに酷い想像をさせられて、真っ青になってガクブル震えてしまいそうなほど怖がらされたことがある。
その時のことを思い起こしつつ、消えた壁の向こうで疑り深く睨む子供の顔が見えるだろう。