2015/11/28 のログ
カレリア > 「それは…まぁ、確かに。」
魔族も人間もあまり変わらないというのはここ最近で嫌と言うほどわかってきていたので肯定する
「そうですか…では、そうなると良いですわね?」
既にこの大戦の未来は予想がついている
今はティルヒアが持ちこたえているだけでそれもいつまで続くか…
だがそれは自分には関係なかった
「気の遠くなる考えですわね…ふふ、ご謙遜を。
弱いというのはあくまで魔王の中で、でしょう?」
つまり人間やそこらの魔族等相手にならない、そういう事だろう
遊ぶ相手も消えてしまったので無理に歯向かう必要もない、少なくともこちらから手出しはしないだろう
クラリッサ > 「ええ、論理的な思考ができる生物同士の争いですもの、何か劇的に変化はしません」
人間をやめて魔王になって200年、結局人間も魔族も根っこは変わっていない。
これを身に染みるほどわかっていた。
「まあそうなるといいのですが…まああと半月持てばいい方でしょうね」
ため息をつく
だが敗戦時に起こる略奪や凌辱、これを見るのはすごく楽しい
それを思うと思わず笑みがこぼれた
「はい、だって時間はたっぷりありますから…いえいえ、実際弱いですよ
私1人ではたぶんあなたにも勝てないでしょう」
これも嘘ではない、ただちょっと面白そうなので誘ってみる
ただの魔王の気まぐれだった
カレリア > 「そうでしょうね、戦争は終わりあとは略奪に凌辱。
どこでも戦争なんて変わりませんわ」
そう、どこだって…と呟き視線を逸らす
本当に両方潰れてしまえば平和になるのに…そんな考えがよぎる
「そうですか、それは光栄ですわね♪
ですが…良く知らない魔王を気分で相手取る程思考は鈍っていませんわ?」
仮にも魔王、それを相手にするには情報が足りない
分かっているのは魔王、魔族でありながら聖属性を扱えること分身を自由に操れる事
たったこれだけ…ゴリ押しだけで魔王を圧倒できるとは思っていないが、魔王と相対できるなんて滅多にない
「ですので…今回はお試しをさせていただきますわ♪」
クラリッサ > 「戦争の後の略奪と凌辱は見てて楽しいですよね~今から見物が楽しみですわ…ゴホン」
つい本音が漏れる、魔王としての品格とかそういうのは一切抜きの本音
初対面の相手につい本音が出てしまった事に気付いて慌てて咳払いをする
「あら、お試しですか…いいですよ」
ニコニコしながら答える
ここでは遠隔地過ぎて全力はどうせ出せない
だから地味に現地で産んだ触手を潜伏させてもさっきの1000体が限界
だからさっきのようなゲリラまがいの戦法しか取れない
最も今1人死んでもどうってことはない
だからカレリアの思いどうりにさせよう
そう思って隙だらけの態度で待ち構える。
カレリア > 「本音を漏らしましたわね♪」
つい笑ってしまう
シスターの格好をしているがやはり格好だけか、と
「えぇ、お試しです…が…」
即座に距離をつめクラリッサの頭を魔力強化した腕で薙ぎ払う
眼には薄く怒りの色が
「あまり舐められた態度は好きではないですね…もしやる気がないのなら、貴女の本体を探し出しますが?」
目の前のクラリッサも先程の戦場に現れた者も全て分裂体や分身体、いわゆる手駒だろう
彼女たちに何をしても本体にダメージはないだろう、それは良いが…
一体だけで相手をしようと思ったのが腹立たしい
クラリッサ > あっさりと頭が弾け飛んでその体は触手となって地面に落ちる
それと同時に地表付近に潜伏させていた分身1000体を展開
光の矢の一斉射撃を上空に向けて放つ
「あらあら、さっきも言ったじゃないですか、おいたはいけませんよって」
まだ若い。
率直にそう思った、怒りへの沸点がまだまだ低い
それは長所とも短所ともとれる
そんな彼女がたまらなく面白かった
「私の本体に会いたいのでしたらいつでも歓迎しますわ、ただし4つの穴からたくさん産んでもらいますけど」
地上からでも聞こえるように大声で呼びかける。
これは半ば本気、これほどの少女に触手の苗床になってくれるのならば大歓迎
そう思っていた。
カレリア > 上空で矢を回避しながら解析を行う
ただの魔法ならいいがそれ以外だと少し面倒だ
「ですが、流石にこれは…」
所々に被弾してしまうのは仕方ない
何せ相手はもはや軍団、1000体の同時攻撃は流石に躱すだけでは捌ききれない
「私に何かを産ませたいなら、求婚でもしてくださいませ♪」
ニタリと笑う
光の矢…正体は光属性の一般的な魔法
魔力を媒体としていることが後はこちらの物、撃ち込まれる矢を自分に当たる分だけ空中で制止させていく
クラリッサ > 「あら、求婚すればいいんですか、じゃあ結婚しましょう、子供は触手1億匹を2人で産みましょう、それと人間の基準で言ったら350人ぐらい他にお嫁さんがいますけどいますが構いませんか?」
嬉しそうにしながら声をかける
普通なら頭の中身を疑われるようなない様だが本人は全くそんなことを気にせずに
だが魔法があっさりと止められる
これは苦手な馬鹿強い個人のタイプだ
領土内ならとにかく1000人しかいない状態では少々きつい
反撃に備えていつでも地下へ退避できるようにする
分身の最大の長所は戦術面での奇襲、退却がやりたい放題な点だ
カレリア > 「求婚を受け入れるのはまた別問題ですわ♪」
それは結婚ではなく隷属では?と言いたいが堪える
少なくとも誰が触手なんかの苗床になってたまるかと周囲の分身体達を見回し
「所々切れてしまいましたわね…痛いですわぁ♪」
腕を振るえば光の矢は全てクラリッサ達を狙い…発射される
数にして数百はあるが全てを殺しきるには数が足りない
だが数は相当に減るだろうとすべての矢は心臓か頭を狙ったが果たして…
クラリッサ > 「あら、残念ですわ」
割と本気で残念そうな声をあげる
そもそも価値観が違うのだから仕方がないかと思い
撃たれた光の矢は自分の撃ったものと変わらない
だが個人でこれだけの物が打てるとは大したものだと感心しつつ被害が出ないだろう30体のみを空を飛んで突撃させて
残りは光の盾を出して防御に専念させる
その盾も一部で貫かれて300体ほどが致命傷を受けて元の触手になって地面へと消えた
カレリア > 「およそ三割…でしょうか。」
まぁ上場、と呟く
今の様な手段は次からは通用しないだろうがそれでも数をここまで減らせたのはかなり上出来に見える
「さぁ、次は何でしょうか?
