2025/08/31 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」にビデラさんが現れました。
ビデラ > 「この状況ならば従士階級2,司祭1で巡礼の護衛を
後は今回の聖女様の王都での活動について聞かせてください」

ファルズフ大聖堂
聖天騎士ビデラの仕事部屋
簡素で大きな木製の机に、所狭しと羊皮紙が置かれ…更には書類以外にも直接の報告も上がって来る

本来ならどこかで休息をとるべき仕事量だが、男は一切疲労の色を出さずに仕事を続ける
そうしてようやく届いた王都貧民地区での聖女の活動の報告を受ければ…

「―――な……、聖女様にそのような……!!」

――そこで聖女様が逸った騎士を諫めて、そのまま王城へ向かわれました

「…そうですか。聖女様がそう仰られたなら私から言うことはありません」

一瞬、火山のように激昂しそうになる男であったが…優秀な?報告によって怒りを収める
彼にとって聖女が全てである
白い鳥も、聖女が黒いというなら彼にとっては黒なのである
報告を終えて出ていった騎士を見送り、ふぅ、と息を吐く

「…もっと良い連絡手段はないものか…」

今、ファルズフ大聖堂が持つ連絡手段では、王都との連絡は数日以上かかってしまう
これでは聖女の動向を事細かに追うことができない
もしかすれば、こちらに帰ってきているか、あるいはトラブルに巻き込まれているかもしれない…

そう考えるだけで胸中はざわめき、筆を走らせる手がぶれる


「…私は聖女の僕。僕僕僕僕……、ああ、不安に思うことすら不敬
私は私のやるべきことをやるのみ…」

いつも通りではあるが、情緒不安定な…呟きというには大きな声が執務室に響いている…

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」にバティスタさんが現れました。
バティスタ >  
ファルズフ大聖堂の廊下を歩いていると怒号にも似た大きな声が聞こえる。
丁度王都から戻り一夜明けたところ。

思わず足を止め、怪訝な顔をする聖女。

「何、今の……」

眉を顰め視線を向けるのは声が聞こえた部屋の扉。
ああ、たしかこの部屋は。

「……ハァ、あの気狂い……最近益々拗らせているみたいね……」

嘆息を吐き、小さく肩を竦める。

聖天騎士ビデラ・フォーランハルト。
騎士修道会の中でも限られたものが拝命を得る聖天騎士の称号を持つ青年。
その能力…腕前…そして信仰心に至るまで非の打ち所のない優秀な男である。
………あまりにも聖女に傾きすぎていることを除けば。

「………」

やれやれ、と表情を整え、聖女様モードの演技を取り戻す。

コンコン。と扉を小さく叩き…。

「…もし、聖天騎士ビデラ…。あの、平気でしょうか…?
 その、廊下を歩いていたら、狼狽するような大きな声が聞こえましたが…」

清らかな鈴の音のような声、それが扉越しに、狂信者へと向けられる。

ビデラ > ドア越しに…秋の夜風よりも涼やかな声が聞こえた瞬間
一瞬、自分がついに幻覚を産んだのかと錯覚した
信仰心で体を動かしているとはいえ、数時間に一回、意識が数秒落ちるようになっていた
その…足りない信仰のせいで自分に都合の良い幻想を生み出してしまったのかと

だが、自分の聴覚が捉えた声は間違いなく本物であると魂に訴えかけてくる
すぐに椅子から立ち上がり、身なりを正しながら扉の前へ
髪の乱れ、匂い、表情をしっかりと整える
わずかにでも疲労している姿など、聖女に見せられるわけはない

「―――――――聖女様」

扉を開け、その姿を見た瞬間に、溢れた涙を堪えながら崇拝の姿勢を取って跪く
本拠ではない地で、心ない言葉を浴びせられても尚、その輝きは陰ることはない
そのあまりの輝きに感涙しそうになっているが…聖女の心と言葉を無駄遣いさせるわけにはいかない

「いえ、今しがた報告を受けておりました
王都貧民地区での活動について…。心ない言葉を浴びせられた、と
それを聞いて…まことに不敬ながら、心配などしておりました
聖女の威光がその程度で陰るはずもないというのに…、そのせいで聖女の御手を煩わせてしまった事、心より恥じております」

今、首を切れと言われたら首を切りそうな懺悔具合
事務および戦闘能力こそ人間としては非常に高いものの、一般的に言えば精神性は非常に面倒くさい男である

バティスタ >  
扉が開く。
扉の向こうから出てきたのは、彼である。
恐らくまともに睡眠すらとっていない。
身嗜みや表情は整えられているが、彼の話はファルズフ大聖堂に務める者から筒抜けである。
──案の定、件の報告に心を痛めていたらしい。彼の性格と信仰を考えれば宜なるかな。

「──落ち着いてください、ビデラ」

柔和な笑みを向け、そう言葉をかける。

「我々は貧民地区に奉仕に出向いているのであって、宣教を行うために向かっているのではありません…。
 歪んだ世で視点を違えてしまった者の中には我々の活動が悪しきものに見えてしまう人もいるでしょう。しかし──」

