2015/11/26 のログ
ご案内:「◇“堅実なる街”フラ=ニス 路地裏」にツァリエルさんが現れました。<補足:心優しい少年修道士。褐色の肌に白金の短い髪、中性的な容姿>
ツァリエル > かつて堅実なる街と呼ばれていたフラ=ニスの地には戦後の重い空気とたれこめた灰色の雲が頭上を覆っていた。
ティルヒア軍と王国軍のこの地を巡る攻防のおかげで
街のいたるところはがれきが散乱し、負傷者や死体の血なまぐささで満ちている。
町人たちは兵士が通り過ぎるたび、びくびくと体を縮め
表にはほとんど出たがらない。
今現在は王国軍がこの地を取り返し、王国の兵士たちが幅を利かせているが
またティルヒア軍に攻められればどうなるのだろうかと皆不安なのだ。
盤上のオセロのように簡単に白黒ひっくり返ってしまうことのはかなさと周辺の村々を巻き込んだ物資の横領や戦闘地域の拡大。
王侯貴族の思惑がいかなるものか、千年女王の意思がどこにあろうと
その被害を間近でこうむるのは常に下々の民たちである。
戦地への慰安と死者の埋葬、負傷者の手当てなどの目的で
神聖都市ヤルダバオートから聖職者たちが集められこの街に訪れた。
ツァリエルもまたその中の一人だが、初めて経験する戦場のすえた臭いや空気にひどく青ざめ悲しんでいた。
ツァリエル > 慰問隊の中で一番年嵩の、リーダー役の司祭の命に従い
それぞれ仕事を割り振って働くものの、死傷者は日々増えるし
せっかく負傷で済んだ兵士も戦場の激しさから心に傷を負って
もう戦場には戻りたくないと医師や看護師の目を盗んだすきに
自殺をするものもいた。
また、皆が皆そうではないとはいえ王国軍の兵士のとげとげしさも多くの人々を恐怖させていた。
腰の剣をちらつかせ、いまやこの街の支配者が誰であるかを暗に示している。
気にくわない相手、特に弱い町民などが目をつけられれば暴力を振るわれたり商店や酒場で堂々と支払いを拒否したりするらしい。
そういう噂は聞いていたからこそ、慎重に行動すべきであるとツァリエルはじめ多くの修道士たちが心得ていたのだが
運悪く今日はどんなに気を付けても逃れられなかったらしい。
ちょうどパトロールをしていた王国兵の一団がツァリエルたちに目をつけ、難癖をつけてきたのだ。
隊長らしき、一際立派な兵装をした男が傷ついて奥に匿われていたうら若い女を見つけると尋問すると言い出し始めた。
ツァリエル > 慌てて看護師や修道士が今彼女を動かしたら危ないことを説明するも聞き入れることがない。
目をつけられた女は青ざめて恐怖に震えるばかりだ。
どうせこの王国兵の尋問という言い分も嘘だろう、女が減ってしまったこの街で慰み者にするための体の良い理由だと
その場にいた誰もが思っていた。
一人の修道士が立ち上がって、勇気をもって隊長へと抗議した。
我々には人々の命を守る義務があると。
彼だって決して体格もよくない、武力もないただの修道士である。
それでも必死で立ち向かって、わかってくれるよう隊長へと説得を試みたのだ。
兵隊長がにやりと笑うと、腰にはいた剣をおもむろに抜き
ばっさりと自分へ抗議した修道士を切り伏せた。
ついで、ベッドに寝かせていた傷病者の首をはねた。
ぱっと医療施設の部屋に赤い血が跳ね散らかった。
悲鳴と恐怖に包まれ、この場にいた修道士や町民たちはみな一様に混乱し震えあがる。
兵隊長がどうだと言わんばかりの眼光で部屋中を見回すと
文句のあるやつはいるかとがなった。
誰もが視線を床に落として目を合わせなかった。
