2015/11/26 のログ
アルマゲスト > まるで病んだ巨人のようなこの都。
かつての美の痕跡がまだ消えきっていないのがまた、とても嘆かわしい。
あるいは、かつての美と平和を陵辱して穢すようなその様は、とても美しい。
どちらとも感情の揺らぎを見せることなく、ただ、唇が正確無比に苦笑を浮かべる。
「仕事をしに来てはみたものの――」
紫の瞳が一度、瞬く。
数日前に、暫定的な雇い主になった男からの依頼。
“高位魔族を殺せ”というそれ。それを果たしに来た。
けれども、やはりというか当然というべきか。
「気配はすれど、姿は見えずか。
困ったものだね。せめて観光くらいはできればと思ったが。」
紫煙を孕んだ言葉が吐息のように溢れる。
正確にいえば、気配があり過ぎる、というべきか。
ひとつずつ潰していくには手間だし、面倒くさい。
故に、「困った」と、苦笑を僅かに孕んだ声音が滑らかに紡ぎ出す。
アルマゲスト > 片手には書を、もう片手には煙草を挟んだ侭、緩やかに腕を組む。
考えこむような、あるいは、そういう仕草を真似したような仕草。
背後で繰り広げられる喧騒も、今は届かない。
さながらそこだけ世界から隔絶されたように、日常的な仕草。
「――それにしても、彼の女王陛下がこのように病んでしまうとは。」
そんな独り言を唇が紡ぎ出す。
まるで永遠に続くようだった治世。
僅かな間でこうなるなんて誰も思いはしなかっただろう。
けれども、歌にあるように現実は
「世に永遠に生きる者なし――…とは言ったものの哀れなものだ。」
滑らかに、静かに言葉が紡ぎ出される。
ひとつ、吐息を吐き出せばまた、紫煙の濃い香りがふわりと夜に混じった。
淫靡な香りや血の香りに混じって、すぐに消えてしまうだろうけれども。
アルマゲスト > そうして、そっと唇から煙草を離す。
その侭、白い手袋に包まれた指先がそっと、握り潰す。
開いた時には、その手の中には最初から何も無かったように何もなく。
そして、ゆるりと靴音が大通りの方へと踵を返す。
「人生の半分は仕事であるが、残りの半分も仕事である。
――と言ったのは誰だったかな。」
そんな言葉がひとつ、唇から零れ落ちて。
軽く上に向けた手の上で書が緩やかに開かれる。
「けれど、その中で少しくらい遊んでも良いだろう?」
誰に向けた訳でもなく、その侭、言葉を残して彼は歩き出す。
程なく、大通りにひとつ、ふたつ、いくつも悲鳴が交じるだろう。
それが人のものか魔のものか判断できるものはいないけれども――。
ご案内:「◇“千年の女王の都”ティルヒア」からアルマゲストさんが去りました。<補足:身長190cm/長身痩躯/腰まで伸びた黒髪/灰黒色の軍服めいた衣服、白い手袋/片手に赤黒い表紙の書物>
ご案内:「◇“千年の女王の都”ティルヒア 路地裏」にレティシアさんが現れました。<補足:人間に擬態 薄金の髪・空色の瞳・人間と同じ耳・青のワンピース・ボルドーのフード付きマント・黒のヒール・ルビーのピアス・左腕の蛇の腕輪>