来ないのならこちらから…」
そうは言いつつも積極的にこちらから攻撃はできない
相手は数が多い、自分の魔力を使っていてはどうしてもポーションで補給の時に隙ができる
できるだけ相手の攻撃を使った方がロスが少なく立ち回れる
クラリッサ > 「あら、300も個人にやられるなんて久しぶりですよ、あなた十分強いじゃないですか」
どうも自分から動く気がない様だ
迎撃されたらそうしようかと心配していたが問題ない
「来ないならこちらから…なんて言っているのは油断ですか?」
そう言って飛んだ30体が一斉に距離と詰めてカレリアに抱き付いて動きを止めようと
カレリア > 「十分…それでは足りないんですの…」
ゴキ、と手を鳴らす
こちらに飛びかかるのは30人、魔法戦を捨てての肉弾戦か自爆特攻かはともかく
まずは一人ずつその腕で薙ぎ払う
人でもなんでもないのでいつも以上に楽しい…ついつい笑みが零れる
「油断はありませんわ、貴女の現状での戦力を考えた結果の事です♪」
掴まれば引き千切り地面に投げつけ、頭を砕き腹部に蹴りを入れ文字通り蹴散らす
相手は単独でで軍と戦うことはできるだろう
だが一人一人にそこまでの脅威はないと判断する。後700弱、心配なのはこちらの体力が持つかのみ
クラリッサ > 30人の自爆はきっちりと読まれている
どうにもちゃんと頭の方も回る様だ
「向上心もある、貴方ならきっとすぐに魔王と呼べるぐらいの力を持てますよ…あと50年ぐらいもしたら」
そう言い残して30人が全滅する
「けど覚えておきなさい、人間の戦術が通用しない相手もいるということも」
そう言うと地面に潜伏していた分身の残り700体が地面から出現、先ほどと同じ光の矢を放ってすぐに地下へ逃げようとする
カレリア > 「長いですわね…50年…」
半鐘をへてやっとたどり着ける境地…恐らく言葉の通りだろう
そこに小さく絶望しながらも迎撃は忘れずに
「ちっ…失態ですわね。」
矢はもはや自由に操れるが地下に潜られてはどうしようもない
視認できなければ流石に制御も難しいうえに大地を抉れるほどの効果力の技は安易に使えない
実際問題彼女達が出てこなければこちらも手出しできない、引き分け…もしくは戦略的に考えれば負けである
クラリッサ > 「あら、50年なんて貴方が思っているよりあっという間ですよ」
一人だけ地面に出て声を変える、やはり彼女は若い
50年など魔族からしたらあっという間だがそれを長いと感じる辺りがまだ若い証拠だと思い
「では、私はか弱い魔王ですのでそろそろお遊びは終わりにして…」
特に意味のない構えを取って
「全力で撤退させていただきますわ!」
そもそも小競り合いもとっくに住んだ以上長居する意味はないし、偵察用の分身をこれ以上減らされるのも困る。
いい暇つぶしができたとばかりに満足して分身を全力で撤退させて去っていった
ご案内:「オリアーブの主戦場」からクラリッサさんが去りました。<補足:白い修道服、分身>
カレリア > 「私からすれば寿命の殆ど、でしたわ。」
半魔…半端な魔族、寿命も純粋な魔族には劣る
人間を少し超えただけ…そう思っているのもあってか50年なんて今まで生きてきた分の何倍もあるのだから長く感じてしまう
「………凄いですわね」
1人だけ出てきて全力で逃げていった
魔王らしくない…と言うより彼女は魔族なのかも怪しく思えてきた
「仕方ないですし、これを頂きましょうか。」
手には700を超える光の矢、それを全て魔力に分解し圧縮
いざと言う時のための保険の為に結晶化しておく
魔力のロスは多いがこれ程の量ならそれも無視できるレベル
「ふぅ…私も、撤退しましょうか」
そう漏らし自分も戦場を後にする
残ったのは両陣営の死体の山、そして色濃く残った魔力の残滓
ここで何が起こったのか…それを知る者は数えるほどだろう
