2015/11/16 のログ
ご案内:「荒野アフリークの主戦場」にシドさんが現れました。<補足:分厚い漆黒の全身鎧。兜の隙間から銀髪が覗いている。>
シド > アフリークの沿岸沿いが燃えてる。戦いに舞い上がる砂塵に覆われているのだ。
やがてマグメール側の兵士が鬨の声をあげて勝利を遂げる。ティルヒア軍は初戦の上陸にと失敗し船にと帰還を遂げる。
それに追い打ちを掛けようとする兵士の前に立つ青年が叫ぶ。
「みな聞け!この度の戦いはティルヒア軍の上陸阻止ではない。この沿岸に砦を作りオリアーブ島への足掛かりとするのだ。
血を啜りし剣はしまえ。敵を追う真似は許さん。我らはこれより砦の建築に入る。」
マグメール側の兵士達が血に濡れ疲労色濃く顔ながらも、司令官たる青年に従いて次々に資材を運び行く。
天幕からそれを覆う石垣まで……その様を見届けてから青年も重々しい土砂袋を抱えて動き出した。
軍勢は数にして数千――初戦の出足こそ挫いたが追軍に勝てる保証もない。その兜から覗く目元には汗が幾多も浮かぶ。
各陣営が様々に動き出す中、青年が選んだのは防衛のための、そして島に攻め入るための陣営造りで軍功を稼ごうとしていた。
シド > 兜の目庇を開けて見る葡萄色は忌々しいものを見るかに眉宇寄せて海を睥睨している。
晴天に眩い海は陽光を様々な感覚に反射して煌めいている。ただ眺めるだけならば……肉体労働の憩いにもなっただろうが。
その所以は―― 敵軍の舟が睨みを聴かせるように未だに撤退しないからだ。
「……ただじゃ帰らないか……拙いなこれだと兵の指揮にも影響が出る。」
改めて眺める軍勢は傭兵が多数。金で急ぎ集めた人員が多数だ。同数ならば、気勢が此方にあるならば従う輩だろうが。
砦を作るための前準備たる陣営を作る動きが遅々となる。己と同じように敵軍を眺めて動揺が走り始めるにまた声をあげた。
「人員の半分を見張りに出せ。何か動きがあれば知らせろ。
いいか。ここで逃げ出すのは男じゃない。
任せれた仕事を完遂させろ。ここにいる者、様々だろうがみなマグメールのものだろう。家族を、大切なものを守るために動け!」
青年の叫びにまた動き始めるが……やはり人手不足はやむを得ない。
兵に顔色伺われぬよう、目庇で再び面を隠しても、青年の銀の髪波は不安気に風に揺れていた。
シド > 兵達の指揮を保つため、作業から離れて沿岸側にと立つ。
敵を威嚇するための漆黒の鎧――複雑な造形に造られすべらかな金属片が光放つような其れ――
を晒す敵にせめて畏怖に近しきものを与えられれば、と。
時折後ろに振り返れば何も無かった平原に着々と天幕あがりて壁が生まれつつある。
やがて家臣の1人が恭しく訪れるのに彫像が如く佇んだ体を翻して。
「石材が足りない? ……ならば土砂を使え。ここは夜になれば寒い。水でも掛けて凍らせれば間に合いの壁が出来るだろう。
私達はまず足がかりを作る。完璧じゃなくていい。ここに兵が集められる空間を作―― 。」
突如、何かが風斬る音、振り向きざまに翳した手は青年の胸元を狙った矢を握っている。
放たれた方向の軍船を見遣りて兜の下のくぐもった鼻息を溢れる。
「こんなちょっかいを掛けるということは、奴ら再び攻めてくるつもりはないな。
おい、見張りを減らしていい。砦の制作に尽力しろ。出来るまで帰れると思うな。」
シド > 空高くあった太陽が沈みゆく。荒野も海も全て茜色に染め上がる頃に……幾つも建てられた天幕。
それを囲む石壁が裾長い影を地に引かせていた。鎧も脱ぎもせずに重労働を強いられた兵士たちは司令官の側であることも構わず。
疲労困憊とした体を座り込ませて休んでいる。無理もないと兜を手に取り彼ら1人1人の肩を叩いて憩いの言葉を投げかける。
青年もまた憑物落ちたが如く険しい顔を緩めて微笑みを浮かべていた。少なくとも今襲われたとて安全に違いないのだから。
「ご苦労。給金は弾むぞ。だがこんなところで休んでいては風邪を引く。
各自おのおのの天幕に戻り休息を取れ!」
一歩、一歩、その重たげな体を引きずり去りゆく兵たちの背筋を眺めて、青年も鎧を解いていく。
緊張と疲労に汗張り付く衣服の裾を引っ張りながら苦笑いを浮かべて。
「後は別の諸侯の軍勢にここを委任して終わりだ。が……湯を浴びたいな。湯殿まで作っておけば良かったか。」
そんな戯言も冷たい夜風が掬いゆく。そんなアフリーク主戦場の一幕――
ご案内:「荒野アフリークの主戦場」からシドさんが去りました。<補足:分厚い漆黒の全身鎧。兜の隙間から銀髪が覗いている。>