2015/12/13 のログ
ヴェルム > 「…私は何をしたらいいのですか…ティルヒアの騎士としてできることは…」

わかりきっていたこと、しかし女王や高官たちがまだ健在ならば、降伏してこれ以上の被害を食い止めることもできる。
だが実際はそれすらも甘い考えだった。
カテリナ司令の姿を見ればわかるように、ティルヒアはもうなりふり構っていない。
もうとっくに終わっていると。
彼女が話を続けるうちに、彼女の持つ魔剣が動く。
魔剣と魔導鉱石が彼女を動かしているのだろうか。

「…カテリナ司令…お止めください。
自分を見失わないで…ご息女もまだ生きていらっしゃるのでしょう!?」

明らかに危険な様子へと変わっていくカテリナに、一歩…また一歩と後退りしてしまう。
なんとか正気を保って欲しい、でなければ望まぬ戦いをすることになる。

カテリナ・タイクン > 「アハハッ。アーキネクト、貴様は何故帰ってきた!?。
オリアーブに殉じるならば、女王陛下の祝福を感じよっ!。
くっくはは、アハハはーーっ。」

魔剣を横に薙ぐ。雷撃が爪のように家屋へ迫り引き裂いた。
家屋にいた数名の王国兵が焼けて裂かれ死体になる。
それは、ここへ来るまであった焼けて裂かれた、味方の死体とそっくりだった。

「ひゅー……。ひゅー……。
や、止めてなんになるアーキネクト。
私は足を止めれば、もう死体になるぐらいしか道がない。」

魔剣と魔導鉱石が壊れれば、致命傷を受けた身に戻ってしまうのだ。
そう顔で語ると、剣先を向ける。
城へ向かうなら戦うしかないだろう。

ヴェルム > カテリナが魔剣を薙ぎ、放たれた雷撃が自分の横を通り抜けていく。
今死んだ王国軍兵のように、当たれば確実に死ぬようなものだったが、今回は動じなかった。

「…そうですね、帰ってきた理由ですか……ならば愛するオリアーブと女王ティルヒアをここまで痛めつけてくれた輩をぶん殴りに来たことにしますよ」

携えていた長剣を握り締め鞘から抜く。
長剣はまばゆく光り、擬装を解いていく。
聖剣と呼ばれたその剣は、量産品のような長剣から姿を変え、青白く輝く刀身をした、幅広の剣となる。
カテリナの持つ魔剣と相反する力を持つ剣をカテリナに向けて。

「情けないこと言わないでください、
貴方ならば味方殺しするくらいならむしろ死体にしてくれと言うでしょう。
…少なくともそのふざけた剣は叩き折らせていただきます。」

魔剣をカテリナから離すのは賭けではあるが、これ以上彼女を苦しませるくらいならば止める。
そして止めた結果死なせてしまったならば、その責を負い続けるつもりで、聖剣の切っ先と視線を向け、ティルヒアの剣術の綺麗な構えを見せる。

カテリナ・タイクン > 「味方殺し?。いや、アレは贄だよ。
貴様もいずれ、わかるようになる。
まあ、いいさアーキネクト。
ここで死ねば女王陛下への良い捧げものになるだろう。」

彼女はそう信じている。それがどうゆう事なのか考えていない。
ただ騎士が王へ奉仕する如く、当たり前だと考える。

「波と風の女王の贈り物。
雷光よ、我らの御霊を食らいたまえ。」

オオオと都で死んでいった者達の魂、魔力が片目の鉱石に吸われていく。
魔剣の刀身が嘆きの悲鳴を上げる。

「嵐の如く……舐めろ。」

魔剣から放たれた雷電が地表を抉りつつヴェルムへ迫る。

ヴェルム > 「司令、ボケが始まるのが早いですよ。」

もはや言葉は伝わらない、都合よく解釈され、忘れられてしまうだろう。
ならば痛めつけてでも治ってもらうしかない。

カテリナが詠唱を行うと、死者の魂がカテリナの片目に吸われ、魔剣が叫ぶ。
今のカテリナの実力は見ての通りならば、こちらも全力を出すしかないと、自らの身体の中で臓器化した魔導機械が、魔力を高めていく。

「魔を祓い魔を穿つ、魔の中に囚われた魂を解放しろ…ミスティック!」

聖剣はその言葉に応えるように煌く。
剣の名を叫ぶと同時に聖剣を地面へと突き立て、その瞬間聖剣を中心とした一帯が閃光に包まれ、カテリナが放った雷撃がヴェルムに到達する前に弾け飛ぶ。
その魔を切り裂く力は魔剣にも効果を及ぼすだろうか。

カテリナ・タイクン > 雷撃は聖剣に切り裂かれる。
バリ、ドガッという爆音がするとヴェルムに衝撃波と眩い光が襲い掛かる。

「ふふふ。魔雷を裂く事はできても音と光は防げまい。
どんどんいくぞ。
――嵐の如く、降り注げ。」

魔剣から雷撃が連続で放たれる。雷雨の中にいるような気分だろう。
カテリナは退魔剣術で落ちる木の葉を斬る技量の持ち主だったはずなのに
いまでは魔族の魔法剣士のよう。

ヴェルム > かつて憧れた剣術はそこになく、魔族のように力を振るって戦うカテリナ。
それでもなんとか救いたいと思いは変わらず、聖剣を握り締める。
雷雨のように雷が降り注ぐため、その閃光に視界は眩み、激しい音に耳鳴りが起きる。