ご案内:「オリアーブの主戦場」からカレリアさんが去りました。<補足:紫色のサイドテールにシンプルなドレス>
ご案内:「オリアーブの主戦場」にハスタさんが現れました。<補足:イカしてない服装の貴族風ながたいの良いおっさん。>
ご案内:「オリアーブの主戦場」にリーゼロッテさんが現れました。<補足:毛先の辺りに緩やかなウェーブが入った薄茶色のロングヘア、青い丸い瞳の童顔。幼児体型に、可愛らしい軍服。 >
ハスタ > 時間はそこそこに夜頃。
季節は寒い時を迎えるが、この時間帯に吹く風が一番冷たい。
自分の足元から地平線の彼方まで。暇を持て余したおっさんは思った。
何か、冒険してみたいと。
そういうわけで、やってきたのが戦火に溢れる戦場の一角だった。
普通なら正気を疑われそうなものだが、生憎このおっさんに正気という物などカケラも存在していない。
とは言え、流石に魔法弾と魔法矢が飛び交うようなバリバリ戦闘中のところに足を踏み入れる訳でもなく。
ティルヒア側が制圧している、警戒状態では緊張はしていようものの、
穏やかそうで、嵐の前の静けさっぽい、しーんとしたところを彷徨していた。
人通りはあんまりなかった。
「―――ううん。」
ただまぁ、明らかにイケてない貴族服をダサくしたような服装とか、
胡散臭そうな自称冒険者めいた挙動不審な振る舞いからすれば、結構というかまんま不審人物だった。
時間帯と歩く場所をあと一歩間違えたら捕縛されそうなものである。
おっさん的には王国側の勝利に賭けているので、
適当にティルヒア軍にちょっかい出してみたくもあったわけだが。
何処の野営地や軍事拠点にちょっかい出そうかって考え続けてきょろきょろしてニヤける姿は誰がどうみても不審者だろうか。
リーゼロッテ > 「変な人…ですか?」
ティルヒア軍が制圧した地域の一角、少女と兵士達はそこにいた。
また新たな戦場に放り込まれるのだろうけれど、今は少しお休みと、王国軍の手が及びそうにもなく、戦場から遠くもない場所に滞在している。
少女も何も命令が来なければいいのに…なんて夢みたいなことを考えながら、さっきまで参謀と一緒にお茶を楽しんでいたところだ。
貴族のような格好に、冒険者っぽい立ち振舞。
報告から察するに、この辺に道楽に覗きに来た王族か貴族といったところだろう。
少女は何でそんな変な人がここにいるんだろう?なんて首を傾げているが、参謀は難しい顔をしていた。
「…狙撃、ですか」
魔法弾もしっかりと圧縮して狙えば、まっすぐに遠くにいる敵を射抜くことができる。
参謀曰く、兵士達を差し向けて、事情聴取をするらしい。
そこで彼女には近くにある大岩から様子をうかがい、危なかったら援護して欲しいということのようだ。
人を撃つのは嫌だが、危険を排除するために体を張ってくれる仲間のため、ぎゅっとライフルを握りしめて頷いた。
「が、頑張ります…」
こうして男3人ほどの兵士が長銃型の魔法銃を手に、彼へと近づいていくだろう。
近づけば、ここで何をしているだの、どこから来ただの、いろいろ問いかけてくるはずだ。
一方の少女は兵士達の斜め後ろにある大岩の上に伏せて、様子をうかがっている。
距離は200m程、普段はつけない遠距離用の単眼鏡をのせて、不安を抱えながら見守る。
メガネごしに映る人は、嫌なぐらい目に焼き付いてしまう。
殺した、その感触が嫌なほど伝わりそうで…撃ちたくないと思いながらも、震える手を落ち着かせようと深呼吸する。
ハスタ > 「…うん?おじさん?」
あ。やばいっぽい。流石にアホな事をし過ぎたらしい。
冒険だー、とかなんだとか言ってたら完全にティルヒアの兵士っぽい武装した男性達がおっさんに問い掛け始める。
「いやぁ、おじさん怪しいもんじゃないのよ?だから一旦落ち着こう?ね?