自分をかばってくれた修道士の男が床に転がり、もはやだれもがかばってくれないことを悟った女は狂ったように叫んで暴れたが
部下の兵士たちが無理やりその体を抱えると表へと出て行った。
「おい、他に女は?なぁにぃ?いないのか……
仕方ない、そこのちび。そうお前だ、お前も来い」
もうこの場所に目的のものがないと知った兵隊長は
端で突っ立っていたツァリエルに目をとめると呼びかけた。
ひ、とツァリエルが悲鳴を上げかけたが、ここで抵抗しても無駄なことは誰もが分かっていたのだ。
ツァリエル > 女をみすみす引き渡してしまったのだから
自分が逃げられる道理もない。
それに自分が行きさえすればもしかしたら他の人々は
余計な目に合わなくて済むかもしれない。
そう考えて、恐怖に震える足をぎくしゃくと動かしながら兵隊たちの一団と共に医療所を去って行った。
正直言えばこの先どうなってしまうのか、悪い思惑や心配ばかりで逃げ出したい気持ちはあった。
だが、大勢の大人の男とただの子供である。
抵抗したところでどうにもならないことははなからわかっていた。
駐屯地や兵舎代わりとなっている建物に通される。
先に攫われていった女の姿はなかった、が奥から何人もの女の悲鳴が聞こえて、そのたびにツァリエルはびくついた。
「お前はこっちにこい」
そういって兵隊長がツァリエルの細い腕をつかみ乱暴に奥へと連れて行った。
どうやら長なるものには個室が与えられるらしい。
薄く汚い木戸が建てつけられたそこには簡素な木の机と
申し訳程度にシーツのかかった木枠のベッドが置かれていた。
兵隊長が乱暴にそこへツァリエルを突き飛ばすと
剣帯と剣、兜をはずし衣服をくつろげていく。
「何をしている、お前も脱げ。
それとも脱がされるほうが好みか」
下卑た笑いをたてツァリエルを見下ろした。
ツァリエル > しばし呆然として何を言われたのか理解できずにいたが
衣服を脱げと脅され、ようやくこれから何をされるのか気づく。
この男は自分相手になにやら卑猥な行為をしようとしているらしい。
とたんに怖気が走り慌てて部屋の隅へと這いつくばるように逃げた。
「お、お許しください……どうか……それだけは」
がくがくと震えて地に頭をつけて懇願するも男はせせら笑って
その様子を見守るだけだ。
「なんだぁ?お前、顔がいいからかわいがられているかと思ったが……
初物か?そのほうが俺は楽しめそうだが」
なぁに、一度やってしまえば癖になるぞなどと勝手な言い分をのたまいながら
震えるツァリエルの肩口をつかむと思い切り襟を引き裂いて
無理やり質素な修道服を破り捨てた。
ボタンが床を転がり、あっという間にツァリエルの褐色の肌が男の目にさらされる。
ご案内:「◇“堅実なる街”フラ=ニス 路地裏」にチェルトトさんが現れました。<補足:金のリングがあしらわれた白く細いチューブトップ/金のリングがあしらわれた白い布の短いパレオ風スカート/下帯/白の毛皮のアームカバー/グラディエイターサンダル/金のリングの髪留め/白銀のボリュームツインテールヘア>
チェルトト > 扉の外が、にわかに喧騒に包まれた。
悲鳴。怒号。金属音。雄叫び。
続いてちゃちな扉が引きちぎられる勢いで開くと、その向こうには呻きながら床に伸びているたくさんの兵士と、逃げ惑う女達が一瞬見えた。
そして、その扉の隙間を埋めるように小柄な女が姿を現す。
「ちょっと! このあたしを待たせといてふらふらお散歩のあとは、
自分の部屋にしけこんでお楽しみ? あたしの我慢にだって限度があるんだからね!