「神は全てをお許しになります。
 神の僕たる(わたくし)もまた、それに倣いたいと思っています…。
 刃物ですらない言葉の一つ二つ…向けられようと、正しき行いをすることには支障はありませんよ」

ですからそう心配はしないでくださいね、と。
頭を垂れているのであればその手を差し向け、金糸のようなその髪を撫でつける。

無論内心では「やっぱりこいつヤバ……」などと思っているが。

ビデラ > 「――――なんという―――……」

もはや言葉もない
なんとその御心の…セレネルの海底より深く、九頭竜の山々より高いことか
やはり心配など不敬であった

「――――――――――――――――……」

跪いている頭に聖女の手が触れ、撫でられた
……その時、青年の背に電流が走る
髪の先からつま先に至るまで…歓びという感情が駆けていき
去来するのは、過去の事

(数多の命を救ってきた聖女は、私のことなど覚えていないかもしれませんが…)

消えかけた自分の命の灯、寒い夜
汚い路地裏でただただ虫のように死ぬところだった自分を救って下さった、この手
ついにこらえきれず、ぽた、と涙が零れ落ちた

「…失礼しました。つい、拾っていただいた時の事を思い出してしまい…
あの時もこうして、まずは撫でてくださいました
この暖かさが、私を強くしたことも、思い出しました」

実際に会うこと自体も少しぶりであるからそのせいもあったのかもしれない
…まあ、言ってしまえばさみしがりの大型犬のようである

そうして、涙を拭い…
跪いた姿勢のまま顔だけを上げる

「もう、問題ありません
聖女様の御手に触れていただいただけでこの体は―――…っ、…」

にっこりと、笑みを浮かべてみたが
彼は一応、人間である
眠らずに精神力だけで動いてきた体は限界を訴え…膝が震えている
よりにもよって聖女の前で崩れ折れるわけにはいかないと体に力を入れている
明らかに、人としての限界の様子である…

バティスタ >  
「……覚えていますよ。ビデラ」

そう言葉を返しながら、長く伸びた金の髪を細い指先が梳くように撫で終えて。

「それからと言うもの貴方は本当に私のために、この騎士修道会のために尽くしてくれています。
 だからこそ、(わたくし)は貴方に聖天騎士の称号を授けたのですから…」

ちょっと早まったかな、とも思ってるけど。
そんな内心は一切表情にも出さず、聖女様たる朗らかな笑みを讃えて。

「それに──ああ、ほら……」

傅いた膝が震えている。
如何に敬虔な信仰心が、如何に聖女を敬い忠誠心が強かろうが、人は人である。
大聖堂の人間から聞いているとおりなら…気絶するまで働き、そして目覚めたらまた気絶するまで…を繰り返しているという。

「ちゃんと眠りについていますか…?
 熱心になってくれるのはとても嬉しいですが、ご自分の身体も大事にしなくては」

ふわりと、聖痕の宿った聖女の手が淡い翠の光を帯びる。
それは暖かく青年の身体を包み込み──立ち上がれるだけの、力を与えてゆく。

「貴方はまだ、神の御本へ旅立つよりもやるべきことが沢山あるのですから……。
 貴方に急に倒れられては、(わたくし)も困ってしまいます」

ね?と微笑みかけて。
…実際の話、この狂信者が落ちた場合の穴は大きい。
聖女を疑わず、聖女に尽くし、聖女の為ならば何でもやろうとする──命を賭してすらも。
そこまでの男は貴重なのである。
……故に、若干イカれているところは、目を瞑ろう。

ビデラ > 「―――――――っっっっ」

なんと情けないことか
せっかく聖女様が覚えてくださっていたのに…自分の体が限界を迎えている
棘に貫かれ、火に焼かれ、毒を浴びても…一時の苦しみであれば耐える体であるが
積み重なった疲労には流石に勝てないということを恥じた

けれど聖女は、こんな己を気遣ってくれる

「…いえ、今この時までは…長時間聖女のために働けないことを憂慮し、眠りというものを忘れていました
……ただ、聖女を困らせることなど言語道断。今後は、身体の維持に必要な休息は取ります」

聖女の前に、秘密など存在しない
聖女が困る、ということならば…自分が少しでも永らえることにも意味はある

「…何度もお手を煩わせました
聖天騎士を賜ったこのビデラ・フォーランハルト、今以上の忠誠を誓いましょう」

より一層の忠誠を誓うことを決める
今度こそ全身に力を入れて立ち上がり、深く礼を

「聖女様こそ、お疲れではありませんか?
浴場の方にはお好みの香草をそろえていますし、ゆっくりとお過ごしくださいませ」

聖女がいつ帰還してもいいように
駄目になるのが早い高級な薬草も多数揃え、駄目になる度に入れ替えている
連絡が到着した時期から逆算しても帰還してから1日程度のはず。その疲れを癒してもらおうと提案しよう

バティスタ >  
「──貴方の身は貴方のものであり…神にとっても、私にとっても大事なものです。
 ゆめゆめ、忘れなきよう…貴方の周りの人間も、心配していましたよ」