「く…見えなくても、聞こえなくても…斬ることはできる…!
吹っ飛ばせ!」

地面に叩き落ちる雷を予測し、かろうじて衝撃を回避するがそれでも光りと音は難しい。
ならばこちらも遠距離から戦うまでと、聖剣で雷を薙ぎ払いつつ、刀身から放たれた衝撃波はカテリナの持つ魔剣へと向けられる。

カテリナ・タイクン > 「あハハッあははははははーーっ。
Gaァァァァーーッ!。」

黒と白の力が弾けあう。
黒き雷光と聖剣の衝撃波が何度も何度もぶつかり逢う。
そのたびカテリナの鉱石から血涙が流れる。

「うぐぐッッ。――はァッ。
龍火の如ク、龍火ノ如ク切リ裂ケェ!!」

少し苦しんだ後、雷電を魔剣に収束させる。
激しく唸る魔剣を大きく薙ぎ払うと黒い龍が地面を切り裂きながらヴェルムに迫る。
威力は凄まじいが撃ち終わると魔剣をだらしなく下げ、棒立ちしている。
鉱石が怨嗟を吸い上げようと光り始める。

「――――。」

ヴェルム > 「ふぅっ…、こんなもん…ブッた斬ってみせろぉぉぉっ!」

カテリナの魔剣が雷撃を収束させ、今度は黒い龍として放ち、こちらへと迫る。
その凄まじい威力に対抗するため、聖剣に魔力を収束させていく。
心臓となった魔導機械は限界まで稼働率を高め、胸が燃えるように熱くなっていく。
その魔力を聖剣に流し込み、体は前方に飛ぶ。
ヴェルムを喰らい裂こうと口を開いた黒い龍に、正面から剣を叩き込めば、強烈な雷撃を浴びながら龍の体を真っ二つに両断する。
地表に着地したとき、黒い龍は光になって消滅していくが、同時にヴェルムも身体全体に負った雷撃による傷で膝を付いてしまう。

「はぁっ…ぐぅぅ…っ。」

だが火傷や切り傷を負った顔はカテリナに向けられたままで。

カテリナ・タイクン > 「聞こえルか?、アーキネクト。
女王陛下の賛美歌が……。」

天を仰ぎ棒立ちしたまま空の眼差しをヤス湖方面へ向ける。
鉱石が怨嗟の念を吸い上げる。
チラリと黒衣が肌蹴けて彼女の身体が見える。
ところどころ千切れた場所を黒い砂が繋いで補間している。
もう人間でなくなってしまっている。

「「「……恐れるなよ、ヴェルム」」」

なにか、何処かで聞いた声が聞こえるだろう。
やけにゆっくりと魔剣を膝をつくヴェルムに振り下ろす。

ヴェルム > 「…申し訳ありません、司令……まだそちらには…逝けません」

かすかに見えるカテリナの身体、それを見て頭で理解するのに時間は掛からない。
何の事は無い、彼女のとっくに救いようがないではないか。
やってやれることはひとつではないかと。
そうして目を閉じ、聞こえてきた聞き覚えのある声に再び目を見開けば力強く聖剣を掲げる。

「カテリナ様、お覚悟を…!」

あまりにもゆっくりと魔剣が振り下ろされていることに疑問は抱かなかった。
なんとなく理由がわかっていたから。
聖剣が魔剣の刀身に向かい力強く振られれば、魔を討つ力を持った聖剣により、魔剣は真っ二つに切り裂かれることになるだろう。

カテリナ・タイクン > 囁きが聞こえる。

「恐れずに剣を振れたな。ふっ、見事。」

バリィィィンと魔剣が砕け散る。
それと同時にカテリナの体は黒電にまみれ弾け飛んだ。
地面に激突してゴロゴロと吹き飛んでいく。
死んだ様に倒れ伏すと鉱石がドス黒く光り、咆哮する。

「Gaァァァァーーッ!。」

無造作に転がる強化ティルヒア兵士達の死体から鉱石が勝手に集まりカテリナの身体に埋まる。
バチリと雷光が閃くと弾けた様に空へ飛ぶ。視界に現れるカテリナは黒い砂の魔人の姿だ。
龍の姿に変貌し城へ去っていった

ヴェルム > 「…この声は…」

微かに聞こえる声に耳を傾ければやはり聞き覚えがある、懐かしい声だ。
だがそんな感傷に浸る間も無く、カテリナの身体は弾け飛び、その正体らしきものが姿を現す。
咆哮と共に魔導鉱石が集まる、黒い砂の魔人。
それは魔族とも違う、見たことも無い生命体だった。
魔人が龍に変貌して城に去っていくのを、ただ唖然としながら見ているしかなかった。

「…カテリナ様はさっきヤス湖の方を見ていた…女王はヤス湖にいるのか……じゃあ城の結界の中にいるのは……」

戦いの爪跡を残した大通りに一人取り残され、龍が消えたティルヒア城を眺めながら戦慄していた。

ご案内:「◇“千年の女王の都”ティルヒア」からカテリナ・タイクンさんが去りました。<補足:火傷顔。ボロの黒衣。片目に鉱石in>
ご案内:「◇“千年の女王の都”ティルヒア」からヴェルムさんが去りました。<補足:175cm/黒髪/冒険者風の装い/腰に長剣>