その物騒な物をしまいましょう?」
何かまずい気がしてきた。流石に一人で人間のエリアをずうっと冒険したらこうなるわなと言う事で。
おっさんはしかし、別にまずいとは毛ほども思っていない揶揄するようなニヤけ顔で両手を上げて、
男たちの質問を適当に流した。
おっさんは変態である。が、故に男性やあんまり可愛くない女の子が来たところで適当にあしらうのである。
おっさんの冒険の目的には勿論可愛い女の子いないかなぁっていうアレな目的も含まれている。
「まずは一つ目!おじさんがここで何をしているか。冒険だよ。」
ゆっくりゆっくり後ろに下がりながら、狙撃するにしては恰好な的として大きな体を一歩一歩と後退していく。
ついでに人差し指を立てて質問に答える。
「それで二つ目!何処から来たか。そうねぇ、強いて言うなら王国から来たとか言ったらどうするんっすか。んん?」
二本目、隣の中指を立てて続ける。
そう嘯くと、彼等の顔色や心象は悪くなるだろうか。
狙撃用の眼鏡には多分意味不明な程にやけているおっさんの顔がでかでか映し出される。
おっさんの身体は全体的にでかい。上手いこと位置を取ったら、楽々スナイプする事ができるだろう。
「え?同行?事情聴取?…ちょっとちょっと、そりゃ嫌なんですけど?!触らないで下さいよぉ!いやぁ、変態ィ!ヒャッハァ!」
で、まぁふざけまくってたら多分彼等も手元に携えた銃を突き付けて、強行手段に出てくるのだろうか。
(本人曰く)黄色い悲鳴を上げて身を捩りながら男たちから距離を取りつつ、
彼等に何か良い感じの夢が見られる素敵な睡眠の咒いの術を行使して、一先ず眠らせようと試みた。
凄くナチュラルに。ヒャッハァ!という常人には理解しがたい意味不明な詠唱と共に。
おっさんは、こんなに腐りきっても魔王である。
リーゼロッテ > あぁ、貴方だ と、兵士達が頷いている。
ライフルを手にした兵士達が彼に問いかけていく。
その様子をレンズ越しに少女は見つめていた。
声こそ届かないが、彼もちゃんと返事を返している…のだけれど、屈強な兵士達が尋問しているというのに、にやけた顔をしているのには、幼い彼女でも妙だと思える。
凄く嫌な予感がする、外れて欲しい。
祈るように心の中で呟きながら、切っ先を下に傾けた銃剣を二脚代わりに固定しながら、様子を見守っている
冒険か、いいことだと兵士達は答えた。
自分たちは殺し合いの真っ最中だというのに、呑気な男だと思えるも、言葉が真実かはわからない。
続く言葉は兵士達の気配を変えさせる、注意深く様子を見ていた程度のイエローシグナルの状態から、一気に赤い警戒へと気配を変貌させた。
それなら動向願おうかと、一人は槍のように銃剣を構え、残りは銃口を向けて、彼を狙う。
「ぁ、ぅ……どうして…っ」
つかの間の休息は終わってしまいそう。
悲しみに包まれるより早く、取り押さえようとした兵士達が眠らされてしまうのが視野に飛び込む。
寝ているのか、それとも倒されたのか。
少女にはわからない、だけれど…。
「……っ!」
胸板を狙っていた照準をずらし、太腿を狙い、トリガーを引いた。
やはり殺しを躊躇ってしまう、本当に仲間を手に掛けたのか、わからないから。
ピシュッと独特の音を響かせ放たれた青白い魔法弾は、一気に彼へと迫るだろう。
放てばすぐ、少女は体を起こし、少し離れたところにいる参謀へ振り返った。
「あのおじさん、なんだか悪いおじさんっぽいです! 3人を助けに行きますから…えっと、後、色々お願いしますっ!」
あのまま殺されてしまうかもしれない。
慌てた少女は参謀の制止に耳も傾けず、男の方へと向き直る。
可愛らしい衣装、レースの掛かったスカートを踊らせ、緩やかな薄茶の長髪を揺らし、青く丸い瞳が特徴の子供っぽい顔。
まだまだ幼い少女が遠目にもよく見えるかもしれない。
スカートが大暴れするのも気にせず岩から飛び降りると、一気に男の方へと走っていく。
ハスタ > ひりつく空気。やっぱりティルヒア泊地で自身が王都の者だと告げるのはいけないらしい。
皆さん血相変えて自身を睨んで武器を突きつけるじゃあありませんか。
「んんむ。もうオネムの時間ですからねぇ。おやすみなさいですよー。」
割合話の分かる男たちではあったと思う。今度機会があったら酒ついでに冒険でも一緒に出来たらなぁとか思いながら、
彼等の眠った体を跨いで、素通りして、おっさんは冒険を再開し―――。
「ンッ…?!」
―――ようと思っていたところで、右脚のももの部分を貫かれた。
夜間の闇に輝く青白い魔法弾。おっさんは生きている人間らしい赤黒い血液も流す。
真っ直ぐ、魔術で作られた魔法の弾丸はおっさんの被弾した部分をくりぬく様に抉り取って、穴をあけた。
「痛いなぁ!もう!」
だが、生憎おっさんはにやける顔を止めはしない。本当に痛がっているのかも不明。
