2015/12/10 のログ
ご案内:「女王ティルヒアの城の周辺」にシドさんが現れました。<補足:分厚い漆黒の全身鎧。兜の隙間から銀髪が覗いている。>
シド > 重々しい闇大海のようにうねる重圧な雲が、荘厳な面影を残しながらも砲弾の痕生々しく残る半ば崩れかけた外観の城を見守る昼。
マグメールの紋章の鎧をつけた兵が圧倒せんばかりに堀の周りに構えている。
そこを遠巻きに眺める貴族は幾多もの軍靴に踏みしめられ廃墟同然の大通りを歩いていた。
勝手は舗装され美しき石畳……今では床に飛散した色取り取りの硝子片が重厚な靴底に押し潰されて悲鳴を上げる有様。
「無残なものだ。引き際を誤るのは。」
半分ほど削れた咥え煙草より流れる紫煙を空に溶け込ませ、緩慢に歩み行けば足下で瓦礫と硝子片が躙られて啼いて広がる静寂を崩す。
兵たちの喧騒覗いて、重々しい静寂が都を包んでいる。
シド > 何を崇めていたか知らぬ台座の上には何もない。その周辺に悲惨した石塊だけが彫像があったと教えてくれる。
東洋思わす景観も、整備された水路も、今は煤汚れ汚水ばかりが流れる有様――全てが互いが起こした戦火の被害者。
口唇に咥えた煙草を抓んで離しながら再び戦列の前にと脚を止め乍ら、溜息と共に紫煙を吐き落とした。
煙草を抓んだ手を下ろして足下へと短く削れた煙草を落す。
「いいか。無駄に突っ込むなよ。あの城を落とすには今の10倍の兵はいる。ここからは持久戦だ。
向こうが出てくれば迎え撃つが、これ以上無駄に血を流すな。」
敬礼する兵隊長に告げて改めて仰ぐ。高らかな壮麗な城に曇天が包むさまを見届けて、双眸きつく眇められる。
「いい加減諦めろ女王。上の立場ならばここからは敗戦処理だろうに。竜が来るのでも待ってるのか?」
声が掠れるは冷たき大気に唇が震えただけじゃあない。疲労の色濃い長駆を胡床にと大仰に腰を下ろしてまた溜息を零す。
ご案内:「女王ティルヒアの城の周辺」にヴィヴィさんが現れました。<補足:銀髪、碧眼、軽装の鎧姿>
ヴィヴィ > 重く雲の垂れこめた薄暗い昼。城門付近に奮戦するティルヒア軍の一団があった。
攻城の戦痕が真新しく残る城門を守るように、王国軍と対峙する兵士たちの中に、女の姿がある。
槍を閃かせ、銀髪を煌めかせ、戦う姿は軽やかに。
「この城落としたくば、自分を倒して進むがいい!」
勇ましく告げて、槍を一閃。雑兵程度では相手になるべくもなく、石突に打たれ、穂先に薙がれて寄り付くことさえ叶わない。
女に倒された兵士たちは一様に戦況に戻ることは難しいが、命には関わらない者が多いようだった。
苦しい戦局にあって、手加減を匂わせる戦い方。
攻めあぐねた雑兵を前に、壮麗な城を背にした女は、凛と立ちふさがっていた。
シド > 兵の中にはテントを張り野営の準備を始める者も、敵前で挑発するかに火を炊いて夕餉の準備をしようとする者も。
小休止にも等しき一幕に喝を入れたのは城門開きて降ろされた渡り橋より踊り出る女兵士の登場だった。
不意打ちに等しく向かい来る兵士は薙ぎ倒されて或いは武器を弾かれ逃げ惑う。なんとも無様たる様。
乱れる人垣に包囲網が解けつつあるが死傷者が出さないことがせめてもの救いか。
胡床に大きく腰を下ろしていた軍を率いる領主はあまりの体たらく溜息を。されど陽々とした足取りで鎧軋ませ敵前にと進み出た。
「臆病風に吹かれたと思っていたが見事なり。その勇気に免じて、一騎打ちを申し込もう。
私がここを指揮するシドニウスだ。倒せば軍は下げる。悪い話ではないだろう。」
軍勢が2つに割れた道並みを、銀の髪波揺らしながら堂々と脚を進める。
腰元より掲げた銀の長剣が陽光をまばゆく照り返し、異様に目立つその外観を囮に。その後手で兵士たちに指示を送る。
体制を立て直せと。果たして気づかれるかどうか。
ただ兜から覗く葡萄色の眸はしかと部隊長たる女兵士を凝視していた。
ヴィヴィ > 籠城から一転、打って出たのは不意打ちのような効果を狙ってのものだった。
目論見通り、浮き足立った敵兵に打撃を与えること叶い。味方を鼓舞し、敵を圧する為に、一際揚々と槍を振るって見せる。
その最中、後方より歩みくる全身鎧を纏った男の声が朗と響く。
軍勢を割って生まれた道を堂々と進む姿へと視線が向かい、その後手には気づかぬまま。
兜を被らぬほどの軽装鎧を纏った女は、きゅ、と引き結んだ唇に弧を描く。
「その申し出、自分が受けよう。ヴィヴィトーネ=グローネ、この隊を率いている。」
他のティルヒア兵よりも前へ歩み出る。
長身の男と比すれば小柄で華奢にも見える身体に、細く軽く見える槍を両手で構えた姿はいっそか弱い。
だが、きり、と男を見つめる碧眼は戦う決意を秘めていた。