いっくらあんたのしょっぼいモノが早くっても、これ以上は待ってやんないわよ!」
噛み付きそうな勢いで怒鳴りつけ、縦に裂けた金の瞳を怒りに燃やしながらにらみつけた先には、半裸のむくつけき男と細身の少女。
否。
細身だが、それは少女ではなかった。
数秒の沈黙の後、チェルトトは獣のように縦に裂けていた瞳をすうっと丸くすると、次いで目を細めて笑う。
「あら、いい趣味してるじゃない。アレならいいわ、その子でも。
……なに、文句あんの? だったらこの証文にはあんたの印押せないわよ。
数合わないと困るでしょ?」
言いながら、ひらひらと羊皮紙片を振って見せた後、つかつかと部屋の中に踏み込んで彼に顔を寄せる。
「ふうん……。ふううん。いいじゃない。うん、うん」
ツァリエル > にわかに騒がしくなった通路側と木戸を乱暴に押し破られ
部屋へと堂々侵入してくる異国風の少女に
ツァリエルはおろか、今から楽しもうとしていた男も目を白黒とさせる。
少女の怒号と怒りを露わにした表情に兵隊長の男がうっと息を呑んだ。
ツァリエルにはあずかり知らぬことだが
どうやら、この男と少女の間にはなんらかの取引があるようだった。
彼女の手にある羊皮紙は証文らしい。ひらひらとそれを振りかざせば
男は疎ましげにそれを目で追った。
「まぁ、落ち着けよチェルトト……」
お楽しみの最中に踏み込まれたのは我慢ならないが
少女の怒気に押されて穏便に済ませようと男が両手を前にしてひらひらと振った。
が、せっかくとってきた獲物を横取りするようなことを言われれば
さすがにむっときたようでちょっと待てだの証文を盾にするなど卑怯だぞと喚き始めた。
対して顔を近づけられて検められたツァリエルは少女に対して怯えた様に身をすくませる。
引き裂かれてぼろ屑同然の衣服を胸元で握りしめ体を隠すように縮こまっていた。
チェルトト > 「落ち着かない。
こっちのボクちゃんをあたしに譲るか、素直に全額いまこの場で耳揃えて払うか、
ふたつにひとつよ。
ま、こそこそちょろまかしてる分を使いこんじゃってなければだけど?」
少年のそばで男のほうを振り向き、とんとんと自分の額に描かれている瞳の紋様を叩きながら言う。
全ての真実を見抜くと言われる聖なる目の呪紋の力は、戦場でも散々に披露した。
そして、にやりと笑って片方の拳を突き出し、金の瞳で彼をねめつけ、チェルトトは言葉を続ける。
「あとは、あたしと1対1で殴り合って勝つっていうのもあるけど、試す? 人の身で」
訊ねながら、もう一方の手は粗末な寝台の隅で自分から逃げようと必死な彼の頭に伸ばし、できるだけ優しくなでようと試みている。
ツァリエル > チェルトトのその力は戦場でいやというほど知った。不可思議な呪紋の力と敵を易々と切り裂く爪の威力。
特に一兵卒として間近で見ていた男にとって彼女と一対一で対峙するなど御免こうむる申し出だった。
しばらくその場で唸り、証文とチェルトト、そしてツァリエルの間を視線で行ったり来たり見回しながら
やがて悔しげに舌打ちをすると勝手にしろと吐き捨てる様に男はその場を荒っぽく歩いて去っていた。
困惑するツァリエルは自分の頭に彼女の手が触れようとすればびっくりして身を固くした。
彼女の手は容易くツァリエルの白金の髪に触れられる。ふわふわとした手触りだ。
あまり手入れがされていないのは清貧ゆえだろう、磨けばよくなる気がする。
チェルトトの触れ方が自分に無慈悲な暴力をふるうものではないとわかればやや不安げな表情は薄れるが
ただ、この闖入者が何者なのかわかるまで安心しきることもできない様子だ。
それに自分は身売りをされたらしいのだから、この先もっと悪いことも起こりうるかもしれない。
「あの……あなたは……?」
おずおずと震える声でそう尋ねた。
チェルトト > 「はい、まいどー。じゃ、これ置いてくから好きなだけ印でもサインでも押しなさいねー」
男が立ち去ると、シンプルな机にちらつかせていた証文を置く。落ちていた石をその上に乗せるのは、これがなくなると一大事な男への慈悲か義理か。
そして、チェルトトが改めてまだベッドの上で震えている彼のほうへ向き直ると、ふわりとボリュームのあるふたつの髪の房と、ぷるんとボリュームはささやかなふたつの胸の房が揺れた。
もう一度歩み寄り、小動物にでもするように彼の頭を撫でながら、うふー、ひよこみたい、などと呟きつつ、そのふわふわとした手触りに目を細めていたチェルトトは、彼が恐る恐るといった調子で問いかけると、彼から一歩距離を置き、得意顔で胸を張って言う。
「あたしはチェルトト。出るところへ出ればやんごとなき身分だけど、とりあえず傭兵。
で、いまからあんたのご主人様よ!
