2025/08/07 のログ
ご案内:「ファルズフ大聖堂 修練場」にアガタさんが現れました。
■アガタ > 荘厳な大聖堂とは少し離れた位置に存在する、騎士たちのための練兵場。
その一角で一人杖を振るうのは女だった。
飾り気のない白木の棍。それが低く風を切る音をさせて、木人へと打ち付けられる。鈍く重い音。
打ち込みの連続は、女の膂力の強さを伝える。
普段は下ろしている髪を一つにまとめ、それが動きに合わせて尾のように撓った。
滴る汗をぬぐうこともなく、金と碧の双眸は、打ち込むべき対象を見据えて。
いつも纏う法衣ではなく、従士としての姿に近い鎧下と、男物のパンツ姿。
どちらも黒でまとめたそれは、夜に融けるように姿を隠す。
迷いのない踏み込みと、荷重移動。
打ち込みの音が鈍く、連続した。真正面からのそれ、返す動きでもう一つ。
手の中のそれを腕の延長のように自在に扱う。
刃のない長柄である分それは舞の道具のようにも見えるが───、相対するものの額を割るのに十分な重さと威力を備えているのだった。
■アガタ > 「ふ────、────……」
呼吸の数を数えながら、踏み込み、打ち込んで、そして戻す。
たったそれだけの工程を厭きることもなく、同じ強度で行うだけだ。
振り抜く速度も、角度も、落とさない。
毀れる汗が、肌を伝う。
白い肌が連続する動きに紅潮し、双眸が揺れる。
終わりが見えたのは、わずかに踏み込みがずれた瞬間に。
ひゅ、と棍を引き戻し、地を打った。
そこでようやく、深く呼吸を戻し、うなだれる。
汗の染みた結い髪がだらりと肩を滑る。
どくりと鼓動が震え、止まっていた時間を取り戻すように汗が噴き出るのを拭いもせずに呼吸を繰り返し。
それが落ち着けばようやく顔を上げた。
ぐし、と肩口の生地を引っ張り、肌を濡らす汗をぬぐう。
「────は、……。やはり重心がずれるな」
ずっと握ってきたのは長剣だった。
それに比べると長柄はやはり勝手が違う。とは言え使えないわけではないし。
過去の自分と、今の自分、何が違うのかを記憶の中を探って比べ。