2015/11/16 のログ
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」の現状」に さんが現れました。
> 「ティルヒア動乱」――王都周辺への侵攻と「ティルヒア即位宣言」
> ――それはあまりに唐突であった。
その報せが届いた時、王都の多くの王侯貴族は浮足立ち、ひっくり返るような騒ぎと混乱が王都を駆け巡った。
情報の錯綜、誤報の伝播……王都周辺は非常な緊張感と混沌が支配していた。
それも無理もない話であった。
それは、あまりに唐突な出来事であったためだ。普通では考えられない程に。
> 王国南部、「南海」に浮かぶ巨大な島――オリアーブ島。
古き伝承が残り、偉大なる湖が波打ち、神話にも語られる霊峰が聳え立つ王国領。王都の影響が少ないゆえに、独立の国であるという気風を持ち、独自性が強い。
すでに王都では忘れ去られた天地草昧の時の「龍」の伝承が未だに信じられ、魔術鉱石と魔導機械の発掘により繁栄を極めている島。
千年を生きるという「女王」と呼ばれる――本来、“王”と呼ばれるものはマグメール国王のみであるが――ティルヒアの治める東洋的な雰囲気を持つ都、「千年の女王の都」。
そこは外部の存在には閉鎖的であり、その内情は王都にあまり伝わらないが、これまで王都に何か働きかけを行うことはなかった。
しかし、その現実は大きく揺らいだ。
ティルヒア軍が突如「南海」を渡り、王国の南方経営の要とされた「堅実なる街フラ=ニス」を攻め落とし、占領したのである。
ティルヒア軍の勢いは雷電のごときものであり、驚くべき奇襲や、東洋的な術を駆使して次々と南方の王国軍を打ち破っていった。
そして、王都で誰も想像していなかった出来事が起こる。
その報せが飛び込んできたとき、多くの者はかの女傑の正気を疑ったであろう。
それは……
> ――ティルヒアの、マグメール国王への「即位宣言」であった。
>
> 王都へ即位の報せが届く少し前、オリアーブ島の都、“千年の女王の都ティルヒア”にて。
千年の女王の都は壮麗なる都市である。オリエンタルな雰囲気を持ち、碁盤の目のように区画が整理され、幾つもの水路を舟が走っている。
かつては繁栄の都として、まさに王国とは別の「国」であるとも言われた南の楽土。
それがこの“千年の女王の都ティルヒア”であった。そして、それを治めるのが「女王」とここでは呼ばれる「ティルヒア」であった。
ティルヒアは神とも崇められ、民より絶大な信頼と信仰を得ている統治者であった。
しかし、かつての繁栄は薄れはじめ、数年前よりティルヒアの暴政が目立ち始めていた。
そして今、ティルヒアによる驚くべき宣言がなされようとしていた。
> 千年の女王の都の最奥に位置する城。
いくつもの絢爛な尖塔に囲まれた幻想的な城。
“龍”をシンボルとした壮大なる城。
その龍の城には、ティルヒアが国民に言葉を告げるための「国見台」という露台があった。
城の前にティルヒアは民を集め、その姿を現した。
その姿は絢爛な衣装に包まれた幼い少女であった。白い髪をなびかせ、配下の人間が隣で龍の彫刻がなされた金の剣を捧げ持っている。
ティルヒアはその見た目だけではとても千年を生きる者とは思えない。
しかし、その纏う気配は荘厳であり、人ではないと明らかに感じられるものだ。
ティルヒアが姿を現せば、民は皆深々と頭を下げていく。
> ティルヒアは言う。
「大いなるかな乾元、萬物資りて始む。
乃ち天を統ぶ。雲行雨施して、品物形を流く。
大いに終始を明らかにして、六位時に成る。
時に、六瀧に乗じて以て天を御す。
乾道變化して、各々性命を正しくす――
しかし、すでに天に神はなく、地にあるは悪しき神の眷属のみ。
