2025/11/23 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」にアガタさんが現れました。
アガタ > 「───」

いつもと変わらない姿。
常に同じ姿勢。
大聖堂に詰める従士として、その哨戒に当たる修道女姿の女。

手にしている長杖が、その役目を知らせるよう。
密度の濃い木製のその重みを知ると、身の丈より長いそれを軽々と扱っている女の膂力の強さを知ることになる。

女が佇むのは大聖堂の入り口そば。
今は少し礼拝の人々の流れが切れた間隙。

一つ呼吸するように、その壮麗な伽藍の天井へと視線を向けた。
精緻に施された天井画。
アーチ状の柱が計算された曲線でそれらを切り取り、ヤルダバオートの物語をそれぞれ象徴するものが描かれる。

───静かに、ただ勤めをこなす女ではあるが───信仰心が深いかといわれればそれは違う。
女にとってそれは仕事で、こなすべきものであるから従事しているだけ。
かといって、主宰たる聖女に心酔しているかといわれるとそれもまた違う。
元騎士らしく忠節を誓ってはいるが────この騎士修道会の抱えるもの、その両面を知っている女にとって彼女は市井で語られるように清廉潔白な存在ではありえない。

(───安寧を与えてくれていることに感謝はするけれど。)

……それでも女は、そこにいる。
祈りもせず、今はこうべを垂れることもなく。
職責にただ殉じるように。

果たしてこの胸中を───もちろん主宰たる聖女様は知っているだろう。
けれど咎められることがないのは、それでもこうして信徒として、従士としての役割をこなしているから。

それと、相応の私財はすでに修道会に譲渡してあるのも大きいだろう。
……その可憐な容姿に見合わぬ韜晦した彼女が己のような存在を面白がっている節もあると思われるが。

──壮麗である、とその感想以外を抱かない乾いた情緒から目をそらすように視線を下げると小さく息をついた。


大礼拝を終えたばかりのその場所は、人がまばらな時間帯であるということも相まってそんな呼気の揺らぎさえ響くようだった。

アガタ > 暫く、その壮麗な伽藍の警備に立っていた女はやがてほかの施設の哨戒へと足を向けるのだった。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」からアガタさんが去りました。