半笑い半怒りで誰がやったか一応見まわすが、はて。―――誰だったのだろうか。
「…んんおおお…?こいつは眼福だ。」
夜空に広がる一輪の花(スカート)を見上げれば、殊更そのニヤけた顔は深みを増す。
大岩から飛んで、着地。待ちわびていた可愛い女の子のお出まし。
幼さの残る顔立ちの少女は、これまた何とも戦場に似つかわしくないというか。
あろうことか、こちらにやってきているあたり、飛び出して駆けてくる幼い少女が自身とどれだけの距離かを取って止まるなら、
ゆったりとした歩き方で、数歩で空いた距離を詰め寄ろうか。
如何にもこのおっさんが悪いおじさんである。
「やぁ。良い夜だね。おじさんに何かようかい?」
変質者的な立居振舞を一切合切隠す事のないニヤけ顔を向けて、わざとらしく首を傾げる。
足に一発貰ったのだが、何とも元気なもので。
リーゼロッテ > (「き、効いて…るのかな?」)
足を撃ちぬいたものの、痛みに転がる様子はないが声を荒げているのは見えた。
魔法弾でこの程度なら、ある程度距離を詰めて岩の弾丸あたりでも使わないと、ちゃんとしたダメージにならないかもと、結果としての威力偵察に、嫌な予感は積もる。
距離が結構離れていたが、目が良ければ重力と大気に揺れるスカートの隙間から、白いショーツが見えたかもしれない。
何時もなら恥じらうところだけれど、大切にしてくれる兵士達が殺されるかもしれないという一大事に、幼い彼女でも緊張がそれを忘れさせる。
「それはこっちの言葉ですっ、皆さんに何をしたんですかっ!?」
1対1、戦場ではあまり起き得ない状態だろう。
相手の意識が自分にのみ向けられる今は、緊張と恐怖で手が震える。
張り付いた表情も、不安に僅かな恐怖が混じったとても迫力のない弱々しいもの。
銃口からは緑色の魔法陣が広がり、いつでも魔法が花てる状態だ。
ちらりと兵士達を見やれば、倒れたまま眠っているだけなのを確かめ、ほっとひと安心したりと、戦場慣れしていない子供っぽさが見えるだろう。
同時に……その一瞬だけ、警戒が緩んだのが分かるかもしれない。
ハスタ > おっさんは目も良い、故にしっかりと咲いた花の中に佇む白いソレを目視した。
…ただ、短い時間だったので残念ながらあんまりよく見えなかったけれども。
「んんんー。…ちょーっと良い夢見れる魔法を使っただけよん。」
相手が武器を持っていようとも、あんまり警戒はなかった。
片目を閉じながら人差し指をくるんと回しておまじないのジェスチャー。
彼女の幼い少女らしい可愛らしい見た目が災いしたのもあるし、おっさんが単に楽観的なのもある。
割と素直に彼女の質問には答えるだろうけれども、
おっさんは少女にナチュラルに近づいていくわけで。
「アッハッハッハ、成程。…彼等の様子が心配だと。ほうほう。」
場慣れしてなさそうだなぁと心中にて詠嘆するおっさん。
さては先の一撃もわざと太ももを狙ったのだろうと察する。
頭を撃ち抜くことも、心臓を射貫くことも出来たが、よりにもよって、
戦力を削ぎながら命に危険を伴わせない部位である足を。
ここは戦場であって、なんというか、如何にも幼い少女らしい感情に囚われているのが垣間見えた。
「ま、安心しなさい。彼等は大丈夫だから。ね?」
警戒を緩めたのに合わせたのか、どうなのか。ともあれ、少女の肩におっさんの大きな手を置き据えようとする。
リーゼロッテ > いい夢が見れる魔法、眠らせるだけの魔法ということだろうか?
敵陣の真ん中にいるような状態で、いくら少数の部隊とはいえ、彼一人でどうこうできるなんて思いもしない。
なのに、何で彼はこんなにも余裕が溢れているのだろうか?
静かな不気味さに少女の鼓動は高なっていく。
「皆は大切な……お仲間さんですから」
兵士、なんていい方はそっけない。
娘か妹を可愛がるように面倒を見てくれる皆のことがとても好きで、だからちょっとのことでこんなに取り乱す。
静かに呟く声、瞳を伏せるように少しだけうつむき、再び視線を戻す。
「……っ」
近づいてきた彼が、気が緩んだタイミングに肩を触れる。
一瞬だけ浮かんだのは、ライフルの銃床で顎を打ち払い、引くようにして銃剣を振り下ろし、最後に突くという一連の動作。
魔法銃と共に覚えた銃剣術がすらりと頭にモーションを浮かばせるが、彼をそこまで攻撃していいものかに迷ってしまう。
驚きと恐怖に引きつった顔、結局銃身の下を支える左手を伸ばし、ぐっと彼を押しやろうとする程度にとどめた。
「ち、近付かないでくださいっ!」
警戒は解けない。
一層の不自然さを感じれが、体が小さく震える。
一方で参謀たちが兵士を集めると、今にもここへやってきそうなのが賑やかさで分かるかもしれない。
ハスタ > 安心安全な安眠魔法である。
おっさんの行動は恐らく正気を疑われそうなものだが、おっさんに正気などないので大丈夫。