……って、ちょっと! なんであんたが先にあたしに名前聞いてるの!?
先に名乗りなさいよ! 下僕なんだから!」
途中で気がついたのか、はっ、と、した顔で思い直すと、チェルトトはそう言いながら彼に詰め寄った。
ツァリエル > 得意げに胸をそらす見慣れぬ格好の少女に目をぱちくりとさせながら
チェルトト……と口の中で彼女の名前を呟いた。
異国風の名前だと思いながらなぜかすごい剣幕で自分の名前を聞かれれば
「あ、あの僕はツァリエル……です。
た、助けてくださってありがとうございます、チェルトトさん……。
でも、ご主人様って呼ぶのはちょっと……
僕は主なるヤルダバオートに仕える身ですし、奴隷でもありませんから
あなたの下僕にはなれません。ごめんなさい」
引き裂かれた衣服を何とか整えベッドの上で丁寧にお辞儀をして感謝する。
が、いかに取引されたといえどツァリエル自身は決して彼女の下僕になった覚えはないのだからこういうほかない。
申し訳なさそうに彼女の顔色を窺った。
チェルトト > 「ツァリエル。ツァ・リ・エ・ル……。んー、響きは好きだけど口に馴染まないわ。もうちょっと言いやすい名前ないの?
これからいっぱい呼ぶんだから、あたしが呼びにくい名前なんてダメよ」
彼の名乗ったその名前を何度か口の中で呟いた後、当然のようで顔でそれを褒めながらけなす。
外の騒動は一段落したのか、静かになった兵舎の中に、少女の甘い声が響いた。
だが、つけてあげてもいいけど、と、次の思案に沈みそうになったその時、少年の続く言葉を聞くと、その声に険が混じる。
両手を腰にあて、鼻先が触れあわんばかりに上半身を折って詰め寄ると、金の瞳で彼の目を覗き込み、チェルトトは怒鳴った。
「なんですって!? ちゃり……ツァ、リエル。あんた、今助けてあげた恩を、
ありがとうのひとことで済ますつもりじゃないでしょうね!
睨んで追っ払ったとかならともかく、あたし、あんたをもらうのに今日のあがりをあきらめたんだから!
せめてその分は恩返ししてもらわないと、割に合わないじゃない!」
途中で噛んだのをごまかすような勢いで詰め寄りつつ、自分自身はごまかしきれないのか、少々顔を赤くして。
ツァリエル > 「じゃあ……ツァーリと。親しい人はそう呼んでくれます」
いっぱい呼んでくれるというのは照れくさくも嬉しい話だが、
たしかに異国から来た人ではこの名前の発音は大変そうだと思う。
だが、謝った直後に彼女がまたしても怒りはじめると慌てて身を引いて縮こまった。
らんらんと金色の瞳が輝くとまるで猫のようだと思ってしまう。
「それはそうですけど、でも僕お金なんか持っていませんし
ほかにお譲り出来る品もありません……。
なにかお礼になるようなことといえばお洗濯やお掃除、家事の奉仕とか……
労働できるようなものごとで返すほかありません。ごめんなさい。
あの、そういう恩返しでは足りませんか……?」
壁に背を押し付ける様に彼女の剣幕から逃れようとするが
間近で見つめあったチェルトトの頬が恥ずかしげに赤らんでいるのに気付いて
「……よく名前、間違われたりするから気にしないでください」
と優しくフォローしてみる。