笑みを絶やさず、聖女としての言葉を続ける。

「(まあ心配してたっていうか不気味がってたっていうほうが正しいんだけど)」

しかしそれでも、この類の狂信者は使える駒である。
健康に保持しておけばいざという時には必ず役に立つ。

「ふふっ、今のままでも十分なほど、忠誠心は感じていますよ」

いや、今以上の忠誠はさすがにちょっと遠慮したい。
ていうか彼の中でも今以上があるっていうこと…?
上限のないその忠誠心にやや戦慄を覚えるも、それが彼の力の原動力。
利用するのであれば、受け入れて然るべきである。何も変なことしなければいいけど…。

「本当ですか?ありがとうございます。
 贅沢な湯浴みというのも、本来分不相応なものですが…。
 今は徒労の身…ありがたく、貴方のお気遣いを頂戴いたしますね」

ほら、こういうことまでしてくれる。
実に便利で役に立つ、腕も立つ、知恵もまわるし気も利く。
ちょっと狂ってるところだけが玉に瑕。

ビデラ > 「……不甲斐ない
聖女のためにとしていたことが、聖女と信徒の心を煩わせることになる…とは
いえ、まだ足りません。
シスターアグニアからも進言を受け、聖女を象ったぬいぐるみを安置する部屋を用意しましたが…あれもまだ、聖女の魅力を伝えるには程遠い
神の塩粒もまだ浸透しきっていない…
より遠く、より深く…あなたさま。バティスタ様の御心を広めなければなりません」

この状態の男で、"不調"なのである
寝不足、疲労、栄養も最低限であった
それが…貴方の身は神にとっても聖女にとっても大事だと言われてしまえば
自分の身も大事にしつつ、更に尽くすことだろう

「いえ、御身こそ我らが旗印、贅沢などということはありません
私の身を気遣って下さるなら、分不相応ながら心配させていただきたい
その玉体に疲れを残すなど、耐えられませんから…。
役に立つかわかりませんが、按摩も心得があります。ご希望であればお申し付けください」

拷問も得意な男だ
逆に、身体がどこを刺激すれば解れるかも当然理解している
その目に邪さは全くなく
ただただ…自分を気遣ってくれるなら当然聖女にも最上の休息を…という考えの純粋さしか無い

バティスタ >  
「そ、そういえばそんなものもありましたね…」

ある意味偶像崇拝すらも為し得た聖女様ぬいぐるみ。
確かにこの騎士修道会のグランドマスターであり、俗な言い方であれば看板でもある。
現物も見たけれど思いのほか出来がよく、案外人気があるらしい。
既に布教や聖女という存在のアピールに一役買ってしまっているため、逆に扱いづらい。
よく出来ていましたよ、と朗らかに笑うだけに留めた自分を褒めたい。

「(一点の曇もない純粋な眼……こういうのが一番やべーやつなのよね……)」

己に向けられる視線は実に真摯であり、そこに他意をまるで感じない。
方向性こそあれど、そんな目ができる者は往々に狂人としての資質のある人間だと少女は思っている。

「ビデラは何でもできるのですね。
 でも、今日は貴方もよく休むことです。
 湯浴みの手伝いは手の空いたシスターにお願いしようと思いますから…。
 今日のところは何の心配もせず、その身体を休めて下さい。ね?」

にこりと、子供らしい屈託のない笑顔を向ける。
対面するだけでこの状態の彼が按摩などまともな精神状態でできるのか、興味こそあったが。

ビデラ > 「いえ、私などただの…バティスタ様の駒です
…貴女様がいてこそ、私は"なんでもできる"…そう評される駒となれる」

自分が取るに足りない男だと自覚している
聖女様に傅けるだけで、シアワセなのだから
傅くための最低限のことをしているだけである…

「承知しました。では、シスターの手配までは私が
…私も、休みます」

少しだけ、柔和な…自然に近い笑みを浮かべて
ふら、としつつも自室へ向かっていく
その途中に一般司祭に会えば…聖女の湯あみの補助として今最適なシスターが手配するよう指令をだし
たくさんの香り良い香草をふんだんに使うようにと追加で厳命して

いつぶりかわからない自室
埃をかぶった寝台に倒れ込み…そのまま眠ることだろう

バティスタ >  
「我々は神の前では常に平等であるのですよ、ビデラ」

駒などと自身を揶揄する彼にはそう言葉をかけ、自室へと向かうその背を見送って。

「(その能力の高さ故に様々な仕事を任せているけれど、いよいよ以って狂人としての片鱗が見えて来たわね)」

こうして自分が言いつければ一応言うことを聞く。

しかし裏を返せば聖女以外の言葉は届かない、響かない可能性もある。
それは、騎士修道会の信者としてはやや不健全なことでもある。

飽くまでも騎士修道会の在り方はノーシス主教に準ずるもの。敬うべき神はヤルダバオートである。
しかし彼は恐らく…神ではなく聖女という存在に傅いている。

「……ま、そんな歪みを飼っておくのも一興なのだけど」

さて、お風呂~♪ と、人目のなくなった聖女は鼻歌混じりに湯浴み場へと向かうのであった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」からバティスタさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート ファルズフ大聖堂」からビデラさんが去りました。