人は己が性命を全うすることなく、混沌が世界を包んでいる。
……見よ、この国の今を。
王はおらず、国は乱れ、悪しき神の徒が跋扈し、人の魂魄は穢れ、すでにこの国は終末へと向かっている。
もはや、この有様を我は見ていることができぬ。この国は直ちに正されなければならぬ。
故にこそ、我は立ち上がった。全ては、偽りなる神の徒を討ち、全てを神代の始めへと還すため」
> 多くの民は頭を垂れたままである。だが、一部の者や兵士はそれを涙して聞いていた。
「黒の王は魔の者である。彼の者により、この国に悪しき混沌が満ちた。
偽なる神が持ち込まれ、真なる神は去った――もはや、この国に真なる神はいない。
神は《存在しない神》なのである。
――しかし、我は聞いた。
真なる神の声を聞いた。
今の世は偽なる造物主の作った偽の世である。
ヤルダバオートは偽りにして、この世は全て《存在しない神》の夢の産物である。
偽の神を嘆く《存在しない神》の歎息こそが、この腐り落ちた世の現実そのもの。
見よ、腐敗した王族に役人、数多の戦。これら全ては神の夢を悪夢とするものどもである。
故にこそ、王都を今こそ盲目なる者どもの手から解放し、我は《新王》とならん。
神の夢を悪夢としている元凶を、偽りなる神を信ずる者どもを討ち滅ぼし、
ここに我は、正当なるマグメール王国の新王に即位することを宣言する。
我が名はティルヒア。千年の女王たるティルヒアである。そしてこの国を救う王である。
今こそ、逍遥遊たる古の楽園マグ・メールをここに建国するのだ」
> そして、ティルヒアは配下から金の剣を受け取り、それを鞘から抜き取る。
金色のきらめきが天に輝く。王の印、レガリアとなる剣である。
「――ここに我は今再び宣言する。
この祓の剣を以て、我はこの国の悪しきを祓わん。
マグメール国王としての即位を宣言する。
そして、この国を悪しきに染める王都の王族どもを今こそ討つのだ。
神代の昔に我が“龍”が悪しき神々を討ちし時のことを、この世に再現するのだ。
我が赤子たちよ、今こそ国を正しくする時――我に力を貸してくれ。
我らの嘆きと怒りは必ず、天の神を再びこの地に呼び戻すであろう!
我が子らよ、今こそ王都へ上れ。我が正しき王となりて家の地を祓い、帰還を果たす――!」
> ティルヒアがそう宣言すると、民から歓声が上がった。
「万歳」との叫びが木霊する。
遂にその時が来た。ティルヒアの頭に宝冠が被せられる。
王、すなわち天子となることを宣言し、戴冠を果たしたのである――
その姿を、城の奥で黒い肌を持つ男が静かに眺めていた。
魔なる者たちも、その姿を城の奥でただ眺めていた――
> この宣言と報せは、瞬く間に王都へと伝わった。
それを聞いた者達はひっくり返り、ティルヒアの正気を疑った。
本来そのような即位は認められない――仮にも、王族の合議、そして民の意を得ることが即位に必要とされているのだ。
しかし、ティルヒアはそのようなものを全て無視し、王位についたことを宣言した。
まさしく、王位を“僭称”したのである。
正気の沙汰とは思えない行為であったが、ティルヒアは本気であるらしかった。
堅実なる街フラ=ニスを占領し、驚くべき速度と武力を以てティルヒア軍は進撃し、王都へと迫りつつあった。
行動の速い貴族や王族はすぐさま舞台を編成し、ティルヒア軍討伐へと乗り出した。
ここに、新たな戦乱が、巨大な戦の気配が国を包み始めたのであった――
> 【これより開戦。ティルヒアが即位宣言を行い、王都周辺、オリアーブ地方での戦闘が行われる。同時に、即位とともに増加した魔物への対処が冒険者たちにゆだねられていく。
→イベント関連チャットルームの開放】
ご案内:「◇「ティルヒア動乱」の現状」から さんが去りました。