「…ほうほう。成程ねぇ。」
仲間想いと評するべきなんだろうけども。戦場っていうのはそういう場所じゃないとおっさんは思う。
仲間が散ってこんなに混乱するなら、軍なんて成り立たない。
恐怖や悲哀めいた感情から読み取れるのは、やっぱり場慣れしてなさそうだと言う事で。
「アッハッハッハ…釣れないわぁ、御嬢ちゃん。」
魔法をぶっ放して振り払う事も、武器を使うことも出来ただろうが。
手でお断りと言う感じに押しやられた。肩に触れた手は戻されてしまうけれど。
何やら向こうで駐屯している(?)兵が動き出している様で。
一人や二人でない沢山の足音や、話し声。仲間想いな彼女の兵団の事なら、
心配して見に来たのだろうとおっさんは察する。
おっさんは、ンー、と一声置いて、自身を押しやったその左手を逆にひっつかんで。
「あー、まー。取り敢えず。折角可愛い御嬢ちゃんとお会いできたことだしー。
今邪魔されるとちょーっとおじさんも気分が悪いかなぁ。」
何処か、身を隠せる場所は無いかと思案するが、生憎平原。目ぼしい障害物などあんまり転がっては居ない。
あっちとそっちと申し訳程度の大岩と二つ角を曲がって、この制圧地区から離れられれば、上手いこと兵士の連中を撒けるだろうか。
夜と言うアドバンテージもあるから、幸い視界も人間にとっては悪いと思う。
…転移魔法は邪道である。
「まぁ…どうです。ちょっとおじさんと二人っきりでお散歩でもしましょうかね?」
叶うなら、少女を引っ張って賑やかな音源からカクンカクンと二回曲がる幾何学的なルートにて、閑散とした平原の一角にでも逃れようと。
出来なかったなら、恐らくどこかで参謀たちの率いる兵士たちに見つかるだろう。…その時はその時で。
リーゼロッテ > 自分を値踏みしているようにみえる彼の言葉、仕草。
やはりなにかおかしい、どうおかしいと説明はできないけれど、少女を不気味さの恐怖が遅い、心を暗く染めていく。
「つれないとか…どうとか、そういうことじゃないですっ」
こんな状況なのにナンパじみた口調に、抵抗の声を張り上げてしまう。
彼の思考が全く理解できず、困惑していく表情。
どうしようか、やはり攻撃してしまうべきだったか。
そんなことを思うと、不意に左手が捕まってしまい。
「邪魔って何を…っ、そ、それより手を離してくださいっ」
左手を引っ掴む彼の手を振り払おうと、左手を右に左にブンブン降るも、その腕力は少女そのもので戦う者の筋力ではない。
更に手を引かれると、体制が崩れ、倒れそうになるのをどうにか堪えながら、揺れるように引っ張られてしまう。
「い、嫌ですっ! 離してっ、離して…っ!!」
言葉を交わせども意思の疎通になっていない、多分これが不気味さの一つなのだろうと思う。
けれど、それに構えるほど余裕はない。
こんな夜にどっかに連れ込まれたら、もう二度とみんなのところに戻れないのではないだろうかと、不安が胸を押し潰す。
涙目になりながらぐっと、踵を地面に押し付けて踏ん張ろうとする度に崩される。
右手に握ったままのライフルを振り、銃身の木製部分で叩くだろうけれど、振り幅が小さくなる距離感なら、ろくな攻撃力はない。
一歩、一歩と離されて皆から遠ざかる度、少女の顔には恐怖と涙が浮かび、じわじわと手が震えていた。
ハスタ > 「んー…ほら。おじさんもね、男の子だから可愛い女の子には目がない訳で。」
男の子っていう見た目ではないが。
少女が抵抗して手を振りまわすけれど、女の子さながらの膂力で、筋骨隆々な大男の力を振りまわす事はかなわないだろう。
それでも抵抗するあたり、少女の必死さが伺える。地面に足をついて、踏ん張って、地面から引き剥がす。
そんなやりとりを何度か繰り返しているうちに、いつしか倒れそうになった少女をそれなりに優しく地面に押し倒して。それから少女の手だけにとどまらず、足にまで手をかけて、
両手で全身を横たえて持ち上げようとした。
いくらなんでも、こんな事を繰り返していたら距離も詰められてしまうだろうから。
全身持ち上げた方が早かろうと思ったわけで。
「ヒャッハァ!ハラハラドキドキだねぇ。深夜の逃走劇、お姫様と王子様。的な?
ドキドキするっていうの、良いよねぇ。」
お姫様は兎も角として、王子様はどうなんだろう。
言葉の意図は不明だが恐らく逃げるって言う行為そのものさえも楽しんでいるおっさん。
「そぉんな釣れない事言わないでさぁ。ねぇ?泣いちゃってる顔も素敵よ、御嬢ちゃん。」
手や胸板がライフルで叩かれているが、おっさんに怯む気配はない。
同様にして、足には穴が開いているのに、普通に足を使って歩いているあたり、随分と人間らしからない。
「で、そのぉ…なんだ。そんなに怯えられるとおじさんも困っちゃうわぁ。何でそんなに怯えてんのさ?
