2015/11/27 のログ
チェルトト > 「ツァーリ!」
彼の愛称だと言うその名前を、驚いたような顔で叫ぶ。
静かになった兵舎に、その一言がこだました。
やがて、それを追うように小さくひとつ吹き出すと、彼が座っているベッドに尻餅をついて、チェルトトは薄い腹を抱えて笑い始める。
「ツァーリ! ツァーリ! ツァーリですって! そんな可愛い顔で、きらきらの髪で、華奢な体でツァーリ! あっはははははははっ!!」
おかしそうに、ゆかいげに、粗末なベッドの上での大笑い。
だがそれもやがて落ち着くと、乱れた呼吸を整え、目尻の涙を細い指先でぬぐいながら、チェルトトは改めて彼を見る。
「はぁ、はぁ、ふは……。くくっ。ごめんごめん、ツァーリ……くふっ、笑ったらいくら下僕でも失礼よね。そもそも言葉が違うんだし。
でも、しょうがないのよ。ここから遠くの寒い国の言葉だけど、あんたのその名前『皇帝』とか『帝王』って言う意味なんだもん。
あたしがちょっと噛んだのなんか問題にならないぐらいおっかしいわ」
はー、と、もうひとつ、己を落ち着かせるように息を吐き出すと、足を跳ね上げてチェルトトは勢いよくベッドから降りた。
そして、やはり勢いよく彼のほうを振り返り、彼の手を引っ張ろうとしながら、彼女は少しむくれ顔で言う。
「あんたのお金だとか持ち物なんかいらないわ。あたし、お金じゃなくてあんたが欲しかったんだもん。
……あ、奴隷よ! 奴隷とか下僕とか……はダメなんだっけ。じゃあ召使とか、そういうのとしてよ!
それじゃ、そうね。あんたがそういうんだったら、しっかり働いてもらうわ。
とりあえずー……寒くない寝床! それから食事!
あたしのために、がんばって調達するのよ。可愛い皇帝[ツァーリ]!」
言っているうちに起源が治ってきたのか、少し笑みを浮かべて言うと、ベッドから乱暴にシーツを引っぺがして彼の体にマントのように巻き、チェルトトは外を指差す。
「さ、ぐずぐずしないで!」
ツァリエル > (いったん中断させていただきます)
ご案内:「◇“堅実なる街”フラ=ニス 路地裏」からツァリエルさんが去りました。<補足:心優しい少年修道士。褐色の肌に白金の短い髪、中性的な容姿>