2025/11/19 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」にバティスタさんが現れました。
■バティスタ >
「ふぅ……」
ファルズフ大聖堂・廊下にて。
本日は大礼拝の日。
信心深い信徒や、多額の寄与献金を寄越してくれる王族や貴族が訪れる催しの日である。
そんな大礼拝を終え、少々疲労感のある溜息を吐きながら、ゆったりとした足取りで聖女は廊下を歩いていた。
──聖薬を求めて献金をする貴族も増えてきたけれど、もう少し手駒は増えても良い。そんな印象。
精神を侵し、じわじわと信仰の道に引き摺り込むのも良いけれど───もっと手っ取り早くしても良い気がする。
「(…にしても)」
ふと、窓辺に足を止め、外を眺める。
大礼拝の折、祈りを捧げながら涙する聖天騎士がいた。
もはや神…ヤルダバオートに対しての信仰ではなく聖女そのものを信仰しているかのような振る舞い。
それはそれで可愛らしいものだけれど、同時に危険を感じることもある。
■バティスタ >
例えばそのような、聖女に絶対的な忠誠と信仰を持つような者が悪しき風説──。
『聖女は聖薬とその身体で以て、金蔓を誑し込む淫猥なる魔女である』
なんて話を耳にしようものならその場で大事件が起こりかねない。
「どこかで釘をさしておかないといけないかしら」
窓枠に肘を置き、細く白い顎を頬杖に乗せて。
涼やかな風、まもなく厳しい時期が来る季節。
「(…まぁでも事件が起こったほうがむしろ面白そうだからいっか)」
くす、と。
柔和な聖女の微笑みとは異なる笑みを幼気な口の端へと浮かべる。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」にアルフェさんが現れました。
■アルフェ > ファルズフ大聖堂
神聖都市の中でも、ひと際大きな聖堂には、あまり目立たないようにとはいえ、多くの見回りが配されている。
特に大礼拝の日ともなれば、外部からの出入りも激しくなるだけに、騎士ばかりか大きくの従士が駆り出されることになる。
綺麗に整えられた庭園は、まさに楽園の如く。
煌びやかな噴水が飛沫を上げ、色とりどりの花が咲き乱れる。
大聖堂から、そんな景色が臨めるようにと設計されたそこへと配されたのは、まだ入信して長くはない従士だった。
真面目な面持ちで、警邏の任務に就いていたのだけれど。
その視線の先に、つい先ほどまで祈りを捧げていたはずの聖女の姿を認めれば、思わず息を呑む。
冷たさを帯びてきた風に髪をたなびかせる様子に目を奪われかけ。
慌てたように、敬礼の姿勢をとり。
■バティスタ >
──あら、あの子は確か───。
形式上、とはいえど。
騎士修道会に属する従士や騎士には洗礼として聖女から祝福を賜る儀式がある。
そう、故に聖女の記憶の中にもその顔はあった。
魔族と通じ没落した家に出自を持つ、魔剣と共に在る少女。
名も顔も知っていたし、興味こそはあったものの…こうして顔をあわせる機会は立場上少なかった。…なので。
微笑み、ひらりと彼女の慌てた敬礼に手を振って。
その手の形をそのままに、手招きをしてみよう。
夕餉や身を清める時間にはまだ早い。
これも良い暇つぶし…と思ったのか、はたまた。
■アルフェ > 本来ならば、命令なしに持ち場を離れて良いはずはない。
けれど、修道会の象徴ともいえる聖女その人が自ら手招きするのだから、その意に反することの方が問題があるとも言える。
なにより、大礼拝は滞りなく終わり、あとは片付けのみ。
それらも修道士たちが中心に行っており、程なく終わるだろうという連絡は来ている。
ならば、窓辺にまで駆け寄っていき。
「何かご用でしょうか?」
膝をつき、首を垂れる。
本来ならその尊顔を拝する栄光に浴するには、もっと修練を積まなければならないところ。
少しばかりの緊張が声音にも混じってしまうのは、致し方がないもので。
■バティスタ >
「頭を上げてくださいな」
柔和な笑みを浮かべながら、畏まる彼女へとそう声をかける。
実に清らかな、鈴の音のような声色はまさに聖女、天使の具現とも言えるような──欺瞞に満ちた演技である。
彼女が聖女のことをどこまで識っているのかはわからないが。そんなことは既に聖女にとっては瑣末事。
「貴女のこと、覚えてるなあって。
良かったら少し、お話しませんか?」
大窓の枠越しに、ではあるものの。
距離として見れば隣り合い話すのと然程変わらない。
彼女の声から感じる強張り…無駄な緊張感を与えないようにと言葉は少しだけくだけ、柔らかく。
「孤児院の子の世話などもしてくれているのですよね。
ふふ、いつも懸命に働いていただいて、本当にありがとうございます」
そうして、労いと感謝の意を変わらぬ笑顔で少女へと伝えた。
■アルフェ > 主からの御言葉ならば、礼を失することになろうとも、致し方がない。
恐る恐る上げた視線の先に、天使も斯くやという柔和な笑みを認めれば、やはり見惚れてしまう他にはない。
そのうえ、鈴を転がしたような声音は、とても同じ種族だとは思えず。
自然と再び伏してしまいそうになるのを、どうにか押し留め。
「そ、そんな……っ 身に余る光栄ですっ」
確かに、祝福を賜った際に、一度だけこうして対面したことはあれど、
それを覚えて貰えているとは思ってもおらず。
この修道会にも表沙汰に出来ない部分があるのは知ってはいても、
目の前の聖女がそれに関与しているなどとは到底思えるはずもない。
天上の麗人から、親しみの籠った言葉を掛けられると却って恐縮してしまうところ。
「そんなこともご存じなのですね。
あの子たちのためなら、何ということもありません。」
けれど、孤児院のことまで把握されていると知れば、嬉しくなる。
自身への労いよりも、普段から親を失った子どもたちにも気を配っている、まさに聖女の姿勢に感銘を受け。
■バティスタ >
露骨に恐縮し畏まる様。
嗚呼、彼女は色々と知りつつも、まだ無垢と言える頃合いなのだろう。
己の生きる世界の穢れを認識しつつも懸命に生きている──実にこの聖女の好みである。そんな少女。
そんな様子に少し、聖女の悪い部分が鎌首を擡げるも──今はまだ。
「いいえ。私なんかより…。
貴方達のように人々とほど近く寄り添っている信徒の皆さんこそが真の功労者…。
それを労うことくらい、なんてことはありませんよ?」
ですので胸を張っていてくださいな、と。
くすり、とあどけない笑みを深め、身に余る、なんて言葉を使う少女を諭すかのように。
「貴女の出自にも、辛いものがあったというお話…。
そんな貴女が神の御下へと身を寄せた彼らに献身的に接するというのは、とても慈しみに溢れたこと…。
今後も、あの子達のことをどうぞよろしくお願いしますね」
向けられた蒼と紅の瞳。
僅かに細められたその視線はどこまでも少女を見透かすような、神秘的な輝きに満ちている。
その言葉の終わりに、でも、と一言を付け加える。
「貴女もまだ年端もゆかぬ少女の頃…。
辛いことや苦しいことは我慢しすぎず、周りに相談などしてくださいね。
勿論、私にして下さっても構いませんから」
ふわりと満面の笑みを満たし、そう告げる。
立場はあれど、信徒との間にそこまで距離や壁はないのだということを伝えるように。