ま、泣いてる顔も怯えた顔も可愛いから良いんだけどねー。
ところで、おじさんの方に走って来てたけど、アレは結局何の用だったんだい?」
少女を見つめる姿勢はどのようなものであれ、ニヤけた顔を近づけて、呑気に話しかけながら、
ふっと耳に息を吹きかけたりしつつ、夜の平原を歩いて行こうか。
「それからもっともっと聞きたい事があるんだけどもー。ちょっとー、聞いてるー?ねーぇ?」
取り敢えず、この間今話題の神龍が被害を齎した適当な誰もいない廃墟にでも行けばいいんじゃないかという、
行き当たりばったりな考えで、ティルヒア軍の制圧地区から逃れていこうと早歩き。
リーゼロッテ > 絶対 敵の間合いに入らないでください と、参謀によく注意されていた。
魔法銃が使えること、森林調査員を志望して訓練した際に身につけたちょっとの素早さと器用さ。
それ以外はただの女の子だから。
こうして力強い腕に掴まれては、もうどうにもならない。
「そんなの知らないですっ」
彼の言葉にそっけなくなるほど、少女は怯えていた。
大方、自分にとっては詰みの状態だから。
魔法銃を放つには難しい距離、力では及ばない。
引きずられる度に、胸を恐怖で締め付けていく。
「きゃっ…!?」
不意に押し倒されると、あっという間に横抱きにされてしまう。
これが甘ったるい雰囲気と言葉の中なら、少女も喜んだかもしれない。
今は逃げようがない形にされてしまったと、見上げる表情は青ざめて震える。
逃避行だの、素敵だのと言われても、瞳に涙を浮かべて怯えるばかり。
足を撃ちぬいても余裕で歩く力と体の構造に疑問すら向けられない。
「…っ、や、やだ…離して…皆のところに戻して…っ」
耳元を擽られ、僅かに跳ねる体。
問いかけの言葉には涙を滴らせながら、許しを乞う様に開放を求める。
遠くで必死に追いかけてくる仲間の声が遠くなっていく、その度に涙が溢れ、震えて怖がる。
彼の見た通り、少し戦えるだけの少女が身もしれぬ男に誘拐されたのだ。
怖くて堪らない。
「……っ、な、何も知らない…っ、知らないから…っ!」
要件すら聞いていないのに否定を紡ぐ。
とうとう仲間の声が聞こえなくなってしまった、希望の廃墟に連れ込んだ頃にはすっかり怯えきっていた。
小刻みに震えて、青い目に赤が交じるほどに泣きじゃくり、唯一のお守りのようにライフルを抱えている。
ハスタ > やはりというか、戦場にはなれていないらしい。
こうして、捕虜にされてしまうのも、初めての経験なんだろうか。
終始抵抗するけれど、泣いて怯える、それだけが少女の表情だった。
「うーん。」
彼女が呼んだ「皆」とやらとは、大分と距離も離れたのだろう。
足音も、捜索する彼女を呼ぶ声も、もう耳に届きはしなかった。
今頃その統率をしている参謀は何を考えているのか、少女を心配して、さらに大きな規模の偵察でもしてくるのだろうか。
だが、おっさんは別にそっちは気にしてはいない。
冒険の御褒美に可愛い女の子を攫って行けたのだから。
不健康な程に青ざめて、恐怖を露呈する女の子の涙目。
取り敢えず、行き当たりばったりに身を隠せる廃墟にとたどり着いた。
「…そうかぁ、じゃあまずは、御嬢ちゃんの御名前を聞こうかな。
んんー、リーゼロッテたん、で、あってるかい?」
別におっさんは特別な事をしたわけではない。
ただ、彼女を探していた兵たちの声の断片を拾い上げて推測してカマをかけただけで。
くるん、とおっさんが指を回すと、仄暗い廃墟に灯りが燈り、少女の泣き顔がより明らかに見える。
「ついでに年齢とスリーサイズとかも教えてほしいなぁ?どうだろう。
流石に年齢知らないってのはないでしょ?」
ずっとニヤけた顔をやめずに、少女の顔に迫って聞いた。
行った非道な行為とは裏腹、割合穏やかな声。銃の様な武器は持っているけれど、
最初の一撃以来ずっと撃って来なかったな、とか大事なものなんだろうかとかとりとめもない思考は、
脳内で巡らせるにとどめておく。
リーゼロッテ > そもそも捕虜にされることを、異様に恐れていた。
別に名誉が云々なんて、武人な理由ではなくて、王国軍の噂からだ。
女は掴またら、全てを犯される。
初夜だけは甘い記憶に留めることが出来たとはいえ、身も心も汚される準備などできているわけがない。
唯一、絶望から救ってくれるであろう兵士達の声はもう届かない。
廃墟の中、手品のように灯る明かりに不思議と思うこともない。
名前に対しての問いも、震えてばかりで言葉を紡がなかった。
「何も、いいたく…ない、です…っ」
にやける表情に必死に絞り出した最後の抵抗。
穏やかな声も、恐怖のほうが勝って心に染み込まない。
彼の腕の中、逃げることばかり考えていると…不意に銃口付近に添えられていた銃剣に片手が伸びた。
金具を外して、二連になったナイフ状のそれを手にとって彼に突きつけようとするだろう。
「離して…っ、皆のところに…帰るの…だから…っ」
殺しをしただけで、翌日にはショックで嘔吐してしまうような脆い娘がここまで追い込まれるのも、相当怖いのだろう。
ナイフを握れれば、金具がカタカタ、キリキリと金属のぶつかる音を小刻みに発するほど震え、切っ先はなかなかまっすぐに彼に向かない。
ハスタ > 「…あ。そう…?釣れないわぁ、ほんとにもう。」
何を言っても、拒絶されてしまうそうだ。これでは少しつまらないとおっさんは思う。
魔法で喋らせるのも良いが…もう少し楽しむもいいだろうか。
おっさんは王国軍の者ではない。ではないが、女を掴んで犯し尽くすことに悦に浸る腐れ外道だった。
何とかって所で、少女は折れずに泣き尽くした涙に濡れた怯えた顔を此方に向ける。
銃剣が此方に向く。刃物が薄明りに照らされて煌めく。
震える銃剣は、向かう先が定かではない。
おっさんは思う。殺し慣れていないんだろうなぁ、と。
魔法ならまだしも、直接刃を握って敵を斬り裂く感触。
少女のか弱い膂力では味わったこともないのだろうと推測する。
「アッハッハッハ…良いよ。やれるならやってみたら?おじさんをぬっ殺せたら帰るのも自由だしねー。」
突きつけられたところで、おっさんはそこで止まるだけ。
下がるわけでも手を止めようとするでもなかった。変わらないニヤけた顔で、彼女の出方を伺う。
両腕で持ち上げたまま、少女の華奢な体を撫でやりつつ、半ば他人事の様に、
どうせ出来ないんだろうとでも言いたげにのんびりと告げる。
震える刃に一瞥もくれず、少女の恐怖に染まった表情を見つめて。
リーゼロッテ > こんな恐怖に満たしておいてよく言うなんて…普段の気持ちのままなら悪態もつけただろう。
赤い汚れの一切ない血抜き溝がついた銃剣は、工芸品のように綺麗な銀色をしていて、刀身には飾り文字がうっすらと掘られている。
少女の武器自体、人殺し用ではなく、野山を駆ける際の護身として作られた銃。
何かもが不慣れなのが、至る所にでてしまう。
「……っ」
殺してみるがいい、彼の挑発じみた言葉に表情は少し驚きの色に変わった。
この距離なら彼の胸を刺し貫くことが出来る。
逆手に握り直し、切っ先こそ彼の胸板に向いているが振りかぶる様子はない。
殺せば帰れる、汚されず、綺麗なまま。
本当に綺麗なままか?
赤にべっとりと汚れるだろう、初めて人を殺した夜の比ではない。
自分の手で、生命の鼓動が尽きるのを確かめることになる。
それでも殺さないといけない、殺さないと、殺さないと…。
しかし、少女はそれを選べなかった。
掌からこぼれ落ちたナイフは甲高い音を立てて地面を転がる。
汚されたいわけでもない、けれど人を殺すのに慣れたくない。
何を選べばいいか、どうすればいいかも、感情の複雑な波に焼け落ちた思考力では判断がつかない。
涙を滴らせたまま、口元だけが薄っすらと笑った。
汚されるのも、奪われるのも、早く過ぎ去るのを祈るしか無く、少女は静かに目を閉ざしていく。
差し迫った現実から逃れるように…。
ハスタ > 刺せばいい。そう言わんばかりに抵抗しなかった。
させる訳がないと思っていたし、万に一つ刺されたとして、困る事は何一つなかったのだから。
真っ直ぐと自身の胸板に向けられた銃剣は、あと一歩のところで自身の服を斬り裂いてしまおう程に肉薄していて。
誰の声も聞こえなくなった、その廃墟に響くカタカタと金属の震える音が、妙にクリアーに互いの聴覚に届くだろうか。
命を奪うか、どうかの葛藤。
「ね?」
廃墟に響く、金属の音。
少女が付きつけていた獲物はと言えば、もうその手に握られてはいない。
思考を放棄してしまったかのように、半ば諦念染みた笑みを浮かべる彼女は何を思うか。
そもそも、何も思っていないのだろうか。
両手にて持ち上げた少女を廃墟の床に横たえて。
されども、折角可愛い女の子なのに、これでは物足りないとも思って。
「起きてるのかい?」
眼を閉じてしまった少女は、はてさて、喋ってくれるのだろうか。
それとも、黙りこくったままなのだろうか。
ややニヤけた顔からの悦楽が引いて、肩に触れれば、両肩を揺すってみる。
リーゼロッテ > 誰もここには来ないのだろう、運良く現れても、きっとすべてが終わった後。
自ら抵抗を捨ててしまった証拠が鳴り響く。
彼のつぶやきが近いはずなのに、遠くの音のように聞こえた。
廃墟の床に横たえられると、目を閉ざした姿は眠っているかのように、僅かに肩が揺れる程度。
「……」
静かに目を開くも、先程までとは目の色が違う。
あれだけ感情豊かだった瞳から、恐怖や悲しみがなくなっていた。
何も宿っていない。
感情を閉ざしながら、語りかける彼へ再び口元だけが笑う。
本人も何で笑っているのかすらわかっていない、せめて痛いことはされないようにと、身を守るために笑ったのかもしれない。
瞳が虚ろでなければ、歳相応に笑っているかのようにみえるだろう。
ご案内:「オリアーブの主戦場」からハスタさんが去りました。<補足:イカしてない服装の貴族風ながたいの良いおっさん。>
ご案内:「オリアーブの主戦場」からリーゼロッテさんが去りました。<補足:毛先の辺りに緩やかなウェーブが入った薄茶色のロングヘア、青い丸い瞳の童顔。幼児体型に、可愛らしい軍服。 >